魔法先生ネギま -魔法嫌いの英雄譚-   作:龍牙

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エピソード1 ~魔法嫌いの敵対者(ダークライダー)~

「…………」

 

双麻は無言のまま郵便受けに入れられている手紙を破り捨てる。『読む価値は無い』と断じて一切手紙を開く事無くだ。

 

細かく破った手紙を窓から風に任せて吹飛ばし、改めて己の手にした力へと視線を落とす。ロストドライバーとエターナルメモリ。

 

「夢じゃ…無かった…」

 

双麻の顔に浮かぶ感情は狂喜。狂うほどに力を求め続けていた彼にしてみれば、願って、欲して、焦れていた物を、どれほど努力しても手に入らなかった物を、やっと己の手の中に掴んだのだ。それが嬉しくないはずもない。

 

そもそも、双麻が力を求めて努力を始めた切欠は、学園の魔法関係者が押し付けてくる魔法関係者の義務とやらから逃げるのも目的の一つだった。

 

無視していれば何れ誰かが呼びに来る。それが最初は同年代の魔法生徒だった。そんな安い正義感を持った連中を適当にあしらっている内に直接的な攻撃手段の応酬に発展した。そして、そいつ等を退けている内に結果的に落ち零れでありながら最高の実力を得た。

 

(…虚しい最強だな)

 

だが、結局はそれでも大人には勝てない。魔法生徒に勝てる様になった時、次は魔法先生の方が来るようになった。結局の所、所詮は子供と大人、どれだけ強くても大人には良い様にあしらわれるだけだった。…憎かった…。

 

それから、何度か学園の警備とやらにも参加させられた。タダで。

頭に来たんで何度もボイコットして帰ったら、監視するようにコンビを組まされる事になった事も有る。……腹が立ったので、その時は後ろから味方に攻撃した。まあ、その結果オレが原因で学園長の孫が何度も誘拐されそうになったが、教師が間に合って無事に済んだらしい…興味は無いが。

そうして行く内に教師が監視に着くようになったが、今度は戦闘中に即逃げた。敵と逃げたオレのどっちを優先するべきかと混乱している内に良いのを貰って思いっきり被害が増大した。

そうして、何度も態と邪魔をしていたら何時の日か警備には呼ばれなくなった。初めて、妖怪爺(学園長)に勝ったと思った。

 

(…あの時は初めて清々しく感じたよな)

 

…まあ、人手不足の時は給料付きで警備を頼まれる時も有るが、流石に前金で全額現金で貰っている以上は真面目にやったりする。金銭を受け取った以上それは責任が発生するのだし。………最初期に親に渡した等と言われた日には即座にボイコットしたが。

…序でにタダ働きさせられた恨みで学園の情報を外の組織に売ってやった。…どうでも良いって思える情報も結構高く売れる物だと思った瞬間だったりする。

 

「ったく、鬱陶しい連中だよな…」

 

『そう言う言い方は無いと思うけど』

 

「はっ、だったら“正義”とか“英雄”とか言う言葉に酔ってる酔っ払い共だ」

 

自分達が正義であり続けたい為に滅ぼすべき悪を求めている。だったら、今回の異変は奴等にとって喜ぶべき事だろう。……待ち望んでいた悪が現れたんだから。

 

そう考えて思わず笑が零れる。今日はそんな暗い充実感を振り払いながら改めてそんな物とは比べ物にならない充実感を実感した瞬間だった。

 

ロストドライバーとエターナルメモリが消える。使い方は分かる。彼らとの契約の証が双麻が力を得た証が腕に存在している。

 

力をくれた彼らが言うには、双麻の変身した白い仮面ライダーはかつて彼らの世界で敵として戦ったダークライダーの一人『仮面ライダーエターナル』と言うらしい。

 

(…正義の味方への敵対者か…)

 

そう思うと余計に表情が綻んでくる。悪と呼ばれる戦士の力………双麻にとっては願ってもない。昔から、無理矢理矯正させられていたが《正義の魔法使いの敵対者》となりたいと思っていた身の上としては、ダークライダーのエターナルの力は寧ろ好ましい。

 

「…さあ…正義の味方共…オレと言う《敵対者》や《悪の怪人》に対して、どう動く」

 

『…すまない…。君が嫌っている事はよく分かっているが、彼らにもその事は説明してくれないか…。一度で良いから』

 

「…オッケー。向こうから来るだろうから、その時な♪」

 

機嫌良く頼み事を快諾すると支度をして授業に出るために部屋から出て行く。そんな時だった…。

 

「朝早くからすまないね。今から学園長室まで、一緒に来てくれないか双麻くん」

 

