「数人で会話をしていると、たまにこんな事が起こらないか?」
例えば『A』『B』『C』『D』の4人で会話をしていたとしよう。
その中で『A』が高いテンションで『B』に話しかけたにもかかわらず、話しかけられた『B』は『C』と会話を始めてしまった。
出鼻をくじかれてしまったのならば、まだ引っ込みはつく。しかし、『A』は引き返しのつかない所まで深く語ってしまっている。
『A』としては……ここで話を止めると言う事は、お前は今まで誰に話をしていたんだ? と言う事になる。
しかし、聞いていない『B』に話し続けるのも同じく馬鹿みたいになってしまう。
「その時、高確率でこういう事が起こる」
急遽、『A』は話し相手を『D』に
最初から話しかけていた相手を『B』から『D』だった風に
『A』は出来る限り自然にふるまうが、ターゲットにされた『D』にはバレバレだし、『A』本人も心中は穏やかではない。
転んだ猫が、いや? 最初から寝るつもりでしたよ? と、その場で伏せるという強引なごまかし。
自分は無視されていた上、誰も居ない所に話しかけていた訳ではない。そうじゃないんだ!
その『A』からにじみ出る哀愁、まるでその眼は“すがりついてくる小動物”の様なのだと。
「で、その“すがりついてくる小動物”ってのはなんなんだ? シガ」
ショップエリアのベンチに座って、シガと話しているヒューイは疑問詞を浮かべて彼に尋ね返す。
「なぁ、ヒューイ。一度、すがりつかせてみたくはないか?」
「?」
視線の先にはジグと話をしている一人の女性キャストの姿。その存在にヒューイは思わず目を見開いた。
「彼女を」
マリア。六亡均衡“ニ”にして
「おいおい……」
「大丈夫。アキさんにも確認を取った。この理論は絶対だ」
額に汗を流すヒューイにシガは自信を持って宣言する。
一歩間違えば死となる
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「こんなものか」
溜まりに溜まっていた責務の整理を一通り終えたオーラルは一息入れる事にした。
キャストの身体は肉体的な疲労をほとんど感じないが、
メディカルセンターでもキャストの整備は対応しているが、オーラルは自らのパーツを自身で組み上げている為、ボディを調整する以外は付け替えで補っていた。
「…………よし」
オフィスで、一人しかいないのだが一度辺りを見回す。そして、全ての状況を確認。
同時進行している試験や、調整は全て後15分以上はかかる。結果を伝えに来るのは更に20分後。問題ない。
時間を確認すると、そろそろだと凄腕ハッカーのように足跡を辿られないように様々なコードを経由し、ある会場の映像に画面を繋げた。音も漏れないように制限する。
『みんなー! 今日は来てくれてありがとー!』
それは、部下の活動の一端である。しかし、オーラルとしては状況を確認する為では無い。存在が希薄になりがちなクーナに与えたもう一つの居場所を時折見ているのだ。
『今日も全身全霊、魂込めて、あっついあの歌を、歌うからねー!』
闇で身を寄せ合って光を見出していた自分達とは違い、彼女には人の目が届く“光”の中に存在してほしいと思って決めた為に任せた役回りだ。文句を言わずに続けている所を見るとまんざらでも無いのだろう。
『明るく、激しく、鮮烈にっ! みんなも盛り上がって、いこーっ!』
演出として画面の下部に曲名――『Our Fighting』と表示され曲が始まり――
「――――なんだ?」
咄嗟に入った緊急の連絡に切り替える。
『失礼します。タイミングが悪かったでしょうか?』
若干、不機嫌な様子が口調に出てしまったらしい。オーラルは一度、感情を切り替えると改めて口調を整える。
「……いい。どうした?」
『例のリリーパ採掘場に配置する兵器の更新設計が出来上がったので、実用試験のモニターをと。映像を中継します』
「いや……直接立ち会う。初期機動で待機させておいてくれ。すぐに向かう」
『解りました』
通信を切る。そして、ライブの状況を一目だけ映すと、その中で楽しそうに歌っているクーナの様子だけ確認して映像を切った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
任務の概要。
AがBに話しかける。(1~2秒くらい)
しかし、BはCと会話を開始。
Aは“話を聞かれていなかった(ショック)”+“次の話し手を探す(もう引き返せない)”
そして、Aはすがりつく様な眼でDと
Aの心の中は、とても不安、恥ずかしい、と言った気持ちでいっぱいになる。
「何やってんだい、アンタたち。こんなところで雁首揃えて」
マリアはアークスシップを警邏中、ショップエリアの一階の階段下にあるモニターの前で座っている三人のアークスを発見した。
それは、ヒューイ、ゼノ、シガの三人。三人ともマリアの教え子であり、同時にアークスとしても決して無名では無い者たちである。
それが三人揃って、こんなところで固まって話している事に何事かと声をかけたのだ。
「ただ世間話してるだけですよ~。マリアさんもどうですか?」
シガは偶然を装っているが、マリアが警邏する事は知っていたし、この三人で固まっていれば間違いなく足を止めると踏んで状況を作り上げて待っていたのだ。
「暇じゃないんだけどねぇ。少しだけだよ」
そう言いながら、開いている席に腰を下ろす。どうもー、と挨拶しつつ、シガはこの任務に協力してくれるゼノとヒューイにアイコンタクトを送った。
頼むよ。二人とも――
構図的にはAがマリア、Bがゼノ、Cがヒューイ、Dがシガと言う形である。
「え、ええとな。そういやー、ヒューイって近接のスペシャリストなんだろ? 基本的な立ち回りはどんな感じなんだ?」
「お、おう。基本は
ぎこちなくとも話し始めた二人とその会話に度々口を挟むシガ。適度に会話をしていれば、きっと入って来る。そして、
「ヒューイ」
マリアが会話に割り込んできた。
「あんた、クラリスクレイスがまた惑星に降りたそうだよ。大事に至る前に駆けつけてやりな」
「なに!? それはマズイ……前のアムドゥスキアの件でも俺がレギアスに怒られて……こうしちゃ居られん!! 待っていろ! クラリスクレイス!! そして早まるなぁぁ!!」
と、叫びながら後塵を残しヒューイは去って行った。
「…………」
マジか!? アイツ――
今の行動は、焦ってこの場から離れたのでは無く、本気で駆けつけなければならないと言う、ヒューイの持つ条件反射的な行動力なのだ。
しかし、これでは作戦が難しくなったぞ……どうする――
「あ、ここにいた! ゼノ!」
「げ、エコー」
今度はゼノの姿を見つけたエコーが歩いて来る。
「あんた、オーラルさんからの『地下坑道の地図作成』の依頼がまだ40%しか終わってないじゃないの! 今日中に
「あ、後でやるって――」
「ゼノ坊」
そこでマリアの声が割って入る。
「何を優先するかは、アンタはよく解ってるハズだろ?」
「ほら。さっさと行くわよ」
「わかった、わかったって――」
え、ちょ……先輩?
シガのアイコンタクトも空しくゼノは、今度埋め合わせするからよ。すまねぇな。とアイコンタクトを返して去って行った。
「――――」
「…………」
その場に二人だけが残された。
「シガ。二人きりになっちまったねぇ」
「……はい」
今まで受けたどの任務よりも明確な死を感じつつ、シガは滝のような汗が流れ出る。そして、出来る限りの笑顔を彼女に向けるしかできなかった。
EP1-5は後半にシリアスが多かったので、少し柔軟な話を挟みました。
次はオリキャラ紹介。六道も記載します。
次話タイトル『オリキャラ紹介V』