「おい陽詩、決勝まで行ってやったぞ」
颯人は満足げな顔で俺に言ってくる。小野寺達には疲労骨折とか言ったけど、実際にそうかと言われると本人から聞いてないから分からない。
「俺が言ったのは決勝でぶっちぎって一位を取るってことだろ?そんなんじゃまだ甘い」
「全く、エースの言葉は厳しいねえ……。さて、ウィダー飲んだし行ってくるわ」
「なあ、颯人。お前足に違和感はないのか?」
「なんだよ急に?…………特にはないが」
「そうか。頑張ってこいよ」
「任せとけ!」
そう言って澪ちゃんと召集場所へ向かう。足を引きずりながら、決勝のレースへと。
「望月君も準備しないと!本気じゃないとはいえ、結構ギリギリだったんだよ!」
「まあ、そうだな………。そろそろやらないと間に合わねーな」
「そういや、颯人君は大丈夫だったの?」
「無理してるだろうな。本人はバレてないようにやり過ごせたと思っているみたいだが、立つときにかなり苦しい顔してたし足も引きずってた。」
「それでも走るんだね……」
「どの選手もだいたい走るよ。それに痛みを知ってるのはあいつしかいないから、そこんとこは本人が一番知ってるはずだ」
「澪ちゃんが聞いたらどうなるかな……」
「まあ今年が最後じゃない。それに周りにのこと気にしてたら自分がやられる。」
「……そうだね!二連覇かかってるからね!頑張らないと!」
本当は知っている。あいつの足はすでに限界を迎えていて、決勝を走るのも厳しいということを。
だけど颯人は口には出さなかったが、絶対に言うなと訴えてる気がした。
(雅も怪我してるんだ。ここで颯人が抜けたらうちのリレーは終わりだから、本当は言うべきだったんだうな……。だが、これはあいつの意思だ。それに反対することはできない、それだけだ。)
俺はそう心の中で呟き、アップにとりかかる
「ね、ねえ颯人?」
「ん?どうしたー?」
「今、怪我してるよね?足」
「いや、そんなことないー」
「嘘、さっきいつもの走りと見比べてみたけど明らかに違うもん。急に走り方を変えたと言うには変すぎるもん。ねえ、痛いなら痛いって素直に言って」
「………………」
颯人は黙りこくる。そのままお互い一言も言わずにそのまま最終章招集へ向かう。
「………………澪。痛くても、やらなきゃいけない時はあるんだ
「颯人、大丈夫?」
「ん?何が?」
「さっきからそうだけど、歩くときとかすごい顔が歪んでるっていうか……」
「おいおい、彼氏の顔を歪んでるとか酷いこと言うもんだな」
「そういうことじゃなくて……、今隠し事してるでしょ?例えば怪我とか?」
「……………」
颯人は黙った。きっと聞かないでほしいということなんだろう。でも、私としては、無理してまで出て欲しくない。この試合に出て、もし骨折なんかしたら本末転倒だ。
「………、頑張ってね」
心にもないことを言ってしまった。本当は負けてほしい、走らないでほしいということしか考えてないのに。
颯人は驚いた顔をした後、すぐに笑って
「おう、優勝してくるな」
そう言って颯人は試合へ向かった。なんであんなことを言ってしまったのだろう。
もし、春ちゃんが望月君の足が怪我していることを知っていながら試合に行かせるか?なんてことを考えたりする。
答えなんて分からないけど、これが正解であることをただ願うばかりだった。
On your mark………
Set……………
号砲が鳴り、400m決勝がスタートする。私はただ見守ることしかできない。
今、颯人がどんなことを思って走ってるか、どれだけ足の痛みが出ているかわからない。私に分かることなんて、何もない。
颯人はいつもより早めのペースで走っている。4レーンで1番前を走っているため、多分今は一位なんだろう。
300mを過ぎた頃、颯人に異変が出始める。急激にスピードが減少した。いつもなら、ここから変わらないか上がることしかない。
走り方も、痛んでいると思われる足を引きずっている
明らかにおかしい。
「颯人ー!頑張ってー!」
私はただ、応援することしかできない。それでも、少しでも颯人の力になるのだったら、私は声を枯らして応援する。
颯人は最後の力を振り絞るように立て直して、スピードを上げる。本当に辛そうな顔をしてる。今まで見た中で1番。
だんだん2位の選手がいスピードを上げ、颯人との競り合いになった。両選手の高校がとにかく大きな声で応援する。
2位の選手の方がトルソーが早く着いたため、颯人は2位に終わった。
颯人はそのままその場に倒れた。
体にあるすべての力を使い切ったのだろう。1日に3回400mを走って、しかも足を故障している状態なのだから、無理はない。
「颯人!大丈夫!?」
「……………疲れた。」
「うん!お疲れ様!歩ける?」
「………………」
颯人は黙ったまま歩く。荷物を置いていた場所に戻ると、そこには望月君と雅君がいた。
「………………なんだよ、笑いに来たのか?笑いたきゃ笑えよ。」
「何言ってんだ。一位と0・1秒差だぞ。こんなのほぼ誤差だ。おまけにお前は足を故障している。そんな中でよく走ったよ………。」
「……………………」
「……………………お疲れ様。雅と澪ちゃんはこいつ医務室に運んでやってくんないか?俺この後すぐ試合なんだ」
「う、うん!頑張ってね!」
「応援してるよ、陽詩!」
「任せろ」
望月君は急いでその場を立ち去ろうしたが、それを颯人が止める
「陽詩……………」
「ん?」
「……………頑張れ」
「……………任せな」
その後の100m決勝は望月君の圧巻の勝利だった。他を寄せ付けない走りで、メディアの方も取材に来ていた。
颯人は医務室に行った後、すぐに病院に搬送された。
大会の次の日の放課後、私は望月君と春ちゃんと雅君でお見舞いに行った。颯人は元気そうだった。診断は疲労骨折だそうだ。
私はあの後、春ちゃんに聞いた。
「春ちゃんが私の立場だったらどうしてた?」
「え、私?ん〜………何も言わないかな?」
「そうなの?」
「うん、確かにこれ以上走ってまた陸上ができなくなっちゃうのは嫌だねー。でも、私は望月君がどちらにしろ走るって知ってるし止める権利もないよ。走らないで後悔するより、走って後悔したいらしいから。私はその意見を尊重するよ」
そう言って春ちゃんは笑った。小野寺春は強い女の子だ。わたしもそんな女の子になりたい。そう思った
ごめんなさい。体調崩していまい、かなり遅れてしまいました。治ったと思ったらまたすぐに体調が悪くなりました。あまり食事を取っていない状態です
これから少しの間、遅れるかもしれませんがよろしくお願いします