「お断りします、高畑先生」

 

タカミチと遭遇したのは。最も、タカミチとしては双麻を待っていたのだろうが。

 

「っ!? 何故だい?」

 

「何故って…」

 

タカミチの言葉を一言で切り捨てる双麻に対してタカミチの警戒心が増していく。同時に気と魔力の高まりを感じる。そんな相手に対して双麻は、

 

「あと一時間もしないで授業ですよ。学園長(ロリコン妖怪)(生息してい)るのは女子中等部…オレの通っている校舎とは正反対…一時間目どころか下手をしたら二時間目にも遅刻してしまいます。まさか、掛け持ち程度の似非教師でも率先して生徒のボイコットを促しませんよね」

 

「そ、そうだったね」

 

そう言われて改めて思い直す。流石に『掛け持ち』や『似非』と言われるのは心外だが、出張が多く、結果的に生徒の事を蔑ろにしていると言われても無理は無いとは自覚しているタカミチとしてはその一点には反論できない。

 

「では、失礼します」

 

「…じゃあ、放課後に学園長室まで来てくれないか?」

 

「…分かりました…」

 

思わず双麻の態度に意外な物を感じてしまう。理由こそ分からないが、自分も含めて魔法関係者全員に敵意を持っている双麻が、こうも簡単に自分の提案を受け入れてくれるとは思っても見なかった。

今までも散々抵抗されて戦闘に陥ることも多かった事もあり、正体不明の力まで会得した事で危険度が上がった双麻に対して他の魔法先生では危険と判断した為に、上位の実力者でもある彼が来た訳なのだが…。

 

「じゃあ、放課後…女子中等部のエリアの前で待ち合わせと言う事で」

 

「あ、ああ…分かった」

 

逆に双麻としては向こうからの接触に対して一度は応じる予定だったので、早めの接触は寧ろ好都合と捉えている。それが今回の学園側からの接触は待っていたと言う所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後…

 

「うわ、相変わらず、キモッ」

 

「第一声がそれかい、他に言うべきことが有るじゃろう!?」

 

そう言われて少し考えると、改めて口を開く。ぶっちゃけると、双麻くん三時間ほど約束忘れて遅刻していたりする。

 

「……学園長……」

 

「うむ」

 

「真っ二つにして良いですか、頭?」

 

「違うじゃろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

「えー、だって…オレ、初めて会った時からその人間離れした茄子みたいな頭、真っ二つにしたいと思ってたんですけど」

 

「こっちは遅刻した事を謝れと言っとるんじゃ!? お主は遅刻した事に対して悪いとか思っとらんのか!?」

 

「全然」

 

あっさりと切り捨てられる。約束忘れていた事についても、思い出したのは一時間前で学校の帰りに寄ったゲームセンターの中…。思い出した後も約束よりもゲームを優先してワンプレーした後に来た訳だが。

 

「せ、せめて何で遅刻したのか位教えてくれないか…」

 

「約束忘れてゲームセンターで遊んでました。いやー、思い出したくなかったけど、思い出しちゃった」

 

「い、いや…普通謝る所じゃないのかな…そこは?」

 

「だって、学園長の顔なんて見たくないし…」

 

「…もう良いわい…」

 

聞きたくなかった理由に思わず泣きたくなる学園長達だった。実際に約束を思い出した後も態と遅れた時間もあるだろう事は間違いない。

 

「その事は、もう良いわい。そんな事より…聞かせて貰えるかのう、昨日の事を…」

 

学園長から双麻へと向けられる視線が鋭くなる。拒否は許さないと言う意思が簡単に感じ取れる。今までの双麻との関係を考えると簡単に話す訳が無いであろう事は学園長自身よく分かっている。

 

少なくとも、魔法使いと言う点では双麻は間違いなく落ち零れだ。だが、魔法生徒と言う転で考えれば間違いなく優秀な部類に入る。

身体強化の魔法と魔力の運用は天才的と言っても良い。いや、本人の努力を考えれば従者となれば間違いなく優秀だろうと言うのが学園長を初めとする魔法教師側の九割の持っている認識だ。だからこそ、その才覚を惜しまれ、或いは蔑みを込めて『落ち零れの天才』等と呼ばれているのだが…。

双麻自身の持っている魔法使い全体への敵意のせいで、その天才的な技術は常に自分達へと牙を向けられている現状は常日頃から学園長達は拙いと思っている。そして、現在は正体不明の新しい力まで持ってしまったのだ。特に英雄の子供『ネギ・スプリングフィールド』が訪れる事が確定している現状としては、正に危険極まりない。

 

だからこそ、学園長もタカミチも油断なく構えている。構えているのだが…

 

