俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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とりあえず書き溜めてある2話も投稿。よろしくお願いします!


第02話

 駆に連れてこられました江ノ島高校FC(フットボールクラブ)

 

 部室の前まで来たが、この古臭さは前回の高校生活で俺が入ってた陸上部の部室みたいな感じが漂ってる。

 プールの横に建てられてた俺の記憶の中に留められし部室は、まさに掘っ立て小屋みたいなぼろさだったからなぁ。あまり良い記憶ではないんだがな。

 その古さには敵わないんだが、目の前の部室も結構な古さが漂ってる。

 

「で、例の先生はどこにいるんだ?」

「ちょっと待っててね」

 

 FCの顧問は担任の岩城鉄平(いわきてっぺい)先生だ。

 あれだけの運動能力を秘めた先生がどんな練習をさせているのか気になるし、なんでこんな掘っ立て小屋の部活の顧問を任されてるのかも気になってしまう。

 

 ふ~む……ここの様子を見るに、そこまでの人数はいないだろう。

 それに、これだとなんでこの高校に二つのサッカー部があるのかもわからない。

 ……何故だろう?

 

「やぁやぁやぁやぁ! 君は僕のクラスの不知火(しらぬい)君じゃないですか!」

「岩城先生、お疲れ様です」

「そんな堅苦しくしなくても良いですよ! 君もこのFCに入部してくれるのかい?」

「はい、まぁ……未経験者なので、逢沢に教えてもらいながらになると思うんですけど」

「いやいや、未経験者も歓迎だよ!」

 

 この人、すげえ嬉しそうだな。

 まさか岩城先生から握手を求められるとは。

 

「なぁにやってんの、岩城ちゃん」

「兵藤君」

「っとぉ、君、入部希望?」

「はい、未経験者ですが、よろしくお願いします」

「おう! 俺はここのキャプテンの兵藤誠ってんだ、よろしくな!」

 

 その後は、キャプテンに続いてやってきた部員の人たちの自己紹介をしてくれた。

 最後尾には俺を連れてきた本人である駆と、その隣を歩く奈々の姿。

 おいおい……俺に「リア充!」なんて叫ばせたいのか?

 

「そうだ、今から練習に向かうんですが、不知火君も一緒に行きませんか?」

「そうなんですか? それなら、自分も一緒に」

「ヤス! これからよろしくね!」

「おう」

 

 一体これからどこに行くのかも分からないが、そこまで雰囲気の悪い部活じゃなさそうでよかった。あんまり先輩との絡みは昔から上手くなかったからなぁ。

 ……とりあえず、最初は奈々について行ってマネージャーの手伝いでもしておこうかな。

 

 

 

「奈々、手伝ってやるよ」

「え、いや、良いよ良いよ。康寛は先に行って練習に交じってて」

「いやいや……そんな簡単に言ってくれるなよ。俺は未経験者なんだから、いきなりそんなことできるわけないだろ?」

「……前から不思議に思ってたんだけど、本当にサッカー未経験なの?」

「はぁ? 何言ってんだよ。今の今まで帰宅部だった男だぞ。そもそも運動自体してねぇし」

「ふぅん」

 

 とりあえず、奈々が持ってた大量のドリンクが入った籠を奪い取る。

 女子が両手で持ってんのを横でだんまり見てるのは俺の心が痛くなるからな。少しくらいは男らしいところでも見せようとは思う。ただでさえ奈々は可愛いからな。……まぁ、駆が周辺公認の彼氏だから一片の希望も無いのは知ってるんだが。

 

「ねぇ、50m走の記録って覚えてる?」

「なんだよ急に。あー……あんまり真面目に走ってないから覚えてない」

「そっか……じゃあ、3kmの記録も」

「当然覚えてない」

「だよね」

 

 一体何だというのか。

 最後に記録を測ったのは中学の頃。

 まだ体の使い方に慣れてなかった頃で、力加減の練習をしてた頃だった。

 だからクラスで一番早い結果になってしまってもしょうがなかったんや。俺のクラスにいるのがほとんど部活に入ってるやつで、比較対象にするのを間違ってたとか何とかも気にしないんだ(白目)

 

「ま、とりあえず、それなりに運動は自信あるから大丈夫だろうが」

「が?」

「ボールに慣れる事から始めないといけないのか……」

「はは! 康寛だったら大丈夫だよ!」

「そうかぁ」

 

 何を根拠にこいつは俺を評価してるんだ。

 とりあえず、今は奈々について行って練習風景でも見させてもらうとするかな。

 

 

 

「おうおう、浜辺で練習たぁ結構面白い事やってんなぁ」

 

 まさかの浜辺。

 みんな示し合わせたかのように水着を着てサッカーを楽しんでる。

 あれはあれで足腰を鍛えられる良い運動になるだろう。

 それに、グラウンドみたいに固い地面じゃないから、あまり怪我を気にすることなく大胆なスライディング、オーバーヘッド等々を繰り出している。

 

 ――あれだったらすぐ(・・)に出来るだろうな。

 

「それじゃあ、不知火君も参加してみましょうか」

「え? でも俺、水着なんて持ってきてないですよ」

「そう思って一着、君が履けそうな水着を持ってきてるんです」

「わぁお……用意周到ですね」

 

 岩城先生は俺に水着を渡してきた。

 サイズはちょうど良さげ。一体この人はどこまで考えてるんだろうか。

 

「じゃあ、とりあえず着替えてきますね」

「行ってらっしゃい」

 

 さて……俺はまだサッカーのルールを覚えてないんだが、大丈夫か?

 いや、ダイジョばない(絶望)

 

 

 

 

 

「――あの子は、一体どんなものを持ってるんでしょうか」

「岩城先生」

 

 氷水にドリンクを浸してるところに、先生はやってきた。

 もしかしたら、私が日本女子サッカー代表だってことにも気づいてるかもしれない。

 そんな人が私に話かけてきたってことは、康寛の事なんだろう。

 

「奈々君……僕は、不知火君の潜在能力が凄く気になるんです」

「それは、未経験者であることも含めてですか?」

「そうですね」

 

 それは私も思っていた事だった。

 今までずっと帰宅部だと言っていた康寛は、確かにその経歴だけど、あのポテンシャルは完全にその域じゃないてことも知っている。

 

 康寛が覚えてないって言っていた50m走の記録は6秒2……とても中学1年生が出せるような記録ではないのは確かだった。

 それを駆から聞いたとき凄く驚いたのを覚えてる。

 それ以外の測定についても規格外の記録を叩き出してるのを覚えてる。

 

「サッカー未経験者でも、天性の才能を持った子であれば、すぐに体が順応するでしょう」

「そうですね」

「別に私は彼の才能だけを見るわけじゃないんですが、もし彼が……」

 

 最後は小さい声でぼそぼそ喋ってて聞こえなかったけど、それは、今までの接しやすい岩城先生ではなく、確固たる決意を秘めた男の顔だった。

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