ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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49.Analyze the Lilipur 砂塵の奥へ(☆)

 「あ、フーリエさーん」

 

 三階の空中庭園前でシガはフーリエの姿を確認すると手を挙げて近づく。数日ぶりの女性キャストの良心へ友好的な笑顔を向けていた。

 

 「シガさん!」

 

 彼の姿を見て、フーリエも友好的な笑みで迎え入れる。

 

 「この前は、どうもありがとうございました!」

 「怪我の調子はどうですか?」

 「大丈夫です! もう全力全開で、どこへでも行けますよ!」

 

 全快である事を示す様に、脇を締めて力強さをアピールする。

 ああ、彼女を見ていると女性キャストに植え付けられたトラウマが浄化されていく……特にリサさんとか、リサさんとか、マリアさんとか、リサさんとか――

 

 「あ、あの……シガさん?」

 「ん? ああ、ごめんごめん」

 

 と、知らず内にじっと見つめてしまっていたのか、フーリエは若干顔を赤らめていた。

 

 「それで、ですね! シガさんに折り入ってお願いがあります!」

 「なんでしょうか?」

 「私と一緒にリリーパの砂漠に行ってくれませんか?」

 

 どうやら、彼女は手渡してくれた証拠ではなく、自分の眼で直に確認したいらしい。シガとしても、彼女の性格はある程度理解していた。それをふまえるなら、当然の行動と言えるだろう。

 

 「私も、意識が朦朧としていた事もあって、見たものに自信が無いんです」

 

 不安そうにそう呟くフーリエ。

 キャストは、生身の種族に比べて耐久力だけではなく分析力や記憶力もずば抜けている。そのかわり、損傷した場合の機能低下はどの種族よりも下回る性能となってしまうのだ。特に、リリーパの磁気環境は、ある意味キャストの天敵とも言える。

 

 「だから誰かと一緒に助けてくれた方と会う事が出来れば、きっと自分の眼が正しいと思えるんです!」

 「確かに、リリーパの環境はリサたちに優しくないですけどねぇ」

 「ハァァァァ!!!?」

 

 フーリエの後ろから、よじ登るように現れたのはリサだった。ふふふ、と意味深な笑みを浮かべながら現れた彼女は一種のホラー映像を作り出している。シガは心臓が口から飛び出すところだった。

 

 「リサさん」

 「あらあら、フーリエさん。お元気になって何よりです。シガさんは、相変わらず面白いですねえ」

 「リ、リサさん。人が現れない場所から急に現れないでください! 口から心臓が飛び出す所でしたよ!」

 

 くそー。せっかくトラウマを忘れかけてたのに、また思い出しちまったよ!

 

 「あらあらあらあら。シガさんは口から心臓が飛び出すんですかあ? ぜひ見せてほしいですねえ」

 「勘弁してください……」

 

 この人が言うと、冗談に聞こえないのだ。なんだか、顔を合わせる度にロックオンされてる気がする……

 

 「シガさん!」

 

 リサの介入で、じりじりと距離を取り始めたシガが、そのままダッシュで逃げ出そうとしていた様子だったので、フーリエは改めて声を張り上げる。

 

 「シガさんの、お暇な時で構いませんので! 私の依頼をお願いしますね」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 その後、すぐにリリーパに降下した。

 理由は、たった一つしかない。その後にリサさんが別の任務があって一緒に来る事が出来ないと言うからである。即断即決で本日に降りる事にしたのだ。

 

 「さっそく依頼を受けていただいて、ありがとうございます。よろしくお願いしますよ!」

 「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 こうやって、誰かの依頼でキャンプシップからペアを組んで任務にあたるのは久しぶりだ。前のリリーパでの『自由探索許可』の依頼では、アザナミさんが無理やり途中から参加した事もあり、適当な雑談をしながら最初から二人組(ペア)で惑星に降りるのは修了以来である。

 防塵コートに身を包み二人は砂漠の惑星(リリーパ)へ。環境情報では特に大きな磁気嵐はなさそうだ。

 

 「よぉし! ちゃんとお礼しますよー!」

 「そう言えば、生息地の目安とかはあるんですか?」

 

 現状の情報は、シガの持ち帰ったボロボロの布と不確かな目撃情報だけである。それ以外でフーリエも何か持っているのかと尋ねた。

 

 「いえ、私の持つ情報はシガさんのものと大差ないです。大丈夫! やるだけやってみてから考えるのが私の信条です!」

 

 シガの持つキャストのイメージは冷静に理的に状況を分析して裏付けを取り、確信を持ってから行動すると言った性質が強かった。

 実際に、知り合いのキャストも皆、理的に効率の良い行動を体現している。中には己の欲望を優先させる、キャストらしくない人(主にリサさんとか)がいるが、それは例外で良いだろう。

 

 「もっと、キャストってガチガチの思考理論を持ってる物だと思ってましたけど」

 「たはは。オーラルさんからも、よく言われるんです。“お前はキャストっぽくない”って。でも、それが私の個性だと思って誇らしく前に進んでいくつもりですよ!」

 

 そこには、ひたむきに自分自身と向き合う一人のアークスが居た。他人なんて関係ない“自分らしく生きた方が良い”と誇らしげに言っている。

 

 「……そうですね。それじゃ、行きましょうか」

 「はい! 行きましょう!」

 

 

 

 

 

 フーリエの武器はランチャーを主体に立ち回る、レンジャーとしては珍しい戦い方を主軸に置いていた。

 

 「げ。フーリエさん!」

 

