ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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Episode1-2 Tomorrow 明日を待つ
11.The weak 弱者の心


 「いや、助かるよ。実は、あたしは色々と容認の為に、各シップに回らないといけなくてさ。手伝ってくれるなら、これほど嬉しい事は無い。ん? 片腕? 全然問題ないよ。オーラルさんの紹介でしょ? ソレだけで、全面的に信頼できるからさ」

 

 アザナミと接触したシガは、よろしくね♪ と言われて市販されていない武器――カタナタイプを受け取った。普段は後ろ腰に装備し、柄の向きは右手で扱えるように左側に位置している。

 

 「なんか、妙に懐かしいな」

 

 ふと、カタナを装備してから、今までにない安心感を覚えた。まるで今まで使っていた武器を取り戻したような、そんな感じだ。

 まぁ、ブレイバークラスは、まだ実装されておらず気のせいであるのだろうが、少なくとも肌に合った武器であると言う事は確かだ。

 

 そして、普段使わない武器であるため、自室(マイルーム)徹底的に振った。

 

 アザナミより、ある程度のモーションパターンのデータを渡されていたが、汎用性のある武器でも無く、今までとは全く違う立ち回りを意識する必要がある。特殊な動作も、まだ確立されていない以上、最も振りやすい(スタイル)を見つけなければならない。

 

 そして、アザナミからカタナを渡されて、一週間が経過する。

 

 ばれない様に、マイルームでただひたすら素振りを行い、ソレを模索し続けた。託された以上、妥協をしたくないという精神からの泥臭い努力を延々と行っていたのだ。

 

 「フォンアーツは、アークスシップ内じゃ使えないじゃん」

 

 ようやく基本的な(スタイル)が見えてきた時、上着から落ちたフォトンアーツのディスクはアザナミから検証する為に渡された物であった。

 

 

 

 

 

 「武器の性能と、『フォトンアーツ』の試験データ、か」

 

 フィールドに出て、試すしかないと言う結論に辿り着いたシガは、取りあえず、オーラルに左腕がまだできないのかを確かめる為に、連絡を取ろうと一週間ぶりにマイルームから外に出ていた。

 

 「左腕(フォトンアーム)が無いと、アークスとして活動できないからなぁ」

 

 今の左腕は、なんのフォトン特性の無い通常の義手である。これではアークスの武器を使う事が出来ない。簡易的な形の形成はシュミレーションである程度は把握しているが、フォトンアーツを使うのは別の話だ。

 

 「そう言えば、クラスカウンターとかの扱いはどうなるんだろう? その辺りを聞いておけば良かったなぁ」

 

 咄嗟の質問では思いつかなかったので、アザナミさんから説明を受けた時は、特に聞かなかった。

 より一つのクラスを熟練すれば自ずと高等なフォトンの扱いを体得する。それが認められれば、己のステータスを底上げする事も出来るのだ。スキルと呼ばれるソレの体得は熟練者の証でもあり、ベテランのアークスは殆どがソレを得ている。

 

 「カウンターで解るかな? すみませーん」

 

 シガはメディカルセンターの向かいにあるカウンターへ足を運ぶ。すると、彼女が居た。

 

 

 

 

 

 フィリアは、マトイを病室から連れ出して、目の届くメディカルセンター前に連れてきていた。

 

 「マトイさん。今日は、ロビーで周りの空気に触れて見ましょう」

 

 患者用の服では無く、彼女が救出された時の白い服装――ミコトクラスタを着ている。解いていた白い髪も、両サイドで細いツインテールで結んでおり、健康的な姿だった。

 

 「周りの空気?」

 

 頭を傾けて、疑問詞を浮かべながらマトイは問う。

 フィリアとして、いつまでも患者扱いさせない事と、救出された服装なら知り合いが通り過ぎた時に気がついてもらえると言った事からだった。

 

 「色々な人がいる場を感じれば、何か思い出すかも知れないですし、ずっと変化の無い病室よりは、変化の多い場所が良いと思います。それに、マトイさんの知り合いも通るかもしれません」

 

 オーラルに相談したところ、病室では記憶の回復は難しいと言う事で、色々なモノを見たり経験させることが、早期回復につながりやすいと助言を受けたのだ。

 

