ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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23.Distance 間合い

 オーラルから連絡を貰い、シガは訓練用仮想ルームにいた。入り口の前でテオドールがオロオロしていたので、捉まえて共にオーラルを待つ。

 

 「お前、頑張れよぉ~。本当に、頑張れよぉ~」

 「え? え!? な、なんですか!? 急に……」

 

 先ほど、ウルクに言われた事を思い返し、思わず激励する。急にそんな事を言われて、本人は混乱しているが。

 

 「困ったことがあれば言え。出来る限り協力するから」

 「え? は、はい。わかりました」

 

 いきなり肩を叩いてきたシガに、テオドールは終始戸惑っていた。

 そこへ、転移ポートが起動し、そこからオーラルが現れる。彼は二人の女性アークスを同行させていた。今回の仮想訓練に協力してくれる者達のようだ。

 

 「ヒューイは居ないか」

 「おやおや、あらあら、どうもどうもこんにちわ」

 「久しぶりね。シガ」

 

 同行している、キャストの女性とニューマンの女性がそれぞれ挨拶をしてくる。

 

 「あ、お久しぶりです。マールー先生。それと、リサさん……」

 

 天使と悪魔が同時に来た……。シガは、ニューマンの女性――マールーとキャストの女性――リサにそれぞれ愛想を変える。

 

 「シガさん。リサは貴方に会えて、とーっても嬉しいですよぉ。的が二つ……ふふふふ」

 「リサ、まだ撃つな」

 

 既にライフルを取り出しているリサは、オーラルに制止されて銃口を下に向けた。直さないんだ……と、シガは嫌な予感を感じ、そんな彼女を見てテオドールは相変わらず小動物の様に震えている。

 

 「今日はヒューイが居ない分、小分けになるな」

 「ちなみに、何でヒューイは居ないんですか?」

 

 手を上げたシガは、基準にのっとって質問する。最近は彼だけだったらしいが、人が増えた今回に限って出てこなかったことが疑問だった。アイツの性格なら、何があっても参加しそうなものだが。

 

 「アイツはレギアスとマザーシップの警護だ」

 「あ、なるほど」

 

 いつもなら抜け出してくるのだろうが、レギアスが目を着けている以上、抜け出すのは容易ではないのだろう。

 

 「知らん顔が居るな。名前は?」

 「テ、テオドールと言います! シガさんに訓練に誘われて……」

 「そうか」

 

 オーラルはテオドールを見て、僅かな動作や、気弱な口調と表情からどのような人物かを読み取る。

 

 「テオドール。お前は、マールーと訓練をしろ。マールー、予定と違うがいいか?」

 「私は構いませんけど……リサは――」

 「リサは構いませんよお。シガさんが相手でも。ふふふ、ふふふ。ふふふふふ」

 

 シガは意味深に笑うリサに嫌な予感しかしない。彼女はなんとなく、最初からオレをロックオンしている気がする。

 

 「訓練って……戦闘訓練じゃないんですか?」

 

 テオドールはマールーと組まされて、何をするのか大体を察した様だった。

 

 「研修生としては卒業出来た様だが、やはり修了と実戦は違う。お前は、その変化について行けてない様だな」

 

 オーラルはその場でテオドールの任務履歴を確認していた。どれも、受けるのはいいが、退却や失敗している。未だにナベリウス以外の惑星への進入許可の任務さえも許可がもらえていない様子だった。

 

 「マールー、(オレ)のIDを使っても良い。エネミーと仮想での戦闘訓練を行え」

 

 普通は、自分の幅に合った任務を行い、少しずつ慣らしていくものだ。しかし、テオドールは消極的過ぎる性格から、失敗して自信を喪失していると判断する。

 

 「とりあえず、お前の場合は、何度も敵と戦って慣れるしかない。荒療治になるが、仮想でもエネミーに対する立ち回りは実戦でも応用できる」

 「は、はい!」

 

 心に響く様なオーラルの効率的な訓練内容に、テオドールは納得できたようだ。

 