 シガとフーリエは機甲種でも遭遇率の高い、スパンダンAの群と戦っている。統率された動きは地味に戦いにくいモノだが、それは一対多数の場合である。今は中距離からの支援としてフーリエが同行してくれているのだ。

 

 「任せてください!」

 

 重量があり、取り回し難いランチャーを使って、迫ってくるスパルダンAを相手に、見事に立ち回っている。敵が近づけば引き、逆に距離が開けば前に詰める。

 それに――

 

 シガはフーリエが撃ちやすいように下がる。すると、前方から追って来るスパルダンAはランチャーの爆撃によって粉散して吹き飛んでいった。

 

 「カタナを振るよりも圧倒的に殲滅効率が良い」

 

 一人の時は常に囲まれてしまう為、背後を気にして立ち回っていたが、今はただ正面で囮になって敵を集めるだけでいい。纏まったところをフーリエさんが爆撃してくれる。

 アフィンやゼノ先輩と組んだ時とは、まったく違う戦い方だが、一番消耗の少ない戦いが出来ており、意外と相性は良さそうだ。

 

 「シガさんのおかげで、いつもよりスムーズに殲滅できました。立ち回りは……ハンターに近いみたいですが……当ってます?」

 「いえ、オレって今試験中のクラスをやってるんです。ブレイバーって言うんですけどね」

 「そうなんですか。どうりでハンターにしては動きが軽いなーっと思ったんです。ハンターは力強くて耐久性の高い性質から“壁”になるイメージが強いんですが、シガさんの動きはどちらかと言うと“風”みたいですね」

 「風ですか?」

 「はい。敵の隙間をすり抜けるように動き攻撃する。優雅に、まるで敵を操っている様にも見えます」

 

 そんな事を言われたのは初めてだった。確かに、武器の性質上、敵と斬り合ったりは不利になりやすいので、常に一太刀か二太刀目で敵を斬り伏せるようにしている。そして、集団では囲まれないように、囲まれても脱する事が出来るように常に背後には気を配って動く事を無意識で行っている為、敵の動きを操っているように見えるのかもしれない。

 

 「なんか照れます」

 

 後頭部に手を当てて、素直に褒められた事を喜ぶ。理解してくれる人はどこにでも居るものだ。

 

 「立ち回りからでも、相当な熟練度を感じます。試験とは言え、真面目に取り組んでいるんですね」

 

 あれ? なんか眼から涙が出てきた。すっごい嬉しい……

 

 「オレも偏見は持たないようにしますよ!」

 

 フーリエさんは頭に疑問詞を浮かべているが、もう女性キャストに対する抵抗は彼女のおかげでだいぶ薄れてきている。

 

 「なんだかよくわかりませんけど、お役に立てて何よりです!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「――マトイ」

 「あ、オーラル」

 

 アークス・ロビーにて、正規任務の達成率と、カウンターの対応力をチェックしていたオーラルは、視界の端にマトイを捉え、声をかけた。

 

 「元気そうだな。頭痛が度々あると聞いているが……何か思い出したか?」

 「ううん。そっちの方は、まだ分からない」

 

 フィリアからの報告は何かある度に聞いている。身体に危険な兆候は無く、気を失った例も今のところは一回だけだ。

 

 「記憶というモノは、不意に思い出す事が多い。何度も言っているが、思い出す事よりも、今は自分に出来る事を探すといい。シガもそうだった」

 「うん。私は、私に出来る事を頑張る」

 「フィリアの手伝いも進んでやっているようだな。病院関係者からも評判は良いとの事だ」

 「え? そんな事言われてるの?」

 「フィリアから聞いてないのか?」

 

 妙な情報の食い違い。大方、フィリアの方であまり甘やかさないように配慮しての事だろうが……周りが彼女をどう評価しているかくらいは教えてあげても良いだろうに。

 

 「どうせなら、そのまま医療班で働いてみるか? お前が良ければ推薦するが」

 「その提案は嬉しいけど……もうちょっと、考えてみたいかな」

 「何か、やりたい事でもあるのか?」

 

 オーラルとして、なるべく彼女の事が把握できる役職についてもらう方が都合は良い。シガの例もある。近い場所に居た方が“事”が起こった時にコントロールしやすい。

 

 「うん。でも、まだ目的がふらふらしてるから、まとまったら相談するね」

 「しっかり悩んで、自分の納得いく答えを見つけるといい。困った事や、力を貸してほしい時は、(オレ)やフィリアに遠慮なく相談してくれ」

 「ありがとう。その時は頼らせてもらうから」

 

 その時、オーラルのヘッドパーツに内蔵している通信端末へ連絡が入る。

 

 「どうした? ……位置を捉えたか。予測は? ……遠いな。わかった、すぐ行く。現地には護衛をつけて分析班を急行させろ」

 「仕事?」

 

 マトイはオーラルの様子から首をかしげて尋ねると、彼は肯定して早足で去って行く。

 

 「ああ。シガの事もよろしく頼む」

 「うん。オーラルも、がんばってね」

 

 彼が聞いた情報は、惑星リリーパにて、空間転移とダーカー因子の観測を捉えた件だった。




 PSO2アニメ10話のマトイさんが可愛い。つっこみどころ満載ですが、ニコ動でまだ見れると思うので、アニメの方もお勧めですよ。まぁ、この小説はアニメは関わりないですが。
 ようやくメインストーリーが進みました。そしてリリーパで謎の反応。こちらはオリジナルの展開となります。

次話タイトル『D-Arkers eat 製造生物』
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