ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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33.Eyes of a confrontation 戦士の眼

 その一閃は、今まで何よりも鋭かった。

 彼の全身全霊。最もフォトンが集束し、敵の“虚”も完璧に捉えていた。防御も、回避も出来なかっただろう。ソレで居て、貫けぬモノは無いと自負する、最高の一閃だった。

 

 「――――」

 

 間違いなくその攻撃は【仮面】を仕留めていた。

 

 「…………」

 

 武器(カタナ)()っていれば――

 

 

 

 

 

 接触する手前で、フォトンの刃を維持できなくなったカタナは、無理やり流し込まれるフォトンに耐えきれず、炸裂するように刀身が砕け散る。

 

 不運? 整備不良? この武器を使い過ぎた? どれも違う。しかし、その全てが当てはまるだろう。

 

 【仮面】へ突き立てた一閃は、間違いなく完璧だった。唯一、完璧でなかったのは、磨耗した武器(カタナ)だ。

 本来のアークスの武器は、整備用のマニュアルと、不具合が出た場合や故障の恐れがある場合は、所持IDを通して自らの端末に告知されるようになっている。

 しかし、シガの持つカタナは試験武器。耐久性の上限を測るために、その告知は無かったのだ。

 

 限界を……見誤った。

 

 【仮面】に触れる前にカタナは攻撃性を失い、刀身はフォトンの刃を維持できなくなったのだ。しかし、攻撃能力は失ってもシガ本人の突進は止まらない。

 

 「――――」

 

 先ほどの接近から、【仮面】は警戒するように、シガと入れ違うと距離を取った。そして、積もった雪に突き刺さっている己の武器(コートエッジD)へ近寄り引き抜く。

 

 「っと」

 

 シガも着地。そして使えなくなったカタナを鞘に納めると【仮面】へ視線を向ける。武器を手にした敵は、こちらの命を一撃で奪える。ここからの戦いは、一秒たりとも奴の姿を視線から外すわけにはいかない。

 

 「形勢が――」

 

 逆転していた。カタナはもう使えない。シガに武器は無いと判断した【仮面】は、彼へ眼にも止まらぬ速さで踏み込むと、コートエッジDを斜め下から振り上げていた。

 

 「本気で、変わったと思うか?」

 

 戦闘形態へ発動した左腕(フォトンアーム)でシガはコートエッジDを掴み止める。黒く、全てを侵す邪悪なフォトンと、ソレを浄化する緑色のフォトンがぶつかり合って軌跡となって散った。

 

 「…………」

 

 動かない。【仮面】は左腕(フォトンアーム)掴まれた時点で、後ろへ下がろうとしたのだが、“爪”がコートエッジDへ楔の様に突き刺さって動かなかった。

 

 「あの時は不発だった。だがな……今はどうだ?」

 

 シガの攻撃意志を表す様に指部へ、重なるように更に青色のフォトンの“爪”が展開された。

 

 「『フォトン・エッジ』!」

 

 音を立てて、コートエッジDは砕け散る。ソレによって、残った下半分だけを握り、退く事が出来るようになった【仮面】は後ろへ下がり距離を取った。

 

 「逃がすか!! 接撃(コンタクト)!!」

 

 シガは、コートエッジDの破片を捨てると、“爪”を横なぎへ。【仮面】はまだ、こちらの攻撃範囲内だ。

 

 「――――」

 

 しかし、“爪”がどこを裂くか読んでいるかのごとく、【仮面】は軌道を見切っていた。その場で低く跳び上がり、斬り裂かれる空間の“間”に身体を預けて躱す。

 シガの前方には、五本の斬り裂き痕が、崖や木々を斬り裂いていた。

 

 「本当に何者だ? お前は――」

 

 距離が開く。“爪”は一旦解除するが、左腕(フォトンアーム)事体は戦闘形態を保ったままにする。【仮面】の武器は破損し、攻撃能力を失った。とは言え、何が飛び出してくるかわからない。いまの攻防で唯一解ったのは――

 

 「“(フォトン・エッジ)”はくらいたくない、みたいだな」

 

 カタナの時は、多少は食らっても問題ない様子で躱していた。しかし、左腕(フォトンアーム)を発動してから、一方的に距離を取ろうと動いている。

 “爪”は短く集束すれば威力と攻撃速度が出る。今のも相当だったのだが、大振りである以上、次は躱して接近して来るだろう。

 

