CHICKEN STORY ~がっこうぐらし!~   作:ゆう@

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正直なところ、この1話いらないと思うけど…


だけど…折角書いたので、よろしければっ。。。


- は じ ま り -

 静寂。

 

 物音一つしない空間で、西木戸優斗は身を潜めていた。コンクリートに背を向け、息を殺す。今は平日のお昼時なのだが、足音や、談笑の声も聞こえない。人の営みの音は一切聞こえない。

 

(まずいな・・・)

 

 時間がない。日が落ちてしまうと、懐中電灯の持ち合わせがないため、辺りを探ることができなくなるからだ。視界が奪われる、それは即ち、死。

 

 

 

 焦る自分を押さえつけ、まずは目の前のことに集中する。後ろから、静寂を破り、がすっ、がすっ、とおぼつかない足音が聞こえてくる。

 

 奴らだ。

 

 背後に迫る、「死」

 

 ・・・いや、「死」という言い方は少し語弊があるかもしれない。正しくは、自分が自分ではなくなる、といったところか。だけど、自分の忠誠、自尊心、思い出……、全てが消え去り、大切な人を傷つけてしまう。そんなの、死ぬのとほぼ同義だ。

 

 僕は、物陰からちらりと顔を出した。「奴」がこちらに気付き、向かって歩いてくる。バットを握る手を離し、手汗を制服のズボンで拭いた。そして、バットをしっかりと握り直すと、今度は耳に全神経を集中させた。

 

 足音がどんどん大きくなる。心拍数が上がっていくのが自分でもわかる。そして、タイミングを見計らい、

 

「今だ!」

 

 と心の中で叫び、「奴」の前に飛び出した。バットを力いっぱい振り、足をかけて転倒させる。一旦距離をとり、息を整える。落ち着け。いつもやっていることだ。機械的にやればいい。

 

「奴」が起き上がる前に、バットを思い切り振りかざし、頭を叩き割った。ぐしゃり、と不快な音が周りに響いた。そして、しばしの沈黙。

 

「ふう・・・」

 

 ほっと胸を撫で下ろす。この行為は何ら難しいことではない。「奴」の動きは遅く、視力も悪い。囲まれなければ対処は容易だ。しかし、一つミスをして噛まれれば、感染、すなわち「奴ら」と同じ運命を辿ることになる。

 

 僕は、さっき倒した死体、いや、死骸を見つめ、黙祷する。これだけは毎回忘れない。そして、時計を見やる。目的地まで残り五百メートルほどだ。漂う死臭に鼻をおさえつつ、目的地へと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 僕は、走りながら首を傾け、太陽の位置を探った。日没直前、といったところか。完全に日が落ちてしまうと、外灯がないため、周りが全く見えなくなってしまう。それまでに目的地に到着するか、一夜を明かす宛を探さないと、「奴ら」の仲間入りだ。

 

「奴ら」をかわしつつ、目的地へ向かう。数体ほどこちらを追いかけてきているが、気にしていられない。

 

 息も絶え絶えになったところで、目的地である「私立巡々丘学院高等学校」が見えてきた。よし、と心の中でガッツポーズ。どうやら日没までには間に合いそうだ。

 

 風を斬り、校門へと向かう。映り行く景色などには目もくれず、ひたすら走る。発電設備、雨水の浄化装置…生活するための必要な設備が全て整っている、闇の中の一片の光、それが巡々丘学院高等学校。

 

 

 

 

 の、はずだった。

 

 

 

 

 

 幸い、校門は開いていた。しかし、グラウンドに入った瞬間、それは絶望に変わる。

 

 どこを見ても、「奴ら」で埋め尽くされていたのだ。みんな、部活をしているつもりなのだろうか。サッカーボールを追いかけている。生存者を求めて常に彷徨い歩いていると思い込んでいた

 

 僕は、そんなおどろおどろしい空間に驚愕の表情を見せた。…いや、少しだけ、ほんの少しだけ、諦めの表情をしていたかもしれない。

 

「とにかく、校舎に入らないと・・・!」

 

 再び駆ける。奴らをかわし、昇降口へ向かう。死がすぐ目の前に迫っている感覚に、心がざわつく。死ぬ前ってこんな感覚なのだろうか。

 

「もうすぐ・・・もうすぐ・・・」

 

 思わず口にでる。目の前には、数体の「奴ら」と扉が見える。いけるか・・・。

 

 しかし。現実はそう甘くない。

 

「なんだよっ、これ!」

 

