「それで、最近どんな感じ?」
シガはテオドールと共に、夜のショップエリアに買い出しへ赴いていた。アークスシップの施設は基本的に24時間稼働であるが、まだ時刻的にもさほど遅くは無い。
「……どんな感じって?」
二人は、任務帰りやこれから惑星に降りるアークスなどとすれ違い、とりあえず雑貨の売られているリサイクルショップへ向かっていた。
「色々あるだろ。て言うか、テンションがいつも以上に低いなー、お前」
「……シガの事は何で僕を誘ってくれたの?」
「ん? お前をパーティに誘ったのはウルクさんだろ?」
最初はテオドールにも連絡を入れたが、返答が無かったため諦めていた。しかし、ウルクが友達を誘って連れてきてくれたため、結果としては参加してくれたと言っても良いだろう。
リサイクルショップに辿り着いたシガは、適当なアルコールとパーティフードを見繕う。
「……やっぱり、僕ってアークスには向いていないかもしれない」
「話聞くぞ?」
シガとテオドールは、パーティに戻る前に、ショップエリアでも人気のない隅に移動して、そこから市街地を見下ろせる位置のベンチに腰を下ろしていた。
「まだ、中々任務に慣れなくて、オーラルさんに仕事を回してもらったり、手伝ってもらったりしていたんです」
未成年のパーティ参加者の為に買い足した缶ジュースの一つを、テオドールに渡す。
「……マジで? オーラルさんとフィールドに降りたの?」
「うん。すごく強かったよ」
あれから、オーラルは彼に色々と世話を回してあげていたらしい。めっちゃ羨ましい。あの人の戦いは、訓練での手加減した
「でも、手伝ってくれたのは『アムドゥスキア』の自由探索許可を取るまでで、後は対応した依頼を回してもらってたんだ」
「なら、ソレを熟していたら慣れて来るだろ?」
オーラルさんもそれを見越して無茶な依頼は出さないだろう。テオドールの性格を彼が読み違えるのは考えられないからなぁ。
「そうなんですけど……なんていうか……新人でも簡単にこなせる依頼ばかりで、知り合いにサボっているのがバレてしまいまして」
その発言にシガはズっこけた。ベンチから落ちそうになって何とか態勢を整える。
「その辺りは、おにーさんは覚悟を決めたと思ってたけどなぁ~」
シガもテオドールの性格は重々承知している。だが、これは他人が言っても中々治るものではないのだ。それこそ自分の中で、何か強い一つの“芯”のようなモノを持たなければ変わることは出来ないだろう。
テオドールにはまだ“
「……ぼくも怒られると思ったんです。けど彼女は――」
そのテオドールの怠惰を、その友達――ウルクは叱りつける事はせずに、逆に優しく“無理をしないで”と諭したのだと言う。
シガは買い足した袋から、一つの缶のお茶を取り出して空ける。
「最初は許してくれたと思ったんですよ。けど、その言葉を思い出す度に、ぼくは本当に何をしているんだろうって思うようになって……」
「ふむ」
「彼女はアークスになりたくてもなることが出来ない。だから、彼女の分までぼくが頑張らないといけないのに……その為にオーラルさんやマールーさんも手伝ってくれるのに――」
「ふむふむ」
「ぼくの不甲斐なさを、彼女が彼女のせいだと感じているのが、とても歯がゆい。悪いのは、ぼくなのに……」
と、項垂れて顔を上げる事さえも気まずくなったテオドールはどんどんネガティブな思考に沈んでいた。と、その肩をシガは軽く叩く。
「なぁ、テオドール。これ見てみ」
シガはテオドールに顔を上げる様に促す。重々しく彼は顔を上げると、そこには夜の街模様に変わった市街地の明かりが俯瞰視点で視界に入り込んできた。何て事の無い、通常の街模様である。
「あの光の一つ一つをオレ達が護ってるんだぜ?」
「ぼく達が……護ってる?」
テオドールからすれば、単なる夜になった市街地の光景。だが、シガからしてみれば少しだけ違って見えるらしい。
「アークスは人類にとって、最も前を歩く存在だろ? そこに、出来る奴、出来ない奴の線引き意識はない。平等に“ダーカーの脅威から護ってくれる存在”として認識している以上は、驚異の前に
幾度と、過去にアークスシップはダーカーによって襲撃を受けた。だからこそ、自分たちの世代で、ソレが起こらない保証はどこにもない。そんな時に矢面に立って戦わなければならないのが、自分達――アークスなのだ。