 「シガ。お前は(オレ)とリサが相手する」

 「げっ」

 「あらあらふふふ。シガさん……ふふふ」

 

 完全にロックオンされている。さしずめ、彼女は鎖に繋がれた猛獣。飼い主(オーラル)が鎖を解放すれば間を置かずに襲い掛かってくるだろう。

 

 「エリアを二つに分ける。マールー、そっちは別のフィールドでやれ」

 「わかりました」

 

 

 

 

 

 目の前に二つのエリアに向かう橋が現れた。一つの広い空間に、二つの正方形の仮想エリアを儲けた形となって目の前に展開されている。

 

 「ふふふ。ではではでは! シガさん。逝きましょうかあ」

 「……オーラルさん。なんで、オーザさんじゃなかったんですか?」

 

 歩いて行くリサを見ながらシガはオーラルを見た。

 近接での動きを見るのなら、レンジャーのリサよりもハンターのオーザの方が良いのではないのかと、それなりな理由をつけて問う。

 

 「アイツも誘ったが、業務が重なった。本来ならリサとマールーが中距離以降の連携を試したいと言う事だったが……ヒューイが居ないからな。お前とテオドールでは練習にさえならん」

 

 近接戦闘では、アークス内トップクラスのヒューイが居ないと訓練にすらならないらしい。シガだけだったら、ただ的にさせる予定だったと、何気に酷い事も付け加える。

 

 「色々ひでぇ」

 「お前は、敵の攻撃の気配を感じとり、飛び道具にも対応できるようになれ。リサの射撃を躱し、近接に持ち込んで見ろ」

 「はやく、はじめましょうよお」

 

 先にエリアに入ったリサは眼を爛々と光らせて、シガが仮想エリアに足を踏み入れる瞬間を待っていた。彼女は既に武器(ライフル)を出して、トリガーに指をかけている。

 

 「……いつもに増して怖いんですけど」

 「いいから行け」

 

 いつまで経っても始まらんだろ。と、見てくるオーラルにシガは覚悟を決めてリサと向き合う正方形のエリアにオーラルと踏み込んだ。

 瞬間、リサの持つライフルのトリガーが引かれ、銃口から弾丸が発射される。

 

 「いっきなり!?」

 

 左腕(フォトンアーム)を戦闘状態に解放し、最低限の防御――頭と胴体を出来るだけ護る。ライフル程度では攻撃の通らない強度で受けて行く。

 オーラルはリサが撃つと同時に横に大きくステップを踏んでシガから離れていた。

 

 「いいですねえ。簡単に終わったら困りますよお」

 

 リサの一回のトリガーで発射された連射が止まった。頭と身体の重要な器官をシガは護りきったが、それでも肩や脚に何発が被弾してしまっている。

 

 「実弾じゃなくて助かったな。仮想でも当たると死ぬほど痛いが」

 

 滅茶苦茶痛ぇ……けど、ソレ以上に――

 フワッとリサは距離の放れているシガから更に後ろにステップし距離を取った。その、眼前を僅かに掠める様に、『フォトン・エッジ』がギリギリ届かず通過していく。

 

 「みえてますよお?」

 

 この距離の取り方。完全に……こっちの攻撃距離が“視え”ている者の動きだ。そして――

 

 リサは再びジャキッとシガに銃口を向けて発砲。攻撃に躊躇いは一切無い。

 彼女の射撃は精確無慈悲に、足や腕を狙うスタイルである。一発で仕留める事をほとんど考えずに、まずは機動力を奪う事を重視した射撃だ。

 故に、頭や胴を防御しても肩や脚を狙われて釘づけにされてしまう。

 

 「ほんっと、きっついなぁ!」

 

 その時、リサのライフルの銃口が弾き上がった。少しだけ驚いたように、リサの射撃が中断される。

 

 「お、当った」

 

 間を突いて、右腕で取り出したガンスラッシュからの神頼みの一射。それは偶然にも彼女のライフルにあたった。その僅かなチャンスを逃さずに接近する。

 

