主人公SIDE
力が無いから家族の中で落ち零れと言われてきた。
家族の中で何時もオレだけが邪魔者の様に扱われてきた。
だから、あいつ等の言う力が憎かった。力を持っている奴等が憎かった。
だけど何も出来ない。力が無いから…。
だけど…だけど…
「くくくく…あはははは…!!! 絶望がお前達のゴールだぁ!!!」
『あー、おいちょっと待て! あー、もう! 人選間違えたか?』
『いや、彼で間違い無さそうだよ。…残念ながら』
『で、でも、きっと彼なら大丈夫な筈だよ。…多分』
彼の頭に響く声も不安が山盛りと言う響きを孕んでいたりする。異形の鬼達を相手に高笑いしながら縦横無尽に暴れ回る憎しみのW『仮面ライダーW・サイクロンアクセル』を見ればそう思うのも仕方ないかもしれない。
『まあ、彼も色々と不満が溜まってた様だし、暫く暴れれば落ち着いてくれると思う。説明するのはその時で良いだろう』
『ってか、この状態じゃ説明しようにも、なあ』
なお、周囲の自然破壊を含めて化け物退治(と言う名の大暴れ)が終わるまでそれほど時間は掛からなかったが、文字道りの大惨事が晒されていた。
「で?」
彼の精神が安定するのを待っていた様にダブルCAへの変身が解除されると彼は頭の中に響いた声に答える。
『ああ、実はな…』
曰く、此処とは違う『仮面ライダー』と呼ばれる戦士達が守る世界の彼らの戦っていた悪の力や怨念が何らかの理由で彼の住む世界に流れ込んでしまった。
曰く、この世界にある魔法の力では対抗できず、この世界に紛れ込んだ悪と戦う為に自分達も移動しようとしたが、元々の世界から遠過ぎる為に移動する事は不可能、世界を渡る事が出来る次元戦士達でさえも送れるのは力が限界で、この世界を守る為に力と意思をこの世界に存在する自分達の力を受け入れる事の出来るだけの器を持った『特異点』に託す必要が有った。
『そう言う訳だ。この世界を守るために戦ってくれ』
「やだ」
一分一秒の迷いも無く即答してくれる彼に、頭の中の声の主達は思いっきりずっこけてくれた事だろう。
『おい、世界が危ないんだぞ!』
「いやさ…世界なんて滅んでしまえって思った事もあるし、オレは別にこの町は物凄く嫌い…ってか嫌悪さえ覚えるし、手を伸ばして人を助けたいなんて思ってないし………裏の関係者は特に」
『『『う、うわぁー…』』』
多分頭を抱えているのだろう。少なくとも、重症と言うレベルで自分の住む場所に対する嫌悪さえ持っている彼を説得するのは直ぐには無理だろう。しかも、彼を説得している間にも世界の危機は大きくなっていく。ならば…
『仕方ない、ここはぼく達が折れよう』
「折れる?」
『ああ。君は力を欲していた。だから、ぼく達の力を君に預ける代わりに、君にはぼく達の世界から紛れ込んだ敵を倒して欲しい』
選んだのは説得ではなく取引。彼の他に適任者は居ない。どうしても彼に引き受けて貰わなければ困る。彼の中の善意に賭ける形でこんな取引をするしかない。
「オッケー。あんた達の世界の敵を倒せばいいんだな」
『ああ。その代わりぼく達の預けた力は好きに扱ってくれて構わない。だけど…』
「悪事だけは働くなって事だろ? ただ、身を守る為なら人に向けるのも有りだよな」
『…この世界の事を考えるとそれも仕方ないかもね…。だけど遣り過ぎるのは…』
「気をつける」
交渉成立した事に頭を抱えたくなる思いだったが、少なくとも彼自体は悪い人間じゃないだろうと考えて何とか意識を落ち着かせる。
彼の手の中に現れる三枚のメダルと二つのメモリ。それは光と共に消えて腕輪となっていく。それが彼と彼らの契約の証。