「良いよ~」

 

軽い口調で言い切られて思わずずっこけてしまう。双麻にしても力の事を含めて説明する事は契約の内なのだから、言うのは当然のことだったりする。そんな事を知らない学園長達にしてみれば、混乱してしまう。

 

(…え? 何これ? 何時もの彼なら『誰が言うか』とか言うんじゃね…)

 

『…そうだね…。此処から先は僕から説明させて貰おう』

 

エターナルメモリとロストドライバーと同じ様に現れる鳥型のガジェット、仮面ライダーWの最強フォームへの強化ツールである『エクストリームメモリ』。其処から響く声がその場に居る三者の耳へと届く。

 

「な、なんと!?」

 

「な!? こ、これは!?」

 

「おっ、結構良い物有るじゃん」

 

エクストリームメモリから出現する立体映像の人影に驚愕する学園長達…。双麻はそれに驚愕する学園長達を他所に一人ソファーに座りながら、適当に部屋を漁って持ち出した御菓子と緑茶(共にかなりの高級品)を堪能していた。…中には学園長が楽しみに食べようと思っていた物まで有ったりする。

 

「…うーむ…まさかそんな事が…」

 

「そう言う事。喜んだらどうだ、あんた達正義の魔法使いが望んでいた…『ワルモノ』がやって来てくれんだぜ」

 

重々しく呟く学園長の声に双麻が茶々を入れる。

 

『すまないが、君は黙っていてくれ』

 

「悪い、悪い。分かってるよ」

 

『話を逸らしてすまない。だが、ぼく達はそれに対抗する為に、この世界でぼく達の力を扱える唯一の人間である彼に力を与えたんだ』

 

「うむ。よく分かった。ワシ等魔法使いも力を「お断りだ」フォ!?」

 

『バァン!!!』と言う音共にテーブルに叩きつけられた拳が、無残にもテーブルを残骸に変えた。口調こそ静かだが其処に込められた意思は強い。

 

「誰がお前等の力なんて借りるかよ」

 

「フォ!? お、お主は何を言っておるんじゃ!? こんな時にそんな事を言っておる場合じゃないじゃろう!?」

 

「…こんな時も、そんな時も……オレには関係ないな。お前らの力は借りない…」

 

「じゃあ、何で君は素直に話してくれたんだ、ぼく達の協力が必要だと思ったんじゃ…」

 

「力を貰った時の契約」

 

タカミチの言葉に双麻が即答すると学園長とタカミチは思わず黙り込んでしまう。

 

「んじゃ、用件は話したからオレは帰るぜ」

 

それを見ると、そう言って双麻は残った茶葉とお菓子を持って部屋を出て行こうとする。

 

「待つんだ! 君はご両親に恥ずかしいと思わないのか!? ご両親はあんな立派な人達なのに…妹さんだって、立派な魔法使いになる為に努力しているって言うのに、君は…」

 

 

《エターナル》

 

 

タカミチの言葉に答えるように鳴り響くのは、エターナルメモリのガイアウェスパー。

 

「変、身」

 

 

《エターナル》

 

 

持っていた物を投げ捨ててエターナルへと変身する双麻はゆっくりと学園長達へと向き直る。

 

「あいつ等に対して……憎しみしか持ってねぇよ!」

 

 

《サイクロン! マキシマムドライブ!》

 

 

部屋と言う密閉空間に吹き荒れる竜巻に吹飛ばされそうになる学園長とタカミチ。だが、部屋の家具や窓はそれに抗う力は無かった。無残にも砕け散る窓硝子とぶつかり合い残骸へと変わっていく家具。

 

 

《アクセル! マキシマムドライブ》《ジョーカー! マキシマムドライブ!》

 

 

同時に響く二つのガイアウェスパー。それと同時に近く出来ない速度での加速…アクセルメモリのマキシマムで得たスピードと、ジョーカーメモリの紫電の稲妻の様なエネルギーがエターナルの片手に集う。

 

「…ライダー…パンチってな」

 

二人を避けて叩きつけられたパンチが背後に有った壁を粉々に粉砕する。…双麻自身完全に切れていたとは言え、僅かな理性が辛うじて残っていた為に、殺す気は無いために直接の直撃だけは避けた。

 

「…貴様等の力は必要ない…。邪魔だ」

 

そう言うとエターナルは出口へと足を向ける。

 

「…ああ、高畑センセェー。次にその事を口に出してみろ………次はさ、コロスよ」

 

エターナルの仮面の複眼を通してぶつけられる殺気。エターナルはそのまま黒いマントを羽織ると変身前に投げ捨てた物を回収し、部屋を後にする。

 

 

 

 

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