 「いいですねえ。元気な獲物ほど、とーっても撃ち甲斐がありますよお」

 

 リサは接近してくるシガへ、その場に留まりライフルを撃つ。頭と胴を護る形で接近するが、彼女の狙いは脚だった。

 最初に機動力を削ぐ。それがリサの戦い方だ。動きが止まれば後はいくらでも対応できるからである。

 

 「オオ!」

 「良くもちますねえ。リサは、とーっても嬉しいですよお」

 

 シガは脚を狙われていると解っていても、あえて頭と胴を護る。彼女の腕前を知っているからだ。下手に急所を晒せば、咄嗟に打ち抜かれて、そのまま敗北になる可能性が高い。

 リサの射撃と、シガの突撃。お互いに、己の能力を信用して行動を選択する。すると、射撃が止んだ。

 

 「あらあ?」

 

 仮想とは言え、本来の武器と同等の性能を持つリサのライフルが一時的に弾詰まりを起こしたのだ。今までの獲物なら数発で行動不能に出来たため、その際に必然と射撃は停止し、弾詰まりは滅多に起きない。

 

 しかし、いつまでも倒れないシガに、その目測は大きく外れ、短時間の射撃の所要限界を迎えてしまったのである。

 ライフルを見て首をかしげるリサをシガはカタナの間合いまで踏み込んでいた。

 

 「()ったぁ!!」

 

 緑刃が鞘から解き放たれ、神速の抜刀が彼女へ向けられる。サクラエンド。フォトンの集束も完璧。距離も完全に捕えた――

 

 「リサが接近された時の事を、考えていないと思いましたかあ?」

 

 彼女は側転するように躱し、ライフルを持たない片手を押し上げて宙を舞う。小柄な身体(ボディ)はシガの攻撃はおろか、身体さえも易々と飛び越え、宙で彼の背後を捉え――

 

 「いでででででで!?」

 

 躊躇いなく引き金を引き、死ぬほど痛い弾丸をシガの背に叩き込む。

 

 「当然、近づかれた際も想定してある。マールーが居たら黒焦げだったぞ?」

 

 オーラルは迂闊な攻防の欠点を上げる。マールーがこの場にいれば、躱しつつ攻撃する必要は無い。本来は確実に避ける動作だけでいいのだ。

 

 「くっそぉ~」

 

 流石にダメージに耐えきれずに俯せでシガは倒れる。攻めが甘い。だから、回避されると同時に攻撃する余力を与えてしまったのだ。

 

 「この程度じゃないですよねえ? リサはまだまだ撃ち足りないですよお」

 

 何事も無かったかのように着地し、既にフォトン・エッジの間合からも外れているリサは弾倉を交換していた。

 

 「人を撃つなんて経験は、なかなか無いですからねえ」

 「シガ。お前に足りないのは長い攻撃距離を持つ敵との間合いの詰め方だ。今みたいに体力に言わせての猪突猛進では、避けられて撃たれる」

 

 射撃と近接では射撃が有利。これは子供が見ても明らかな優位関係だ。しかし、立ち回りによってはいくらでも距離の詰め方は存在するのである。

 

 「まぁ、当面の目標としてはリサに触る所からだな。このままだと、飛び道具を持つ敵に対しては成す術もなくやられてしまうぞ」

 「はい……」

 

 なんとか回復薬(モノメイト)を飲み、ダメージをある程度、回復すると再び立ち上がる。

 

 「いいんですかあ? ではではでは! ちゃんと痛がってくださいよお?」

 「オレが撃たれてばかりだと思うなよ! このドSめ! 触って良いって言われたからな! マジで触っちゃうぞぉ!!」

 

 うおおお! と先ほどの攻防から何も学んでいないシガに対して、適切な距離を取りながら嬉々として攻撃するリサ。

 

 当然彼女には一度も触れる事さえできず一方的に痛めつけられた。




次はオリキャラ紹介と種族とアークスの世代に関する用語紹介です。
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