聖闘士星矢~ANOTHER DIMENSION 海龍戦記~改訂版 作:水晶◆
第1話 聖闘士せいや!~シードラゴン(仮)の憂鬱~
――西暦1975年。
頬を伝わる水の感触に、まどろみの底にあった意識がゆっくりと浮かび上がるのを男は感じていた。何か夢を見ていたような気がするが、それがどのような内容であったのかは思い出せない。
思い出せないが、胸の奥に奇妙な喪失感があった。
馬鹿馬鹿しい、と思う。喪失感など、失うモノのない自分にあるはずのないモノだ、と。これまで生きて来た十七年間で得たモノなどありはしない、と。
「……涙?」
ますます持って訳が分らない。
濡れた頬が気になって手で触れてみれば、それは確かに自分の目元から流れていた。
どうやら自分は仰向けに倒れているらしいと現状を把握するも、激しい頭痛と全身を包む倦怠感にこのまま起き上がる事が億劫に感じてしまい、男はそのまましばらく何をするでもなく空を見上げていた。
「俺はまだ夢でも見ているのか?」
自分がどこの誰で、さっきまで何をしていたのか。なぜこんな所に居るのか。
「記憶喪失? まさか」
見上げた先には、どこまでも広がる深い青。
それは水の天蓋。この海の世界の空。
「水が空を覆う? どんなファンタジーだ。まさか海の底だとでも――」
周りを見れば、そこには古代ギリシア時代の神殿を思わせる建造物が建ち並んでいた。
新しい物もあれば今にも朽ちそうな古い物もある。まるで過去と未来が混在しているような違和感があった。
「――アトランティス……神殿? ここは、幾多の……そうか、海底神殿の一つ、か」
知らない場所だ。
そもそも海の底など、生身の人間が訪れる事ができるような場所ではない。
それがどうだ。たった今、自分の口からこぼれた言葉が正しいという確信がある。
「正しい。そう、この感覚は正しい。俺は、そうだ、知っている? いや、知っていた。思い出した……のか?」
どうにもハッキリとしない。
深く考えようとすればする程に頭痛と倦怠感が増してくるようだった。
「余計な事は考えるな、って事か?」
『――此方へ』
突如、脳裏に響き渡った男とも女ともつかない声に、男は何者かの意志を感じ取る。
周囲に命の気配は感じられない。怪しい事この上なかったが、いつまでもここにいても何の進展もないと悟り、男は聞こえてくる指示に従い歩き始めた。
脳裏に浮かぶ声に従い、コツ、コツ、と自分の足音だけが響く無人の神殿を進む。
「こいつは……」
やがて、男の目の前に現れる巨大な壁。よく見れば、それは三又の矛の紋章が刻まれた巨大な扉だった。
ゆっくりと手を伸ばし扉に触れる。
すると、頭の中に知らないはずの知識が流れ込んでくる。
こちらの都合などお構いなしに詰め込まれるソレによって、今まで以上の激しい頭痛と嘔吐感に襲われる。
「ぐっ、あっ……!?」
この感覚はあり得ないと、流れ込む情報を遮断すべく扉から手を離そうとするが、まるで張り付けられたかのように離れない。
「じょ、冗談じゃない……ッ!!」
意識しての事ではなかった。ただ、この苦痛から逃れる為にはどうすればよいかと考えた時であった。
三又の矛の紋章が淡く光り、彼の手があっさりと壁から離れる。地響きのような重い音を立てて扉がゆっくりと開いた。
「ハァハァ……クソッ」
ふらつきながらもどうにか室内へと足を踏み入れた彼の目に、幾つもの眩い輝きが飛び込んできた。
「これは……鱗衣」
金色に輝く美しい彫像。それは神話の魔獣や英雄の姿を模した七つの鱗衣が台座の上に安置されていたのだ。
