ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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12.First order 最初の依頼

 シガは、オーラルからの連絡を受けて、マトイと別れると一週間ぶりに新しい『フォトンアーム』を受け取った。

 性能を多少可変したため、データを分ける意味でも新たに名前がつけられる事となる。

 

 最初にシガが使っていた『フォトンアーム』は初期型。

 今回、より性能を効率化(マイルド)にした次型は『フォトンアーム=アイン』と呼称される事になった。

 

 一日で使える総時間は変わらないが、出力を小出しにする事が可能になり、反動も多少は軽減したとの事。だが、過信は禁物。フォトンアームは強力だが、使えなくなれば必然とアークスとしてのフォトン特性が無いモノとなるので、使うのはなるべく控える様言い渡された。

 

 「同じ鉄は二度も踏まないっスよ」

 

 シガはオーラルにそう告げて、次の任務では、新しい武器――カタナを使う予定だった。アザナミさんに情報(データ)収集も頼まれているし、フォトンアーツなんかも感覚を掴んでおきたい。

 同時に、ある学者の依頼を受けてくれるアークスを捜しているとの事だったので、そちらも斡旋してもらった。

 そして、その道中……ショップエリアを横断しようと通った時に再び彼女に出会う。

 

 「……シオンさーん」

 

 また、時間が止まっていた。

 

 

 

 

 

 「シガ……貴方にまずは、感謝を。偶発事象の優位改変が確認され、新たな状況へと進行した」

 「……やれやれ。なーんか、また、一方通行な会話な気がしますけど?」

 「状況よりも、事象の説明を求めるといった表情をしている様だが、その認識で正しいか?」

 

 ようやく、まともにこちらの質問にも答えてくれるのか、とシガはため息を吐く。正直、意味の分からないことだらけなのだ。色々と解る様に説明をしてほしいところだが、それよりも、

 

 「記憶を失う前の(オレ)を……君は知ってるんだろ?」

 

 それがまず、第一だった。何よりも、今一番知りたい事柄である。二番目はマトイちゃんの事だが。

 

 「……ここに、正確な認知は必要ないと認識する。貴方は、多くを救う機会を持つと……把握しておけば事足りる」

 「ちょっとぉ……」

 「説明が十全ではない……正しくない。貴方を納得させるだけの言葉を、今のわたしは学習し得ていない……だから、わたしは謝罪する」

 

 何が言いたいのか、なんとなくだが掴むことが出来た。

 彼女はオレに何かをして欲しいのだ。彼女が成し遂げられない、もしくは成し遂げられなかった事を、オレに託している。ただ、ソレが何のかを……見ず知らずにもかかわらず説明できないから、済まない、と言っているのだろう。

 

 「…………はぁ。解った。解りましたよ。シオンさんの言う通りに、動きますよ。その代わり、意志の疎通が出来てるなら一つだけ約束してくれない?」

 

 彼女の代わりに、もめ事を処理しようと言うのだ。それ相当の対価が欲しいところである。

 

 「全て終わったら、オレの事を全部教えてほしい。どこの誰で、何をして左腕を失ったのかを」

 

 明確に自分が何者かを知っておきたかった。オーラルも、アークスも、果てにはオラクルさえも、解らないと告げた自分の身元を、目の前の彼女は唯一知っているのだ。

 次にいつ会えるか解らない以上、今回で彼女の頼みごとを“依頼”と言う形で受け、“報酬”を要求しても問題ないだろう。オレは、アークスなのだから。

 

 「貴方のその意志に、改めて感謝を」

 

 その様子から、シオンがこちらの要求を受け入れてくれたと、シガも笑みを返す。

 

 「万事において、全てを選ぶことは不可能。事象は蝶の羽が如く揺らぎ、流転する」

 

 相変わらずな回りくどい言葉だが、それだけ何が起こるのかは予想も出来ないと言う事なのだろう。

 

 「貴方は迷わないで欲しい。そのためにわたしと……わたしたちが居る」

 「“わたしたち”?」

 

