ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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47.Power should have 戦士の道

 眼の前の現実が完璧であるとは限らない。

 

 オーラルさんは、アークスシップは大丈夫だと言っていたが、やはり“完璧”ではないのが事実だろう。その証拠に、『オラクル』は過去に幾度か、シップ毎の襲撃を受けている。

 その中で新しいのは10年前の襲撃だった。

 

 「――――完璧じゃないんだよな」

 

 シガはショップエリアのベンチに座って、眼前を通るアークスや市民を見ていた。相変わらずの女性アークスの露出に、時折目で追うが――

 

 「……くそ。落ち着かん」

 

 いつもの保養時間でも頭にいくつもの可能性がちらつく。その中で、最悪な可能性の一つが、脳裏を横切った。

 

 “クラリッサァ!! 絶対に彼女を助けろ!!”

 

 「……久しぶりだな……おい――」

 

 走馬灯に比例した酷い頭痛が久しぶりに襲った。

 怒っている……。オレは、何に怒っている? 走馬灯は視界だ。誰の視界か分からないが……そいつが視線に捉えている敵は――

 

 「よーっす、こんにちは!」

 

 その声を聞いて、ブツッと映像が途切れた。

 

 「ウルクさん……」

 

 頭痛に額を押さえながら視線を向けた相手は、アークスとして適性を持たないニューマンの少女――ウルクだった。

 

 

 

 

 

 「大丈夫? アークスって心労凄そうだからねー」

 「そう言う君は、いつも元気だね」

 

 シガは、酷い頭痛が起きた時の為に渡されていた鎮痛薬を飲み、数分で落ち着いていた。

 

 「まぁ、わたしはいつも元気だけはありあまってるからさー。周りからは、やる気が空回りとかよく言われてたけど、どっちかと言うと、やる気がある方が良いでしょ?」

 

 相変わらずのポジティブ思考は、何よりも変わらない彼女の存在証明だったりする。色々な物事に悩んでいるシガとしては彼女の思考は見習いたいとも思っていた。

 

 「いやさ、アークスやってるわたしの友達の事なんだけど、前に話したでしょ? テオドールっていうアークス」

 「ああ。覚えてるよ」

 

 新しい記憶では、訓練でリサさんとマールー先生のペアに有無を言わさずにボコボコにされた事を鮮明に思い出せた。嫌な思い出だ。

 

 「本当にやる気なくてねー。可能なら代わってあげたいくらい。けど、そう言うわけにもいかないし」

 

 ウルクはフォトンを扱えない事を今も気にかけているようだ。小さい頃から追いかけてきていたと言っていたし、次に進む為とはいえ切り離すのは容易ではないらしい。

 

 「だから、アークス関連の職員になるって決めたの。前にシガさんが提案してくれたでしょ?」

 「え? ああ、うん」

 「ひょっとして忘れてた?」

 

 と、言うよりは本当に、その職業を目指すとは思っていなかったのだ。あの時は慰めの意味で、そんな提案をしたのだが……

 

 「まぁ、当然かな。この職業もアークスに負けず劣らずの厳しい感じでさ。わたしにはクリアー出来ないって思ってるでしょ?」

 「いや……まぁ――」

 「別にいいって。わたしだって無謀だと思ってるけど、その方が燃えるからね!」

 

 ウルクは両手に力を入れる様に強い意志を見せる。

 

 「やる気は才能を凌駕するってところを、見せてやりたいからさ。もちろん、あいつにも――」

 

 彼女の言う“あいつ”とは十中八九テオドールの事だろう。まったく、テオドールにウルクの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

 

 「まぁ、がんばれよ。オレは応援する事しか出来ないけど……」

 「おっけー」

 

 アザナミさんにも言われていた。

 

 “戦う時は戦う事だけを考えて、悩む時は悩む事だけを考える。わたしは、そう言う風に割り切ってるけどね”

 

 今の事ばかり考えていても仕方がない。歩いた先に何が待っているかなんて、誰にも解らないのだ。そうならないように、今を懸命に努力する事こそが、より良い未来に繋がると――

 

 「まぁ、あの人はそこまで考えてるとは思えないけど……」

 

 深い言葉に聞こえても、アザナミさんはそこまで考えていなかったりする。行き当たりばったりで、飄々とした性格なのだ。

 

 

 

 

 

 仮想訓練ルームにて、シガとテオドールは原生生物を相手に立ち回っていた。

 

 「右だ!」

 

 相対するのはリリーパに出現する“機甲種”であり、最新の仮想データの試験を二人は任されているのだ。

 高機動で動きながら射撃してくる“機甲種”――シグノカノンの挙動から、テオドールを狙っているとシガは察していた。

 

 「え? あわわ!?」

 

 ダーカーの様な、足の動きで回り込むのならまだ迎撃に猶予はある。しかし、シグノカノンはホイールで移動しており、現在もその機動性は遺憾なく発揮されていた。

 

 「テオドール! 動くな!」

 

 全体的に戦いのスピードが速い。カタナやテクニックでは相性が悪く、一体にかかりきりでは他の固体から攻撃を食らってしまう。

 

 「『フォトン・エッジ』、接撃(コンタクト)!」

 

 指部に形成されたフォトンの“爪”がテオドールの間を抜け、予測した移動先に現れたシグノカノンを貫いていた。

 