初めて見るはずのそれらに、何とも言えぬ奇妙な懐かしさを感じていた。
これが、脳裏に刻まれた知識によるものではない事だけは感覚が理解していた。
「
台座に書かれた名を見ずとも、彼の口からは鱗衣の名前が澱みなく出る。
永きに渡る眠りから目覚めつつあるのだろう。鱗衣は彼の目の前で静かに輝きを放ち続けている。
「……
海龍、大海の魔獣。その名が鍵であったのか。
その言葉を口に出した瞬間、激しい頭痛や嘔吐感が嘘のように消え去り、彼は自分が海皇ポセイドンを守護する
海皇とは何か、海闘士とは何か。
海闘士として知らねばならない事が、次々と脳裏に浮かび上がる。
「シードラゴン、海将軍シードラゴン。それが俺の役割、か」
呟きと共に、自分の内側、奥底から沸き上がる未知なる力を感じ取る。
地上の守護者たる女神アテナの聖闘士は、過酷な修行により聖闘士としての資格を得るが――海闘士は違う。
鱗衣に選ばれ、自身が海闘士であると自覚する事で覚醒を果たす。
超常の力の覚醒。
全身を包み込むのは、まるで世界の全てが己の物になったとさえ錯覚するような高揚感。全能感にも似たそれを感じ、彼は口元を歪めていた。
しかし、同時に決定的な何かが足りていない。そんな漠然とした不安感に襲われる。それが何なのか。
「……おかしい」
拭いきれない違和感を覚え、もう一度光り輝く鱗衣とそれらが安置された台座を見る。
台座は八つ。しかし、その上に安置された鱗衣は七つ。
「シードラゴンだ。俺の鱗衣が――無い? そんな馬鹿な!?」
どういうことだと、周囲を見渡す。どこにもシードラゴンの鱗衣は見当たらない。
しかし、近くにある事は間違いない。その存在は確かに感じている。
覚醒した海闘士が、自分の纏うべき鱗衣の気配を間違えるはずがない。
確実に近くにある。
「どこだ?」
感覚を研ぎ澄まし、場所を特定しようとした――その時だった。
「探し物はコレかな?」
それは若い男の声だった。
「誰だ!?」
話しかけられるまで人の気配は感じなかった。
無人の地であると認識していただけにその驚きは大きい。
その声に振り向けば、柱の影から人影が現れる。
いつからそこに居たのか、シードラゴンの鱗衣を身に纏った男が、悠然とこちらを見つめていた。
「答えろ、お前は何者だ? なぜ、俺の鱗衣を身に纏っている!?」
百歩譲ってこの場に他の人間がいた、それは構わない。だが、目の前の在り得ない状況に彼は冷静さを欠いていた。
鱗衣はただの鎧ではなく、力の増幅器でもある。事の真贋はともかくとして、鱗衣を、それも海将軍クラスの物を身に纏った相手を前にして取るべき行動を誤ったのだ。
「俺の鱗衣、だと? ほう、そうか。貴様が今世の“シードラゴンだった”男か。その問いの答えは――見ての通りよ。このオレこそがシードラゴンだからだ」
「ふざけるな!」
シードラゴンを名乗る男に対して彼も素早く身構えた。
力の奔流をイメージして両の掌に力を集中する。
目の前の男を倒すために何をどうすればいいのかが分る。戦う術は既に自分の中にある。
例え鱗衣が無くとも繰り出す技の威力は必殺。
広げた両腕を目の前で交差させた瞬間、溜めこんだ力を解き放つ。
「大海嘯に呑み込まれて消え去れ“ダイダルウェイブ”!!」
荒れ狂う大海の津波の如く、全てを呑み込み粉砕する破壊のエネルギーがシードラゴンを騙る男へと放たれた。
「むっ!? これはっ!」
嘲笑を浮かべていた男の表情が変わった。
ドゴォンン!!
