「って事があったんだけど、シオンさんはどう思う?」
例のごとく、時間の止まった世界でシガは慣れた様に、シオンと邂逅していた。
とは言っても、こちらから接触する事は出来ないのでシオンからの一方的なアプローチだが、シガとしては別に彼女の事を特別視はしていなかった。
「……確執は簡単に払う事は出来ない。道が違えば、その間には亀裂が生まれる。人の本質。されど、それを繋ぐのも人の本質」
「なんか……オーラルさんに言われてるみたいだ」
「彼も又、本質の中に生きている。故に、眼をそらさずにまっすぐ結末へ歩を進めている」
知らず内にこちらの事情を知るシオンさん。つまるところ、何らかを要して常に、こっちの動きを把握しているのだろう。
「貴方も、多くを見るだろう。この後も、この先も、この前にも。だが、そこから目を逸らしてはならない」
未来は誰にも解らない。だから“未来”なのだと言いたいようだ。大切なのは……未来を知った時、不都合な事から目を逸らさずに己の意志を貫くと言う事らしい。
「事実へと通暁し、解へと至る。それは、貴方のみに……貴方だけに許されることである」
「オレだけが……許されたこと?」
シオンはゆっくり頷くと、瞳を閉じて考える様に胸に手を当てる。
「本来はわたしとわたしたちの責務。だが、それには能わず……わたしとわたしたちはただ知るのみ。道を外れし道理は霧散する。故にわたし
「…………」
「貴方は貴方であればいい。今はこの言葉への理解も理会も不要と、わたしとわたしたちは判断する」
本当に、申し訳なさそうな表情を作るシオンを見て、シガは逆に微笑みを向けた。
「気にしなくてもいいよ。オレはオレだ。ソレを見失う事は絶対にない。だから、シオンさんも偶には笑ってよ。女の子は笑わなきゃ損だよ?」
その言葉に、シオンは驚いたように目を見開く。貴重な彼女の表情の変化にシガは、ただ喋るだけの存在ではなく感情を持った“人”であると嬉しくなった。
「今は信じて欲しいと、それしか言えない」
「愚問だねぇ。そんなのは、本当にささやかな問題だよ」
「貴方に……感謝を」
とりあえず、シオンさんの話は後で考えてまとめるとして、当面は目の前の問題を片付けなければならない!
クラスの教導官たちへのブレイバーの容認。
オーザさんと、マールー先生は犬猿の中。リサさんに至っては、一対一での接触は控えたい。一筋縄ではいかない。こんなに難しい
「うーむ」
何かいい方法は――
「シガ」
「あら、シガさん」
考え事をしていると、フィリアさんとマトイに遭遇した。と言っても、オレはショップエリアの手ごろなベンチに座っていただけなので、あちらがこちらを発見した形である。
「どうも。二人とも買い物?」
「近い内に、メディカルセンターの開院記念会があるの」
「へー」
マトイは遠足を明日に控えた子供の様な雰囲気で楽しそうに告げた。彼女たちの抱える紙袋には、色々なパーティー用のルームグッツが詰まっている。
「シガも来るでしょ?」
「まぁ、マイホームパーティーとあれば、行かないわけにはいかないでしょ」
度々お世話になってるし。久しぶりに任務を忘れてじーさん、ばーさんと老後の話に花でも咲かせよ――――
「…………これだ」
「どうしたの?」
「マトイ、パーティしよう!」
その言葉に、きょとんとするマトイ。フィリアもシガの考えを読み切れず、その場では頭に疑問詞を浮かべるしかなかった。
「パーティ?」
シガはアークスロビーに居るアフィンを手始めに捉えた。明日に自身の自室に集まって、他のアークスとの交流の延長として、パーティをする旨を伝える。
「そう。そっちも、他のアークスと関係は持ってても損は無いだろ? オレとしては知り合いを紹介したいってのもある。交流パーティ!」
「なーんか、裏がありそうな雰囲気満々なのは、気のせいで良いのか?」
「ぬぅ、相棒よ。疑うもんじゃないぜ」
「腹を割って話してくれよ。困ってる事があるなら、協力するからさ」
うーむ。確かに正面からちゃんと話せばアフィンは協力してくれるかもしれない。ここは一つ、親友にも手伝ってもらおう。
