ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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58.Guardian our darkness 暗闇の部隊

 桜が舞う。

 風に揺れた枝から放たれる花びらは、その世界の『和』の雰囲気と相まって、象徴的で、幻想的な光景を生み出していた。

 

 「……変わらんな。ここは」

 

 オーラルは舞う桜を一瞥し、小川にかかる小さな橋を渡る。背には封印した武器を携えており、ソレを対処できる者の元へ向かっていた。

 本来ならば、惑星へ跨いで飛ぶ際にはアークスシップへ連絡を入れなければ他の惑星への転移座標を貰えない。しかし、オーラルは自分の持つ権限を使い、この地へ自由に足を運んでいた。

 

 この惑星の事は厳重な情報管理の下で『オラクル』でも知っている者は極僅か。他には知られないようにデータもオーラル個人が管理しており、キャンプシップの信号も偽装して待機させている。

 ここまで、徹底的な秘匿が行っている理由は二つ。

 一つは、この星に古くから存在する災悪の存在。そして、この星には自分に関する情報が()()()()と言う事だった。

 

 “全部が全部、“憎い”って顔だな……”

 “ああ……そうだ。『オラクル』はゴミだし、この星の奴らも……お前らも全部クソだ!”

 

 それが、この星で獣のように生きていた一人の少年との出会いだった。

 

 「…………」

 

 そして、オーラルは迷うことなく一つの『社』へたどり着く。何十年経っても変わらない街並みは、逆に迷う方が難しい。

 

 「――――これは、これは。お久しぶりです」

 

 そして、社とその主を護る“守人”がオーラルへ声をかけてきた。見上げる程の身体はオーラルとの対比で“人”と“小人”程に差がある。

 

 「コトか……久しいな。またデカくなったか?」

 「昔から、この体躯が標準です。数日前に“六道”様もお見えになりました」

 「アイツもマメだな。マガツは問題ないのだろう?」

 「はい。そちらは問題ありません。なんでも、二人の童を追いかけているとか」

 

 やはり六道は奴らを見つけたか。アイツなら、そのまま始末できる可能性は高いが、その間、他の“管理”が疎かになるのはいただけない。

 

 「それよりも、オーラル様……その武器は――」

 

 コトと呼ばれた、“守人”はオーラルの背に封印された武器の存在を肌で感じ取っていた。独特の生き物の様な気配を、盲目故に明確に認識する事が出来るのだ。

 

 「事情があって解放してな。封印に『結灰陣』を使った。封印には成功したが右腕をコイツに捕まったままでな。スクナは居るか?」

 「今は黒の王の元へ行っております」

 

 そういえば、道中の町に“民”の姿が無かった。昔の事もあると言うのに、まだ種族間での小競り合いは続いているらしい。

 

 「どこの星でも思考の行きつく先は闘争か」

 「じゃが、その闘争を管理する“神”はどこの星にもおるまい?」

 

 そんな声が聞こえ、灰色の風が舞う。その様は、オーラルからすれば見慣れた光景。コトは“主”の帰りを悟り、畏まる様に片膝つく。

 

 「これはこれは、二十年ぶりの顔がおるのぅ。さてさて、めったに帰らないお主が、どう言った風の吹き回しじゃ?」

 

 風が止むと、かかっ、と独特な笑い声を共に扇子を片手に持つ一人の女が現れた。コトよりも小柄でオーラルに近い人型である彼女は、バサッと扇子を開いて口元を隠す。

 

 「休暇だ。(たま)には身体を休める事も必要だと知っているからな」

 「その台本をそのまま読んでいる様な言葉回しは、まぎれもなく貴様か。姿をコロコロ変えるでない」

 

 最後に会った時と、全く違う姿に扇子で指を差す様に指摘する。

 

 「パーツを変えるのはキャストの特徴だ。その機能をフルに使った技術の結論だ」

 「かかっ。その結果が片腕損失か?」

 

 女は閉じた扇子で喪失しているオーラルの右腕を差した。いつもはスカした彼をチャンスとばかりに叩くつもりである。

 

 「その件だ。コイツから、右腕を取り返してほしい」

 

 オーラルの目的は、“封印した武器”から右腕を取り出す事だった。緊急事態だったため、右腕を起点として封印を施したのである。

 

 「“ぱーつ”を変えればよかろう?」

 「そう言うわけにはいかない状況でな。右腕には重要なデータと技術の一部を使っている。それに、大まかに姿(パーツ)を変えるつもりはない。出来るなら取り戻したい」

 

 二人を迎えに行った時に、自分が誰だか分からなくなってしまったら本末転倒なのだ。更に、今のパーツ全てが、長年積み上げたデータを最も有効に機能させるために、調整を行っているのである。

 

 「なら“ウタ”に取りだしてもらえばよかろう? 今の『サンゲキノキバ』の所持者は――」

 