破壊の波濤が男を包んだが、その破壊の力はそれだけに留まらない。余波は男の周囲の石畳を砕き、舞い上がらせ、放たれた進路上の柱や壁が次々と崩壊する。
想像通りの破壊の力。狙いは寸分違わず。
しかし、その光景を見ても彼の表情は晴れなかった。眉間に皺を寄せ、むしろ苦々しくあった。
破壊は一瞬の内。直ぐに終える、そのはずが終わらないのだ。
見れば、男の立っていたその場所だけは傷一つなく。
「ク、クククッ。流石は海将軍の資格を持った奴よ。覚醒直後でありながら……これ程までの力を見せるとは思いもしなかった」
破壊のエネルギーは男の両手によって押し留められていた。
「……受け止めた、だと……ッ!!」
「見くびっていた事を認めよう。そら、返すぞ!!」
男の身体から尋常ではない、巨大な小宇宙が立ち昇る。
「そして消し飛べ!」
宣言の通り、男はダイダルウェイブの破壊エネルギーの全てを跳ね返して見せた。
「ぐ……くっ!!」
拙い、と感じた瞬間、身体が動いていた。
右拳に小宇宙を集束させて眼前に迫る破壊のエネルギーへとぶつける。
「“エンドセンテンス”!!」
青く輝く無数の光弾が散弾の様に解き放たれた。
咄嗟に放ったその技はシードラゴンの知識にはない技。彼の魂の内から放たれたモノ。
しかし、故にそれを理解できない彼は戸惑う。
「何?」
それが致命となった。
どうにか相殺出来たものの、その余波で彼と男は激しく吹き飛ばされる。
「ガハァ――あッうぐぅう……」
柱をへし折り、壁をぶち抜き。
神殿の壁を突き破り外へと放り出された彼は、そのまま受け身も取れずに石畳に叩き付けられ、全身を襲うダメージに身動きが取れなくなってしまう。
戸惑い無防備となった状態。鱗衣のない生身の彼には余波ですら致命傷となっていた。
「咄嗟に切り返して見せたのは見事。だが……鱗衣もなく生身で俺に勝とうなどとは。思い上がりも甚だしいと言わざるを得んな」
「……ぐッ、うぅ……」
たちまち飛びそうになる意識をどうにか繋ぎ止め、どうにか立ち上がろうと足掻く。が、それよりも相手の動きの方が遥かに速い。
「この鱗衣と海将軍としての立場は俺が有効に使わせてもらう。その為には――お前の存在は邪魔だ」
彼には男が何を言っているのかが分らない。
ただ、赤と黒に染まり、霞がかった視界の中で、男の手が三角の軌跡を描いたのが分った。
そこから感じる異様な力。彼の脳裏に警鐘が鳴り響く。
「……な、何だ? く、空間が? まさか、アナザーディ――」
またもや知らない言葉が口をつきそうになる。何故だ、何なのだこの感覚は?
だが、それ以上彼が考えを進める事はなかった。
「お前の存在をこの世界に残しておくわけにはいかん。本来のものとは形が違うが――消えろ、時の狭間、次元の歪、時空の彼方へと」
『ゴールデントライアングル!!』
その声を最後に、彼の意識は闇へと沈んだ。
第一話 聖闘士せいや!~シードラゴン(仮)の憂鬱~
『――誰か?』
『時の静寂を妨げるそは何者か?』
『――そうか』
『青の星雲から赤の星雲に彷徨いし塵芥、憶えているぞ。あの“時”においては戯れに記憶を奪い見逃してやったあの魂』
『でありながら二度も此処に彷徨い着くとは実に――不快よな。千々に引き裂き一千光年の彼方へと消し飛ばしてやっても構わんが――ほう、再び青に向かうか』
『青で生まれし者は青で死すべきが正しき運命。在るべきモノが在るべき場所に戻るだけ』
『――ならば徒に時を乱す必要もなし』
『余の前に二度現れたその奇跡に免じ、青に生まれる新たな命として祝福をしてやろうではないか』
『さあ、去れ。そこで再び業を繰り返すかどうかは――お前次第よ』
――西暦1980年。