 時折、複数人を表す言葉をシオンは使う。協力者……又は、他に自分の様に彼女から頼まれごとを受けている者が居るのだろうか? 少しだけ気になった。

 

 「マターボードが新たな変遷を見せ、事象の可能性へと繋がり始めた。未だ、遠き道ながらも……全ては確然と近づいている」

 「……相当大事になりそうだね」

 「貴方の行動が未来を決めると言う事。わたしが表現するのはただそれだけ。だから……わたしは願う。貴方の掴む未来が、“一縷”を掴んだものであることを――」

 

 そして彼女との二度目の邂逅は終わる。ただ、シガの持つマターボードだけが、“違う”ものになっていた事以外、変わったモノは何も無かった。

 

 

 

 

 

 「え……あ、アークスの方ですか?」

 

 ショップエリアの三階。そこが、オーラルの指定した、依頼主の居る場所だった。シガはシオンとの邂逅後、彼より斡旋された依頼を済ませるつもりでその場へ赴く。

 既に、場には一人の眼鏡をかけた男の学者が待っていた。知的な雰囲気に、いかにもと言った風体である。

 

 「もしかして、オーラルさんの話していた方でしょうか?」

 「たぶんそう。オレはシガ。よろしくな」

 

 握手を求めて手を差し出すと、相手はその手を両手で握って、

 

 「あ、ありがとうございます! 本当に助かります!」

 

 と、笑顔で意思表示をした。あんまり、こういうのは好きじゃないのだが、頼られるのも悪くない。

 

 「私は、ロジオと言います。今回の依頼内容について、何か話を?」

 「あー、その事は全然。こっちもオーラルさんには会えばわかるって言われてて」

 

 丁度良いから、と任命されただけであって、詳しい事は依頼人に聞け、と言われている。まぁ、オーラルさんの事だ。出来たばかりの新型(フォトンアーム)を壊すような、過激な依頼では無いだろう。

 

 「私からの依頼内容は単純です。惑星ナベリウスの地質調査、ただそれだけなんです」

 「ナベリウスかぁ。でも、わざわざ修了惑星に選ばれるだけあって、情報(データ)は揃ってるんじゃない?」

 

 詳しい情報があるからこそ、安全性が確保され、アークスにもならない研修生の最終課題の場所になっているのだと思っていた。まぁ、それは一週間前のダーカー出現で無意味なモノとなったのだが。

 

 「私も、学者として惑星の成り立ちなど調べているのですが……ナベリウスだけは情報が極端に少ないんです」

 「意外っすね」

 「はい。アークスの誰もが最初に行く惑星ですし、もっと情報があると思っていたのですが、不思議ですよね。そこで、アークスさんに直接調査の依頼を、と思ったのですが、既に調べ尽くされていると認識されているようで、中々受けてくれる人が……」

 

 なるほど。オーラルさんがこっちに投げたわけだ。

 既に解り切っている惑星(ほし)の事など、今更調べる事も無いのだろう。だから、修了で一度行ったナベリウスにもう一度行って、身体を慣らして来いと言う意味なのかもしれない。

 

 「正直、カンのようなものなのですが……どうしても調べて見たくて」

 

 見た所、ロジオは一般人だ。だが、学者として自分の知る常識が覆される現象を目の当たりにして、その理由をどうしても知りたいのだろう。

 

 「いいですよ。正直、ロジオさんの調べたい事は学者じゃないオレには良くわからないですけど、新しいモノを知りたいって気持ちは良くわかります」

 

 ベクトルは違えど、彼も一流の学者だ。今のところは、手を伸ばして届く目的の無い自分としては、彼のような人の手助けをしたいとも思っている。

 

 「それでは――」

 「受けますよ。それで、何をすればいいんですか?」

 

 再びロジオの、ありがとうございます、の連呼に少しだけ困りつつ、依頼内容を詳しく説明された。




次はマトイとオーラルの絡みと、二度目のナベリウス降下です。

次話タイトル『Chosen decision 彼女はどう生きるべきか』
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