俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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いつもより短いですが、今回は新章に入るという事で(白目)


第三章【招集】
第48話


 結果からして、俺たち江ノ高は鎌学を相手に5対1で圧勝した。

 この時点で決勝への進出はもちろん、全国大会への出場が決まったんだが、それ以上に鎌学に一人少ない状況で勝つことができたというのがチームの勢いをつけたのか、その次の試合。

 翌日曜の決勝で棟光(とうこう)学園と試合したが、乗りに乗った状態の江ノ高は今までにないぐらいの攻撃力と防御力を見せ、6対0という完勝に終わったのだった。

 相手は全く攻めることができないという状態。

 シュート数は全体を通してたったの1本だけ。しっかりと枠内を捉えてはいたものの、李先輩の守備を抜くことはできなかった。

 対して江ノ高は全体で12本のシュート。枠内は9本。

 俺はDFスタメンとして出ていたため、そこまで攻め上がることは無かったが、一応1点は決める事ができた。それ以外は荒木先輩、駆、マコ先輩に高瀬が連携からのゴールを決めたのだった。

 

 ……こうして纏めてみるとホントに酷い結果だ。

 相手のチームの選手、かなり落ち込んでたしなぁ。

 決勝という事もあり、棟光学園も全国大会への進出は決まっているが……鎌学や葉蔭に比べると、残念ながら大したことのないチームだった。

 逆にこっちのトーナメント表にいたチームには悪意を感じる。神奈川の高校の中でもトップのチームを相手にすることになるとは。まぁ、おかげで江ノ高メンバーの全員がレベルアップしたと思うが。

 

 で、全国大会が始まるまでの間は普通に部活動をして練習をするだけなのだが、部活内容は今までと変わらず。が、一つだけ変わったことがある。

 ……一つというか、完全に私生活で変わったことがあるのだが、いろんなチームからスカウトが来るようになったのだ。

 スカウト? と思うかもしれないが、本当に色々な所から来ている。

 つい昨日もきたばかりだし、今日もスカウトの人から事前に家に伺いますっていう電話を貰ったって母親が言っていた。

 契約の内容としてはすべてC契約というもので、全てのチームから年俸480万を提示された。

 まだ高校1年生なので、学業に専念させたいという両親の想いから、すぐに契約というわけにはいかなかったが、後々調べてみたら480万という額は、C契約を結びたいという選手に対する年俸でも一番高い額らしい。

 その上にはB契約、A契約なるものが存在しているようだが……Aまで行けば完全にプロ契約みたいなもんだ。C契約でも結んでもらえるだけ良いか。

 

「――それでは、ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございます。……ふぅ」

 

 家にやってきていたスカウトの人が帰り、一息つく。

 さすがにお金絡みの話だと緊張してしまう。プロチームとの契約も紛れ込んでいたこともあり、高校を卒業したらプロとの契約待ったなし! といったところか。実際にそのチームで動いてみたり選手の人と会ってみないと実情は分からないが。

 と、リビングで寛いでいると電話が鳴り出した。

 

「康寛! 電話よぉ!」

「今行く!」

 

 誰からだろうかと思いきや、俺宛の電話だったらしい。

 今スカウトの人が帰っていったことを鑑みると、どうしてもまた契約の話なんじゃないかと疑ってしまう。いや。非常にありがたい話なんだけどね? 高校からサッカーを始めた身としては、経験年数が1年にも満たしてない俺が果たしてチームと契約なんてしていいものかと思ってしまうのだ。

 表現しがたい感情だなぁ。

 

「はい、康寛ですが」

「あー……君が康寛君か? 私は(アンダー)―16サッカー日本代表の監督を務めることになった桜井(さくらい)一青(いっせい)だ」

 

 渋めな男性の声に驚く。

 U-16と言われてピンと来なかったが、日本代表という単語にドキッとした。

 

「えっと、よろしくお願いします」

「おう。礼儀の良い奴ぁ好きだぜ。でだ。お前を今回の日本代表に招集したいと考えている。日程だが」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「あん? どうした」

「……メモするものを持ってくるので、少し待ってください」

「お、そうか。分かった」

 

 保留ボタンを押して受話器を置いた。

 ホントに、今日は想定外のことしか起きないようだった。

 適当な声量で日本代表になったってと大声を出した。これで電話内容は伝わっただろう。家庭内は混乱の渦に飲み込まれることになるだろうが。

 

「もしもし、準備できました」

「ああ。今回はアジア大会に向けての合宿を行おうと考えてる。合宿場所は神奈川の○○ってところだ。試合で疲れてるところ悪いが、合宿は3日後から1週間にかけて行う」

「……わかりました」

「一つ確認するが、お前さんはDFで良かったんだよな?」

「一応、そうですね」

 

 曖昧に頷く。

 MF以外経験があるだけ何とも言いようがない。FWをやって、DFとしては得点の多い方だとは思うけども。

 

「そうか……なら、それで行くとしよう。ま、試合中にポジション変更はするかもしれないがな」

「はぁ」

「それじゃあ、合宿で待ってるぞ」

 

 伝えることだけ伝えて電話を切ってしまった。

 一切こっちからの質問を聞こうとしなかったが、そんなものなんだろうか。確かに現場で聞くこともできるが、断られるとは思わないんだろうか?

 

「やっ、康寛!? に、日本代表って聞こえたんだが、本当かいっ!?」

「お赤飯、お赤飯炊かないと!」

「U-16だけどね。あと母さん、別に赤飯なんて炊かなくて良いから、普通に飯作って」

 

 両親ともに混乱し、それを傍から見る感じになってしまった。

 こうしてみると、そもそも現実味の帯びてなかった日本代表が、二人のおかげで自分が冷静になることができた。

 しかし代表、か。

 これからは海外の選手と戦う事になるってか。しっかし、そうなると色んな高校から選手が集まってくるんだろう。……U-16だから、日比野とか世良とかが招集対象になるのか。

 俺なんかが行っても良い場所なんだろうか?

 

 とりあえず、携帯で駆に招集されたことをメールし、床につくのだった。

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