「実はな、今、ブレイバーの――」
シガは、パーティと言う名目で、教導官の面々を一度にアザナミと引き合わせようと考えていた。
正直言って、あの三人は知り合いと言っても正面からでは荷が重い。
天真爛漫のアザナミさんや他の面子に緩衝剤になってもらって、どさぐさに紛れて容認してもらうと言う、浅いようで意外と有効な手段だ。
その為に、パーティという要素で違和感なしに引き合わせる作戦を思いついたのである。
「アザナミさんはおっけー、と――」
アザナミさんは、雰囲気的に祭り好きな感じがジャストで的中し、二言で“行く”と言ってくれた。これで二人、いや三人か。
その時、電気の様な感覚が頭を通り抜けた。
「おっと。センサーが反応しましたよ。困った女の子の――」
ジグじいさんでも誘おうと思ったが、彼は丁度居なかったので、仕方なしに帰ろうとしたところで、隅の花壇で座っているニューマンの少女を発見。
「はぁ……」
「ねぇ、知ってる? ため息をすると、それだけ幸せが出て行くんだってさ」
そんな事を言いながら、近づくシガにニューマンの少女――ウルクはいつもの元気の感じられない様子で顔を上げた。
「……あ、こんちはっす」
「あらら。だいぶ元気がないみたいだね」
いつもなら、太陽の様なエネルギーを発するウルク。だが今は、最低限のエネルギーだけを確保した乾電池の様な弱々しさだ。
「たはは、面目ない。前にシガさんに、アークスになれないなら、その関係役職に就けばいいって言ってくれたでしょ?」
ウルクはフォトンの才能が無くても、アークスに関わる何かがしたいらしい。
だが、シガも後で知ったのだが、ショップやロビーカウンターの人間は、有事の際に戦闘要員としても召集される事があり、その時に戦える者としても数えられている。
過去に幾度とアークスシップが襲撃された事もあり、年々、その規定は厳しくなっているのだとか。
「だからさ、戦う才能がない人は、ちょっと難しいかもって言われてさ」
どれだけ、やる気があっても結局は、“才能”の一言で片づけられてしまった。その理不尽に夢の全てが否定された様に感じてしまったのだ。
ウルクは天井を見上げる様に、身体を後ろへ逸らす。
「正直、今回ばっかりは堪えちゃってさ。せっかく目標が見え始めたのに……はぁ……」
再びため息を吐くウルク。シガは自身の左腕を意識した。
彼も、『フォトンアーム』が無ければアークスとしての活動は出来ないのだ。彼女の気持ちは痛いほどよくわかる。
「……! じゃあ、そんなウルクさんに耳寄りのイベントがあるんですけど、参加しますか?」
「イベント?」
「パーティするんだ。色々と現役アークスの人が来るから、今後の参考になると思うよ。それと友達も誘って来なよ」
「シガ」
「お、マトイ。どうだった?」
「フィリアさんは、時間作ってくれるって。私も一緒に行くことになったよ!」
「いやー、本当にありがとうね。オレの知り合いって、男ばっかりだからさ」
むさ苦しいパーティだけは絶対に避けなければと思っている。やっぱり、ワイワイ騒ぐなら花が無いとね!
「それで、私は次に何をすればいいかな?」
「ちょっと、説得をば」
こっちこっち。と、シガはマトイを手招きすると物陰に隠れて、ある人物の様子を伺う。マトイもシガのマネをして物陰から顔だけを出して彼の注視している人物を見る。
「右、リサさん無し。左、オーザさん無し」
「?」
「よし、あの人を説得に行くよ!」
シガは、フォース寄りのフォトン適性を持つマトイを表に立たせ、フォースの教導官――マールーをパーティに誘う作戦に出たのだった。
パーティ編です。本編では、他キャラとの交流や関係はほとんどないので、全くのオリジナルな会話になっていきます。公式がなかなか他キャラ同士のかかわりをやってくれないので。
パーティ編は大体七話くらいを予定していますが、前後する可能性があります。アキファンの人は、もう少し待ってください。
次話タイトル『Differences of mighty will 確執と因縁』