チームRWBY(ルビー)がベルナの村で実地試験を行うようです   作:はぐれファウナス

15 / 22
クレセント・ルビー 前編

「おめぇさん、いつから聞いてたんだ?」

 

加工屋の主が、私にそう言った。

 

「さぁ、何となく……最初の頃からかな?」

 

私はそう答えた。お姉ちゃん達が、私の武器を治そうとしてくれていること、その為に火竜を倒しに行ったこと。全部聞こえてた。

 

「武器の無い私を、連れていってくれる訳ないもんね……」

 

「当たり前だ。狩りは遊びじゃねぇ、命と命のやり取りだ。半端者を連れて行ける訳はねぇだろ」

 

半端者……そうだよね。私なんかには丁度いい言葉だ。

 

「…………」

「…………」

 

赤熱した鉄の塊が、釜の中から取り出され、数人の職人さん達がカンカン、とハンマーで叩いている。

 

薄く平らに伸ばされてゆく塊が、次第に本来の黒色に戻る頃、職人らはハンマーを置き、もう次の行程に取りかかっている。

 

そんな職人芸を、ぼおっ、と視界の端に捉えながら、私はただ座り込んでるだけだった。塞ぎ込んでるだけだった。

 

体から熱が漏れだして、どこか別の場所で燃え盛っているのか、この身は冷え冷えとしたままだ。

 

机の上で、声一つあげないバラバラの相棒からは、睨み付けられてるみたいで、視線を逸らした。

 

「――例えばだ、お嬢ちゃん」

 

加工屋の主は、さっきのとは違う、出来上がったプレート……多分、剣の刃だろう、を私に見るよう促した。

 

それはそれは見事な、非の打ち所の無い刃だと思った。湾曲した刃の部分の造形は特に見事だと。でも、主はこう言った。

 

「こいつは出来損ないだ。どうしてか分かるか?」

 

「えっ? ど、どうして?」

 

見た感じ、傷も見当たらないし……じゃあ、一体何が悪いの?

 

「こいつはよ、若い衆に叩かせたんだ」

 

と、彼はげんこつを握り、刃に振り下ろす素振りをした。あれ? でもさっきのも、叩いて形を整えてたじゃない。

 

「芯が定まってねぇとよ、形が歪む。だから、こいつぁ歪んでる。こいつはとても、ハンターに渡せる代物じゃねぇ」

 

私には到底そう見えないけど……

 

「ハンターの嬢ちゃん、お前さん、この鎌は自分で作ったって言ってたよな? そんときゃ、何考えてた?」

 

「えっ、何って……」

 

クレセント・ローズを作ったあの日。私はただ、希望に満ちていたと思う。何故なら、これから私の、私だけの相棒が出来上がるのだから。

 

また一歩、近付ける様な気がした。小さい頃に絵本で読んで、聞いた、ヒーロー達に。弱きを助ける英雄達に。

 

私だけの相棒を携えた私は、悪党達やグリムを凪ぎ払い、世界の平和を守り続ける。「名乗る程の者じゃないけど」私はそう、不敵に仮面の下で笑んで、いずこかへと飛び去る。

 

そんな夢を幾度となく見ながら、クレセント・ローズは形になっていったんだ。

 

皆ハッピーなら、それでいい。私はいつだってそう、思ってた。

 

「えっと、色んな事考えてました……」

 

「それでいい。オイラも初めて打った時はそうだった。オイラの打った武器をハンターが使って、そいつが強え飛竜をぶっ倒す、そんな事ばっか考えてた。お陰で不細工なのが出来たよ」

 

あれ? 私と似たような……

 

「今のオイラが打ってんのは最高の得物だ。ただ無心に寄り、打った得物だ。出来は最高だが、無難なだけだ。こうすりゃいいものが出来る、こうすりゃ失敗しない、そんなノウハウばっかり重なって出来た代物だ」

 

「それって理想なんじゃないんですか?」

 

「ああ。誰が使っても馴染むんだろう。だが、そこでしかない。結局のところ、オイラが作ってんのは、誰でも使えるが、誰かが最高に使えるモンじゃねぇ」

 

えっと……つまり、どういう事?

 

「半端者が叩いた所には、欲がある。力がある。誰かが、自分の打ったモンを使って活躍してくれるって欲がよ。だから誰にでも使える代物じゃねぇものが出来る。自分の想いがこもっちまう。それじゃあ商品にはならねぇ。だけどよ……」

 

主は、すっ、と虚空を眺め、言った。

 

「その想いが、歪みが、最高の力になる事もある。嬢ちゃんがそうだ。あの鎌は悪く言えば歪んでる。だが、お前さんには何よりも合っていた。お前さんが使っていて、初めて輝く得物だったんだ」

 

「…………」

 

「だから、治すにゃあ、お前さんも必要なのさ。半端者のお前さんがな。何が悪い、半端者上等じゃねえか」

 

「――なんか、ビミョーに嬉しい様な嬉しくない様な……でもでも私、鍛冶なんてやったことないし……」

 

「打つのはオイラ達の仕事だ。お前さんは仕上げるんだよ。さて、あとは火竜狩りに出た連中の帰りを待つだけだ」

 

 

 

 

 

――「あわわ、大変です!」

 

その時、表が妙に騒がしくなっていた。騒いでいるのは、クエストの斡旋や村の案内をしたりする、ベルナの看板娘である。

 

