チームRWBY(ルビー)がベルナの村で実地試験を行うようです 作:はぐれファウナス
「申し訳ありませんわ、ハンター様。先程、龍歴院の方がいらっしゃいまして……至急、ココットに飛んで欲しいとの事なのです」
ユクモの村長さんがそう言う。龍歴院の人が? なんでだろ……
「ああ、ハンターの方々、お帰りなさい。お待ちしてました。泡狐竜は――?」
「安心して。ちゃんと倒したから。ワイスがね」
「いえ、皆の力があってこそですわ」
「そんなに気になったのかしら?」
しかし龍歴院の人の顔は、討伐完了の報を受けても決して緩むことはなかった。
「ありがとうございました。ですが……非常に心苦しい言葉を、私はあなた方に伝えなければなりません」
「どういう意味ですか? それに、ココットって?」
「ココットは、ユクモより更に南方に位置する村ですが、現在超大型竜の討伐に大半のハンターが出撃しておりまして……ハンターの絶対数が足りないのです。ここに、迅竜ナルガクルガ出現の連絡がありました」
「――えっと、つまり、そのナルガクルガっていうのを、私達が倒しに行けってこと?」
「……はい」
龍歴院の人は、こくりと頷いた。ウソでしょ、連続で狩りに行かなきゃならないなんて。
私は躊躇した。皆それなりに疲れてるだろうし、もしもさっきのタマミツネみたいに相手が悪かったら、大変な事になるかも。
そりゃ、村が大変なのは分かるけど、私達だって……
「行こう。私達は、モンスターからみんなを守るハンターだ」
「そうね。時間が惜しいわ」
「大体、どのくらいで目的地に着くのですか?」
「ココット村までは、飛行船で半日もかかりませんが……」
「でしたら、十分休めますわ。急ぎなのでしょう、早く行きますわよ!」
「あ、ありがとうございます! では飛行船のなかで、ナルガクルガについての情報を提供させて頂きます。迅竜につきましては、幾分か研究が進んでいますので」
「ホラ、ルビー、行くよ! モンスターがなんぼのもんさ!」
「……うん」
なんだろう……チームリーダーは私なのに。真っ先に、決断しなきゃいけなかったんだ。
でもその分、頑張らなきゃ。タマミツネの時はいいトコ無かったし。
――「迅竜ナルガクルガは、その素早い身のこなしと性質から、暗殺者とも呼ばれています。最大の特徴は、刃の様に鋭い前足に着いている刃翼と、鞭のごとき尻尾です」
龍歴院の人は、ナルガクルガについての情報を惜し気もなく出してくれた。
「イメージとしては、巨大な黒猫か豹と考えて頂ければいいかと。しかしながら、身体中が武器と言っても良い、極めて危険なモンスターです。特に、暗闇からの奇襲に注意して下さい」
でも、せっかくのありがたい講義も、アカデミーのよくわからない授業並に眠たくなる。疲れてるから尚更だし。
Zzz、Zzzと寝息が聞こえた。ふと、隣を見ると、あのワイスがうたた寝してる! いつもは、注意する側なのに。
やっぱ、疲れてるんだ。
「あっ、ワイス……」
「しーっ、寝かせてあげなよ。一番無茶してたんだから。ほら、ルビーも寝る?」
「私は……もうちょっとだけ起きてるよ、お姉ちゃん」
「――そう。無理しちゃダメだよ。ふああ~あ、おやすみ」
お姉ちゃんは、そのまま奥に引っ込んでいった。寝相悪いんだけど、大丈夫かなぁ。
「ブレイクは寝ないの?」
私は隣に立ちっぱなしのブレイクに声を掛けた。
「…………」
「あれ? ブレイク?」
「……zzz」
「立ったまんま寝てる!?」
どうやら、私以外は皆眠ったみたい。どうしよ、私も寝ておくべきなんだろうか?
いや、でもここはチームRWBYのリーダーとして、しっかりとナルガクルガ対策を……対策を……
「Zzz……Zzz……」
「おや、皆さん眠ってしまわれたようですね。本当に申し訳ないですが、よろしくお願いします、ハンターさん」
「任せて」
「わっ、と、あなたは……ブレイクさん、起きてらしたのですか?」
「私が寝て見せないと、この子が素直に寝てくれないから」
飛行船は、ゆっくりとココットの村目掛けて飛んで行った。
――私達はココット村に到着するや、村長さんと手早く話を済ませると、ナルガクルガが暴れているという、密林へと赴いた。
密林、同じ森とはいっても、古代林とはまるで雰囲気の違う場所だった。
「もぅ……ジメジメしますわね」
ワイスの言う様に、陽は既に落ちかけているにも関わらず、辺りは蒸し風呂のようだった。
鬱蒼と茂る木々のせいで、ますます視界が悪い。ぶんぶん、とさっきから耳元で虫の羽音がする。うぅ、早く帰りたい。
「う~、早く終わらせてゆっくりお風呂入りたいよ。そんでもって、お風呂あがりにキンキンに冷えたコークで一杯決めたいとこだね」
「私は断然ユクモの温泉に興味があるわ。一度ゆっくり浸かりたいわね」
「その通りだよ。でも肝心のナルガクルガがなかなか見つからないし」
その時ブレイクが、立ち止まった。
「あら? どうしましたのブレイク?」
「……嫌な感じがする。誰かに見られている様な」
「ブレイク、どこから感じるの? もしかしたらナルガクルガかも――」
私が振り返る。ヤンお姉ちゃんが、チラチラと辺りの警戒を始めた。ワイスもミルテンアスターを構えて、精神を集中している。
「分からない。でも、何か大きなものが、近くに居る……と思う」
がさがさ、と葉が風を受けて擦れあう。太陽が完全に隠れ、辺りは暗黒に染まった。各々の武器のダストと、ランプの明かりが頼りだ。
ザザッ! と一際大きな音が、前方から響く! そこだね、私が一番に攻撃しなきゃ!
「!?」
咄嗟に、私はクレセント・ローズの射撃を、音の響いた方向に打ち込んだ。
何度も発射音が反響し、続いて完全な静寂。何のリアクションもない。あらら、ちょっと神経質になりすぎてたか――
「上よ!!」
直後、ブレイクの鋭い声が駆けた。上を見上げた時には、二つの赤い光のラインが真っ直ぐにこちらを目掛けて走ってきて、そして……
相手を認識した時には、刀みたいな刃翼が、私目掛けて繰り出されていた。
「ルビー!」
この声、ワイス!?
ワイスが、咄嗟に私の前に割り込むと、魔方陣を展開した。しかし、ナルガクルガの刃翼は魔方陣を容易く切り裂き、ワイスを襲う!
「くっ!?」
ミルテンアスターで、ギリギリ、ガードしたみたいだったけど、吹き飛ばされたワイスは、闇の中へと消えていった。
「ワイス!?」
続けて、眼前のナルガクルガの目が赤く光ると、刃を私目掛けて振り下ろしていた――