俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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第17話

「試合終了! 4対0、江ノ島高校!」

「不知火ぃ! お前、ホント凄い奴だよ! まっさか本当にハットトリック決めちまうなんてよ!」

 

 正直、俺も驚いてます。

 監督の指示っちゃ指示だから頑張って点数を取りに行ったけど、まさかこんなにうまい事点数を稼ぐことができるなんて。

 DFなのに、って思ってた人もいたみたいだけど、そんな人ほど俺の動きに驚いているみたいだ。特に相手監督なんて終始苦虫を噛んでるような表情で俺のこと睨んできてたし。

 

「さて、今回の活躍を見ての通り、不知火君はFWとしての能力もかなりのものです。彼のおかげでまだ無失点のまま二回戦まで勝ててきましたが……FWのみなさん、これからは彼にはFWとして動いてもらうことが増えるでしょう。各々、自分の力を高めていってください!」

「はい!」

 

 ひよっこDFが生意気に!

 とか言われると思ってたんだが、そんなことも無く部としての意気の高さを見せつけられた気分。いやまぁ、俺もその部活の一員だけどさ。

 

 勝利の余韻に浸ることも無く、次の対戦相手が試合をするということで早速観戦席に。なんとその高校は大会を通して1点しか失点していないという鉄壁の守りといっても過言じゃない布陣だそうだ。

 江ノ高も今の所無失点でここまで切り抜けてきてはいるけれど、そこには触れないでおこう。自分で自分を褒めるのはさすがに恥ずかしいしな。

 

 おそらく決勝トーナメントの緒戦の試合相手は監督が優勝候補の湘南大付属高校になるだろうという事で、駆に聞いた話だと幼馴染がいるとかなんとか。結構陰のある感じの顔をするから何か因縁でもあるんだろう。深く聞いておかないでおこっと。

 

 

 

 ――さて、その湘南大付属高校の試合を見たわけだが。

 

 何というか……「4本の矢(フォーアロウズ)」の防御力の高さもさることながら、DFの日比野選手の力強さが際立っていた。まさか、フリーキックでDFが蹴るとは思ってなかったってのと、そのシュートの力強さ……まさに弾丸のようなキックだった。

 圧巻のフリーキックだったわけだが、俺の身体能力を生かせばより強いシュートを蹴ることができるかもしれないってのが本音だ。余すことなくその蹴りを見させてもらったことだし。

 

「得点源がいなかった湘南大付属高校において、彼の存在が一番になりました。彼は、この大会において35mのフリーキックも決めています」

「35m……」

 

 大砲とも言われる所以だな。

 鉄壁の防御に一撃必殺の大砲。確かにこの組み合わせは並の高校の部活動程度ではどうにもならないだろう。てか、ここまでの布陣を考えて育て上げた相手の監督も凄いと思う。

 

 そして試合は1対0のまま終了。

 4人のDFがいるにしてもかなり厄介そうな守備をしていたって感じだ。

 試合相手の選手たちの表情を見ても分かる通り、キツネにつままれたような感覚。とてもただのディフェンスをしているとは思えなかった。

 

「ま、でもうちにも鉄壁のDFはいるもんな! 不知火!」

「は……まぁ、頑張ります?」

「なんでそこで疑問形なんだよぉ!」

「いやぁ……荒木先輩のお腹を見てるとなんだか不安になっちゃいまして」

「て、てめぇ……まだ俺のこれ(・・)をいじってくんのかよ!」

 

 そのままマコ先輩に絡まれ、織田先輩からはため息を吐かれ始めた荒木先輩の様子を見つつ、湘南大付属高校のサッカーを思い出す。

 4本の矢が基本となったディフェンシブな戦略。今のままでは湘南から点を取ることは難しいだろう。そのあたりの戦略をどうしようというのか、うちの監督の考えは非常に気になるところではあるが、一番の問題となっているのは江ノ高の攻撃陣の薄さだ。

 

 数として……戦略性の面から見てみると全然問題ない。

 裏を取る動きをする駆、小柄な体格を生かした攻撃の薫、長身を生かしたヘッドの高瀬(のっぽ)君にフィジカルを生かした攻撃的な辺りでドリブルをする火野先輩等々。

 しかし、今回の湘南を相手にするにあたって全員のレベルが高くなければ相手DF陣を抜くことはできないだろう。

 

 と、やっぱり中でも問題は駆、と。

 

「駆……別に調子が悪いってわけじゃないんだろ?」

「あ、ヤス……うん。僕もヤスみたいにしっかりドリブルできれば良いんだけどね」

 

 自虐的で暗い表情しやがって。

 

「何言ってんだ。お前にゃお前にしかできない事だってあるんだ。一度や二度程度の失敗でくじけてんじゃねぇぞ。何、お前が実力伸ばせなかったところで俺が出はる事になるだけだからな」

「えっ!? でもヤスはDFだし……」

「お前、今日の試合一緒に出てただろ? 監督が何考えてんのか知らないが、DFの俺をFWとして使ったんだ。もし今日みたいに攻めあぐねるようなことがあったら、今回みたいに俺の事を使うだろうね」

「そ、うなのかなぁ……」

「別に監督はお前の事を信頼してないわけじゃないんだ。お前の実力が伸びてくれることをしっかり考えちゃあいるが……それで負けちゃ話にならんだろ?」

「うん……」

「ま、俺に言えることは頑張って"物にしろ"ってな」

「物にしろ、か」

 

 説教染みてしまった。

 今回の人生での親友としての忠告って考えるとどうしてもそうなってしまうのが自分でも恨めしい。

 無駄に年を取っただけあって考えが年寄り染みるのかなぁ……どっかで、精神は肉体に引っ張られるって聞いたこともあるが、どうなんだろうか。

 

「で、だ……駆、お前あの日比野って奴と幼馴染だったのか?」

「え、と……うん」

「お前がそんなに言いにくそうにしてるってことは何かあったのか……喧嘩か何かか。それ以上の事でもあったのか」

「えっ!?」

 

 驚愕を表情に浮かべる駆。

 しかし、今のは適当に言っただけの鎌かけ。もしかすれば奈々とかに聞けたかもしれえないが、実直な駆のことだ。この程度の鎌かけにもかかってくれるだろうという考えだ。実際に面白いほどわかりやすい反応をしてくれたが。

 

「別に駆の事を責めようとか、昔の話をほじくり出そうとしてるわけじゃない。何か、あいつの情報でもあればその時の役に立つだろうからな」

「そう、だね……でも、昔の事だからあんまりそこまで大したことは分からないんだ」

「そう、か……ま、それもしょうがないな。幼いころの話なんだし、高校生になって人柄が変わるってのも全くないってこたぁないしな」

「うん……ヤス、ありがとう」

「うん? おう」

 

 さっきよりは明るくなった表情を見て一安心。

 逆に追い詰めてないかなと不安になったりもするもんだが、そのあたりは奈々がなんとかしてくれるに違いない(確信)

 

 

 

 その後日、俺たち江ノ島高校の対戦相手が決まったと監督から話があった。

 監督が話していた予想を裏切り、次の試合相手となったのは全日大ではなく、辻堂学園だった。俺たち江ノ高サッカー部は、その驚愕の試合内容をそのミーティングで耳にすることになったのだった。

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