遥か神話の時代より、邪悪から女神アテナと地上の平和を守るために戦う戦士。
繰り出す拳は空を切り裂き、放たれた蹴りは大地を割る。
そんなトンデモ人間――聖闘士となるべく、おれたち孤児は各地から集められたのだと目の前の爺さんは語っている。
「ふわぁっ……」
その爺さんの横では、おれたちよりも幼いお嬢様が退屈そうに欠伸をしていた。
それに気が付いているのかいないのか。
爺さんは世界の平和だの正義だのとご大層でご立派な事を語り終えると、ようやく長い話が終わったのかと飛び付いてきたお嬢様の手を引いて屋敷へと戻って行った。
去り際の、お嬢様が見せた“やっと終わった”とでも言いたそうな表情が印象深い。
こっちも退屈で仕方がなかったんだから、恨めしそうに睨まれても非常に困る。きっと爺さんが自分の事よりもおれたちに関心を見せた事が気にくわなかったのだろう。
ここにいる誰も彼もが、お嬢様の大好きなお爺様を取ったりなんかしないってのに。むしろ嫌っているのだが。
「なあ
そんな事をぼうっと考えていたら、隣に立っていたお仲間からボソボソと声が掛かった。あいつ、ってのはあの爺さんの事だ。
「孤児院から拾い上げてやったんだから、お前らは強くなってグラード財団の兵隊になって役に立て、って事だろ」
「ああ、そう言う事か」
違うと思うが似たようなもんな気もする。
何せ、あの爺さんは世界に名だたる“グラード財団”の実質的な支配者である城戸光政様。
日本全国から、いや外国も混じっているみたいだが、とにかく各地から『見どころがありそう』というだけで、手段を問わずに百人近い孤児を集めた超の付く変人だ。
中には人攫い同然の手段を取った、って話も聞いている。
普通、そんな事をすれば警察やら何やらから色々と問題にされそうなものだが、少なくともこれまでそんな話は一度も耳にした事がない。
法治国家日本ってのは嘘だな。そんな馬鹿げた相手の言う事だ。
どんな大層なお題目を語られたところで、おれからすれば金持ちの道楽がまた始まった、その程度の事としか思えなかった。
「那智! 海斗! 誰が私語を許可したかっ!!」
「す、すいません!」
「……」
お嬢様の護衛兼おれたちの教育係でもあるハゲ――辰巳の一喝に、周りのやつらが身体を縮こまらせたのが分った。
無理もないと思う。
ここにいる百人は『お優しい城戸光政様によって城戸家に引き取られた身』として、特に『沙織お嬢様には絶対服従せよ』を辰巳によって骨身に叩き込まれている。文字どおりに。逆らえば体罰だ。
なのに、お嬢様の我が儘に従えば犬や馬として扱われる。まるで家畜か奴隷だ。体罰と変わらない。逆らっても体罰、従っても、とやらだ。そんな仕打ちを受けても邪武だけは嬉々としてお嬢様に従っていたが……。
おれとしては、そのあまりの理不尽さにお嬢様を何度ぶっ飛ばしてやろうと思った事か。
もっとも、まだ六歳だか七歳だかのお嬢様を殴るわけにもいかなかったので、その矛先を殴り飛ばしても全く良心の痛まないオッサンである辰巳に向けた事もあった。
あったのだが、連帯責任だと言って関係のない奴らまで罰を受けさせられては我慢するしかなくなる。
日々、訳も分らず繰り返される虐待と言う名のトレーニングに戦闘訓練のおかげで身体だけは丈夫になったが。
「だんまりか海斗? フン、お前といい星矢といい一輝といい。まあ、今日は特別に許してやろう。こうして顔を合わせるのも、これが最後になるかも知れんのだからな」
そう言って、壇上に上がった辰巳が取り出したのは、くじ引きで使うような穴の開いた大きな箱だった。
どうでもいいが、十歳のガキ相手に大人げないとは思わないのかコイツは。
「順番にくじを引け。それに書かれた場所がお前達の向かう修行の地だ。そうだな……海斗、お前から引かせてやるぞ」