 「出力……30か。オレにしては、そこそこ出来るようになったよ」

 

 新しい左腕(フォトンアーム=アイン)になってから、出力が小分けに出来る様になったとは言っても、“爪”の発動に、最初の頃は出力50%以上でなければ上手く形を作れなかった。

 しかし、オーラルとの研鑚を重ね、今は出力を30%で“爪”を展開できる。無論、それだけの出力でも両断できなかった物は今の所皆無。そして、それは――

 

 「お前も例外じゃない」

 「…………」

 

 明らかに【仮面】はシガの左腕を警戒していた。これ以上近づけば、避けられないと悟っている様だ。

 

 そうだ……よく考えろ。武器無しで、オレを殺すにはお前も命を賭けないといけない。

 

 まだ、シガがカタナを使える状態で持っていれば、ソレを奪われる懸念もあったが、壊れている以上、この場の武器は左腕(フォトンアーム)しかないのだ。それに……

 

 「いいのか? 騒ぎを聞きつけて、他のアークスが来るかもしれないぞ?」

 

 シガの言葉に【仮面】は少しだけ反応した。そう、派手な一撃を見舞ったのも、それが狙いだ。今、この凍土には、六芒均衡の一人であるマリアがいる。

 彼女がこの状況に気づけば、間違いなくこの場にやって来るだろう。

 

 「――――」

 

 すると、【仮面】は何を思ったのか、おもむろにコートエッジDの折れた断面に触れる。次の瞬間、生えて来るように折れた部分が再生された。

 

 「…………ん?」

 

 あまりの光景に、自分が圧し折り、投げ捨てた敵の武器(コートエッジD)の破片へ目を向ける。少しずつ形が崩れる様に風に流されていた。

 

 「ソレも“ダーカー”かよ!?」

 

 踏込み、振り下ろしていた【仮面】の重い一撃を左腕で掴み止める。あまりの攻撃力に片膝が折れて、雪の上に着く。

 

 まずい……この態勢は脚に力が入らない……

 

 押し潰されるような圧力(さつい)と、眼前の死(コートエッジ)。存在自体を全て、呑みこまれてしまうと錯覚するほどの強者には、まだ届かなかったのだ。

 

 「ったくよ……本当に勝てないか――」

 

 出力……50%――

 

 

 

 

 

 【仮面】の振り下ろしていたコートエッジDは吹き飛んだ。

 左腕の攻撃力は侮れない。故に【仮面】は攻撃しつつも回避の事を常に考えていた。しかし……警戒していたにもかかわらず、武器は弾き返され、その所為で次撃に繋ぐタイミングを完全に止められてしまった。

 

 「…………」

 

 距離を取りつつ、【仮面】は相手(シガ)の攻撃を考察する。今のは……爆発(テクニック)でもなければ、フォトンの射撃(ほうしゅつ)でもない。武器を通して手に残る……痺れた様な感覚は、まるで硬い物に打ちつけた様な振動――

 

 「こっちは、まだ……出力は50%以上じゃないと使えなくてな。しかも燃費も悪い」

 

 退いた【仮面】に対して、シガは真っ直ぐ向き合うように膝を立てる。もはや目の前の敵を畏怖していた影は一片も無い。

 

 「理由は知らないが、お前がマトイを狙ってるのは解っている。コレも何か理由があるんだろ?」

 

 シガはこの場で拾った、例の武器の事を告げる。

 

 「世の中、上手く行かないもんだ。オレ自身が身を持って体験してるからな」

 

 そう、上手く行く事なんてそうそうありはしない。皆、なにかしらの壁に突き当たる事は多いのだ。ただ、(それ)を越えて行けるかどうかは、本人の資質による。

 

 「今回ではっきりしたよ。お前も“死ぬ”ってことがな」

 

 シガの赤い瞳には、得体の知れない敵だけが映っている。それは、臆することなく目の前の敵を“倒す”と決めた『戦士の眼』だった。

 

 お前を倒す。覚悟しろ――

 




 仮面さんの武器。どこで整備しているのか不明なため、ダーカーと言う事にしました。ちょっと無理がありすぎるかな?
 ここで29話でチラッと話に出た新しい攻撃能力が発動しました。次話は、ソレを主体に【仮面】と攻防が繰り広げられます。

次話タイトル『Shock! 撃』
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