Side 辰巳
チャラ男に蹴りを入れた後、俺は女の子の手を引いて河原まで走った。ここまでくれば大丈夫だと思っていたのだがなぜかチャラ男とスライムみたいな生き物はすぐに追いついてきた
なぜこの場所が分かった?いや、どうやってこんなに早くここに来られた?
などと疑問はあるがさきほどのことを踏まえて、もう逃げると言う選択肢は無くなったと思っていい。いくら逃げたところでまた追いつかれるのがオチだ
などと思考を巡らせていると
ビカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
女の子の方から蒼い見たこともない色の光が溢れだした
何事かと思い光の方を向くと女の子が一冊の本を持っていた。色は濃い目の蒼でこの本から光は発せられている。あまりにも美しい色の光なので見とれていると
「この本、読んでみてくれないかしら?」
女の子は本を俺に両手で差出し、読んでみてくれと言った
俺はとりあえず受け取った。すると
ビカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
「っ!!」
本の輝きはさらに増した。そのことに驚きつつも本を少し眺めた
辞書ぐらいの厚みがあり。表紙のタイトルと思われる場所には見たこともない文字が書かれており。その下には砂時計のようになった2つの三角形の中央と四隅の角には丸が付いた模様が描かれている
次に本をめくり、中を確認すると
中は見たこともない文字で埋め尽くされている。だが一部分だけ本と同じ色で光っていた。そこだけはなぜか読むことができた
「どう!?読める!?」
女の子は俺に顔を近づけて問いかける。あまりに近いので驚いて少し引いてしまったが俺は頷きながら答えた
「ああ、読めるよ」
その答えを聞いた瞬間、女の子は
「はぁぁ。やっと見つけたわ!!」
満面の笑みを浮かべて俺の首に手を回して抱き付いてきた
「うぇ!?」
いきなりのことに俺は変な声を上げてしまった。抱き着いているせいか女の子の胸が俺の胸板にあたって形を変えている
「ちっ、あの女魔物だったのか」
チャラ男は舌打ちしながら言った
魔物?
何を言ってるんだ?
「魔物なら用はねえ。とっとと倒すぞ、スレイム!!」
「ムー」
チャラ男は本を構えると再び本は光だす。そして呪文を唱えた
「『アシッド』!!」
スライムは黄色い液体を噴きだす。その液体はまっすぐ俺に向かってくる
「!?」
俺に抱き付いている女の子は抱き付いたまま俺を巻き込んで地面を転がった
「いけない、嬉しさのあまりあいつらがいること忘れてたわ」
俺に覆いかぶさる形で喋った
忘れてたんだ
「まずはあいつらを倒さないと」
俺の上から退くと服に付いた汚れを叩きながら立ち上がり。奴らの方を向いた
俺も立ち上がり、服に付いた汚れを落とす
「あなた、名前は?」
女の子は俺に向き直ると名前を聞いてきたので、答えてあげた
「えっ? 雨宮辰巳だけど」
「辰巳ね。私はレイシス、あなたのパートナーよ」
いきなりパートナーなどと言われ戸惑いを隠せず首をかしげる
「まあ、詳しい話はあいつらを倒してからね」
レイシスは再び奴らに向き直り、あいつらを倒すと言った
「いきなり倒すって言われても。それに俺は何をすれば良いんだ?」
「その本に書いてある呪文を唱えて」
どうすればいいか分からず聞いてみれば、レイシスは呪文を唱えろと言った
ここまで言われて俺は大体のことを察した。つまり、いま目の前にいる奴らと同じようにすればいいんだろう
「分かった」
俺の返答に、レイシスは満足げに頷いた
「向こうはパートナーを見つけたばかりだ、俺らが負ける訳ねえ。一撃で片づけてやるぜ」
「ムー」
チャラ男の本は再び輝きだす
「『アシッド』!!」
スレイムは黄色い液体を出したそれはレイシスに向かって行く
俺は本を開く。さきほどの読める部分に目をやり、そこに書かれた文字を読んだ
「第1の術、『ガルス』!!」
俺の唱えた呪文に反応し、本は光り出す
レイシスは右手を飛んでくる液体に向け、右手から蒼い光線を放った
光線は液体を飲み込み、奴らの方に飛んで行く
これは予想外だったのかチャラ男は慌て始めた。光線はチャラ男とスレイムに直撃し
ドッゴォォォォォォォン!!
爆発と共に土煙を上げた
しばらくして土煙が晴れていくと
そこにはチャラ男とスレイムが倒れている。いや、スレイムは潰れて水たまりのようになっているな。近くにはあいつらの本も落ちていて青白い色の炎を上げて燃えていた
「本が燃えてる。それに・・・!?」
本が燃えているのは対して驚いてはいないが、それと同時にスレイムの体が光って少しずつ消えていくのだ。さすがにこれは驚きを隠せなかった
「本が燃えたから、あの子は魔界へ送り返されるのよ」
魔界?
レイシスは確かに魔界と言った、それってこことは別の世界ってことなんだよな?
普通ならそんなファンタジーじみた話など信じられるはずもないのだが、ここまで普通ではありえないものを見てしまっているので素直に信じてしまえる
そんな考えが頭を埋め尽くしている内にラベンダー色の本は燃え尽き、スレイムは完全に消えた。その後すぐにチャラ男も目を覚まし『ヒィィィィィィ!!』と言った感じの悲鳴を上げて逃げていった
あっ、転んだ
転んでもすぐに立ち上がり、全速力で逃げていった
チャラ男の姿が見えなくなった後、河原には俺とレイシスの2人きりになった
レイシスは俺の方を向き
「いきなり戦いに巻き込んでごめんなさい」
俺に頭を下げて謝罪をした。いきなりのことに戸惑ったが
「べ、別に謝る必要はないよ。俺の意思でやったことだしな」
少し照れながらも返事を返した
それよりも本題に入らなければ
「それよりもまず説明してくれ。さっきあいつが魔界とか魔物とか言ってたけど、あれはどういう事なんだ?」
「そうね。まずは私のことから説明しなきゃね」
レイシスは俺の目をまっすぐ見つめ、口を開き始めた
「私は人間じゃないの」
一言目から普通じゃなかった
その後もレイシスは俺に話し続けた
魔界のこと
自分が魔物の子であること
この本のこと
1000年に1度行われる魔界の王を決める戦いのこと
ここまでの話を聞いてようやく俺は自分の状況を理解することができた
「つまり俺は君とペアを組んで他の魔王候補と戦わなきゃいけないってこと?」
「・・・・そうなるわね」
俺は戸惑いの色を瞳に宿したままレイシスに問いかけ、それにレイシスは苦笑を浮かべながら答えた
これは思った以上に大変なことになってきたかもしれない
俺の様子を察したのか、レイシスは
「さっきは嬉しくてパートナーなんて言っちゃったけど、やっぱり嫌よね。いきなり戦えなんて言われても・・・・・・」
目に見えて落ち込んでしまっている
「・・・・一緒に戦ってくれるのなら私はもちろん嬉しい。でも、戦いになれば辰巳の身も危険にさらされる。だから、嫌なら本を返して」
レイシスは落ち込んだまま手を差し出し、本を返すように言った
だが俺は
ポンッ
本を返さず、右手をレイシスの頭に乗せた
「え?」
レイシスは突然のことに少し抜けた声を出した
俺はレイシスの頭に手を乗せたまま柔らかく笑みを浮かべ
「いいよ」
「え?それって・・・・」
「ああ」
レイシスを慰めるように優しく、そしてはっきりと
「レイシス。君のパートナーになってあげるよ」
魔界の王を決める戦いに参加することをレイシスに伝えた