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テーマは『嘘』らしいので、興味がある方はこちらを↓
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「はい。確かに任務は完了ですね」
シガは、フーリエに報告後、コフィに言われた『貴重物質運搬計画』の報告も滞りなく終わらせていた。
結果としてはまずまず。途中で『トランマイザー』と遭遇したが、ゲッテムハルトさんが倒した関係上、シガの戦果としては数えられていないようだ。
「うーむ……」
どうしても、彼の強さを考えてしまう。アレがこちらに向けられたとき、オレは何とかする事が出来るのか……何度もシュミレートして見たが、どうしても突破口が見つからない。
接近しても抜刀するよりも速く顔面を殴られる。あの、『トランマイザー』のアームを跳ね上げる程の威力を持つ拳で、である。即死も良い所だ。
「おかえり、シガ」
と、考え事をしながら歩いていると、ロビーのゲートの横にある椅子にマトイが座って手を振っていた。
「今、自由時間?」
フィリアさんから聞いているが、マトイはオレよりも定期検査が多い。時折、同じように酷い頭痛に襲われているらしく、特に彼女の同行には気を付ける様に言われていた。
「そうだね。それじゃ、前に話せなかったリリーパの事でも話そうか?」
シガは、中心的に活動を始めた惑星リリーパについて、感じた事を彼女に話す。
酷い砂嵐。“機甲種”と呼ばれる機械の敵。何度か竜巻に飛ばされて、敵の中心に落ちた事もある。
「砂だらけの星なんだね。そういうの、砂漠って言うんだっけ?」
「お、知ってたか」
「そのくらい知ってるよ」
と、マトイは少しだけ不機嫌に頬を膨らませた。
「地味に暑い。さらに、砂嵐が酷いから防塵コートは絶対に必要だよ。特にオレは、左腕の事もあるし」
リリーパを歩く為に必要なのは装備よりも天候の情報だ。大概は、風に巻き上げられた砂による“砂嵐”が吹き乱れ、稀に磁気を含んだ特殊な砂嵐がフィールドを直撃する事もあるのだ。
ソレに巻き込まれれば電子機器は全てダウンし、キャストに至っては、モニターや聴覚機能といった、人で言う五感に相当する性能が全て無力化されてしまう。
「
「でも、あまり調査が進んでないって事は、まだ何か隠れてるかもしれないんだよね?」
「そういう話も結構あるよ。謎の現生民とか、地下に“機甲種”の生産工場があるとか。オレとしても、そのうちの一つは心当たりがあるし」
フーリエさんが見たと言う“小さな影”。それの存在を裏付ける現地で拾った“布”。うーむ、居ると断言するにはまだ情報が弱いか……
「心当たり?」
と、首をかしげて疑問詞を浮かべるマトイ。その姿を見て、フィールドを歩いている時に妄想したバニー姿と重なった。
「…………」
「どうしたの?」
絶対可愛いと思うけどなぁ。多分、頼んだら99%着てくれると思うけど――
「いや……何でもない」
意味深に、ハサミを持った
「そう言えば、マトイは普段はどうやって過ごしてるんだ?」
「わたし? わたしは、フィリアさんの手伝いとか、他の患者さんと話したりとか……あ、最近はオーラルがフォトンの適性を見たいって、少しだけテクニックを使ってみたよ」
オーラルから、マトイは【六亡均衡】に匹敵するフォトン適性を持つと言う事を聞いている。そして、彼女の事は虚偽の報告をするとも言っていたが……
「オーラルさんは何か言ってた?」
「何かって?」
「例えば、フィールドに降りてもらうとか」
「別に何も言われてないよ。ただ、どれくらいの事が出来るのかを知りたいだけって」
必要な調査の範疇かな。シガはなんとなく過った予感は気のせいであると考えて、忘れる事にした。オーラルさん限って、そんな予感は不要であるのだ。彼は心から信頼できる。
「色んな人と話すと、やっぱり気を使った話し方になっちゃわない?」
「他の人と話す時?」
「そー。オレの場合は敬語の方が多いかな。同年代のアークスってなかなか居ないから。そっちはどう?」
先へ先へ、歩いて行くと、自分の立っている場所を把握し、どれほど他の人たちと離れているのか、明確に測れるようになっていた。
特に身に着けている実力では、まだまだ背中しか見えない者達も居る。多くの人の背を目標にして、彼らに追いつき、追い越すのが今の目標だ。
「ええっと……上手く言葉に出せないから、ちょっとやってみる」
「どうぞどうぞ」
と、マトイは少し真剣な顔になって、畏まった雰囲気で、
「“……はい、そうですね”“わかりました……”“はい、そうですか……”“それでは、そのように……”」
言い終わると数秒の沈黙。マトイは、思いのほか恥ずかしい事に気がつき、頬を赤く染めて顔を下に向けた。そんな彼女を見て、シガは笑いを堪える様に震えている。
「いやぁ、新鮮なマトイちゃんが見れてこっちとしては眼福ですわ」
「もう!」
からかうようなシガの様子に、少しだけ怒りながらも改めて自分の口調を見直してみた。
「……でも、確かに相づちばかり。緊張してるのかな……」
「初対面の相手には、それが普通だけどね」
「シガもそうだった?」
「右も左もわからない頃は色々と大変だったよ。その内、マトイも慣れるさ」
彼女はまだ、情報を組み上げてる最中だ。今は他者と繋がりを作る事と、コミュニケーションの能力を磨く事が大切だろう。
「……う、つっ……」
その時、何の前触れもなくマトイが苦痛の表情で額を押さえる。前にシガの目の前で気を失った時と同じように、不意に映像が頭の中を流れていく。
“マトイ!”
“シガ……? どうして、わたしの名前を……”
「マトイ?! 例の頭痛か!?」
シガは慌てて、フィリアに連絡しようと端末を取り出す。しかし、ソレをマトイは静止するように遮った。
「……ごめん。もう大丈夫だよ」
「大丈夫って……」
強がって入るが彼女の顔色はかなり悪かった。無理をしているのだと、容易に判断できる。
「ちょっと……頭が痛いだけだから。それよりも、せっかく色々お話ししてくれたのに……ごめんね」
「……どこに謝る必要があるんだよ」
「悪いと思ったから、謝りたかったの」
他がどう思おうと、自分に比があると感じれば謝るのは普通であると彼女は言う。そして立ち上がり、メディカルセンターに帰ろうと歩き出す。だが、未だ頭痛に襲われているのか、少しだけ不確かだった。
「……じゃあ、オレもそうしようっと――」
シガはふらつくマトイへ近づくとそのまま抱え上げた。左腕は肩を抱く様に、右腕は太腿も持ち上げる様に、俗にいうお姫様だっこである。
「え……シガ……?」
「気にするな。これはオレの性分だからな」
「……性分?」
驚きと恥ずかしさが混ざった感情でマトイは言葉を搾り出した。
「女の子には優しくするのに理由はいらないだろ?」
突然のシガの行動に驚いていた彼女の眼がゆっくりと、安心する瞳に変わる。
ずっと前から……なんとなく、そう言ってもらいたかった気がしたからである。
「それじゃ、お嬢様。メディカルセンターへお運びします」
「は……はい……」
シガの傍は安心できる。それが何故なのかは解らない。けど……これだけは間違いなかった。
記憶を失う前のわたしは、彼の事を誰よりも信頼していたのだと――
色々とイベントを混ぜた結果こうなりました。
次はウルクやテオドールとイベントです。
次話タイトル『Power should have 戦士の道』