オーラルは、例の反応を見て迅速に降下の手続きをし、一機のキャンプシップを使って惑星リリーパに向かっていた。その間でも、研究部に待機しているチームとは連絡を取り合っている。
「捉えているか?」
『はい! ですが座標の確保は不安定です。リリーパの環境も影響し、常に把握するが難しく……』
「とにかく、まだ
『既に伝えてあります』
「分析班よりも、こっちの方が早い。いいか、こちらが補足している事は絶対に悟られるな。リリーパのアークスにはその地点へ向かわないように
『手配します』
「現地についたら連絡を入れる」
キャンプシップの通信機を切ると、何も無かった空間から現れるように、一人の少女が姿を見せる。彼女は転移してきたのではなく、最初からキャンプシップに乗っていたのだ。
「見つけたのですね?」
冷やかに、感情さえも凍りついたような声と表情で少女はオーラルに問う。
「奴は見つけ次第、即時抹殺だ。一対一で戦おうとは思うな。トドメを刺せる様にお膳立てはしてやる」
「わたし一人で始末します。それは前からの約束でしょう?」
その補足は、膨大な海の中から一匹の魚を見つけるに等しい行為であった。しかし、ダーカーの動きが不自然に活発化した事で、より多くの
「いや、ハドレッドの“成長”は予想以上だ。今回反応を捉えた理由は前の反応パターンよりも強力になっていたからだ」
「…………ですが!」
「わがままを言うな。今の奴は一人で相手に出来るレベルじゃない。どのように進化しているか……今回でなるべく仕留めに行くが、現状では【六亡均衡】でも正面からの対峙は危険だと判断している」
夜空に輝く星の中で一つだけ強力な光を発するモノがあるように、今回のハドレットの補足はより強力になっていたからこその結果だったのだ。
「…………わかりました」
少女は悔しそうに拳に力を入れる。分別はつくと思っていたが、この件に関して彼女は神経質になり過ぎだ。
「コレを使わずに済めば良いがな……」
オーラルは、壁に立てかけられた特別な封印が施されている細長いケースに意識を向ける。状況は十全ではない……だが、それでも
キャンプシップは転移を終え、惑星リリーパの重力下に捉われた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「シッ!」
金属を断つ音が響き、『サクラエンド』で四等分にされたスパルダンAは爆散した。
「そこです!」
重々しい砲撃の音が響き、フォトンの砲弾が直撃したスパルダンAは地雷を踏んだようにバラバラになって四肢が降ってくる。
「フーッ」
「ふぅっ」
惑星リリーパ。
シガとフーリエは、向かって来るエネミーの討伐を終えると、それぞれ緊張から解放された様に一息つく。
「ヘイトを取っていただき、ありがとうございます。スムーズに倒す事が出来ました!」
「いや、こっちとしては大分助かってます。“機甲種”は武器の性質上、中々戦い辛いので」
それぞれの武器を納刀し、お互いの立ち回りから、形になっていると認識していた。
「確か、カタナと呼ばれる試験武器ですよね?」
ペアを組む関係上、シガは自分の装備やクラスの事を一通り説明している。試験的で特殊な装備で固めているシガだが、フーリエはさほど抵抗なく受け入れてくれていた。
「性能的には安定してるんですが、新しい敵に対する対応性とかはまだ試験中なんですよ」
ある程度は敵の俊敏性や、硬度に対してのデータを集めておかねばならない。アザナミさんの話では、基本的な条件はほぼ承認されたとの事だが、後は汎用性があるかどうか、であると言われている。
「大変ですね」
「はい。フーリエさんも、やって見ます? ブレイバー」
そことなく誘ってみる。
「せっかくですが、私は射撃寄りの適性なので、力になれないと思います」
「そうですか」
「ごめんなさい」
「あ、いや……こっちも無理言ってるのは解っているんで」
共に戦っていてフーリエさんのランチャーの扱いには高い練度を感じる。ここまでフォトンアーツを一つも使わない様子から見ても、実力上そこまでの苦戦を強いられていない事を意味していた。
「それにしても、ダーカーとあまり遭遇しないですね」
