ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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61.Differences of mighty will 確執と因縁

 「つまり、別の角度から他のクラスも見てみる方がいい……と?」

 「はい。確かに、フォースは素晴らしいと思いますけど、そこに欠点が無い訳じゃないですよね?」

 

 シガはマトイと共に、マールーをパーティに誘うべく説得していた。普通に説得して誘っても先生は参加してくれるだろうが、教導官三人を同時に引き合わせるとなれば話は別だ。

 

 「それは、わたしも重々承知しているわ……だからこそ、欠点を補う相手を選んで組む必要があるの。特にハンターはダメよ。邪魔なだけだから」

 「むぅ」

 

 先生のハンター嫌いは相当なものだ。ていうか、単純にオーザさんが嫌いなだけの様な気がする。オーザ=ハンター。という縮図が彼女の頭の中で定着してしまっているかもしれない。

 一応、パーティには彼女の宿敵であるオーザさんも誘う関係上、ここで下手に嘘をついて返事をとっても逆効果にしかならないだろう。

 

 「……でも……任務って、思った通りに行かない事が多いんじゃないかな?」

 

 思う所があったのか、マトイが横から声を挟む。

 

 「自分だけの力じゃどうしようもない時に頼れるのは、自分の思いを預けられる仲間だと思う」

 

 

 “事情は分かった。背後はオレに任せろ。お前は……アイツをやれ!”

 “わかった”

 

 

 彼女の言葉が見せかけでないように、その意志を強く現した表情が、何かの瞬間と重なって見えた気がした。

 そう、オレもそうだ。色んな人と共に背を預けて戦ったからこそ、アークスとして生きる意味を強く感じる事ができているのだ。

 

 「マトイちゃん。言うねぇ~」

 

 と、シガの発言で自分が偉そうな発言を自覚したマトイは慌てて頭を下げて謝罪する。

 

 「ご、ごめんなさい! 私……偉そうな事を――」

 

 慌てるマトイちゃんも可愛いなぁー。と、シガはのんきに眺めていた。

 

 「……そうね。わたしも、ちょっとだけ頭が固くなってたみたいね」

 

 どうやらマールー先生はマトイの意志に共感してくれたようだ。今がチャンスとシガは畳みかける。

 

 「先生。明日、オレの部屋でパーティするんですけど、先生もどうですか?」

 「いいわよ。それはそうと、マトイさん? だっけ」

 「は、はい!」

 

 名前を呼ばれて、ピシッと背筋を伸ばすマトイ。なんか挙動一つ一つに愛らしさを感じるなぁ。

 

 「あなたも参加するの?」

 「はい」

 「あなたのフォトン特性は……フォースに適している。ぜひ、アークスとして活動して見ない?」

 

 

 

 

 

 マールー先生によるマトイ捕獲作戦を“あ、ちなみにオーザさんも呼びますよ”という発言で何とか撒くと、次はゼノ先輩を補完する為にショップエリアへ移動した。

 

 先生は、“オーザさん”というキーワードに、見たこと無いしかめっ面を晒していたが、何か言う前に退却したので“来る”と言う言質は取った。言ったことは守ってくれる人なので、パーティには来てくれるだろう。

 

 「う~、なんか……オーラルの喋り方がうつった気がする……」

 「いや、実はあれが素だったりして」

 「もう! シガはすぐそう言う事言う!」

 「あはは。いや、おにいさんはね。実の所、心配してたんだよ」

 

 マトイも自分と同じ記憶喪失の身。だから、何かしら不安や迷いが日々の生活で大きくなっている可能性も懸念していたが、ちゃんと自分の思った事を言えるように成長しているようだ。

 

 「マトイも、ちゃんと前に進んでるみたいで一安心ですよ」

 「……私は、ちょっと心配かな」

 

 少しだけ意味ありげな言葉と、暗い表情になったマトイの様子は見逃せなかった。

 

 「? 何が?」

 「シガには言えないことー。いつもからかうから、そのお返し」

 「ぬぅ……」

 

 その様子にマトイは、ふふっと笑う。出来るようになったのぅ……マトイさん。

 

 “ふざけるなよ、テメェ!”

 

 その時、そんな声が聞こえて、二人はショップエリアが騒がしくなっている様子に気がつく。シガとしては目的の人の声であったために、その元へ歩を進めた。

 

 

 

 

 

 ゼノは『オラクル』でも優れたアークスとして認識されている。

 第二世代にも関わらず、自らの適したクラス以外で標準以上の立ち回りが出来ている彼は、新人アークスへの面倒見もいい。人格的にも実力的にも、上層部からは高い評価を得ていた。

 

 対するゲッテムハルトは『オラクル』でも問題児として認識されていた。

 粗暴で、マナーも悪く、他のアークスの任務に割り込んで担当アークスを危機に晒した事もある。だが、そんな彼が未だに拘束されず、状況注意だけで済まされているのは、その圧倒的な実力にあった。

 あの、オーラルが次代の『六亡均衡』の候補に挙げる程のセンスとフォトン適性を評価していたが、ある事件を境に“人格的に問題あり”と評価から外された経緯がある。

 

 二人は優れたアークスであり、その力を行使する方向性(ベクトル)は違えど、ダーカーを滅ぼす、という結果だけは揺るがないモノだった。

 

 「……ふざけるなよ、テメェ!」

 「いいぜ、ゼノォ! 来いよ! オマエとなら……それなりに楽しめるからなァ!」

 

 そんな有名なアークスである二人が、人の行き交うショップエリアの広場で衝突していた。思わず足を止めるアークスは居るが、ゼノの相対している者がゲッテムハルトであったため、皆関わりにならないようにそそくさと去って行く。

