ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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57.Born from those who're seeking 意味のある敗北

 戦いの後、オーラルの指示で分析班がハドレッドとの戦闘地域の状況調査を開始した。

 この場だけ周囲の物質の色が変わる程にフォトンの消失率が高く、要検証が必要であると適切な指示を飛ばしつつオーラルはクーナへ歩み寄る。

 

 「……逃がしましたか」

 

 クーナは逃亡したハドレッドの事を考えていた。その口調は、敵を追う者としては決定的な憎悪がある様な雰囲気では無く、様々な意味を感じ取れる口調である。

 

 「クーナ。しばらくハドレッドを追う事を禁じる」

 「! 何故ですか!」

 

 予想しない指示に、クーナは思わず声を張り上げた。

 

 「お前の着けたマーカーで特定の範囲に入ればハドレッドは、いつでも『虚空機関(ヴォイド)』で補足できる。今は傷を癒せ。そんな顔では表の仕事にも支障が出る」

 「そんな事を気にしている場合では!」

 「気にしている場合だ。それに、ハドレッドに以前以上の脅威は無くなった」

 

 オーラルは封印に成功し今は特殊なケースに入れた例の武器を意識しながら告げる。コイツにハドレッドは長い期間をかけて溜め込んだダーカー因子を奪われたのだ。今は、並のアークスが多少脅威に感じる程度のステータスとなっているだろう。

 

 「ハドレッドは溜めこんだダーカー因子を殆ど失った。今なら一人でも仕留められる。万全の状態で確実に仕留めろ」

 

 無理に追いかけて返り討ちになる可能性をオーラルは危惧していた。万全の状態なら、クーナが今のハドレッドに後れを取る事は無いだろう。

 

 「……わかりました」

 

 悔しそうに返事をする様子から、少なくとも理解してくれたとオーラルは察するとその頭を撫でる。

 

 「無理はするな。いつも通り冷静に仕事を熟せ」

 「……やめてください」

 

 と、クーナは頭に載せられた左腕をぶっきらぼうに弾いた。

 

 「そこまで言うのであれば、しばらく療養します。それと……セクハラですよ?」

 「次からは気をつける」

 

 そこまで言うとクーナはオーラルに背を向けて『マイ』を発動する。フォトンが少ないため少しだけ半透明だったが、さほど間を置かず、完全にその姿が消え去った。どことなく、嬉しそうな様子をオーラルは僅かに感じ取ったが、気のせいだと忘れる事にする。

 

 「アナタほどのアークスが、そこまでの傷を負うとは……ハドレッドの能力は予想以上と言う事だったのでしょうか?」

 

 そこへ、クーナと入れ違う様にカスラが現れた。少しだけ遅れての参入だったが、戦いは既に終わっており、結果として目的だった造龍は取り逃がした形となっている。

 

 「予想以上の成長だった事は確かだ。戦闘データは取ってある」

 

 オーラルは左腕で収集したデータチップを渡す。

 

 「奴にはマーカーがついている。索敵圏内に捉えれば、ついでも対策をとれる」

 「最低限の処理は出来た様で何よりです。それと、その傷はやはり――」

 

 カスラはオーラルの損傷から、何が起こったかをだいたい察していた。オーラルとクーナ。高い実力を持つ二人が、いくら予想外の成長を遂げていたハドレッドに一方的にやられたとは考えにくいのだ。

 

 「やはり、適合者以外では解放する事もままならん。コイツを『オラクル』に置いておくのは良策ではないな」

 

 あの時……コイツの意識が逸れたのは――やはり……

 

 「カスラ。現場の指揮は任せる。現場保全は必要ない。状況データを収集後、撤収していい」

 

 片腕と最低限の治療として補強資材を巻きつけたオーラルは立ち上がると必要な指揮権利を一時的にカスラに譲渡する。

 

 「分かりました。それと、一つ報告です。六道さんとの通信が途絶えました」

 