 「! フェイエ!」

 

 と、テオドールはシガの背後に回ろうとしているシグノカノンが視界に入り、咄嗟にテクニックを放つ。初級テクニックながら、ぶつかった瞬間、爆破するようにシグノカノンは粉々に砕け散った。

 

 「助かった」

 「いえ……大したことは――」

 

 シガはテオドールと背中合わせに位置を取ると、残り三体のシグノカノンを警戒する。

 

 「そこまでだ」

 

 すると、シグノカノンはビデオを停止させたようにピタッと動きが止まると、薄れて消えて行った。

 

 「少し調整を行う。10分休憩だ」

 

 オーラルは先ほどのシガとテオドールの戦いを加味しながら、出来るだけ現地の“機甲種”と同じ性能に近づけようと微調整を行っていた。

 その様子に、シガとテオドールは背中合わせのまま、その場に座り込んだ。

 

 「ふー、今日は他に誰も居ないとはいえ、こんな訓練に付き合わされるとはな」

 「そうですね……」

 

 テオドールはシガよりも息が上がっていた。彼はまだ、ナベリウスとアムドゥスキアにしか進入しておらず、リリーパの“機甲種”は初見であるのだ。

 その為、シガがなるべくヘイトを取り、戦闘を組み立てていた。

 

 「なんだ? やる気ねぇみたいだな」

 

 テオドールのやる気の無さは今に始まった事ではないが、今日はいつもよりも酷い気がする。

 

 「ちょっと、マールーさんに怒られちゃいまして……」

 「先生が?」

 

 あの温厚な人が、怒るなどちょっと考えられない。よくオーザさんと言い争いになる事はあるが、基本的には穏やかな人だ。

 

 「なんとなく、真面目じゃない所を見抜かれてしまいまして……」

 「それって、相当だと思うぞ?」

 

 フォース同士である事もあり、マールー先生の立ち回りは手本に出来ると言うのが、オーラルさんとしても狙いだったのだろうが……

 

 「最初からやる気なんてないのに……はぁ、アークスは遮二無二に戦うって誰が決めたんでしょうか?」

 「…………」

 

 そこからかぁ、とシガは呆れて何も言えなかった。テオドールは成り行きに任せてアークスになったと言っている。その為、他のアークスが持つような“目標”の様なモノが無いのだろう。

 

 「見つければいいんじゃないか?」

 「……え?」

 

 シガは立ち上がりながら、フォトンの感性を整える。フォトンを左腕(フォトンアーム)に集中し、戦闘状態を維持していた。

 

 「戦う理由だよ」

 

 バタンッと、オーラルがコンソールのパネルを閉める音が聞こえる。そして、モニターの操作を始めた。

 

 「……戦う力があるから戦う……。あまりにも理論が乱暴な気がします……」

 

 その言葉にシガが思い出すのはゲッテムハルトの戦い方だった。あまりに暴力的な他を圧倒する“力”は、まるで人災。その眼に映った(もの)全てを徹底的に壊すまで止まらない。

 

 「力に憑りつかれるのはマズいと思うけどな。それでも、武力は必要だと思うぜ? 戦う理由が無くても、言おう無しに戦わないといけない時が来る」

 「そうでしょうか?」

 「アークスである限りな。辞める気は無いんだろ?」

 

 すると目の前にゆっくりと巨躯が形作られていく。高機動のキャタピラに、二本のアームが特徴の“機甲種”。

 

 「次は『トランマイザー』のデータを検証する。テオドール」

 「は、はい!」

 

 オーラルに声をかけられて、テオドールは慌てて立ち上がった。

 

 「考えは人それぞれだ。答えが出るまで好きなだけ考えればいい。だが、今は目の前の敵に集中しろ」

 「……はい」

 

 また怒られたと察したのだろう。そんな彼を励ます様に、シガは背中を強く叩く。バシィッ!! と痛々しい音が響いた。

 

 「痛ッ!!?」

 「ほれ、敵は目の前だぜ相棒。気合入れて行こうか」

 

 目標も無ければ、前に進む理由もない。けど、その事を真面目に捉えて一緒に肩を並べようとしてくれる人がいる。

 

 「…………うん。わかったよ」

 

 戦う意味……僕も考えてみようかな。前に立つ彼のように決定的じゃなくても、少しでもアークスとして前を向いて歩いていると彼女に報告できるように、その背中を目指してみようかな――

 

 

 

 

 

 うらぁぁぁ!! と、シガとテオドールは『トランマイザー』を相手に立ち回り始めた。

 

 「…………未熟故に、お互いで高め合う……か」

 

 オーラルは、目の前で戦う二人を見ながら、自分では教えられない事を二人が知らずに得ていく様子にどこか思う事がある。

 そして、一つの端末を取り出すと二人の戦闘データを記録していく。

 

 「……テオドール。興味深いデータだ」

 

 その潜在力を見ながら、もし彼が献身的なアークスであった時の事を考えると、今後の“計画”に支障が出て来ると見る。

 

 「関わりは少ない方が良い……か」

 

 そして、今後の“計画”の懸念となるリストに“テオドール”の名を追加した。




EP2のあの時に向かって着々と準備を進めている感じです。

次話タイトル『Deep consciousness 深層意識』
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