 その為、二人を止める役目を担っているのは、相方の二人だけだ。

 

 「ゼノ、落ち着いてって!」

 

 アークス同士の衝突はご法度である。ゼノ側にいるエコーは、冷静に状況を見て手を出さないように彼を静止していた。

 

 「ちょっと、メルフォンシーナ! あなたもそっちの、凶暴バカを止めなさいよ!」

 「……一体誰の事を差しているのか、私にはわかりかねます」

 

 対するゲッテムハルト側にいるメルフォンシーナは、彼が何をしようと傍観を決め込むつもりだった。

 挑発するゲッテムハルトに、今にも殴り掛かりそうなゼノ。この場でまともな精神で静止をかけているのはエコーだけ。警備のアークスが駆けつけるのも時間の問題であった。

 

 「ちょっとちょっと、お二人さん! めっちゃ注目されてますよ!」

 

 その場へ声を挟んだ、勇気のあるアークスはシガだった。ゼノとゲッテムハルトはそれぞれ、マトイを連れた彼を一瞥する。

 

 「シガ……」

 「……チッ、間の悪いヤツめ」

 

 ゲッテムハルトは、気勢が削がれた様に一度、ため息を吐くとゼノに皮肉を言いながら歩き出す。

 

 「じゃあなァ、ゼノ。甘ちゃんは甘ちゃんらしく、ザコ共とピーピー慰め合ってな!」

 「……それでは、失礼します」

 

 最後まで、狂笑を浮かべながらゲッテムハルトは去って行った。

 

 「あ、まいったな……ゲッテムハルトさんの連絡先聞き忘れた」

 

 殺伐した空気の中でも、シガは己を見失っていなかった。

 何と言うか、ゲッテムハルトさんに足を折られたわけだけど、別に恨んでいるつもりも無ければ、怖いと感じている訳でもない。(寧ろ、リサさんの方が数倍コワイ)

 

 「タイミング逃しちゃったなぁ……」

 

 それどころか、明日のパーティに誘おうかと思っていた。

 

 「シガ……今の人って?」

 

 マトイは歩いて行くゲッテムハルトの背を見ながら、その凶暴性からシガとの関係が気になっていた。

 

 「ああ、ちょっと任務で何度か世話になってる人。マトイも助けられたことあるよ」

 「え?」

 「最初に救助した時、ゲッテムハルトさんが居なかったらオレも君も、今ここには居ない」

 

 まだ、届かない背中だけど……必ず()()()()()見せる。自然と生身の右手に力が入った。

 

 「…………」

 

 その背中を見るシガの表情を見てマトイは気落ちする様に表情が下を向く。

 

 「ゼノ……」

 「……悪かった、エコー。手間かけちまったな」

 

 すると、その声を聞きシガは本来の目的を思い出しゼノへ振り向いた。

 

 「大丈夫ですか? ゼノ先輩――」

 

 ゼノとゲッテムハルトはシガから見れば正反対の性質だと思っていたが、まさか二人が知り合いだとは思わなかった。しかも相当の確執がありそうだ。

 

 「ああ、格好悪いところを見せちまったな」

 「凄く、格好悪かったですよ~」

 

 ゼノは茶化すシガに高速で回り込むと、古いプロレスの絞め技を極める。

 

 「格好悪くて、わ・る・か・っ・た・な!」

 「ギャー!」

 

 変な悲鳴を上げるシガ。彼の意識が完全に消えてからゼノは解放すると、少しだけどこかすっきりした感じだった。

 

 「ったく……出来た後輩を持つと、先輩は苦労するぜ」

 

 あのままでは間違いなくゲッテムハルトと衝突していた。あの場を治められるのは、ただのアークスでは荷が重い。特に、レギアスやオーラルの様な、有無を言わさない実力者でなければこうも穏便には行かなかっただろう。

 

 「気持ちは解るけど、せめて場所を選びなさいよ」

 

 エコーも、ゲッテムハルトとの衝突は仕方ないと諦めていた。ゲッテムハルトとゼノの二人の関係は、ただの“仲の悪いアークス”では済まされないからである。

 

 「……だな」

 

 明らかに冷静さを失っていた数分前の自分を思い出しつつ、ゼノはポリポリと後頭部を掻く。

 

 「それで、君はシガの友達?」

 

 エコーは、気を失ったシガにオロオロしているマトイに声をかける。

 

 「は、はい! えーっと……こんにちは!」

 

 初々しいその様子にエコーはあまり他人とのコミニュケーションが慣れていないと察して口調を和らげる。

 

 「おーい、シガ。起きろー」

 

 ゼノは自己責任で気絶させたシガの意識を引き戻す。

 

 「ハッ!? 痛てて……ちょっとは加減してくださいよ」

 

 シガは首の調子を確認しながら、立ち上がり記憶と現状を何とか思い返す。

 

 「大丈夫?」

 

 マトイは心配そうに近づいて来ると、自然な動きでシガの傍へ寄った。

 

 「シガ。紹介してくれないの?」

 

 小動物の様にシガの影に隠れるマトイを見ながらエコーは問う。

 やれやれ、とエコー側に戻ったゼノも、この場の人間関係を問題なく繋ぐ事の出来るシガの言葉を待った。




 人が着々と集まりつつあります。もう、誰がパーティーに参加するのか決めているので、もう一悶着あります。
 あ、次はゲストで後輩が出てきます。

次話タイトル『Apprentice Braver 剣士見習い』
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