 六道。その名を聞いて、オーラルは頭を抱える。リリーパの地下に居るヤツの意志を今回の件で少しだけ引っ張り出してしまった。故に“六道”に潜って貰わなければならなかったのだが――

 

 「ったく……あいつは――」

 

 とは言っても、痕跡を残さないように姿を消したと言う事は、()()()と言う事なのだろう。長い間、懸念していた“奴ら”を――

 

 「こっちで連絡を取る。それと、総長に一つだけ報告を頼む。『サンゲキノキバ』を処理した、と」

 「了解です」

 

 そして、必要な事を彼に任せて、厳重な封印が再度施された武器をもったままオーラルはある場所へ行くつもりだった。

 

 「少し休暇を貰う。周囲には告知するが詳しい事を聞かれたら、ひと月程度で戻ると言っておいてくれ」

 

 

 

 

 

 「これ、撮り直せよ」

 

 アークスシップ――市街地のカフェテラスで、シガはアフィンから見せられて、アークスのプロモーションビデオを見て、そんな感想を呟いた。

 

 「やっぱ、相棒もそう思うか? ハァ……」

 

 ぐったりするアフィンは疲れた様な溜め意を吐く。

 周囲には一般市民が行き交いそれなりの活気が生まれている日道。二人もなるべく目立たない服装でその場に溶け込んでいた。

 そんな中で気落ちしているのはアフィン一人だけである。

 彼はアークスのイメージPVの制作を頼まれ先輩アークスのゼノとエコーと共に撮影し、上層部に提出した。しかし、上の反応は良いモノでは無かったのだ。

 

 「上層部に見せたんだけど、お蔵入りになるって言われてさ」

 「同業者なら苦労したのは伝わっているよ。ていうか、ヤバいだろこれ。特にフランカさんの所とかR-18だぞ」

 

 シガは、せめて加工しろよ、とグロ映像の所を指摘する。

 

 「尺が足りなくてさ。使わざる得なかったんだよ」

 「子供は泣くなぁ……これ」

 「俺もそう思った……」

 

 とにかく、撮影した本人も良い出来ではなかったらしい。しかし苦労した身として、一方的にお蔵入りとなった事に少なからずショックを隠せない様だ。

 アフィンの様子からも、相当苦労した撮影であったとシガは察し、他人事のように、あはは、と笑う。

 

 「笑い事じゃねぇって」

 

 アフィンは目の前にあるジュースをストローで飲む。愚痴らなければやってられないのだろう。その時、シガの持つ携帯端末が鳴った。送られてきたのは画像。ソレを見て、ある事を思い出す。

 

 「お、そう言えば……ほれ」

 

 シガはアフィンへ画像を見せた。それは、リリーパで発見された新しい原生生物。発見者はフーリエと言うアークスで、今後は彼女が調査と交流を進んで行う旨が記載されている。

 

 「ん? ぶほっ!? ごほっ! ごほっ!!」

 

 シガが見せた画像に、アフィンは思いっきり(むせ)て鼻からジュースが逆流した。それは小型の兎のような生物――リリーパ族がリュックに服を着て、Vピースをしている画像だった。

 

 「相棒、変な画像見せるなって!」

 「取りあえず情報の共有な。新しい原生生物――もとい、先住民として交流していくんだってさ」

 

 マジで居たのか……。とアフィンはシガの端末の画像をマジマジと見ながら感嘆の声を出す。そして、記載されている情報からは、一定の文化を持つ知的生命体であると書かれていた。

 

 「前の任務で見つけたのか? そっちも苦労してるんだな」

 

 アフィンはシガが、足を負傷して今は松葉杖に歩いている事を指摘する。

 骨折だが、三日で完治できる怪我。現在治療二日目で殆ど骨はくっ付いているが、大事を取って松葉杖で移動しているのだ。

 

 「現地で怪我したんだろ? 大変だったろ」

 

