チームRWBY(ルビー)がベルナの村で実地試験を行うようです 作:はぐれファウナス
「泡狐龍(ほうこりゅう)?」
龍歴院の研究者より告げられた依頼の敵の種別であった。名前はタマミツネというモンスターらしい。
「ええ。最近発見された新種です。あなた方の腕を見込んで、我々から直接、討伐依頼を発注させて頂きます」
「どうして私達に? 筆頭ハンターさんとかが――」
「恥ずかしい話ですが、彼らは別の任務で動いておりまして――緊急性を持つ依頼の為、今の所発注条件を満たす腕の持ち主が、チームRWBY、つまりあなた方しか居ないのです」
「へ~、面白そうじゃん! 結構な強敵ってことね。ようやく実地試験らしくなって来た!」
「そのモンスターに関する情報を提供して頂けますか?」
ワイスが、龍歴院の人に問う。しかし彼は難しい顔をして、こう返した。
「泡狐龍は、新種故に情報がほとんどありません。強いて言うのなら、泡を纏い、舞い踊るかのように戦うのだとか……」
「随分と抽象的ね」
「泡を纏い舞い踊る……なんだかちょっと幻想的かも」
「申し訳ありません。何分、腕利きのハンターは皆、街の集会場を目指して行ってしまいまして、派遣して貰うとなると時間が掛かってしまうのです」
「なるほど……ね、皆、行ってあげようよ!」
そういう事情があるなら、行かない理由がない。私達、ハンターの使命は皆を守ることなんだから。
「あたりまえじゃん! さっさと行くよー!」
「いいわ」
「緊急なら、急いだ方が良さそうですわね」
「おおっ、ありがとうございます! では、ささやかながらこれを差し上げます」
と言って、職員さんは小さな、栄養ドリンクでも入ってそうなビンを四つ、私達に手渡してくれた。何コレ?
「これはハンターらの間でも重用されている秘薬です。私は服用したことありませんが、どんな傷もたちどころに治癒するとのこと。どうぞお持ち下さい」
「ありがとうございます! 頑張ります」
「くれぐれもお気をつけて。緊急依頼とはいえ、難度の高い依頼だと思われます。準備をしっかりお願いしますね」
「いつでも行けます!」
私達はすぐに飛行船へと乗り込んだ。飛行船はゆっくりと離陸し、目的地へと急行する。
「――どうかご無事で。王国のハンター達」
――渓流。ユクモ、っていう村の近くに存在する地形の一つで、豊富な水源と、美しい景観を持つ所だった。
えぇと、こういうのなんて言うんだ? 山紫水明? 風光明媚? いい意味で、東国の様な雰囲気が漂う。
そして私達はというと、ユクモの村の村長さんに話を訊いていた。何故か、村の名物だという、足湯に浸かりながら。
あ~、でも何だろ、足からじんわりと熱が、全身まで伝わってきて……凄くいい感じだ。美容にも効果があるらしい。
「それで村長さん、急ぎの依頼なんですよね?」
「ええ、そうですのよ。龍歴院の方からお聞きになったと思いますが、タマミツネの討伐をよろしくお願い致しますわ」
なんだか、ワイスみたいな喋り方をする人だけど、ワイスよりはずっと穏やかで丁寧だ。それにしても、色鮮やかな服を着ている派手な……あ~、お姉さんだ。
髪の毛なんてもっと凄い。一体どうやって結ったんだろう。
「タマミツネは、ここ最近ユクモの周りで暴れ始めまして……以前はここにも強力なハンター様がいらっしゃったのですが、今は街の集会場にかかりっきりですのよ。あなた方にはとても申し訳なく思っていますわ」
「そんなことない。私達もハンターだから当然だよ」
「そうですわ。遠慮なんてなさらないで」
「私達なら大丈夫だから」