「…安心しろ…。裏の奴等は兎も角、無関係な奴等は出来る限り守ってやるから」
聞こえたかどうかも分からない、何処か善意と悪意の入り混じった言葉。
「さあ…先ずは…試させて貰うか、この力を!」
彼の腰に現れるのはLを書くようにメモリの挿入口が片方だけ着いたベルト、ロストドライバー。そして、手の中に出現した“白いメモリ”のスイッチを押す。
《エターナル》
『『『って、おい!!!』』』
鳴り響くガイアウェスパーとそれに突っ込みを入れる声。『普通、其処はジョーカーだろ!』と言う声を黙殺しつつ、彼は漆黒のマントを纏った純白の体にEの字を横に倒した王冠に∞を描いたかのような黄色い複眼の仮面ライダー、かつて風都の街を地獄へと変えた永遠の悪魔『仮面ライダーエターナル』へと変身する。
……根本的に彼と相性の良いのはライダーの中でもダークライダーの分類のライダー達だった様子だった。
「さあ、地獄を……楽しみな!!!」
サムズダウンと共に走り出すエターナルに必死に突っ込みを入れるのだが、黙殺される始末だった。
「…何じゃ、あれは?」
学園長室、そこで魔化魍…もとい、学園長は水晶玉に映るエターナルの姿を見て唖然と呟く。
明らかに魔法とは違う能力と力、笑いながら侵入者の呼び出した鬼を倒している姿は明らかに他に敵が居ないから向こうに向いているだけで無差別攻撃の域に達しているだろう。
「何で彼があんな力を持っているんでしょうか?」
水晶玉に映る映像から感じられるエターナルの力を感じ、震えを感じながら男性『高畑・T・タカミチ』は呟く。
見る限りでは力に振り回されているだけだが、完全に使いこなすのも時間の問題だろう。寧ろ、今は力を使いこなす為の練習を楽しんでいるようにも見える。
「…彼は魔法生徒の『神崎 双麻』君じゃった筈じゃな…」
「はい」
彼、『神崎 双麻』は“一応”は魔法生徒とされていて、実力だけならば同年代の魔法生徒の中でもトップと言う実力を持っている。
両親共に《立派な魔法使い(マギステル・マギ)》の称号を持った魔法使いで、彼自身も膨大とは行かないが常人以上の魔力を持って生まれた。残念ながら彼には体質的な問題で攻撃用の魔法が使えなかったが、その分魔力を利用した効率的な身体能力の強化と格闘術によってトップと言う実力を勝ち取った努力家で有る反面、病的なまでの魔法使い嫌いで有名だった。
特に学園における魔法使いとしての活動についても一切参加せず無視する程の徹底振り。学園の魔法使い達からの認識では、実力はトップの落ち零れと言う認識でしかなかった。だが…
「…どうやら、熟れて来た様子じゃな…」
「はい」
最初の頃とは違う洗礼された動きへと変わって来たエターナルを見てそう呟く。
「彼のご家族はみんな立派な魔法使いじゃと言うのに…なんでじゃろうな」
「はい、彼の両親もあんなに立派な人達で、妹さんもとても優秀な魔法使いの卵だというのに…」
それこそが彼と魔法使い達の間に有る最大の壁。双麻の中に生まれた心の闇の原因。
「あははは…凄い、凄い凄い!!! これがオレの手に入れた力…」
術者らしき男を力技で気絶させると感慨深げに呟く。
「…っと、確か移動用のメモリはこれだったな」
Zと書かれたメモリを取り出してマキシマムスロットへと装填しようとした時、
「…折角最高の気分なんだ…。あんな最低の連中と会って気分を害したくないしな」
『最低の連中?』
「…オレの家族とそのお仲間だよ」
《ZONE MAXIMAM DRIVE》
ガイアウェスパーと共にエターナルの姿が掻き消える。
これが仮面と魔法の交わる物語の始まり、この世界に誕生した仮面ライダーの力の器たる少年の…ビギンズナイト。