俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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第33話

 湘南との試合に勝った俺たちは、そのまま鎌学と葉蔭学院の試合を観戦する事に。

 監督は試合後に湘南の監督に話があるとか何とかで席を外してしまったが、俺たちはストレッチやら体の手入れをした後に観客席に来ていた。

 

 鎌学のイレブンが紹介されていくが、その中には1年生でスタメン出場している選手が二人もいた。俺もまぁ……同じような立場に立っているのかもしれないが、そもそも江ノ高(うち)は二つのチームに分裂していたし、その時にスタメンとして出ていたから今の立場がある。

 が、向こうは最初からサッカーの強豪校として名をはせているようだし、そんな高校のサッカー部でスタメンの座を奪えるってのはそれだけの実力があるという事だろう。実際、遠目でしか見れないがその二人の能力値はかなりのものとなっている。

 それでも鷹匠さんとやらの実力が断然に高いんだが。怖い。

 

 守備的MFのど真ん中に起用されているのが1年、佐伯祐介(さえきゆうすけ)

 そして攻撃的MFのど真ん中に起用されているのもまた1年、世良右京(せらうきょう)

 

「えぇっ!? 湘南の世良くんって鎌学に入ってたの!?」

「ずっとフランスにいたみたいだけどね。予選の直前に急遽帰国してチームに合流したんだって」

 

 海外でサッカーをしていたってだけでもかなりの実力だと思うんだが……

 今の江ノ高イレブンの実力で彼らの攻撃力を抑えることはできるんだろうか? 今でこそ俺がDFで頑張っちゃいるが、鷹匠さんを抑えてる間に別の選手に攻撃されちゃたまらんのですよ。それこそ、宇宙の法則を無視したような動きをしなきゃいけなくなるからなぁ(白目)

 

『ゼッケン10番! 鷹匠(あきら)!!』

 

 と、鷹匠さんの紹介がされた瞬間に一気に観客席が色めき立ち、歓声で盛り上がる。

 

「おぉっ!? さすが鷹匠さん。色んな人が応援に来てんだなぁ」

「それだけじゃないわ。Jリーグのスカウトマンも結構来てるみたい」

「え? ホント?」

 

 高校3年生でJリーグから目をつけられてるなんてなぁ……

 たぶん、高校卒業と同時にどっかのリーグに属するんじゃないだろうか。確か、J1とかJ2とかリーグごとで分かれてたと思うけど、鷹匠さんの実力でどこまでいけるんだろうか。さすがにいきなりJ1のチームに、ってことはあるんだろうか?

 てか、試合相手の泊山学園の紹介がおざなり過ぎて笑うわ。確かにここは鎌学の本拠地だし、鎌学の応援が中心になるのはわかるんだが。

 

 そして始まる試合。

 攻撃では佐伯と世良が中心となって攻撃を組み立て、鷹匠が前線で威圧を掛ける。隙を見せたら鷹匠本人がシュートを決める、と思わせておいてからの佐伯。日比野の大砲フリーキックとまでいかないとは言えど、ペナルティエリア外から放たれたミドルシュートがゴールバーに直撃。そのままゴールネットに吸い込まれていった。

 

「なるほど……てか、世良は自分で行ける所はいかないんだな」

「そこ!? 確かに世良のバックパスも意表はついたけど、それよりも祐介の奴、あんなミドル持ってたっけか?」

 

 中学生だったころの記憶を頼りにしちゃいかんぜよ。

 恐らく、その成長が佐伯を1年にして鎌学のスタメンまでにしたんだろう。下半身の筋肉に体の使い方。守備的MFとは言いつつ隙を見つけてオーバーラップするだけの観察力。これらは江ノ高にはとてつもない脅威になる。

 世良のようなバックパスは荒木先輩でもできるだろうが、それをミドルでシュートできるまでの走りを見せられる選手は……ギリギリ織田先輩か。これもあらかじめそういう風な練習をしておかないといけないレベルだが。

 

 泊山の攻撃は、その全てが2年生の掃除人(スイーパー)こと国松広実(くにまつひろみ)がチャンスの芽を完全に排してしまっている。そしてすぐに攻撃に移っていく。

 そんな国松さんの動きをしっかりと記憶する。DFの俺に求められる動きと言うのは、こういう事だろう。相手FWの前に滑り込むように体を入れ、ボールを奪う。ファールを奪われることのない、完璧な仕事をしていた。

 

 そしてもう一つ。やはり鷹匠さんの攻撃は、俺のさらなる飛躍に繋がる動きをしている。

 恵まれた体格。そして運動能力の高さ。それは個人のものだからどうしようもないが、相手DFが二枚もついている状態でボールを受けたにも関わらず、どんな体勢からでもしっかりとゴールを向き、正確にシュートを打つことができる。

 

「――この柔軟性こそが、鷹匠さんをU-19代表まで押し上げた武器。彼にしかない『特殊能力』よ」

 

『ゴォォル!! 後半25分、ついに鷹匠がハットトリック達成ぃっ!!』

 

 試合はすでに6対0。

 圧倒的なまでの攻撃力に防御力を見せつける鎌学イレブン。

 これが、俺たちの倒すべき目標であり、優勝候補の実力。

 

「はっ……おもしれぇ」

「え?」

 

 ゴール直後、ピッチからこっちを見つめてくる鷹匠さんを見ながら、俺はそう呟く。

 あの視線の中央に捉えている選手が誰なのかはわからない。だが、俺は直感的に俺を見ているんじゃないかと思う。てか、世良も佐伯もこっちを見ている。世良は荒木先輩で、佐伯は多分駆のことをみているんだろう。

 一点目のミドルシュートを決めたときに駆を見てたし、そういう事なんだろう。

 さすがに全員が全員、俺の事を意識されても困るんだが。

 

 結局、7対0で終えた試合。あまりのチームの完成度に皆言葉を失くしていた。

 試合相手の泊山のメンバーが泣いてたのを見てしまい、何とも言えない空気になってしまったが、このまま試合を勝ち進んでいけばいつかは戦うかもしれない相手なんだ。いつまでの落ち込んでばかりはいられない。

 ……まぁ、良くも悪くも、江ノ高メンバーにそこまで悲観的な奴はいなかったんだが。

 

 そして俺たちは次の葉蔭学園対相模ヶ浦高校の試合を観戦するのだった。

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