「あんまり戦ってないのに、何故かすごく疲れてる」
シガは、ここまできた経緯を改めて思い出し、かなり疲れた顔になっていた。
今思い返しても、普通に任務に赴くよりも心身疲れた気がする。特にゲッテムハルトさんとリサさんが……
そして、何かと背後を気にしながら(狙われないように)リサと別れ、依頼に必要な物資を回収したところで、偶然アフィンと出会ったのである。
「ははは。そっちは相変わらず大変そうだな」
今は、彼が持つ“小さな人影”の情報を頼りに行動している所だった。
リサは、ダーカーの気配を感じとり、そちらの方へそそくさと去って行った。ずっと一緒にいるといつ背後から撃たれるか分からないのだ。彼女曰く、怒られるから人は撃たない、そうだが……出来れば彼女とはペアは組みたくない。
「リサさんは、俺も色々と実技依頼を受けてるよ」
「そう言えば、そっちも
アフィンは、度々リサさんに手ほどきを受けているらしい。とは言っても彼女が出す依頼をこなすだけなのだが。
「まぁ、ちょっと危ない雰囲気だけどよ。理にかなった事は言ってると思うぜ? おかげて、前とは比べ物にならないくらい腕前は上達してる」
修了の時以来、アフィンとは共に肩並べて戦った事は無い。見ると武器もライフルよりも高性能の機種に変わっている。
「お互いにな」
シガも『青のカタナ』を左腕で少しだけ持ち上げた。
修了の時とは別人のように、二人が纏うフォトンは高く洗練されていた。まだまだ極みには程遠いいが、今ではあの時の様な遅れは取らないだろう。
「確か……この辺りで見かけたんだが……」
アフィンは、例の“小さな人影”を見たと言う場所まで案内してくれた。岩がごろごろ転がっており死角の多い場所。この辺りはしゃがめば身を隠せる物陰が多く、射撃職からすれば有利な地形だった。
「わりぃ、相棒。どうやら、もう居ないみたいだ」
「いや、別にいいよ。こっちも不確かな情報で、見つかればいいなー、みたいな感じだったからさ」
案外、目撃情報が多い。シガも度々、ソレが居るような気配を感じ取った事があったので、フーリエさんの言っていた“小さな影”は高い確率で存在する生物だろう。
「とは言っても、やっぱり何か
眼に見える形で何か納得できるモノが欲しい。そう思いながら、目の前の物陰を覗きこんでいくと――
「なんだそりゃ。布か?」
掴み、持ち上げたのは明らかに加工された跡のある布だ。それも、アークスが落すようなハンカチの様なモノではなく、袖や肩幅が判断できる……明らかに“衣服”だった。
「かなり小さいな。なぁ、アフィン。お前が見たのってこのくらい?」
シガは今拾った“布”を衣服であると仮定して、だいたいの全長を予測しながら実際に姿を見たと言うアフィンに問う。
「そのくらいかもな。少し遠目だったけど、この辺りの岩との比率を考えると、そんな感じだ」
大きさは膝くらい。となれば、相当小さい。穴や岩の隙間を通って移動しているのであれば、見つける事は出来ても接触する事は難しいだろう。
「これで納得してくれるかなぁ……」
シガは両手で拾った布を広げて改めて見る。最低限の証拠とは言え、フーリエさんに見せた場合、納得してもらうには少しだけ弱い要素な気がした。
しかし、その後しばらく探し回っても、特に有力なモノは最初に拾った“布”以外は出てこなかった。
「シガさん。どうでした?」
自身は目的も果たしていた為、まだ探索すると言うアフィンと別れて、シガは一足先にアークスシップへ帰還した。
「あんまり期待しないでくださいよ?」
と、リリーパで拾った、みずほらしい“布”をフーリエに渡す。
キャンプシップで戻る時に少し調べたが、この布はオラクルでも簡単に作れる代物だった。しかし、ここまで不恰好で、しかも使い捨ての様な形で布を使った品物は現在では普及していない。
「この布は、小さな影が残していったもの?」
「たぶんそうです。けど……実物をこの眼で見た訳じゃないのでなんとも……」
高い確率で知的生命体は居るだろう。しかし、接触した例が無い事もあり、ハッキリと断言できないのが歯がゆかった。
「やっぱり、いたんですね。私が夢を見ていた訳じゃなかったんだ――」
しかし、フーリエとしてはシガとは違い、“布”を見て確信した様である。それ程に、助けてもらった事に心から感謝しているようだった。
「……よかったです。お礼を言う相手がいてくれたんですね」
感激に浸るフーリエ。少しだけ彼女の目的に沿う物かどうか不安があったが、そんな嬉しそうな顔を見せられて、問題は無かったと安心できた。
「シガさん。私、怪我が治ったら彼らにお礼を言いに行きたいです。ご迷惑でなければ、その時にまたお願いしても良いでしょうか?」
「いいっすよ」
砂漠の惑星リリーパの知的生物。自覚できる程にシガ自身も興味が出てきている。そして、ほんの少しだけだが、女性キャストへの苦手意識も解消できたと実感していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「彼の事は僕にも解らない。まるで見えない膜で覆われているように、自分の情報を洩らさないみたいだ」
「あんたでも解らないとなると、ますます怪しいね」
「彼を疑っているのかい?」
「昔から何も言わない奴さ。だからこそ、何を目的で動いているのかがさっぱり掴めないんだよ」
「彼の権限は、まるで【六亡均衡】並だ。研究部室長であり、一部の施設の管理まで一任されている」
「趣味で『創世器』に準ずる“兵器”まで作っちまう始末だ。どれほどの
「君は彼と親友だろう? そんなに信用ならないのかい?」
「いつの時だって、奴は一人で悲劇を抱え続けていた。最初は自己犠牲で責任を受けるだけだと思っていたけど……最近は妙に動きが目立ってきたからね。何の為に? と考える様になっちまったのさ」
「記録だと40年前から関わりがある様だね」
「ああ。だけど、わたしはアイツが生身だった頃を知らない」
「なる程……キャストが自意識的な自我を持つには100年近くの月日が一般的だ。後は、君やレギアスの様に生身からキャストに変わった場合だね」
「だから、かつては信用できると言っても、今も同じとは限らないのさ。人から成り上がった可能性が見えない分、ある意味得体の知れない存在だよ」
「解ったマリア。僕の方でも出来る限りの情報は集めておくよ。彼の過去を中心にね」
「悪いね、シャオ。こっちは、こっちで牽制と調査を中心で動く。何か解ったら連絡しとくれ」
この段階で、マリアとシャオは既に動いていると仮定しています。やはり、奴を警戒していますが、現場に出てきているオーラルも同様に警戒しています。
次はマトイが出ます。ていうか、マトイ回。
次話タイトル『I remember my heart 心の記憶』