 「丸一日と言うのは大変だと思います。少し、ロビーを歩き回っても構いません」

 「はい」

 「何かあれば、すぐに連絡してください。第一歩が大切ですよ!」

 

 フィリアは、頑張って! と手に力を入れると、メディカルカウンターの奥に消えた。その場に残されたマトイは、とりあえず近場の椅子に座る。

 

 「…………」

 

 目に映る光景――アークスロビーはまるで始めて見る様に新鮮だった。任務の話をしながら歩くアークスや、教導官へ相談しているアークス、とにかく自分と違ってじっとしている人がほとんどいなかった。

 めまぐるましく、入れ替わっていく人々の景色と光景を見ていて、なんだか幸せな気持ちが生まれていく。

 

 「……なんでだろう?」

 

 解らない気持ち。けど、とても心地よい感情だとは解る。“解る”のだけど……なぜ、そう感じるのかが“解らない”のだ。

 

 「お? なんだ、マトイちゃん。今日が退院(ロビーデビュー)?」

 

 自分の気持ちに浸っていたので、目の前に立つシガに気がつかなかった。

 

 

 

 

 

 「そんで、フィリアさんに取り残された? それとも、ここで待つように言われた?」

 

 先日、眼を覚ましたマトイが、今日にロビーに居る事はシガとしては驚きだった。

 目立った外傷は無かったとはいえ、意識が無かった人間を一週間後には外に連れ出すとは……中々アグレッシブな決断だ。

 

 「あ……シガ。えっと……あのう……」

 

 と、マトイは何か言いたげに口を動かすが、どうやら上手く纏まっていない様だ。

 

 「はいはい。ゆっくり落ち着いて、言いたい事を整理してから言ってみ? お兄さんは、どこにも逃げませんよ~」

 

 シガはマトイの隣に座る。肘かけがあるので、少しだけ距離を置いて座る形になっていた。ここは記憶喪失の先輩として、ちゃんとフォローしてあげなくては。

 

 「う、ええっと……その……がんばって、ね」

 

 意外にも、出てきた言葉は、幾つかのステップを飛ばしている。シガは自然と笑みが浮かぶ。家族がいて、妹か娘がいれば、こんな気持ちになるのかもしれない。

 

 「……あ、違うの。先に、ありがとう、だった」

 

 ようやく、言いたい事がまとまったのか、一呼吸おいてから彼女は言葉を繋ぐ。

 

 「ありがとう、シガ。わたしを助けてくれて……」

 

 彼女がどんな人間なのかは解らない。だが、真心からお礼を言える、素直な心を持っている事は今の言葉で確信できた。

 

 「最初に……それを言わないといけなかったのに……ごめんなさい、遅くなって」

 「別にいいよ。寧ろ、救われたのはこっちの方かもしれない」

 「?」

 

 オレが“アークス”に戻りたかったのは、記憶を持っていた自分が、“救えなかった可能性”を、何とかしたいと思ったからだ。

 アフィンには、誰かを助ける為と、その場で告げたが……今思えば、自分にしか出来ない事があったから、彼女の前に立っただけの事であると自覚していた。

 

 「君のおかげで、オレの目指す(アークス)が決まったんだ」

 

 だから、あの時立ち上がれた。脅威に立ち向かい、背後には護らないといけない者達が居たから――

 

 「て、言っても、まだ一回しか惑星調査には行ってないけどね」

 

 『フォトンアーム』の調整が終わらなくては、まともに武器も扱えない。オーラルから連絡が無かったので、ここ一週間は、ずっと部屋で素振りをするしかなかったのだ。アークスとして欠陥品も良いところである。

 

 「ありがとう、シガ」

 「ん? それは、どの時のお礼?」

 「今、わたしと話してくれてる。そのお礼」

 

 まいったな……泣きたくなる……。こうも、安心できるのは眼を覚ましてから初めてだった。

 