そこそこ奥まで進んできたと思ったが、意外にもダーカーとは一度も遭遇せずに、“機甲種”ばかり相手にしている。その内、遭遇するだろうと思って特に気にしていなかったが、ここまで静かだと逆に警戒してしまう。
「確かに、言われてみればそんな気がします」
「ですよね? リリーパの任務記録では降下すれば、ほぼ確実に遭遇してるみたいなんですけど……」
惑星降下の際に、帰還したアークス達の情報を閲覧する事が可能であり、遭遇エネミーの情報などは特に気にかけていた。中でもダーカーは必ずと言っていいほどに遭遇しているのだが。
「地味に適当なんですよねぇ。現地では違和感ありまくりなのに……」
オラクルとしては、ダーカーが大量に出た時は警戒が出されるが、逆に少ない場合には対して重要視されていないのだ。居なければ、それはそれで問題ない、と言う意味なのだろう。
「そうですね。私も、リリーパにはそれなりに降りますが、ダーカーとはよく――」
と、そこでフーリエは何かを思い出す様に あっ! と声を上げた。そして慌てて端末を開き、目の前で操作を始める。
「すみません、シガさん。任務記録をつけるのを忘れていたので、少し待っていてもらえますか?」
「いいですよ」
「すみません! えっと、ええっとぉ……これとこれをまとめて……こっちの記録を繋げて――」
少し時間がかかりそうなので待っている間、辺りを見回る。ダーカーの出現は予測の範疇を上回る事が多い。警戒しすぎる事に越したことはないだろう。
「にしたって、全然見かけないのはおかしいよな……」
丁度、先ほどから死角になる位置へ何気なく移動し、様子を探った――
「――――!?」
シガは視界に入った光景を見て、思わず目を見開いて驚愕する。何かリアクションをするよりも、目の前の光景に本能的な恐怖の硬直が優って声が出なかったのだ。
グチャ、グチャと、生々しい咀嚼音を立てながら、何かを貪っている巨大な生物が居た。背骨や肋骨や腕の骨が皮に張りつくほどに痩せ細った不気味な外見。昔の面影なのか、尻尾の様なモノだけが残っており、最も近い生物を考えるなら惑星アムドゥスキアに居る先住民の“龍族”に近いかもしれない。
すると、何かを喰らっていた生物は、背後の気配を感じ咀嚼音を止めて振り向く。
「…………」
そして、何事も無かったかのように“食事”を再開する。
「な、何だ……!?」
咄嗟に岩陰に隠れたシガはその生物にはギリギリ見つからなかった。爆発そうなほどに高鳴っている心臓を押さえながら目の前の現状を再認識する為に慎重に覗きこむ。
グチャ、グチャ――
「……幻覚じゃない」
もしかしたら、砂漠が見せた幻か何かかと思ったが、残念ながら、目の前のホラー映像はリアルタイムで目の前に存在している現実である様だ。
更に良く見ると、ソイツの喰っているのは――
「……嘘だろ。ダーカー喰ってやがる……」
まるで、それだけしか見えていないように、一心不乱で細長い手で鷲掴みにしてそのまま口に運んでいた。
「――――」
シガはただ、そいつの同行だけを気に掛ける。どっちだ? こいつは……アークスの味方か? それとも――
ダーカーを処理していると言う点では、ダーカーの敵である様だが……敵の敵が味方とは限らない。それに、ホラーは苦手なのだ。
「シガさん? すみませーん!」
フーリエの声に気がついたソレは、彼女の方へ視線を向けた。未だに死角に居るので、フーリエの姿はソイツには見えない。シガのカタナを持つ手に力が入る。
とにかく、こちらに危害を加えるなら一撃見舞って様子を見る。倒せそうなら、フーリエさんと協力して……無理なら退却を――
すると、ソレは脚を撓めると、蛙のように跳び上がり、目の前の空間に吸い込まれるように消え去った。
「!?」
思わず物陰から飛び出すシガ。ソレの居た場所は、最初から何も無かったような静寂に包まれていた。
「あ、シガさん。今の時刻を教えていただけませんか? 私の時計は、修理してから時間を合わせ忘れてまして」
「あ、はい……早朝の8時です」
「ありがとうございます」
一体……なんだったんだ?
現実味の無い出来事に、悪寒と鳥肌は未だに止まらない。ただ単純に、関わるべきではないと思えるほどの別次元の恐怖だけを肌で感じていた。
謎の生物出現。まぁ、本編やってる人なら解ると思います。
次話タイトル『Way of curse 呪いの道』