原生生物に追われているアークスを発見した。
追いかけているのはガロンゴと呼ばれる芋虫のような外見をしている
ガロンゴの表面を覆う頑丈な甲皮は、軟な武器では殆どダメージが与えられない程の堅牢さを持つ事から、初心者では相手にするのは骨が折れるエネミーだ。
通常時は、甲皮の裏側にある四本の脚で緩慢に移動するのだが、いざ、交戦状況になると身体を丸めて、タイヤの様に転がって突進してくるのである。
甲皮の強度+ガロンゴの重量が加わった回転突進は、場慣れしたアークスでもまともに食らいたくはない攻撃力。その回転突進に、二人のニューマンの姉妹が追われている。
「ガロンゴかぁ……カタナは相性が悪いな」
そう、ソードならともかく、カタナは重量級を相手にするには軽すぎる。加えて、甲皮に刃が通らない可能性も高い。
「ま、それでも助けるんですけどね。女の子は財産だよ」
不利であっても関係ない。目の前に困った女の子が居るのに、ソレを見捨てるのは、もはや人間じゃない。紳士の風上にも置けない行為。それに、
「丁度いいから、試作で貰ってるコイツを試してみるか」
シガはアザナミから受け取っているフォトンアーツを取り出した。
双子のニューマンの姉妹――パティとティア。
二人は最近、手に入れた情報――『ナベリウスに存在する不気味な人影』を追って自由探索として惑星ナベリウスに降り立っていた。
彼女たちが『不気味な人影』を追う理由は、さほど大したことではない。たた、噂の真意を確かめるための好奇心である。
しかし、現在のナベリウスはダーカーの件で多くのアークスが来訪しており、その関係で原生生物たちは特に警戒心を強くして集団で行動していた。
元々、この惑星に存在する原生生物にとって、ダーカーもアークスも大差ない敵なのである。
特に『不気味な人影』とも遭遇できるわけなく、フラフラ歩いている所に、草むらの中で昼寝をしているガロンゴの群を姉のパティが見つけたのだ。
慎重で冷静な妹のティアは、迂回して行こうと言ったが、好奇心の強いパティはその光景を写真に収めようと接近。
無論、お約束の様にガロンゴを起こしてしまい、現在4匹に追われている。
「よーし、調子出て来たし! お姉ちゃん頑張っちゃうぞー!」
「パティちゃん。それは追われて逃げながら言う台詞じゃないからね?」
そんな会話をしながら最初に逃げてきた場所から相当離れてしまっている。倒すにも、まずはあの突進を止めなければ話にならない。
「難儀な相手が来ちゃったよー!」
「だから、むやみやたらに寝てる所を突くのは止めようね」
とにかく、パティは
タリスとは、大気中のフォトンを利用して様々な現象を起こす、『テクニック』と呼ばれる技を使用する際に要する武器である。
カートリッジから疑似的に固形化したフォトンの結晶を投げ、その結晶を中心にテクニックが発動する。いわば、テクニックの発動する起点をずらして、行使する事を視野に入れた設計がされており、中距離から前線を援護する為の武器であった。
「前方に投げて、通り過ぎたらバータを使うよ。敵の動きが止まったら、お願い」
「おーけー、おーけー! お姉ちゃんに任せなさい!」
打開する方法はいくらでもあるのだ。アークスになってから積んだ経験は伊達では無く、この程度は日常茶飯事なのである。
走り抜け、タリスを追い越した瞬間、一瞬だけテクニックをチャージする。そして、ティアのまわりに、フォトンで変換した氷が漏れ出した所で浮いているタリスに、そのテクニックを流し込む。
「バータ!」
地を走る様に、氷の衝撃波が向かって来るガロンゴへ向かう。その刹那――
「大丈夫か!? お嬢さん方! オレが来たからにはもう安心――」
ガロンゴとバータの間に、割って入って来たアークスの足を凍らせて、その場に釘付けにしてしまった。
「え?」
「おお!」
「ふぉ!?」
急に現れたアークスに、ティアは驚き、パティは面白そうに声を上げ、足を凍らされたアークスは、ファ!? と言った表情で、
「ふぐぅ!?」
ガロンゴの回転突撃が直撃して吹き飛んだ。
「あはは。ティアも中々やるねぇ」
