ファンタシースターオンライン2~約束の破片~   作:真将

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62.Apprentice Braver 剣士見習い

 「そうか。手伝ってくれるか! 相棒(アフィン)よ! そんじゃ、そっちのメインクラスの教導官を誘ってくれ! 任せたぞ!」

 

 と、一方的にそれだけを言い残すと相棒(シガ)は、ぴゅー、と走って逃げて行った。そして、言い返す間もなく、安請負(やすうけおい)したことを後悔しつつも、今更責任を放棄する事も出来なかった。

 

 「……相棒。最初から、このつもりだったか……」

 

 協力すると言い出したのは自分だが……そう、自分だけれども! ちゃんと何をするのか聞いてから返事をするべきだったなぁ。

 正直言って、リサさんは苦手なのだ。そりぁ、最初の頃はレンジャーというクラスで戦っていく関係上、彼女の教えに感心する事は多かった。相棒も、試作クラスで頑張っている事もあり、次に組んだ時に出来るだけサポートしてあげようと精進したのである。

 だが、彼女に関わって少しずつ苦手意識が生まれるのは必然と言っても良いだろう。寧ろ、リサさんを“普通”だと断言できる人の方が少ない。ていうか居ないかもしれない。

 

 「っと、噂をすれば――」

 

 アフィンは、満足そうに帰還したリサの姿を捉えた。そして、意を決して声をかける。

 

 

 

 

 

 『せっかく誘っていただいたのですが、明日も任務でアークスシップには帰れそうにないんです』

 「あ、別に気にしないでください。こっちとしては急な事だったので」

 『次の機会にはぜひ! 絶対に、時間を作ってお伺いします!』

 「はーい。任務、頑張ってください」

 『はい。それでは失礼します』

 

 シガは端末を経由した連絡を切る。会話相手は前の任務にて連絡先を交換したフーリエであった。彼女は是非とも参加してほしいと思っていたので連絡を取ったのだが、最近のリリーパは色々と騒々しい。リリーパ族との仲渡し役であることもあり、あちらこちらから依頼が舞い込んでくるのだろう。

 

 「どうだったの?」

 

 マトイが結果を尋ねてくる。

 

 「仕事だって。しょうがない」

 

 出来るなら、マトイにフーリエさんを紹介したかったが、今リリーパは色々と大変な時期だ。今度手伝いに行こう。

 

 「それで、なんで俺を連れてるのか説明してくれんのか?」

 

 シガは、マトイに続き、もう一人の仲間(パーティ)を加えていた。仲間の名前はゼノ。シガの先輩アークスである。

 

 「ちょっと癖の強い人が居ましてね。おっと、マトイはそろそろフィリアさんの所に帰った方がいいんじゃない?」

 

 端末のデジタル時計を見せてあげると時間の事を忘れていたマトイは、あわわ! と慌てて走って行った。

 

 「うむ。時間的にいい感じ」

 「シガ。どういう事かちゃんと説明してくれよ」

 

 シガはゼノとエコーをパーティに誘った。そしてエコーはパーティで前に撮ったアークスのPVを見せるとデータを倉庫から引っ張り出しに行っており、この場にはいない。

 

 「だから、ちょっと一筋縄ではいかない人が居まして、その人をパーティに誘いたいんですよ」

 「ふーん。で、それって、まさかオーザじゃねぇよな?」

 「あ、そのまさかです。ささ、先輩。現役のハンター同士、上手く説得をお願いします!」

 「おいコラ」

 「む! そこにいるのは、シガ!」

 「わわ。来たァ!」

 

 ささっと、シガはゼノの影に隠れる。

 

 「よう、オーザ。相変わらず熱血やってんな」

 

 と、ゼノは頼もしくも前に出てオーザと会話を開始した。彼を仲介してオーザを説得する作戦であり、予想通り話は弾んで行く。なんか、パーティに誘う事とは全く別の会話(フォトンアーツや立ち回りなど)をしている。

 

 「なんじゃ? ゼノじゃねぇか」

 