 アフィンの指摘は、シガがリリーパへ赴いていた時間帯に緊急の厳戒令が出された事にあった。ダーカーの危険値が一定の許容量を超えたため、特殊班による浄化作戦が行われたとの事。詳しい事は不明だが、当時はテレパイプも使用できずアークスシップも特定のポイントに行かなくては回収してくれなかったのである。

 

 「まぁ……色々と助けてもらってさ」

 「?」

 

 最後辺り、シガの台詞が小さくなる様子から苦い思い出がある様だ。まぁ、こんな怪我をするほどだ。よほどの事があったのだろう。

 

 ちなみに、シガは自力で移動できなかった為、フーリエに抱えられて(お姫様抱っこ)で、キャンプシップの回収地点へ移動するという、恥ずかしい体験をしていた。無論、恥ずかしすぎて誰にも言えない事である。

 

 「それよりも、今日は直接聞きたい事があってさ」

 

 シガは、これ以上追及される前に話題を逸らし、アフィンを呼び出した本題に移った。

 

 「この女性(ひと)って見たこと無い?」

 

 それは、写真では無く一枚の絵だった。鮮明に特徴を捉えた、一人のデューマンの女性。だが、その絵を見てアフィンは首をかしげる。

 

 「なぁ、相棒。これって一部創作入ってる?」

 「いいや。ほら、オレって記憶喪失だって前に話しただろ? その女性(ひと)、走馬灯で出て来たんだよ」

 

 今までで一番鮮明な映像(きおく)で記憶に留めておくことが出来ていたのだ。その記憶では……確かにこの女性は、

 

 “色の違う双瞳”に“一本の角”

 

 を持っている。

 

 「その絵は間違いないぜ。ただ、デューマンの女性って角は“二本”だろ? だから、ちょっとなぁ」

 

 オラクルでも角を持つ種族は、デューマンと呼ばれる者達のみだ。そして男女で決定的な特徴として角の本数が挙げられる。男が“一本角”で、女が“二本角”ということ。

 

 「悪いが見たこと無いなぁ。そもそも、“一本角”のデューマンの女なんて噂でも聞いたこと無い」

 

 アフィンもアークスとして活動を始めて、シガと同等で一年も経っていない。

 流石に情報網の構築や、他者との関わりはまだ浅い部類に入る。それでなくとも、シガの話を全面的に信用するなら、この“一本角”の女デューマンは、常識的に存在するはずの無い者。

 決定的な矛盾を生む事になってしまっていた。

 

 「やっぱりか。まぁ、仕方ないと思ってたんだよ」

 

 シガ自身も絵の女性は常識的にありえないと自覚している。それでも、自分が得る事の出来た記憶に関する唯一の手がかりなのだ。

 

 「それなら、オーラルさん、だっけ? その人は顔が広いんだろ? 何か解るんじゃないのか?」

 「ああ、そうなんだけどさ……」

 

 シオンに続いて、自らの記憶に関する事を気にかけてくれた恩師(オーラル)。彼に頼ることも当然の様に思いついた事だったが――

 

 「なんか、連絡つかないんだよなぁ」

 

 オラクルでも重要な役職に就いているオーラル。彼の行動は、こちらから把握する事が出来ない。だが、連絡すれば半日で返答が帰って来るのだが――

 

 「もう、二日も音信不通。ちょっと困っている」

 

 最後にオーラルさんに会った身内はマトイであり、彼女が言うにはリリーパに行くと言っていたが……

 まぁ、オーラルさんの事は心配する必要はないだろう。オレなんかよりも圧倒的に強い心身を持つ。

 

 そんな彼が、何かに()()()など考えられないからだ。




 アフィンが作っていたPVはドラマCD第一弾の件です。
 時系列的に、ゼノが居るころの話なので、このあたりにあったイベントだと思います。
 シガの記憶にあった謎の女性。オリキャラではなく、既存NPCです。
 次は、オーラルの向かった先と、例の“六道”が何者なのかを描写していきます。

次話タイトル『Guardian our darkness 暗闇の部隊』
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