機甲種。生息地は主に惑星リリーパであり、その全域で存在が確認されている。
高低差を越える為に設計された基礎骨格は、四脚による蜘蛛型関節を保有していた。胴部には、それぞれの機体ごとに装備している武器は異なり、大砲やミサイルやスタンマインなどを装備している。
惑星ナベリウスが生身の獣たちによる食物連鎖が確立された生態系ならば、リリーパは機械によって管理された星と言っても差し支えないだろう。
そこには一切の感情はなく、生物的な本能も存在しない。“機甲種”は、ただ進入してきたモノを全て外敵と見なし、事務的に排除に移る。どこかに生産ラインが存在すると推測されているが、現在は調査中であるとの事だ。
「情報の共有って大事だよな。お前らもそうなのか?」
シガは目の前で群れを成して現れた機甲種――スパルダンAの姿を捉えていた。どうやら、一機が発見したら近場の他の機体にも信号が伝わるらしく、一機だけだと思っていたら、ぞろぞろと周囲の物陰から増え始めた。
「ふっふっふ」
しかし、シガは特に焦る事も無くむしろ、待ち望んだ瞬間でもある。
「運が良いぜ、お前らは。この新しい愛刀を錆びになるんだからな」
新しい武器――青のカタナを左腕で鞘を持ち、右腕で柄を握った。そのフォトンの上昇する反応を捉えたのか、スパルダンAは援軍と足並みを合わせずに、突出して向かって来る。
しかし、その接近さえも許さぬシガのフォトンアーツがスパルダンAの波を吹き飛ばした。
「『ハトウリンドウ』」
抜刀の勢いをそのままに、刀身に溜めた高密度のフォトンを斬撃として中距離に飛ばすフォトンアーツである。スパルダンAは呑み込まれるように吹き飛ばされた。
そして、その空いた群の穴にシガは『シュンカシュンラン』で加速し入り込む。
自ら、囲まれるように群の中心に入り込んだシガに対し、頭部に二連装砲を持つスパルガンと、軽快な機動で動き回るシグノガンがそれぞれの照準を合わせた。
「遅い。『カンランキキョウ』」
既に納刀されていたカタナが抜き放たれ、変換された斬撃の波が周囲の物体を刻む。
シガが、キチンッと、気味の良い音を立てて納刀する。同時に自前の装甲では防ぎきれず随所を切り裂かれ、又は抉られるなどの損傷を負った“機甲種”達は機能停止し爆散した。
「シグじいさん。本当に良い仕事してるぜ」
青のカタナ。予想以上の攻撃力だ。前にリリーパで“機甲種”と対峙した時は関節を切り裂かなくては倒す事が出来なかった。
「腕前も重要だけど、やっぱり武器の性能もそれなりの物が安定するって事だね」
今は装甲の上からでも断つことが出来る程だ。あまり、武器の性能に頼りたくはないが、一撃で戦闘不能に出来ると言う事が、これほど立ち回りやすいとは思わなかった。
「こりぁ、絶対にアークスには必要なクラスだな」
この攻撃力。ハンターのように耐えて戦線を張る戦いでは無く、敵を殲滅して戦線を確保する戦い方が出来る。単機での素早さはもちろん、ハンターの様な近接職と組むことで、安定した突破力も生み出せるだろう。
「戦略の幅も広がるし、一撃離脱は近接戦での生存力も上がる。メモっとくか」
後でアザナミさんに、今思った事は報告しよう。少しでも実感した事はまとめて、承認の説明時に有利になるように協力するのだ。
「まぁ、こんな事を考えられる程、オレも余裕になってきたわけだな」
未だ、煙の上がっている残骸を見ながら武器と実力が足並みを合わせて来た事に、まだまだ先に行けると実感していた。
「そう言えば、新しい子って女の子って言ってたよな。どんな子が聞いておけば良かった……」
アザナミさんが新たに目を付けたブレイバーの候補者。彼女が直接接触し、その特性は問題ないと判断したのだ。相当出来る人材なのだろう。
「訓練生って言ってたし、会う機会はやっぱりブレイバーが新設されてからか」