何事だろうと、私が覗いた時には、彼女の周りに村長さんや龍歴院の人、或いは見たことない人達がいた。

 

あ、あのグループ、筆頭ハンターって人達かな? ルーキー君も居るし。

 

「どうしたんですか?」

 

私はつい、好奇にかられてルーキー君に話し掛けた。

 

「あれ!? 王国ハンターのルビーちゃんじゃないッスか! どうしてここに居るんスか?」

 

ルーキー君は驚いた顔で、こう返した。

 

「あ、あの、私は……お留守番で」

 

「丁度よかったッス! 実はッスね――」

 

「失礼。君が王国ハンター、チームリーダーのルビー・ローズか?」

 

ルーキー君を押し切り、前に出たのはベテランっぽい人だった。立派な鎧や武器からして、結構偉い様な人なんだろう。

 

「は、はい、そう、です」

 

「私は筆頭ハンターのリーダーだ。訳あって本名は名乗れないが。単刀直入に言う。緊急事態だ」

 

リーダーさんってことは、ルーキー君の上司か。

 

「君達チームRWBYの受けた依頼だが、どこで手違いがあったのか……あの依頼の火竜リオレウスは、未知の部分の多々ある個体だったのだ」

 

「本来なら、我々が調査に赴くべき危険な個体、通称黒炎王の二つ名と呼ばれるヤツでな。並のハンターでは即座に消し炭にされてしまう」

 

背中に大きな槍を背負ったおじさんが言う。

 

「あなた、メンバーに連絡をとる手段とかないかしら?」

 

褐色肌のお姉さんが、落ち着いた調子で言う。

 

いつもなら、スクロール端末で一発なんだけど、この大陸では電波のアンテナがたった試しがない。

 

「無い、です……」

 

「弱ったな。我々も緊急の仕事があるし、すぐには救助に向かえない。ところで君は今から動けるのか?」

 

「私は、武器が……今、無くて……」

 

「なんてことだ! 予備の武器すら持っていないのか!? 君はハンターだろうに!」

 

「そ、それは……」

 

「リーダー、待って下さいッス。言い過ぎッスよ!」

 

「……悪かった。だが、これはマズイことになったぞ」

 

頭を抱えるリーダー。ルーキー君は私を連れて、加工屋の中に入った。

 

「ごめんッス、ルビーちゃん。リーダーに悪気はないんッスよ。仕事に関して厳しい人だし、昔何かあったみたいなんで」

 

「ううん……リーダーさんの言う通りだよ。私がハンターとして未熟なのは分かってる」

 

傍らでは、鉄を打つ音が何度も反響する。真っ赤な炎が、釜から吹き上がり、熱がこちらまで届いた。

 

「ルビーちゃんの武器、あれッスか?」

 

「うん……クレセント・ローズっていうの」

 

「あらら、直せないんッスか?」

 

「火竜の素材が足りないって……だから、ワイスやブレイクやお姉ちゃんは無理して行っちゃった」

 

「火竜……火竜、あっ、そうッス、俺、丁度火竜の素材持ってるッスよ!」

 

ゴソゴソとポーチから、火竜の鱗を取り出すと、「ほらっ、これを使うッス!」とルーキー君は言った。

 

「そんなっ、だってそれはあなたの……」

 

「いいからいいから! おやじさーん、ルビーちゃんの武器、こいつで直せるッスか?」

 

「ちょっと、待って! ルーキー君、どうしてそこまでしてくれるの?」

 

「カワイコちゃんが困ってたら助けなさいって、いつも母さんが行ってたッス。それに、仲間の所に行かなきゃいけないんじゃないんスか?」

 

「そ、それはそうだけど……ホントにいいの?」

 

「勿論ッス! ほら、おやじさん、どうッスか!?」

 

「こ、こいつぁ、逆鱗じゃねーか! こいつがありゃあ直ぐにいけるぜ!」

 

「やったッス! よかったッスねルビーちゃん! じゃあ、俺は色々忙しいから、もう行くッス。絶対、仲間を助けてくるんスよ!」

 

「……うん、うん! ありがとう、ルーキーさん!」

 

やっぱり彼、ジョーンに似てる。お人好しで、ちょっぴり情けなさそうだけど……最高にカッコいい。

 

ありがとう、本当にありがとう。

 

そこからの作業は流れる様だった。刃がだんだん打ち直され、柄が、部品が忠実に再現されていく。

 

そうして出来上がった部品を、私は組み立てていく。あの頃とはちょっと違うけど、私はこれで皆を助けたい。

 

私の想いを、一つ一つに込めて――最後に、紅い玉を柄に嵌め込んだ。

 

それは火竜の紅玉という、火竜の最高級の素材だった。紅玉、ルビー、奇しくも、私の名前と同じだった。

 

「出来た……」

 

「おおっ、こいつぁいい」

 

私は、完成した鎌を一振りした。軽い、自分の手足みたいに、まるで重さを感じない。

 

灼熱に染まる、湾曲した刃。赤を基調とした柄には、紅玉が光り、スイッチ一つでそれはスナイパーライフルへと変形する。

 

凄い……凄い、私の相棒が、帰って来たんだ。

 

「ありがとうございました!」

 

「いいってことよ。お嬢ちゃん、そいつの名前はどうすんだ?」

 

「うん、この子はルビー……クレセント・ルビー!」

 

私は、加工屋さんに頭をさげて、直ぐにお姉ちゃん達の後を追った。

 

新しい友達、クレセント・ルビーを携えて。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。