 一週間前の……初の実戦。

 怖くなかったわけでは無い。戦いの中、身体はいつもの様に動いたのだから、記憶を失う前は、それなりの腕前であったらしい。

 しかし、それだけでは済まないのが“実戦”というものである。

 記憶が無い以上、その辺りの精神的経験が無い。昨日の夜から今、この瞬間も『フォトンアーム』を持っていないだけでずっと不安だったのだ。

 

 だから、少しでも、ほんの少しでも何もできない恐怖を払拭したくて、カタナを振り続けていた。努力でどうにかなる問題でもないと言うのに……

 

 「……シガ……大丈夫?」

 「何が?」

 

 弱気な所を悟られてしまったと思い、少しだけ強い口調で返してしまった。

 

 「余計な心配なら、ごめん……少しだけ、無理をしてるんじゃないかなって思って……」

 「……」

 

 本当に、一体何者なのだろう? そんなつもりは無かったのだが、彼女に何故か悟られてしまっている。

 

 「わたし、まだ記憶も無くて……待つだけしかできないから……心配だけはさせてほしい」

 「……心配……か」

 

 心に響いていた。彼女の言葉じゃなく、彼女の意志そのものが魂を揺さぶる。自分は、帰ってきて、誰かが待っているような状況じゃない。

 

 記憶を無くすと言う事は、今まで大事にしてきた者を、繋がりを、全て失くしてしまうと言う事だ。だから、不安になるし、“戦える力”なければ怯えるしかない。

 

 でも、彼女は違う。オレとは全然違う。

 全て失っていても、他人を気遣う“強さ”を持っている。強くならないといけないのは、こっちだと言うのに、全くもって情けない。

 

 「マトイちゃん。今日、君に会えて本当に良かったよ」

 「わたしも、シガに会えて良かった」

 

 

 

 

 

 そんな二人の様子を、物陰から見ているキャストが居た。まるで息子と娘を見る様な雰囲気で、彼らに気づかれない様に距離を置いている。

 

 「盗み聞きですか? オーラルさん」

 

 フィリアは、話しかけづらい雰囲気の二人の会話が終わるのを待っていた。その時、視界の端に同じように二人を傍観しているオーラルを見つけたのである。

 

 「音も立てずに寄って来るな」

 「そんなつもりは無かったのですけどね」

 

 フィリアとしてはごく普通に近づいたつもりだった。オーラルの方が彼女の接近を取り逃したのだろう。

 

 「微笑ましいですね」

 「…………そうだな」

 

 何か考えた様なオーラルだったが、表情が無い故に、口調からでは心情は読み取れなかった。

 

 「シガに連絡を入れる。マトイは定期検査の時間だろう?」

 「あら、あんなに仲の良い二人を引き離すんですか?」

 

 フィリアは悪戯に笑みを浮かべながら、去ろうとしてるオーラルの背に問う。

 

 「……アイツらの都合だ。こっち(シガ)(オレ)の都合。あっち(マトイ)はお前の都合、だ」

 

 素気なくソレだけを告げると、相変わらずの不器用さを見せつけて去って行った。

 

 

 

 

 

 「フィリアさん」

 「どうしました? シガさん」

 「マトイちゃんの服って、フィリアさんが用意したんですか?」

 「アレは救助時にマトイさんが着ていた物ですよ? ていうか、シガさんは見てたんじゃなかったんですか?」

 「現場では必死だったので。ですが、今見ると……色々とヤバイですね」

 「参考までに聞きましょうか。何がです?」

 「胸とか、太ももとか、腰つきとか、ツインテールとか、胸とか」

 「胸を二回言いましたね?」

 「そりぁ、患者服じゃ解らなかったですから。胸は。着やせしてたのか」

 「…………シガさん、一応言っておきます」

 「なんでしょう?」

 「もしも、マトイさんに変なことをしたら……切ります」

 「え? 切る?」

 「はい」

 「何を?」

 「言わないとわかりませんか?」

 「…………」

 「…………」

 「…………その笑顔は悪夢に出そう」

 「では、忠告を忘れなきよう」

 「は、はい!」




 戦う以上、完璧な人間は存在しないと思っています。その点ではシガは、肉体的にも精神的にも大きなハンデを背負っていると言ってもいいでしょう。

次話タイトル『First order 最初の依頼』
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