俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

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第57話

 なんだかんだ時間が過ぎていき、試合が終了した。

 あの後、中盤で動き回った俺に合わせて戦場を駆けまわった駆と荒木先輩の尽力により、向こうの攻撃をシャットアウトしまくり猛攻を仕掛けまくった。

 相手が中盤にボールを運ぼうものなら俺がどこまでも走り回って追いかけまわしていたのが大きいかな。湘南の九十九選手じゃないが、それだけのスタミナがあれば不可能じゃない。

 で、ボールを奪っては荒木先輩や駆にパスをまわしたり、もしくは俺が自分でドリブル突破してからのシュートする。ループ気味の軌道でパスを出してみたり、的を絞らせないように動きまわった。

 

 結果、5対1。

 あれから俺と工藤先輩、荒木先輩で得点を重ねて試合終了。

 必死にボールを弾いていた紅林先輩だったが、これだけの猛攻となるとすべてを捌き切ることはできず、試合が終わった後は悔しそうな表情をしていた。

 というか……スタメン組の皆が悔しそうな表情をしている。

 かと言って控え組が嬉しそうな顔をしているわけでもなく、微妙そうな表情で俺の事を見ているのはどういうことだろうか? まぁ、岩城監督が凄い嬉しそうにニコニコしていたから、あの動きで良かったんだろうが。

 

「では、皆さん。お疲れ様でした。今日の試合を通じて各人得られたものがあると思います。選手権、次の試合まではあと数日しかありませんが、各々気を緩めることなく精進してください。また、厚樹北は優勝候補の一角としての実力を持っていますが……今の君たちであれば勝てると考えています。それでは、今日はここまで。お疲れ様でした」

『お疲れっした!!』

 

 ……予定通り厚樹北高校との試合を終えれば、俺・駆・荒木先輩の3人はその3日後に日本を発つことになる。正直、日本代表として戦う以上に江ノ高の一員として頑張りたいと思っている。

 ま、代表に選出されたからにはそっちに行かないといけないんだが。

 

 が、問題なのは厚樹北に勝った後の試合だ。

 その次の試合は……確か、湘南かもう一つの高校……相模ヶ浦高校だったか。の、どちらかの高校が勝ち上がってくる。湘南は堅い守備が持ち得の戦術で虎視眈々とゴールを狙ってくる。

 特に日比野のフリーキックは脅威の一言だからなぁ……

 で、もしその湘南を打ち破って進出してくるのであれば、それはもう列記とした強者の証。と言うか、特徴ある選手を抱え込んでいる高校は基本的にぅゎっょぃってイメージしか持ってないんだが。湘南下すって、結構な突破力必要だと思うし。

 

 

 

 で、部活における練習試合が終わった後の事。

 もう全員家に帰ってほとんど就寝しているだろう時間帯。

 いつも通り何故か何かを買い忘れるマイマザーと、便乗して何かを頼んでくるマイファザーの命令により俺はコンビニに行くことに。まぁ、まだ8時を回ろうかという時間なのだが(偏見)

 公園を横切ろうとしたときだった。

 ま、いつも通りボールを蹴る音と二人の声が聞こえてくる。

 まぁた二人して逢引でもしてるんですかねぇ……としか思えなくなってしまっている自分にも驚きなんですが。取り合えずメールで母親に少し遅れると送信して公園に突入。

 何? 空気を読め?

 ……はは、彼らだけ蹴球の試合を見に行っていたのに別段ハブられたとかそういう訳でもないだろうけど少し根に持ってるとか。そんなんじゃないですよ?

 

「駆」

「え……や、ヤス!」

「ヤッホー、不知火君で良いのかな?」

「……群咲さん?」

 

 二人しかいないと思ってたら三人もおった!

 男1で女子が2。背格好からして女子二人の方が大きいからおねショタかなって一瞬変なことを考えてしまい、回れ右をして帰ってしまおうかと思ったものの、名前を呼ばれてしまったからには対応しようじゃないか。

 

「私の事は、気軽にマイマイって呼んでね!」

「おうマイマイ、よろしく。俺、康寛。ヤスって呼んでね」

「ヤス、よろしくね!」

 

 目の前で女子がキャピキャピ(死語)している。

 正直ついてくのが精一杯なんですがどうすれば宜しいので?

 駆を見ても目を逸らされ、奈々に助けを求めても目を逸らされ。どうすれば宜しいので?

 それからしばらく普通にサッカーの練習が始まった。

 カポエィラだかなんだか知らんが、妙な体術を交えてドリブルしてくるものだから対処に困ったが、それも最初のうちだけ。一つ一つ技を見ていってそれに対処していったら、次第に問題無くなっていくという寸法。

 俺はDFだからこういった攻め方をされるのは有難い。こんなドリブルを見たことが無いってのも一つの理由だが。ちょっとだが、レオナルドに通じるところがあったから収穫である。

 この動きは実際この間ロシアと試合をしている時も出ていた。

 特徴が何となくフェイントに影響しているというか、最後にマイマイが決めたボレーなんて完全にそんな感じの動きだった。てか、シュートと言うよりキックみたいな蹴り方だったからつい笑ってしまったが、しっかりゴールに決まってるんだから見習わなければ。

 

「んっとに……! ヤス、かったい!」

「エロい」

「んにゃぁ!? そ、そうやってド直球にぃ!」

「ほい取った」

「いやぁっ!? きぃぃ悔しいぃぃ!! もう一回」

「はいはい」

 

 どうしてこうなった。

 マイマイのテクニックをある程度見れたら今日は終わりかなぁと、後駆の必殺技の進展具合も見れれば十分だと考えていたんだが。まさかここでマイマイに1対1で引っ張られることになるとは思いもしなかった。

 これは完全に両親が心配してるパターンですわ。

 しかし目の前で悔しそうに顔を歪めている少女ってのも中々良いものですなぁ。このためにずっと1対1のドリブルを止めているようなもの。

 

「もう、そろそろ疲れた……」

 

 さすがに20分動き回って疲れたようである。

 日本代表の選手を務めているだけあって結構な俊敏さで俺を抜こうとしてきた。また、スキを見てはシュートを打とうとしていたが、例の如くすべてシャットダウン。その方が俺もマイマイも実力が向上するだろうからね。

 これで俺の対応に一つも文句を言ってこないのだから間違ってないんだろう。

 

「俺も両親が心配してるだろうからそろそろ帰るな」

 

 そこまで遅くなっているわけでもないからあんまり心配なんてしてないだろうが。

 

「うん、じゃあまたね!」

「おう」

「ヤス!」

「うん?」

 

 今まさに帰ろうと踵を返した瞬間に呼び止められ、咄嗟に振り返ろうとした。

 すると、すぐ後ろまで誰かが迫ってきている――多分マイマイだとは思うが、一体何だろうかと思ったときには何か柔らかい何かがくっついた。

 

「……ん」

「……は?」

 

 頬にキスされた。

 いきなり近づいて来たから何をするのかとドキドキしてたが、これだと本当にドキドキするような事態になってしまうのか? 同い年なようで年上な女子にキスをされてドキッとしてしまう辺り俺もどうなんだっていう疑問もあるが、それ以上に何も考えらない。

 キスの感触が柔らかかったなぁなんて。

 煩悩に塗れた童貞の少年が考えそうなことですわ。

 ……ほっぺ、赤くなってないかなぁ。

 

「じゃ、俺も帰るわ」

「え!? 今のは!?」

「ばいばーい!」

「あぁ! ヤスが壊れた!」

 

 俺だって恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ!

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