本格的にフォトンアーツも形が整ってきたと言っていたし、カタナのモーションパターンも“居合い”で行くそうだ。不確かな可能性でも色がついて来たと思うと、嬉しく思う。
と、そんな考え事をしているシガの背後に、重々しい音を立てて何かが現れた。
「…………は?」
後ろを振り向くと、戦車の様なキャタピラを持つ巨大な“機甲種”がこちらを補足していた。
普通に逃げる。当たり前だ。今まではあんなのは見た事が無い。
「戦力の温存とか! 卑怯だぞ!! お前らぁ!!」
後ろから、叩きつけるような衝撃が意志を持つかのように迫ってくる。ソレを生み出しているのは戦車の様な外見から変形し、直立したような体制をとっている“機甲種”だった。鋭い爪を持った四本のアームを腕の様に扱い、シガを狙って振り下ろす度に砂が巻き上がり、地面が揺れる。
「えーっと! えっと!! 『トランマイザー』!」
シガは追って来ている巨大な“機甲種”を逃げながら端末で調べていた。
基本的な“機甲種”に比べると比較的大型な種類であり、その機動力、耐久力、攻撃力も他とは比べ物にならないらしい。
「見りぁ解る!!」
背後からアームを叩き付けて、爆発するような音を発生させながら『トランマイザー』は迫る。直撃すれば、即ミンチだろう。
「うお!?」
と、背後の『トランマイザー』から逃げるのに必死で、目の前のクレーターの様な空間に気がつかなかった。そこは、円形でアリジゴクのような傾斜となっている地形。凹凸の激しい今までの地形とは異なり、良く見渡せる広場といった場所だ。
しかし、シガが驚いたのは地形の事ではない。
「――っと。無関係の人を巻き込むわけにはいかねぇか!」
その広場の前方を横断するように二つの人影が歩いていたのだ。二人ともフード付きの防塵コートに全身を覆っている。
このままでは巻き込んでしまうと判断して、腹をくくって振り向くと『トランマイザー』と対峙する。
「弱点は……
敵も機械。当然稼働限界も存在するし、激しく動き回れば熱も蓄えていく。戦闘用であればある程、厚みのある装甲や重量によって必然と溜熱の割合は高くなるハズだ。
「それを狙って行――」
その時、中にかがシガの横を通り過ぎる様に駆けて行った。
「本当にお前はよぉ……面白れぇもんを引き連れてんじゃねぇか!!」
フードがはだけ、嬉々とした狂った笑みを作っていたのは、修了時に遭遇したもう一つの“強”――
「ゲッテムハルトさん!?」
ゲッテムハルトは眼にも止まらぬ速さで『トランマイザー』へ向かっていくと、振り下ろしてくるアームに合わせて、自らの拳を大きく振り上げた。
耳障りな音が響き、『トランマイザー』のアームが壊れる様に跳ねあがっている。彼は拳の
「嘘ぉ!?」
「オラァ! 悲鳴の一つでも、上げてみやがれ!!」
大きく仰け反った『トランマイザー』へゲッテムハルトは止まらずに距離を詰めると、渾身の一撃をお見舞いする。
「くふふふ……くははははは!!」
まるで、玩具を解体するように破壊していく彼の戦いは、もはや“戦い”とは思えない。一方的な蹂躙はシガが割り込む間が無いほどに苛烈で凄まじかった。
「ゲッテムハルト様に加勢は必要ありません」
「おわ!?」
気配もなく背後から声をかけられたシガは驚いた猫の様に、一瞬身体が跳ね上がる。
「ありがとうございます、シガ様。最近、ゲッテムハルト様は退屈だとおっしゃられていました。貴方様のおかげで程よく解消出来た様です」
「は、はぁ。どうも……」
ゲッテムハルトさんの実力は信用できるし、シーナちゃんは可愛いんだけど。正直言って出会うと心臓に悪い二人だった。
みんな大好きゲッテム様の前に敵はありません。ある意味、ファイターということで、ガンガン人外差をアピールしていきます。
次はリサたそが出ます。
次話タイトル『Truth at hand 目の前の真実』