俺氏、江ノ島高校にてサッカーを始める。   作:Sonnet

75 / 97
もう、原作が終わってしまいましたね……


第69話

 まだ前半5分も経っていないが、江ノ高、鎌学ともに攻撃をした。

 ただ、江ノ高(こっち)がじっくりとパスを回して隙を狙うような攻撃だとすれば、鎌学(むこう)は一瞬でも隙を見せたらどこからでもカウンターを仕掛けることのできる攻撃型でもあり、カウンター型でもあるチームだ。が、攻撃に偏っているかと言えばそうでもない。

 国松選手のような人がいる限り、鎌学は攻撃型とは言えない。

 なにせ、駆が嗅覚で動くいわゆる感覚的な動きを、これまた感覚的に守備しなければならない所を嗅ぎ分けて動く人だ。つまり、駆一人で攻撃に移ろうとしても、他のDFを綺麗に抜いたところで国松選手には止められてしまうのだ。

 だから、攻めるときは最低でも二人で、それもお互いにしっかり連携を取れる程度には練習をしておかなければいけない。

 

 ――と、考えると、やはり攻撃は波状攻撃と言うか、色取り取りな戦術ができるチームが強いのかもしれない。一つの攻撃方法しかないチームは単調になりがちだ。それに対する対策を取るだけで守備が完成してしまうし、そんなプレーは観客も飽きるだろう。

 さすがにバルサみたいな短いパスを繋いで前線に運び、パスでもって中央突破する事は出来ないし、C・ロナウドのような個人技を持っていれば、サイドを制する事もできるんだが、そこまで欲は出さない。

 少しずつサッカーの知識やら有名クラブの情報やらを取り入れるようにしてるが、確かに有名クラブに所属してる選手のムービーは凄い。凄いとしか言いようがない。

 ……のだが、俺にはやはり、実際にこの目で実物を見た方が良いというのも理解できた。

 

 我が家はサッカーをライブで視聴できるOuou(オウオウ)(有料の民放放送)を契約してないため、動画を見るとすればヨウツベやスポーツ番組でしかない。どんな選手であろうが、色々な角度からシュートシーンを撮っているのは非常に助かるのだが……それでも自分の目で見ること以上の物はない。

 少し前に見たカールが良い例だ。

 彼はまだ若い。若いが、かなり完成されているように見えたのもまた確か。そんな選手以上に世界で活躍している選手がいる動画を見はしたが……後々技術として残っていたのは実際にこの目で見たカールの方だったのだ。

 

『試合開始からまだ4分! 目まぐるしい攻防、今の所実力は拮抗していると言ったところでしょうかっ! 鎌学では国松選手。江ノ高では堀川選手が良い動きをしましたが――』

「ふぅ……」

 

 ほっと一息。

 少し前まで怪我人だったが、それを知ってか知らずか、めちゃくちゃ圧をかけてくる鷹匠さんの容赦の無さには脱帽しますわ。しっかし、堀川先輩のスライディングが本当に巧くて笑えて来る。失敗するとイエローカードを出されても可笑しくないし、距離的にFKで直接狙える位置だ。

 まぁ、サイドからのスローインになってしまったのはしょうがない。

 金みたいなロングスローインができる奴はそうそういないだろうし、定石としてサイドに上がってる選手にボールを出すだろう。鷹匠さんがいるんだ。そこから速攻でロングボールを上げて攻撃を仕掛ける事も出来るし、ゆっくり攻める事もできる。

 色んな戦術をとることができるチームほど面倒な事はないなぁ……

 

『鎌学のスローイン! ボールは世良選手に渡ったぁ! ここからどうするのか、直接ゴールを狙ってくるか、それともゴール前にいる鷹匠選手を狙うのかっ!?』

 

 織田先輩が詰める。

 前に試合したときは世良のマリーシアで織田先輩が退場になってしまったから、その雪辱を晴らす良い機会だろう。まぁ、試合には勝ったから個人的な因縁でしかないんだが。

 と、なると……

 焦ることなく世良は後ろにいた佐伯にパス。が、どこからでも鷹匠さんにパスを出せるし、フィジカル的にどこからでもシュートを狙ってくるだろうから油断することはできない。

 

『佐伯選手にパスが渡り、ボールを、蹴ったぁっ! 鷹匠選手がエリア内で待っている!』

「攻めてきた……!」

 

 さっきの鷹匠さんが見せた、少し下がりながらのジャンプ。からのヘッドでボールを落としてドリブルをし始めたのを思い出すと……少しでも油断すると、本当に大変な事になる。

 それは理解してるが、どこからでもボールに合わせる事ができる技術ってのは怖いもんだなぁ……

 

 まぁ、頑張れば俺もできないことは無い。

 

「ふっ……!」

「なに……!?」

『おぉっと不知火選手が、と、跳んだぁっ!?』

 

 飛んできたボールに合わせて前に大きくジャンプ。

 助走は一歩。前に足を出すと同時に力を入れて飛び上がり、鷹匠さんの機先を制した。やはり、鷹匠さんに合わせてボールを上げてきていた。が、そのボールを先に奪う事で攻撃を封じてしまう。

 相手より先にボールに触る。

 攻撃を未然に防ぐための当たり前の手段だよなぁ?

 

『な、何という跳躍力……! こ、これが不知火選手が世界に見せてきた脚力です! おそらくは鷹匠選手に出されたであろうパスを、誰よりも高い位置でカット! かつてあれだけ高い跳躍力を見せた選手がいたでしょうかっ!』

 

 ヘッドで一気にボールをクリア。

 体を逸らしてから、全身のばねを使ってボールを弾き飛ばす。

 いつも通り、ただボールをクリアするだけじゃなく、前線にいる選手にボールが届くようにボールを弾き飛ばした。前線にいる選手……もちろん駆だ。

 

『佐伯選手が上げたパスをクリアァ! そしてボールは……あ、逢沢選手の足元に収まったぁっ! 江ノ高、一気にカウンターだぁっ!!』

「なんだとっ!?」

 

 向こうの監督が慌ててる姿が見える。

 が、前回も同じような攻撃をしたような。と言うか、俺から一気に駆までボールを繋げる雑ながらも効果的なカウンターができるってのは違うチームでもやってたから、記録に残っててもおかしくないんだが……

 さて、トマホークも真っ青な縦パス。

 自陣ペナルティエリアから前線までボールをぶっ飛ばし、持ち前の感性でボールが来ることを予測していた駆が前線を駆け上がる。が、それにいち早く反応していた国松選手が駆を追う。

 やはり鎌学は国松選手が一番厄介なDFか。

 佐伯も戻ってることだし、速攻で攻め上がらないとシュートすら蹴らせてもらえなさそうだ。

 

 とりあえず、今はDFとしての働きに集中するしかない、か。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。