ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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22.Conclusion ナベリウスの地質

 『本日の午後より、仮想トレーニングルームで訓練を行う』

 

 「よし、来たぁ!」

 

 シガは、そんなメールをオーラルから受け取って、更にソレをテオドールへと送信する。

 彼が来るかは不明だが、少しでも今の自分を変えたいと願うならきっと姿を現すはずだ。

 

 「つっても、来るのはヒューイくらいって聞いたけど」

 

 テオドールとヒューイが顔を合わせれば対極な感じになりそうだが、まぁ何とかなるだろう。来るかどうかも解らないが、とりあえず準備だけはしておこうと、ゲートに向かった所で、

 

 「あ、こんにちは。シガさん」

 

 地質学者である、ロジオに声をかけられた。

 

 

 

 

 

 「三日前は、依頼を受けていただいてありがとうございました」

 「あ、あれ? そう言えば、収集したデータって渡しましたっけ?」

 

 いっけね、すっかり忘れてたよ、とデバイスデータを組み込んだ端末を取出そうとしたところで、ロジオが静止する。

 

 「いえ、お渡しした収集データは、情報をリアルタイムで私の情報端末に入るようになっているので、問題ありません。既に、データは受け取っているようなものです」

 

 データを手渡しする必要は無いらしい。オレの考えている以上にハイテクな情報統制が世の中には浸透しているようだ。

 

 「おかげさまで、欲しかった実地データがたくさん手に入ったのですが……うーむ……」

 

 彼の疑問は、シガから得た実地データだけでは納得いく結論には至らなかったらしい。

 

 「なんと言えばいいのでしょうか……環境値と地質がかみ合っていないというか。ところどころ、おかしな感じがしているんです」

 「かんきょうちとちしつがかみあってない?」

 

 正直、学者だけ解る専門用語は止めてほしい。

 

 「……歯切れが悪くて済みません。データを集めてもらった手前、シガさんにも結果をお知らせする義務があると思ったので。まだ結論は出ていませんが、これからしっかり調査してみます」

 「できるなら、次は素人にも解るように教えてくれると、凄くありがたいですね……」

 

 彼の親切心は尊重したいのだが、シガにとってはさっぱりわからない事を一方的に告げられるのは勘弁してほしいのである。

 

 

 

 

 

 戦いでは無く、星自体にも関心を持つべきだと、改めて考えていた。

 

 「地質かぁ……さっぱりだな」

 

 ロジオの言っていた、重要性がいまいち理解できない。もしかすれば何かの危機の前兆か何なのか? それとも単純に珍しいだけなのだろうか? 一応専門家がそう言っているので今度からは、その辺りの事を気にしてフィールドを散策してみよう。

 

 「ん?」

 

 回復薬を消費していたことを思い出て、まとめ買いに一階のショップエリアに降りると、何か物珍しそうにショップエリアを歩いているニューマンの少女を発見する。

 

 全体的にスタイルの良い美少女だ。服からしてアークスでは無く一般人のようだが、身内でも捜しているのだろうか? すると、目が合った。

 

 「あ、ちょっと、ちょっと! 貴方、アークスでしょ!」

 

 自分に注目していたと判断した少女は、気さくな雰囲気でシガに話しかけてくる。どうやら話しやすいアークスだと思われたようだ。

 

 「うわー、いいなー!」

 「お、おう」

 

 あまり褒められ慣れてないシガは、羨ましそうな視線を向けてくるニューマンの少女のまなざしに、驚いた声しか出なかった。雰囲気から清楚な少女かと思ったが、正反対であったらしい。

 

 「あ、ごめんごめん。わたし、ウルクっていうんだ」

 

 不意に話しかけて来たニューマンの少女――ウルクは軽く自己紹介をしてくる。

 

 「どうも。シガと言います」

 

 この辺りはアークスが主に活動する区画となっているが、一般市民の姿はそこそこ見受けられる。とは言っても一般人の目的は、個人的な依頼や、この辺りで簡単に買い付ける回復薬や家具などが目当てだ。

 アークスも正規の依頼よりも、一般人の個人依頼の方が見返りは多い事から、よほどの事が無ければ進んで受けている。彼女もその手の類だろうか?

 

 「何か用ですか?」

 

 初対面の女性と向き合う時の最低限の心得として、シガはキリッと表情を作る。

 

 「あー、依頼とかじゃないんだ。昔からアークスに憧れてたからさ、つい。ごめんごめん」

 

 と、ウルクは後頭部に手を当てて明るく笑う。何だ、逆ナンじゃないのか。内心落胆しつつも、彼女の発言の一つが気になった。

 

 「ん? 憧れてたって?」

 

 シガの言葉に彼女は少しだけ気落ちした表情になった。あ、地雷ふんじゃったかなぁ……と、その表情を見て軽率な発言をしたと反省する。

 

 「だめだったんだよね、わたし。フォトンを使う才能が無いんだって」

 

 アークスとしての最低条件であるフォトン適性。それに彼女はパス出来なかったらしい。こればっかりは、産まれ持った素質であるようで、適性の無い者は絶対にアークスには成れないのだ。

 

 「アークスってシビアなとこなんだし、無理は言えないもんね。でも、まぁ! わたしのことは別にどうでもいいのよ。それよりも気になるのは、わたしの友達のこと!」

 

 と、ウルクは陰険な雰囲気を取り払うように、明るい雰囲気を取り戻す。

 

 「あいつ、引っ込み思案で臆病なのに、何をトチ狂ったか、急にアークスになるとか言い始めてさ。そんでもって、実際に才能があって、一人でアークスになっちゃったからもう大変!」

 

 うーむ。美少女と話が出来るのはいいが、身内の事となると……どうも会話の意図が掴めない。彼女の言う“あいつ”とは、親しい間柄なんだろうけど。アークスはお悩み相談じゃないですよ!

 

 「一人でやっていけると思う? 貴方もアークスでしょ? 任務とか、結構キツイ?」

 「人によるんじゃないかな? アークスでも好戦的な奴と消極的な奴がいるし。中には、明らかにヤバイ人も――」

 

 射撃適性試験の時に教導官のリサ撃ち殺されそうになった事と、ゲッテムハルトの事を、嫌な思い出としてシガの脳裏によみがえる。

 

 「あ、あはは……嫌なこと思い出しちゃった?」

 

 夢にも何度か出てきた事もある体験(特に射撃適性試験)を改めて思い出し、近くの壁に顔を伏せて項垂れるシガにウルクは、フォローするように苦笑いを浮かべた。

 

 「もし、アークスとしてあいつと戦う事があったらよろしくね」

 「あの、そもそも、あいつって誰?」

 

 ウルクは知っている感じで話しているが、シガとしては誰の事を言っているのかさっぱりだった。

 

 「ああ、ごめんごめん。テオドールって名前のアークスだから。見かけたら気にかけてあげてね」




 ウルクは必要以上に絡んでくるので、これからも度々接触があります。ストーリーの本懐に関わってくるNPCキャラとは一通り交流をするつもりです。
 EP1の一番の課題は、マトイが空気になりやすい事なんですけどね!

次話タイトル『Distance 間合い』
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