「カスラ!」
「おや? どうしました、ヒューイさん」
オーラルから連絡を受けて、遅れながらも
既に現地にはいくつかの班と、二人が降下している。情報では『六亡均衡』に匹敵する程にハドレットは膨れ上がっているとの事だが、オーラルが行った以上無茶はしないだろう。しかし、一つだけ懸念があった。
「オーラルを知らんか? ちょっと稽古つけてもらおうと思ってな」
「私の記憶では、アナタはマザーシップの警護を任されているハズでは?」
「問題ない!! 特に何も起こっていないからな!! それに、オーラルは研究部に居るのだろう! ならばやる事は一つ!!」
「ええ。ちゃんと警護していてください」
「おう! って違ーう!! 常に己を高める為に精進する事! それがオレ! それが心得――」
「カスラ」
と、次にその場に現れたのは珍しくマザーシップの警護に就いているマリアだった。数週間ぶりに他の『六亡均衡』と邂逅しており、色々と報告の為にこの場に居る。
「用があるんだろ? さっさと行きな」
「ありがとうございます。それとヒューイさん。オーラルさんはリリーパへ降りているので今は
研究部に居ないと知れば、オーラルを捜してマザーシップ内をあっちこっちに顔を出すだろう。その前に彼の行動を操作する情報を与えた。
「なんだいヒューイ。組手の相手を捜してるのか? アタシが相手をしてやるよ」
「え?」
「六番研究室が空いています。武器の性能試験にも使われている場所なので、ある程度は暴れても結構ですよ」
「気が利くね。ほら、ヒューイ顔を貸しな」
「え?」
ありがたく厄介な
背後では、えー!? と言いながらマリアに首根っこを掴まれて引きずられていくヒューイの姿を気の毒に思いつつ後を任せた。
「……オーラルさん。アレも持ち出しましたか」
先ほど重要保管庫を確認した。そこから消えていた例の武器。そして、カスラにも届いていた“造龍”の情報は予想以上に深刻なモノだ。
「今のハドレットは……レギアスと同格と見るべき相手。オーラルさん、クーナさん。無茶はしないでください」
カスラは持ち出された武器が
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シガは、フーリエと共にリリーパの砂漠を進む。その最中で、度々襲撃を受ける機甲種を難なく退けながら、順調であると言えた。ただし、例のホラーエネミーとの邂逅は余計に不安にさせるだけと思いフーリエには告げずに自分の中でだけで留める。
後で『フォトンアーム』に記録されている、エネミーの情報を見てもらって、判断する事にする。
「うわぁ……道に迷わないようにパンくずを落す様に続いてる……」
そして、蛇行した一本道を進むと、道なりに破壊されて放置された機甲種が多々存在していた。その様子からも、段々嫌な予感に近づいていると確信する。
「……この音は……剣戟の音?」
すると、隣で同じようにただ事でない様子を感じ取ったフーリエが、キャスト特有の任意的な五感の引き上げで
「――――」
「あ、ちょっと――」
思わず走り出したフーリエの後を追う様にシガも走り出す。ヒューマンであるシガよりも一時的に数倍は引き上がっている聴覚で明確に何が行われているのかをフーリエは捉えていた。砂漠に設置された足場を登って反対側に降りると、視界に入ってきた様子からシガもフーリエの捉えていたモノを認識する。
「おらおらどうしたァ!!」
「…………」
そこには、機能停止した“機甲種”と、物足りないと言った様子でソレを殴りつける一人のアークスの男だった。
その様子は他から見ても必然に動物的恐怖を感じるほどの暴力。しかし、付き人のニューマンの女はただ無言で彼の気が済むまで見守っている。
「この環境に対応してんだろ!? つまんねぇぞ! もっと気張れよ!!」
一撃で『トランマイザー』の装甲を凹ませる程の拳は、小型の“機甲種”程度では防げるモノではない。周囲の機能停止している“機甲種”は全て一撃で倒している。
しかし、彼は倒しただけでは己の中で満たされるモノは無かったらしく、動かなくなった“機甲種”に明らかな
「うわぁ……」
「……ひどい」
その場へ駆けつけたシガとフーリエは、その惨状を見てそれぞれ思った事を短く口にする。シガとしては意外と慣れてしまった光景であるため若干引き気味の言葉だったが。
「あぁ? なんだお前ら――」
人の気配に気がついて、男のアークス――ゲッテムハルトは二人へ視線を向けていた。
「ここは俺の遊び場だ。譲ってやる気はねぇぞ?」
どうやら、ゲッテムハルトさんはこの場所を取られると思っているらしい。て言うか、敵は全滅しているんですけど……ナックル仕舞ってくれませんか?
「なんだお前かァ」
うわ。眼が合っちゃった……
「こんにちは。シガ様」
メルフォンシーナの丁寧な挨拶に友好的な笑みを返しつつも、シガとしては嫌な予感が加速していた。特にゲッテムハルトの目は、新しい玩具を見つけた様に野獣の眼光を放っている。
「それで、お前が頻繁にここにいるって事は……あのふざけた仮面野郎もリリーパに来てんのか?」
「え……あ、いや……そっちの方は無いモノとして考えていただければ……」
正直【仮面】とは、あれから一度交戦しているが、この場では言わない方が明らかに得策だろう。下手をすれば今後ついて来るかもしれないし。正直言ってこの人は恐過ぎる。
「じゃあ、今回はオマエが俺を楽しませてくれんのか? 俺の楽しみに横槍を入れた事だしなァ」
え……? 嘘……マジで?
思考が追いつかない。勝ち目なんぞ皆無に等しいのに、それどころか一撃でスイカのごとく頭を叩き割られる未来しか見えない。だから、両腕のナックルを仕舞ってください。
「なんだ女。オマエに用はねェ……」
「こ、この辺りで大暴れしているアークスは貴方ですね!!?」
「ちょ、フーリエさん――」
シガに対して歩み出してくるゲッテムハルトへ、逆に歩を寄せたのはフーリエだった。もはや、戦闘開始は秒読み状態。ソレを静止する彼女の行動は正直言って危険極まりない。
「大暴れ? ハッ、何言ってんだテメェはよ。これこそがアークスとしての本分だろうが。惑星に降り立ち、敵を排除する……俺たちがやっているのはそういうことだぞ?」
それがゲッテムハルトの独自のアークスとしての活動理論。彼の場合は“戦い”を中心に活動模様を組み立てている。
「違います! わたしたちアークスは原生住民との交流を行う事も――」
「それが詭弁だっつってんだよ!!」
必死に訴えるフーリエの言葉を、塗りつぶすようにゲッテムハルトは声を張り上げる。若干苛立っているような口調だった。
そして、同時に彼がフーリエに対して両腕に装備したナックルを向けるのは、“狩り”を二度も中断された本能的な怒りから来る行動であり、その拳速は並のアークスでは成す術もない。無論フーリエには躱すなど絶望的な代物だ。
「ちょっと、ゲムッテムハルトさん……それは流石に見過ごせませんって!!」
だが、先に攻撃挙動を感じ取ったシガが数呼吸早く動きフーリエを庇うようにゲッテムハルトの間に入って対峙する。
拳を向けながら笑う
一瞬でスイッチを切り替える
二人の実力差はどうあれ、この対峙は2秒で決着がついた圧倒的な
ちょっと機嫌が悪いので、ゲッテムハルトさんはアグレッシブに描写しています。ゲームでも思ってたんですが、良く逮捕されないよなぁ、この人。
次話タイトル『His find was a force 彼の目指す力』