 そこで、彼女は何かを思い出す様に意味のある笑みを浮かべる。

 

 「前に“ウタ”が来たぞ。なんでも好きな人が出来たとか。『ブラックペーパー』だったかのう? お主の部隊は。ウタは除隊してその者と籍を入れたのだろう?」

 

 だから、隊長であるお主が直接動いているのだろう? と女は全てを悟ったように、部下の為に身を粉にして働いているオーラルへ、かか、と笑いを向けた。

 

 「ウタは死んだ」

 

 だが、その和気藹々とした雰囲気は、オーラルから告げられた言葉によって一気に消沈する。

 

 「―――は? 何を悪い冗談を」

 「(オレ)は冗談を言わん。それは、お前が一番良く知っているだろう?」

 

 そう、彼は冗談を言わない。言う人間ではない。だから、その言葉は真実だと、認識するしかなかった。

 

 「……馬鹿な。ウタ程の強者が討たれる事など――!!」

 「事実だ。だから、『サンゲキノキバ』をこの地に還しに来た。悪災(マガツ)の封印に使ってくれてかまわない」

 「……その前に、納得がいくように話してもらうぞ、ゼロよ。一体、ウタに何があった?」

 

 凄みを増した彼女は怒り狂えばある種の災害と化す。

 ソレに応じる様にオーラルが語ったのは、嘘偽り無い“笑顔”を取り戻して……生きていた、一人の青年の最後の瞬間(とき)だった。

 

 

 

 

 

 同時刻、とある“模倣惑星”――

 大気が、大地が、海が、その星全てが揺れていた。空は紫色になり、大陸の端端から、千切れる様に瓦解し、海の底へ沈んでいく。

 濁り始めた大気は、視界の確保もままならない毒として辺りに充満し、紫色の空には風に揺れるカーテンの様に、虹色のオーロラが荒れ狂っていた。

 

 「まぁ、子供の悪戯にしては度が過ぎとる」

 

 滅びが止まらない星。赤い水。噴火する大地。そんな、絶望を体現したような崩壊惑星で、ただ一人の人間(アークス)である初老の男はハルベルト――ヴァルヴェットを肩に担いでいた。

 

 彼は不思議と落ち着いている。いや、そんな状況は慣れっこだと言いたげに、目の前で浮かび見下ろしている二人の瓜二つの容姿をした童子を見上げていたのだ。

 周囲には玩具を散らかした様に、バラバラになった敵の残骸が錯乱している。老人を中心に散らかっている様から、彼が全て撃退したのだろう。その中には、明らかに人の体躯を越えるモノも存在していた。

 

 「なーに、なになに? おじいさん」

 「なーに、なになに? おじいちゃん」

 

 浮いている二人の童子が老人を見下ろしながら(わら)う。

 

 「さて、()ろうか?」

 

 そんな純粋な悪意を前に老人は一つも焦る様子無く、ただ笑っていた。

 

 「せーっかく、愉しかったにねぇ」

 「あの船団にぶつけるつもりだったのにねぇ」

 

 二人の目的は、言葉にも出た通り“ある船団”に、この星をぶつける事だった。ただ、それだけの為に創り出した惑星。それも、戦略的な意味合いでは無く、理由は至極単純――

 

 ただ、“それが楽しそう”だったからである。

 

 だが、その計画は、わざわざこの惑星に足を踏み入れて、対面した一人のアークスが居た事で破綻した。二人の興味の対象は彼に移ったのだ。

 

 「純粋悪よのぅ。愛の一つでも教示してやるか。そうさのぉ……賭けるのは――」

 

 老人が言う。数時間後には大爆発(ビックバン)を起こし、星が跡形もなく炸裂すると言うのに、そんな事よりも大事がある様に立振る舞っていた。

 

 「なーに、なになに?」

 「なーに、なになに?」

 

 二人は同じ顔、同じ表情で老人と滅びる星で“遊ぶ”ことだけしか考えていない。

 きっと、今まで一番“楽しい時間”になる、と感じていたから他の事など、どうでもよくなっていたのだ。

 

 「六道(ワシ)貴様(きさん)ら命でいいかのぅ? 【双子(ダブル)】――」

 

 砕ける大地。嗤う双子の悪魔。

 老人が所属するのは、『ブラックペーパー』と呼ばれる、オラクルの秩序を乱す存在を排除する秩序調停部隊。

 そして部隊の長を除けば、現段階で部隊に登録されているのは彼が最後だった。




 オーラルの指揮する部隊『ブラックペーパー』は、初期PSOを知っている人なら、ニヤリと来る組織名だと思います。あの、クハハの方が猟犬やってた組織です。
 さて、今回でEP1-4は終わりです。ようやくです。次はオリジナルキャラの紹介をします。そろそろ、情報が溜まってきたと思うので、ここらでまとめのつもりで。

次話タイトル『オリキャラ、オリジナル武器紹介IV』
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