 すると、その場へ第三者の声が入って来る。聞き慣れない声に、シガはそちらへ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 そこには、あまり見ない和服を身に包んだ一人の老人。シガよりも高い身長に、短髪を逆立てるように後ろに流していた。

 

 「六ジイ!」

 「六道殿。お久しぶりです」

 

 なんだ、このジイサン? と疑問詞を浮かべるシガを余所に、知り合いらしいゼノとオーザはそれぞれ反応を見せる。

 

 「かっかっか。相変わらず、暑苦しいハンター共よ。少しは浮いた話とかせんか」

 「おいおい、勘弁してくれって」

 「そのような事にうつつを抜かしている場合ではないのです」

 「なんじゃつまらんのぅ。任務明けの老人をいたわる事もしらんのか」

 

 と、今度は六道の視線にシガが入る。シガは、どうも、と軽く会釈した。

 しかし、対する六道は少しだけ驚いたような表情の後、何かを考える表情へ変わる。

 

 「……なんじゃ、そう言う事か。ゼロの奴め……」

 「?」

 

 とシガを見る六道の眼は、どこか懐かしむようだった。特に言葉の最後の方は消える程に小さく呟いていたため、シガには聞こえていない。

 

 「して、ボウズ。名はなんという?」

 

 ゼノ先輩や教導官のオーザさんが敬意を払う相手だ。それに、立ち振る舞いから気配まで、相当の実力者である事は初対面でも判断できる。ここは、機嫌を取っておいた方がいいだろう。

 

 「シガっす」

 「“シガ”――か。良い名だ。名付けた者はさぞ(ほま)れじゃろう」

 

 六道は優しく微笑む。その様子はシガとしても、どこか心から安心できるモノがあった。なんとなくだが、六道(かれ)の事を知っている気がする――

 

 「あの――」

 「そうだ。六ジイも、パーティに来ないか?」

 

 その言葉を中断する様にゼノが声を出した。オーザが首を傾げ、六道が聞き返す。シガもすっかり忘れていたと思い出し、その事を切り出す。

 

 「パーティ?」

 

 明日にシガの自室で行われる身内だけの小さなパーティ。今、人数集めをしている最中で、シガも、ぜひと誘った。

 

 「間が悪い事にのぅ。明日は任務でな」

 「あらら」

 「代わりにパーティにはオーザが行くわい。のぅ」

 「む、六道殿の言葉では仕方ない」

 

 と、意外な形で目的を達成できた。謎の老人――六道に感謝。当初の目的も達成し、後は相棒からの結果を待つだけだ。

 

 「ところでシガよ。そのパーティなるものに女子(おなご)は来るのかのぅ?」

 「一応、男女対比は平等になる様に考えてますけど……」

 「うむぅ。本当に行けなくて残念じゃあ」

 

 

 

 

 

 「よし、だいたいこんなものだな」

 

 とりあえず、ある程度の人数は揃った。いや、ちょっと誘い過ぎたかなぁ、と思える程の人数になっている。

 

 「断られた人もいたけど、形だけは整いそうだな」

 

 連絡の取れないゲッテムハルトさんとオーラルさんはさておき、ヒューイやマリアさんも誘ったが、二人とも任務でありタイミングが悪かった(ヒューイに関しては、とてつもなく来たそうだったが、電話の向こうで六亡の一の声が聞こえたのは幻聴ではないだろう)。

 

 「うーむ。後気になったのは、ブレイバーの候補生かぁ」

 

 アザナミさんに、例のバレットボウを渡した候補生も誘ってもらったが、後に当人から連絡があると言っていた。そちらは連絡待ちでいいが、出来れば今日中に欲しい所――

 

 「っと、噂をすれば」

 

 鳴った端末を手に取ると、着信はアザナミさんから。いつもは適当にメールなのに、妙な所で律儀だ。

 

 「シガです」

 『お、出た出た』

 「?」

 『ほら、自分で言いなって。連絡つくなら自分で話すんでしょ?』

 

 通信の向こうから、アザナミさん以外の声が聞こえる。少しばかり、幼い口調が耳に入る。

 

