16:00→00:55起床
「記録日付A.P.233年3月19日12時。今居るのは、課題対象の惑星――アムドゥスキア。現在、わたしはアークスの方々と一緒に降下し、直に惑星の環境を調べています。この映像レポートも後の参考に所々で撮影して行こうと思い、今回持ち込みました。それでは、今回、わたしの依頼を手伝ってくれる現役アークスの方々を紹介します」
「シガ君。こっちに来てくれ。君ならあの上に登れるだろう?」
「パーティリーダのアキさんです。今、高所へ登るためのルートを模索している最中で、どうやら突破口を見つけた様ですね」
「んー、ちょっと狭いですね。あ、何だろうこの穴――――」
「今、少し上がった場所を調べているのが、シガ先輩です。わたしの先輩の先輩なので、そう呼んでいます」
「向こう側に繋がっているかどうかを確認してくれればいい。迂回する道もあるのだが、広間を通ってしまう。龍族とは極力戦いたくなくてね」
「あれ? 先生! ちょっとマズイですよ! あの穴の温度が上昇して、あれは
「アキさんの隣で端末を片手に操っているのがライトさん。アキさんの助手で研究員です」
「――――ぶほ!?」
「うわ! 火炎泉から炎が噴き出しました! カメラが溶けるかもしれないので、ここでいったん撮影を中断します!! シガ先輩!! 大丈夫―――」
「うむ。行けそうにないね」
「事前調査は欠かさずにお願いします。ほんとにマジで」
黒こげになったシガは珍しく抗議していた。これで五回目なのだ。彼女の指示に従って黒こげになるのは。
「すまない。火山洞窟の地表は数メートル掘り返せばマグマなのだ。だが高所ならその可能性は低いと思っていたが……地形データを更新しておくよ」
「すみません、シガさん」
ライトも申し訳なさそうに頭を下げて来る。そう言った先行調査を引き受けるのもこの任務の範疇なので仕方ないが……ある程度は妥協し続ければいくら体力があっても足りない。
「まぁ、これでどう進むか決めてくれれば一番いいですけど」
自分の苦労がこれからの道筋に貢献できたと信じておこう。
「シガ先輩、大丈夫ですか!?」
「大丈夫。大丈夫。これでも結構打たれ強いからさ」
マリアさんやリサさんにボコボコにされて手に入れた、打たれ強さは健在だ。二人に感謝しなくては。……あれ? 感謝する必要あるっけ?
「くっ、過去のトラウマが。まだ克服できていないか……」
片膝を着いて額を抑えるシガにロッティは困ったようにおろおろしていた。
「先生。あちらの壁はかなり薄いようです」
そんなシガとロッティとは別に、ライトは地形データから比較的に壊しやすい壁を調べ上げていた。データと照合して見つけたのは厚さ的に30センチほどしかない壁。その向こうには道が続いている。
「なら、迷う程では無いな。シガ君。今度はこっちを頼む」
アキの声にシガは顔を上げる。その時、壊す筈だった壁が
「……アキさん。いくら待ちきれないからって、爆弾を使うのはちょっと……」
「私ではないよ。いくら私でもむやみやたらに爆発物は使わない。大事な研究資料が損傷してしまうかもしれないからね」
「そこじゃないような気もするんですけど……」
苦笑いをしながらロッティがツッコミを入れる。そして破壊された壁の向こう側から現れたのは、唸り声をあげながらダーカー因子に侵食された“隻眼の龍族”であった。
オーラルは機関の旨を、
ひと月も無い休暇だったのだが、その間にも仕事は山積みとなり、しばらく大きく息をつく事は出来そうにない。例の希望者を集めての訓練もしばらくは中止するしかない。
「ヒューイには悪いがな」
アイツもそろそろ自分一人での力の磨き方を学んだ方がいい。それよりも、未成熟な力の持ち主たちを伸ばしてあげる方がアークスの底上げになるだろう。
「……“
六亡均衡の動向の把握も仕事の一つである。中でもクラリスクレイスは特に注意が必要だ。任務にあたる時は、なるべく
『交戦時同行者有り』
「ほう」
癖の強い彼女と共に戦うアークスが居たか。それともクラリスクレイスが妥協したのか。オーラルは興味を覚えて同行者を確認する。
『アキ』『シガ』
「……なるほど。そう言う事か」
妙に納得できてしまった。シガは訓練を通してクラリスクレイスとは顔を合わせている。アキも独自の概念を持っている事もあり、変な衝突は無かったのだろう。
「……?」
そこでオーラルはある事に気づく。そして、特殊な回線で
「フォトン係数に変化が生じている」
組み上げたフォトンアームに想定していない機能が生まれている可能性が高い。同時に、シガでは他の機能を引き出せずに環境適応にも支障を来している可能性も……
「――――これは……まさか」
フォトンアームが現在発している
「変化した時は……あの時か」
リリーパ降下時――――あの時、シガもリリーパに居たのだ。あの時、サンゲキノキバの意志が逸れた謎が解けた。
「……まだ、残っていたのか。それとも捨てきれない
フォトンアームに使用した生体パーツ。その持ち主だった部下の名を懐かしむ様にオーラルは呟いた。
「アイツは――」
シガは目の前に現れた“隻眼の龍族”には心当たりがあった。いや、姿を見た時に確信したのだが……その雰囲気はあの時とはまるで違い過ぎる。
〔ゴアアアアア!!〕
狂った様な雄叫びと同時に走って来る。高所の多い地形に特化した龍族特有の身体能力で一気に間合いを縮めて行く。狙いは、ロッティだった。
「――つれない事するなよな」
狂った突撃は“糸”によって止められた。そして、隻眼の龍族――コ・リウは光の無い右眼でシガを標的として捉える。
「来い」
シガはあえてこちらに向かって来れるように“糸”を出現させた。案の定、コ・リウはシガへターゲットを変え、シールドを構えて再度突撃を開始した。
その最中、シガは前と違ってあまりに変貌した雰囲気の原因を一瞬で把握していた。コ・リウから漂い出る錆色のフォトンは見た事がある。
雪原で【仮面】が操っていたダーカー因子と同じだ。奴はダーカー因子を物質化する程に支配していたが、この龍族は体内に取り込んでいる。いや、取り込んでしまった、と言う方が正しいかもしれない。
「理由はどうであれ、お前はオレの
フォトンアームを展開。盾に掌を合わせてそのまま動きを止めた瞬間、シガは予想外の要素に思わず驚いた。
「なっ!?」
止めきれると思っていた突進は、シガの体重ごと大きく後方へ押しやったのである。
なんだ!? この
押されていく勢いはまだ止まらない。受けて耐える事はあまり得意ではないとしても、ここまで一方的に押されるなど考えられなかった。
シガはそのまま、コ・リウが破壊した壁から向こう側に押し出されると、更にその先にある壁に叩きつけられる。
狂った龍族であるコ・リウとの戦いです。シガとしては二回目の戦いとなります。
本来ここは、別の龍族なのですが割合としてリウさんに狂ってもらいました。ほら、彼はまた出てきますし。
今回、シガのフォトンアームの裏情報も少し公開。ですが彼の正体についてはまだまだ謎を残しているので、ミスリードもガンガンのせていきます。
次話タイトル『Think of the left arm 彼の意志』