「それに、オレ達は無限の宇宙に出る権利を持ってるんだぜ? あっちこっちの惑星に行けば、お前の悩みなんてぶっ飛んじまうほどの光景が数えきれないほどある」
お前は、まだナベリウスの森とアムドゥスキアの洞窟にしか言った事が無いだろ? とシガは付け加えた。
「今以上に惑星間の安全性が良くなれば、一般市民でも星に降りる時代が絶対に来る。そうなる様に、オレ達で頑張ってみようじゃないか」
「そうかな……」
「オレはオーラルさんみたいに上手く諭せるわけじゃないからなぁ……言いたい事はただ一つだ!」
シガは、半分持てよ、と買い物袋の半分をテオドールに差し出す。
「可愛い娘は絶対に傷つけるなよ! 悪いと思ったら、男から謝るのか基本だ!!」
「…………あはは。シガ……君は本当に変わらないね」
と、本日初めてテオドールはネガティブな表情から、良い感情を乗せた顔で笑った。そして、差し出された買い物の半分を受け取る。
「パーティに戻るぞ、親友。オーラルさんの戦いぶりを詳しく聞かせてくれ」
「ハッ!!」
マイルームに戻ったシガは入った直後に感じた不意な影に一瞬だけ回避行動を取るが、それは一つでは無く複数存在していた。最初の襲撃は躱すが、次の襲撃は躱しきれずそのまま拘束される。
「よーし! 確保ぉー!!」
まるで容疑者を拘束する様にシガは俯せに、手を後ろに回されて拘束された。拘束したのはゼノであり、酔った悪ふざけかと思ったが――
「ちょっと! なんなんスか! これ!」
と、アザナミが意味深に目の前に立っていた。なんだか、というか結構わかりやすく彼女も酔っている気がする。あ、パンツ見えそう。
「シガぁ~。アタシ達はねぇ、あの部屋に興味があるのよ」
彼女が指差す先には、開かずの間となっているもう一部屋である。侵入厳禁で開けられないように厳重なセキュリティを着けてある部屋だ。
「…………いや、開けませんよ?」
パンツなんかを気にするよりも、顔が青ざめる事態が進行している事を認識する。絶対に開けない理由はただ一つ。オレの恥ずかしい趣味が露呈してしまうからだ。
「ふっ、そう言うと思ってたぜ。だが、会場は満場一致した! 鍵があるんだろぉ~」
「滅茶苦茶酔ってますね! ゼノ先輩!」
苦笑いを浮かべるシガは、眼の合ったアフィンにアイコンタクトで助けを求める。
“助けてくれ! 相棒!”
“無理だ”
手で×字を作るアフィンにシガは、そんな~、という視線を向ける。
「ふ、ふっ! 絶対に開けませんよ! ちなみに無理にこじ開けようとすると、警報が鳴りますからね!」
「ありましたよぉ」
だか義手に隠した小さなキーは、スキャンしたリサによってあっさり見つかってしまった。リサさんも賛同者かい!
「よし、ナイス、リサ! ゼノはシガを押さえておいてね」
「うわぁぁ、止めてくれぇぇ!!」
「お、結構力あるなお前。だが、おとなしく観念するんだな!」
なぜか、何も悪いことをしていないシガが悪者の様に見られてしまうと言う不思議な光景。
エコーとフィリアはマールーとマトイを混ぜて呆れ顔と苦笑いで、様子を眺めており、オーザとアフィンとウルクはハンターのなんたるかを聞かされていた。
見事な反対勢力の足止め!? テオドールは何が起こっているのか理解できずフリーズしている。
「よし、開いた。それじゃ、シガの秘密を拝見じゃあ!!」
ぷしゅーと空気が抜ける音が聞こえて開いた扉をアザナミとリサはくぐる。部屋は真っ暗だった。リサは暗視視界でスイッチの意志を探ると、明かりをつけると――
「…………? ねー、シガ。この部屋って何?」
「あらあら」
「なんだ?」
「なになに?」
と、ゼノは目的を達成したのでシガの拘束を解いて立ち上がる。他の面々も、アザナミとリサの反応から気になり、立ち上がるとその部屋にゾロゾロと入って行く。
「……楽器?」
その部屋には、一つのスタンドマイクと、十一の楽器が並べられていた。
テオドールのイベントを消化しました。そして最後の楽器云々は、人物紹介で伏線張ってました。
次は演奏会して、少しオーラルが出てきます。
↓宴会開始時の席(○は長机)
エコー 〇ゼノ
フィリア〇オーザ
アザナミ〇シガ
マールー〇リサ
ウルク 〇アフィン
マトイ 〇テオドール
次話タイトル『Because with knowledge 後悔を知っているからこそ』