 「アザナミさん。誰か居るんですか?」

 『ん? ああ、ちょっと待ってね。ほら! いずれ会う事になるんだから、色々と聞いておきなって』

 

 なんとなく予想できる会話相手を少しだけ無言で待っていると、

 

 『あ……ど、どうも』

 

 と、しどろもどろの口調が聞こえてきた。予想通り、だいぶ幼い声。年齢的には20代は行ってないだろう。

 

 「おっす。君は、アザナミさんが話してた子?」

 『え、あ、は、はい! イオって言いマス!』

 「オレはシガね。よろしく」

 

 初々しいなぁ。声が裏返ってるよ。

 

 “イオ、声が裏返ってるよ~”

 『え!? あ、いや、もう! 今指摘する事じゃないだろ!』

 

 と、電話の向こうではアザナミ節が全開でイオを攻撃していた。

 

 「それで、明日のパーティはイオちゃんは来れるの?」

 

 シガの問いに、慌てて対応するイオ。なんとなく端末を落としそうになって、お手玉している様が目に浮かぶ。

 

 『そ、その件なんですけど……おれ――あ、いや! わたしなんかじゃ畏れ多いというか……』

 “イオは気難しく考えすぎなんだよねぇ。別に気楽でいいじゃん”

 “そう言うわけにはいかないだろ!”

 

 そんな二人の会話が受話器越しに聞こえてくる。

 

 「まぁ、無理強いはしないけどさ。オレ個人としてはイオちゃんと会いたいってのはあるかな」

 『え?』

 「どうなるにしても、イオちゃんはアークスになるんだろ? なら、どちらにせよ、オレの後輩って事じゃない?」

 『後輩……』

 「君が背中を追ってくれるアークスになってるかは解らないけどサ。その時は気軽に“先輩”って呼んで欲しい。同じクラスのアークスとして色々と話しておきたいし」

 『わ、わかりました!』

 「それで今回はどうする?」

 

 変に緊張していたイオはいつの間にかその緊張が解けている事に気づいた。シガは別に畏まる存在ではないと、遠回しに伝えたのだが、察しが良い子だったらしい。イオは、少し悩んだ後に回答を出す。

 

 『今回は遠慮しておきます』

 「そう。うーむ。すーっごく、残念」

 『べ、別に、先輩が嫌いとか! そう言う事じゃなくて! やっぱり、ちゃんとアークスになって肩を並べた時に色々と話をしたいから――』

 「……そう。いやー、本当に出来る後輩が入って来るって思うと、先輩はプレッシャーで押しつぶされそうですよ」

 『ええ!? 別におれは出来るアークスってわけじゃ……そもそもまだアークスじゃなくて候補生――』

 「イオちゃん。()()()行こう。自分を見失うのが一番遠回りになるよ」

 『――――はい!』

 「アザナミさんいる? 変わって頂戴」

 

 と、はいはーい、と陽気な先輩の声が聞こえてくる。

 

 『どうだった?』

 「一つだけ良いですか?」

 『どうぞ』

 

 アザナミはシガが何を言おうとしたのか察して、発言の権利を与える。

 

 「メッチャいい子じゃないですか! イオちゃん!」

 『でしょ。ちょっとひねくれてるけど』

 “余計なお世話だ!”

 「これは、絶対に“ブレイバー”を容認させないといけませんね!」

 『そそ。絶対に“ブレイバー”を創るぞー! ほら、イオも』

 「ウォー!」

 “お、おおー!”

 

 と、未だに姿の揃わないブレイバー三人衆は、容認に向けてエネルギーを充電したのであった。

 そして、その一歩として明日のパーティは成功させなければならないのだ。




 普通に生きてた六道のジジィと、イオさんが出て来る回。友達がイオさんの登場を待ちきれず、この原稿を投げて来たので、邂逅する事にしました。ちなみにEP1ではイオさんの出番はこれまでの予定です。アイディアがあれば、また出すかもしれませんが基本的に彼女の本格的な出番はEP2からです。

次話タイトル『Feast of young people 若者たちの宴』
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