『さぁ、伝統の代表チーム決定戦、一対一のまま後半戦キックオフです!』
さて、何故か中盤でも本当にど真ん中に配置されてしまった俺氏であるわけだが……
俺が思っていた以上にピッチが広く感じてしまう。前半を中央寄りではあるが、サイドで動いてただけあって見え方が全く違う。
後半戦はSCからのキックオフで始まる。
取りあえず俺は何もすることがないので、このままピッチの真ん中で全体を見渡しては皆の位置取りを確認しながらノロノロと歩いてる。キックオフと同時にサイドにボールが流れたせいで、俺の出番は無くなってしまったのだ。まぁ、俺にしてみればそのまま出番がないまま勝ってくれるのが一番良い結果になるんだが。
しかし、そのサイドには入部したての中塚がいるわけだが――
とても今までSCに所属していた奴とは思えないほどのタックル。ファウルを取られてしまうほど強烈なタックルを相手正面から喰らわせたのだった。
「うっへぇ……こいつぁ凄ぇ奴が来たもんだ」
「中塚、ナイスファイト!」
マコ先輩が笑って声をかけているが、今まで同じクラブだった奴がいきなり敵になって結構過激なスライディングを仕掛けてきたら、どう思う?
うん、腹が立つよね。
今も相手のディフェンダーに襟元辺りを掴まれてしまっている。本来ならイエローカードを貰ってしまうかもしれないラフな行為だが、それもしょうがない気もする。
その相手はすぐに交代になってしまった。
『SC八雲に代わって、2年生、ゼッケン15の
その勅使河原君とやらを見て、別に今のラフプレーが目立ったわけではなさそうだ。さっきの八雲よりも守備的な感じがするが、まだ同点の状態でそんな選手を入れて良いんだろうか?
「おいヤス」
「はい? どうしました?」
「岩城ちゃんからの伝言だ。あの高瀬って奴を
「りょーかいです」
なるほど。
守備的な勅使河原君が入ったサイドを火野先輩と中塚で抜くのか。しかし、それは攻めの一手。まずはそこまでの守備を何とかしなければ。
『さぁーて、距離はありますが絶妙なコントロールを誇る10番、織田涼真がキッカーです。ゴール前にはツインタワー坂本と高瀬がいるが……狙ってくるのか?』
そう。
確かに高瀬も長身だが、少しそれに劣るもののFCのメンバーと比べると背の高い坂本もいる。その坂本にはFCでも背の高い火野先輩がマーク。
そして随一の長身の高瀬には堀川先輩と
『いったぁ! ロングキックをゴール前にあげてきたぁっ!』
ぐんぐんと距離を延ばしていくボールはそのままゴール前に。
狙い定められたように飛んでいくボールをヘッドで落とそうと意気揚々と飛び上った高瀬だったが、マークに付いていた二人は全く動かない。
それを不審に思った瞬間、後ろからグローブを付けた手がボールをガッチリと掴んだ。
そのボールはすぐにマコ先輩へと渡った。
なるほどなー……などと思いつつ、出番が無いままピッチをジョギングし続ける。真ん中にボールが来ることなく、火野先輩からパスを受けた中塚がピッチの外側をどんどんとボールが上がっていく。
裏切ったばかりの奴が活躍し始め躍起になって詰め始めた相手ディフェンスを見て、すぐにクロスを上げた中塚だったが、フォワードの火野先輩の所に落ちる事は無く、適当な場所に流れてしまう。
「よいしょぉ」
そこに走り込む俺氏。
スペースは十分に空いている。
距離は大体25メートルくらいだろうか。
俺とゴールネットの間にはキーパーとディフェンダーの二人だけ。
おうふ……これは俺からいかないといけない感じか?
「ぉおっらぁっ!!」
右足を振り抜いてのシュート。
一応、狙いをつけて蹴ったボールは相手ディフェンダーの足先に当たり、右側のゴールポストに当たって跳ね返ってしまった。
――うがぁあああぁぁっ!!?
表情は冷静なまま、心中で盛大な叫び声を上げてしまった。
キーパーの手が届かないようにと思い蹴ったボールは、逆に狙いを付けすぎていたようだった。
気合を籠めて大声を出したというのに、これではただ恥ずかしいだけじゃないか!
結構な勢いで蹴ったせいか、ボールは大きく跳ね返り、逆サイドの空いたスペースにポンポンと独りでに転がっていく。
それをクリアしようと相手ディフェンダーが詰め寄っていくが――
『逢沢が走り込んでいるーー!!』
――今まで存在を消していたと言っても過言じゃない駆が、相手ディフェンダーよりも早くにボールに詰めていた。
目で見て追っていてはこの速さはあり得ない。まるで、最初からボールの行方が分かっていたかのように。
この試合が始まってから何回かあったが、こいつには未来予知の能力でもあるんじゃないかと疑問に思ってしまうほどの動きを見せていた。
俺みたいに転生したわけでも、特典を頂いたわけでもないのに。
……いや、実の兄を事故で亡くしているんだ。
そんな特典云々とか言うのは駆に申し訳ないし、罪悪感を感じてしまう。
ボールをトラップすることもなく、ダイレクトで右足を振り抜いた。一直線に虚空を駆けるボールは、キーパーが必死に伸ばした手が届くこともなくゴールネットを揺らしたのだった。
『ゴオォォーーール!!』
「こいつ……マジか……」
確かに俺は特典を使い、それなりにチートな身体能力、運動神経をしていると自負している。それは今でもこのピッチ上で、少しセーブしてるが、それなりに使っているつもりだった。
それでも一つ。俯瞰視点を使い、明確なパスルートを探し出すことは出来るんだが……シュートコースを明確に描くことができないのだ。
大体のコースは分かる。
どこにキーパーがいて、ディフェンダーがいて。それを考えて。しかし、シュートコースだけがどうしても明確にならない。
それが、駆にはあるような気がする。
俺には持ってない、何か、特別なものを――
「おもしれぇ……おもしれぇぜ! 駆!」
転生。特典。
それが俺の人生を占めていたような気がしていたが、駆の動きはそれに匹敵するような才能の気がする。純粋な、一人のプレイヤーとしての能力。
それが、とてつもなく輝いて見えたのだった。