結局、バータで態勢を崩したガロンゴ4匹をパティは慣れた手つきであっさり倒してしまった。彼女たちは何度もナベリウスには訪れているので、この程度のエネミーとの戦闘は幾度と経験している。
「だから、間違えたって言ってるでしょ!」
「あー、気にしなくていいよ。そもそも、割り込んだオレが悪いし」
シガは助けに入ったどころか、二人には、まったくそんなモノは要らなかった事に、助けに入ったと言う事実を悟られない様にティアから軽い
「いい経験でした。足を凍らされるなんて、なかなか経験できないし」
「ごめんなさい。そんなつもりじゃ」
「ティアのバータは凍結率高いからねぇ。貴方も気をつけなきゃ!」
と、元気な娘っ子と、ミスをして落ち込む娘っ子には、両属性で需要がありそうだ。
「オレはシガ。第二シップ所属のアークスだ。よろしく」
一悶着あったので、軽く自己紹介をしながら自然な流れで二人の様子を探る。
「ほほう。自ら名乗るとは、ならばこちらも名乗らねばなるまいな!」
「パティちゃん。別に自己紹介にそんな前振りはいらないからね」
元気だなー。と思いつつ、せっかく用意してくれている二人の自己紹介を待つ。
「あたしはパティ! こっちは妹のティア! アークスいちの情報屋さん! チーム『パティエンティア』とは、あたしたちのこと!」
えっへんと、胸を張るパティ。ほぅ……中々のものをお持ちで。とシガは別の所に注目していた。
「不出来な姉ですみません。勝手にそう名乗っているだけなので」
なぜか、謝られてしまった。
「ただ、情報を集めているのは本当」
「情報?」
まがりにも、情報屋を名乗る手前、それなりなネットワークを持ち合わせているのだろう。アークスにも色々なタイプがあるなぁ。
「そうね、例えば最近だと……ナベリウスにいた変なダーカー、とか」
「はいはいはーい!!」
横から元気にパティが手を上げて自己主張してくる。
「あの噂になってる、もの探しダーカー! 普通のやつより、かなーり強いのかも! 危ないねー! おっかないねー!」
なんとなく、心当たりがある。修了の時に接触した、仮面を着けた奴の事ではないだろうか? 確かに、ただ者ではなかった。
「噂を聞いて、ナベリウスに来たんだけれど、生憎と言うか、幸いと言うか、私達は発見できずじまい。姿を見せる事も稀みたいだし……」
正直、奴の実力は相当あると初見でも推測できる。
直接刃を交えた自分が感じたのだから、間違いではないだろう。出力100%のフォトンアームを“力”だけで押し返し、不発に終わったとはいえ、
「一体何がしたいんだろ! もし見かけたら、教えてねー!」
一度会っているのだが、わざわざ危険な奴の事を教える必要もあるまい。ソレに、狙いがマトイちゃんだったとすると、もうナベリウスには居ない可能性もある。
新しい
「見つけたら、『パティエンティア』に真っ先に連絡するさ」
「お! いいねぇ! わかってるねぇ!」
「別に、馬鹿姉に付き合わなくても結構ですよ」
と、そんなバランスの取れている双子姉妹のアークス、パティとティアの二人は、もう少し探索したらと帰ると言ったので自分の目的の相違に別れる事になった。
まぁ、実力的には彼女たちの方が今の自分よりも腕は立つ。協力を頼もうと思ったが、流石に女の子に助けてもらうのはなんか違う気がする。それに、
「やっぱり、このまま……おんぶにだっこじゃ、ダメだな」
データさえ集まれば、勝手に性能が向上するフォトンアームと違い、根本的な強さを求めるには自分自身を鍛練しなくては。
「! ……やれやれ。それと、一つ失敗したな」
ふと、あることを思い出してパティとティアが去って行った方向を見る。
「連絡先を聞き忘れた」
せっかく美少女二人と知り合いになれたのに、アークスカードを交換しなかったことを最も深刻に悔やんだ。
天真爛漫な性格が姉のパティで、冷静沈着な様子がティアです。
二人は、原作のマターボードでも度々絡んでくるので、出会いは違いましたが、少なくとも関わりを持たせました。
次は若干、オーラルとレギアスの絡み。そして、ナベリウスであの先輩と遭遇します。
次話タイトル『New skill 試作の力』