「ありがとうございます、小さなハンター様。では、足湯上がりに飲み物をどうぞ、お召し上がりになってくださいな」
私達が足を拭いていると、若い女性……あ、別に村長さんと比べてる訳じゃないけど、若い人がドリンクを持ってきてくれた。
ユクモのハンターは、出撃前に一杯飲むんだそうな。えっと、私は……じゃあこの赤いのを。
「あっ、これミルクコーヒーだ!」
「わたくしのは、とても良い香りがします。上品な味わいですわ」
「ウェ~、なにこれ超苦いんですけど」
「なんだか、口の中がシュワシュワするわ」
よし、ドリンク飲んだ! 靴も履いた。それじゃあ、チームRWBY、出発だ。村長さんや村の人達に手を振り返して、私達は渓流の狩場へと突入していった。
――渓流の狩場は、ベルナとはまた趣の違う、豊かな自然と土地に恵まれた地形だった。
古代林の様に太古のまま、といった雰囲気ではなく、植物や生息している生き物も比較的、私達が普段目にするものと大差ない。
チロチロと湧き出す清水の水路、獣道を下って谷を降りて行けば、直ぐに湖の様な場所へと出た。
私達は背の高い葦みたいな植物に紛れて、湖岸の側を注視する。そこにはおおよそ、この大自然に相容れないであろう色合いの生き物が歩いていた。
「あれがタマミツネかな?」
「村長さんから聞いた特徴とも一致してますわ」
その色鮮やかな体毛は、ある意味ユクモの村の村長さんを彷彿とさせる。
体だけをみれば、巨大なカワウソか何かだが、顔付きをみれば狐によく似ている。相手は未だ、こちらに気付いていない様だけど……
「先手必勝で行く?」
「相手の情報が少ない以上、迂闊に動くのは危険ですわ。ルビーが身をもって証明しているでしょう?」
「うぅっ、それは言わないで……」
「じゃあどうするの? このまま見ているだけじゃ、どうしようもないでしょう?」
「う~~ん……」
私達が、攻めあぐねている時だったか、前方をふわふわと飛んでいるものを、ブレイクが見付けた。
無色透明で丸くて、時々表面に虹色模様が映り込むそれは、大きなシャボン玉だった。それも一つや二つじゃない。
よくよく目を凝らしてみれば、至る所に浮かんでいるではないか。一つが、風に運ばれ飛んで来る。
「邪魔ですわね」
「何だろ、これ」
ツンツン、と私はクレセント・ローズの柄でつついてみたら、シャボン玉はあっさりと割れた。
その時だ! タマミツネが急に振り返り、こちらをじぃっ、と睨み付けたのだ。えっ、えっ!? 音なんて出してないけど!?
しかし敵はこちらの位置を確信している様で、信じられないことだけど……地面をスーっ、と滑りながら突進してきた。
「わわっ、こっちに来るよ!」
「こうなったら一気に行くべきだよ!」
「同感ですわね!」
「……っ!」
私は草むらを飛び出すと、クレセント・ローズをライフルモードにして、弾を放つ!
ワイスは右へ、ブレイクは左に飛び出して射撃を開始した。ヤンお姉ちゃんは、エンバー・セリカを地面目掛けて放ち、反動で飛び上がる。
敵は、体に似合わず俊敏に動き、射撃を次々に回避。
直後、ワイスの氷魔法が発動し、タマミツネを氷の壁で足止めした。だが、敵はするり、と体をくねらせて、壁を容易くかわす。
そこに降下してきたお姉ちゃんが、タマミツネの死角から攻撃を加えようとした。
だがタマミツネは、またしても突如振り返り、お姉ちゃん目掛けて口から何かを吐いた!
直撃を受けたお姉ちゃんは、体勢を崩して落下、タマミツネの長い尾に弾かれて撥ね飛ばされた!
「お姉ちゃん!?」
この敵は、今までのモンスターと違う。違い過ぎる……私達はようやく、それを認識したのだった。