今回から新一ではなく、乱歩と表記しています。
違和感はあるかと思いますが、よろしくお願いします。
「なあ、コナン」
「......」
「コナン!」
「......ぷっ」
「てめっ! やっぱ笑ってんじゃねえかよ!」
その日の工藤家はいつもと変わらず騒がしかった。普段と違うところをあげるとすれば、それは小学生が一人増えていることだろう。
「だって、新一兄ちゃん。ランドセルって、こ、高校生なのに。ぷっ」
「コナン、笑ってやるなよ。新一だってしょうがなく......。ぶっ、あっはっはっは」
「てめっ! 快斗!」
三人の集まったリビングに笑い声が響く。理由は乱歩の格好にあった。コナン用の幼い服、黒いランドセル。たとえ今は小学生の姿だとしても、つい最近まで高校生であった彼が着ていると考えるだけでも笑いがこみ上げるのは当然のことだろう。
「はぁ、博士も博士だぜ。小学校になんか通わせるなんてよ」
その話は昨夜、蘭の帰宅後に遡る。小学生の姿の乱歩を学校に行かずに放っておくわけにはいかない。コナンと同じ小学校に通わせるべきだ、と主張したのだ。乱歩の同意を得ないまま、入学手続きを済ませ今に至る。
「まあいいじゃん。頑張りなって。乱歩くん」
笑いをこらえながら肩を叩いてくる快斗を、文句ありげに乱歩は睨みつける。
「いいか? お前授業ちゃんと受けてこいよ。俺の代わりに!」
「へいへい。わかってますって」
新一が乱歩の間、もちろん高校の授業は受けることができない。つまり、乱歩はクラスが違うが高校に通う快斗に頼るしかできないのだ。
「二人とも、そろそろ来る時間じゃない?」
コナンの言葉に二人の顔が一気に真剣になる。そろそろ蘭と青子が来るのだ。蘭は新一が戻ってきていると考えているだろう。そこをうまく誤魔化さなければならない。そのうえ、青子に乱歩のことを説明しなければいけないのだ。気を引き締めて向かわずにはいられないだろう。
ーーピンポーンーー
インターホンと共に楽しげな声が聞こえてくる。その声はもちろん蘭と青子だ。
「な、なあ。俺やっぱり学校には......」
「ダメだよ。せっかく今日転入できるようにしてもらえたのに」
「無理だ! 俺は高校生だぞ? ランドセル姿なんて二人には見せらんねえ!」
「はいはい、見せたくないのは蘭ちゃんにだろ。今のお前は新一じゃなくて乱歩なんだから平気だって。はい、いってらっしゃい!」
「ちょ、うわっ」
乱歩に続いてコナン、快斗の順に外に出る。慌てて家に戻ろうとする乱歩の服をコナンはしっかりと掴んでいた。
「乱歩くん。今日から学校?」
「う、うん。そうなんだ」
乱歩は目を泳がせながら返事をする。
「蘭ちゃん。この子が?」
「そう。乱歩くん」
「へえ。はじめまして。私、中森青子。よろしくね」
「う、うん。よろしく」
はじめましてじゃないんけどな。乱歩は内心そう思いながら笑顔で返す。
「快斗、早く言ってよね。蘭ちゃんから聞いて驚いたんだから」
「え、あぁ。悪い悪い」
快斗はできる限り蘭と目を合わせないよう会話をすませる。
「あ、えっと。早く行かないと。乱歩の転入初日だし。なっ!」
「う、うん。そうだね。行こう、乱歩兄ちゃん」
快斗の意図を察したコナンも、蘭が新一のことを思い出さないように促す。
「あれ、新一くんは?」
二人は慌てて青子を見る。快斗は心の中で頭を抱えつつ、恐る恐る蘭を見た。乱歩とコナンも同じように蘭を見つめる。
「ししし新一兄ちゃんは、あれだよ。ね、快斗兄ちゃん」
「そうそう。なんか他の事件の捜査かなんかで。な、乱歩」
「ぼ、僕は新一兄ちゃんと会ってないから......」
三人の挙動不審な行動を蘭はじっと見つめる。しばらくして諦めがついたのか、疑いの目を向けるのをやめた。
「そうなんだ。あ、早く学校行かないと。ほらほら」
歩き始めた蘭を見て、三人はひとまず一息ついた。蘭はしばらく歩いたところで振り返り、三人を見る。
「もし嘘をついてたりしたら......わかってるよね?」
「「「は、はい」」」
蘭の顔は笑顔ではあるものの、目が笑っていない。乱歩は心の中で今姿が小学生であることを感謝した。