この時の辰巳の嬉しそうな顔は、きっと一生忘れる事はできないだろう。
「ギリシア……聖闘士発祥の地か。お前ならデスクィーン島を引くと思ったんだがなぁ。フン、つまらん」
こうして日本からギリシア・聖域に送られたおれは、かの地で牡牛座の黄金聖闘士と名乗る男アルデバランに出会った。
2メートルをゆうに超える巨体は圧巻以外の何物でもない。見上げていて首が痛くなる相手なんて初めてだった。
「ほう、お前が日本から聖闘士になるべくやって来たという少年か。黒髪に黒い瞳に眼つきが悪い、と。資料の通りだな。確か――星矢と言ったかな?」
「……海斗です」
「ん? ははは、スマンスマン」
気さくに笑うアルデバランはその巨体もあって確かに強そうに見える。見えるが城戸の爺さんが言っていた『空を切り裂き岩をも砕く』程には見えない。
いや、確かに岩なら砕きそうなんだが。
おれの向けた微妙な視線、その意図に気が付いたのか、アルデバランはフムと頷くと「ついて来るといい」と俺の手を取って歩き出した。手を取られたら逆らえない。
「聖闘士についてのおおまかな説明は受けていると聞いたが、口で言われただけでは信じる事ができないのも分る。やはり実際に見て体験しなければ本質は分らんものだ」
着いた場所は朽ち果てた古代の神殿跡地。
聖闘士の存在に半信半疑だったおれの目の前で、アルデバランは直径三メートルはあろうかという巨大な石柱を何気ない腕の一振りで――粉砕して見せた。
「……嘘……」
「聖闘士とは――原子を砕くという究極の破壊の術を身に付けた者よ。己の内に眠る小宇宙を感じ、それを燃やして爆発させる事ができれば……お前もこれと同じ事ができるようになる」
唖然とするおれの肩に手を置いてアルデバランは続ける
「もっとも、こんな表面的な力を会得しただけでは聖闘士となる事はできんぞ。アテナと地上の平和を守る。正しき心と正義の意思があって初めて真の聖闘士となる事ができるのだ」
「……なれますか、おれは?」
「それは分らん。全てはお前次第だ。修行は辛く日々が命懸けのものとなる。それでも望むのであれば、一歩でも聖闘士に近づけるよう、このアルデバランが全力でお前を鍛えあげる事を約束しよう」
正直、聖闘士になる事に興味は無かった。ただ、あの閉塞感の漂う城戸邸から外の世界に出られればそれでよかった。
おれの目を正面から見据えるアルデバラン。
その目には子供だからと侮る様子はなく、思い上がりかもしれないが“対等の人間”として接してくれたように思えた。
「――よろしくお願いします」
この日から、おれはアルデバランを師と呼ぶようになった。
「むぅ、師匠か。悪い気はせんが……まだ若輩の身ではこそばゆい感じがするな」
「え? 若輩って、師匠はお幾つなんですか?」
「十四だが?」
「……」
――俺と四つしか違わないの? どう見ても高校生以上ですよね!?
俺は喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「海斗、お前の歳は?」
「十歳です」
「……嘘はいかん、嘘は」
「――お互い様、と言う事で」
「……ああ、そうだな」
城戸邸では、集められた孤児達の中でも年長という事で、おれは一輝と共に何かに付けて目の敵にされていた。
年齢の割に可愛げがないだの生意気だのと散々言われて育てばこうもなろう。
はははははと乾いた笑いを浮かべる師匠とおれ。
師匠とは分かり合えそうだと心の底から思った。
この時は。
翌日、与えられた部屋で目を覚ましたおれは愕然としたよ?
「なんてリアルな夢……じゃない、な。何の冗談だよこれは。聖闘士を目指すって宣言した翌日だぞ?」
自分が海皇ポセイドンの