 思わず扉を叩く。バリケードだ。昇降口にはバリケードが施されていた。扉に木の板を打ち付けただけの簡易的なものだが、僕を足止めするには充分すぎるものだった。心の中に巣食う、永遠の闇に落とされた救いの灯火が、さらなる深い闇へと変わっていくような気がした。

 

「くそっ・・・」

 

 扉に手を付き、うなだれる。力まかせに扉に打ち付けられた木の板を剥がそうとするも、びくともしない。木の間は、ガラスが割られずに残っていたため、通ることができない。さらに、後ろからは「奴ら」が新たな仲間を求めてじりじりと迫ってきている。

 

 窓から侵入しようにも、「奴ら」がすぐ近くに迫ってきているため、よじのぼるための足場を探す時間が無い。

 

 

 

 

 

 

 万事休す。

 

 

 

 

 

 いや・・・。僕は頑張った。よく頑張ったと思う。ここまでこれたのも不思議なくらいだ。ここで死ぬのは多分、運命だ。最初から決められた、出来レース。花が咲き、散り、枯れていくように、僕も自然の節理に従って死ぬだけだ。

 

「いや、まてよ・・・」

 

 突然、思考がクリアになる。火事場の馬鹿力というやつだろうか。まあ、力ではないが。

 

 冷静に物事を把握する能力が戻ってきた。まだ、まだだ。僕にはやるべきことが残っているんじゃないか?ここで諦めて、死んでどうする。

 

 冷静に考えろ。

 

 生き残るあらゆる方法を模索しろ。

 

 

 

 ・・・そうだ。

 

 

 

「おーい!誰かいるかー!」

 

 バリケードがあるということは、生存者がいる可能性があるということだ。もしそうであれば、安全な階から縄はしごかなにかを下ろしてもらえるはずだ。もし、生存者がいない、または気づいてもらえなかった場合は潔く諦めよう。自分はそれまでの人間だったということだ。

 

「おーい!もし誰かいたらはしごを下ろしてくれ!」

 

 涙声になりながらも叫び続ける。やっぱり、死ぬのが怖い。なんて自分勝手な人間なんだろう。

 

 大声を出すのは、本来なら自殺行為に繋がる。「奴ら」をおびき寄せてしまうからだ。でも、普通に自殺するより数億倍マシだ。僕は、昇降口から「奴ら」を避けるように遠ざかった。そして、校舎の中を確認する。

 

「あっ!」

 

 電気がついている部屋が一部屋だけある。中の様子は伺えないが、生存者がいるのはわかった。知らず知らずのうちに声が高ぶっていく。

 

 

 

 そして、数秒叫び続けたが、何も反応がない。諦めかけたそのとき、廊下を歩く人影を見つけた。何かを持っているようだが、こちらからは視認できない。これまで以上に声を張り上げて助けを乞う。

 

「そこの歩いている人!助けてくれ!」

 

 声が静かな町にこだました。そして、人影がこちらに振り向いた。やった。気付いてくれた。ツインテールの女の子だ。表情は読み取れなかったが、驚愕か、哀れみのどちらかだろう。

 

 人影は走ってどこかへ行ってしまった。恐らく助けるための「何か」を取りに行ったのだろう。そう信じたい。グラウンドの真ん中左端にいた僕は、「奴ら」避けつつ、校舎の方へ近づいていった。「奴ら」がじりじりと距離を詰めてくる。はやく・・・はやく・・・。

 

「おーい!これで登れ!」

 

 来た!女の声だ。声がした方向に首を傾けると、はしごを下ろしているツインテールの女の子の姿が見えた。助かった・・・。心の中で確信した。

 

 急いではしごへと向かう。はしごの近くに数体「奴ら」がいたが、構っていられない。強引にくぐりぬけ、はしごへと足をかけた。

 

 

 

 その、刹那。

 

 

 

 ツインテールの女の子の顔が歪むのがみえる。何事だろうか。

 

  その数秒後、僕の足に激痛が走った。何が起こったのか。ことを理解するのに数秒を要した。

 

 ・・・噛まれた。

 

 せっかく・・・せっかく・・・。

 

「くそっ!」

 

 無理やり引き剝がし、はしごを登る。

 

 ツインテールの女の子によって、再び闇に落とされた灯火。

 

 それがまた、音もなく消え去ろうとしている。

 

 手を伸ばしても届かない、あのときの記憶。




ゾンビをこんなに避けまくるのは不可能だって?


・・・主人公補正ですよ。
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