【Girls-und-Panzer】 砲声のカデンツァ   作:三式伊吹

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・一時の安らぎ。他愛も無い戯れ。戯れであるからこそ、人は魅了される。



ep.4

 

 

 

 三度目の戦車戦。フランス戦車を有するメロヴィング女子大学付属高校との戦いは

 神無月しおりと播磨女学園の少女達に大きな波紋を作りつつも…時が過ぎ行く内に悪くない思い出へと化した。

 ただ独り、少女の過去に疑問と不信感を抱え続けている双葉葵を除いて。

 

 

 さりとて噂の膨らみは静まる所を見せはしない。個性的な戦車を従えて、名うての戦車道チームとの戦いを

 繰り広げる播磨の魔女の話を聞きつけて、他校との合同練習を見学に来る人々も現われ出した程。

 然し、見学者の多くは理解に至らなかったであろう。魔女の実力を。少女の実態を。

 

 

 全てを知るには戦場にて相見え、そして砲火を交えねばならないのだ。

 故にそう…今はまだ、少女に注がれる視線は僅かな限りであった…

 

 

【Girls-und-Panzer】

 砲声のカデンツァ

 

 第四話:Breath und Breather

 

 

 播磨女学園とメロヴィング女子大学付属高校との戦車競技はその終りに、神無月の流派が生み出した遺恨故の突然のハプニングによって両者の間に新たな遺恨を残してしまいそうになった物の、メロヴィング側のチーム隊長…エリザベド・ガリマールの尽力により関係は無事に修復された。

 

 

 少女は純粋に非礼を詫びた。来る日も来る日も、播磨女学園戦車隊の少女達に頭を下げ、そして何よりも、神無月しおりに頭を下げていた。そして彼女の本心からなる行動は無事に実を結んだ。今となっては、学園交流の名の元に両校の学園艦を繋ぐ飛行機の定期便が飛び立つ程度には。

 

 

 穏かにして爽やかな初夏のある日の事…この日、各校の少女達は聖・バーラム学院のお茶会に招かれる事となった。幾らかの戦車を伴い、少女達は古きよきイングランドを思わせる学園艦へと降り立った。この様にして招待されるのは何度目だろうか。しかし、飽きる事は無い。何度訪れても、素敵な学園艦である事に変わりは無いのだから。

 

 

 小高い丘の上。戦車道の練習スペースの傍らに設けられた茶会の場での一時。丘の上からは練習スペースが一望出来る立地も相成り、練習中の戦車のエンジン音や砲声が潮風に乗ってよく聞こえた。茶菓子を持ち寄り、談話が弾む。ある者は楽器を奏で、ある者はフェンシングに興じ、またある者は戦車に興じる。普段乗らない戦車に乗る事はよい経験にもなったし、お互いの得意とする戦い方や、戦略を語り合うのはよい経験となった。

 

 

 そんなある時、双葉葵はぽつりと言葉を零した。

「いやぁしかし、もっと資金が潤沢に在ればねぇ」

 お代わりに淹れて貰ったミルクティーをティースプーンで緩やかにかき混ぜながら、彼女は純粋に「お小遣いが足りない」と言わんばかりに呟いた。

「あら…資金繰りにお困りなの?」

 スコーンにクランベリーのジャムを優しく塗りながら、ローズマリー・レンフィールドは愚痴を零した彼女に問い掛けた。

 

 

「いやまぁ…困ってないって言えば嘘になるねぇ。スポンサーがついてくれて、戦車模型だとか、試合のビデオとかでお金稼いだり、メーカーからの試供品の戦車パーツでデータを取ってみたりとか色々しているけれども、

 ウチのチームはふんだんにお金があるって訳じゃないし。しおりちゃんに助言して貰ったり、懇意にしてる会社さんのお陰で上手いこと消耗品のパーツの遣り繰りはしてるけれども。この前の試合でT-34の57ミリ長砲身をへし折られたのも痛かったなぁ…や。試合だから壊れるのは仕方ないんだけどさ」

「57ミリは意外と需要がありますからね。貫通力に秀でますから」

 

 

 ベリータルトを口に放り込みながら、アレクサンドラ・楠は答えた。へし折られたZiS-4・57mm対戦車砲はモスカウ文化高校からのツテを使い、安く、即急に買い直す事で播磨女学園のT-34は再び戦線に復帰出来たが、

やはり主砲の砲身ともなると出費が大きい。例としてパンターの70口径75mm砲が通常徹甲弾でおおよそ2000発程の砲身命数を持っている事を思えば、ZiS-4・57mm対戦車砲が高々一試合の射撃回数で壊れてしまったのは充分に手痛い出費と言える。

 

 

 無論、消耗部品たる砲身は履帯や転輪、サスペンションやエンジンパーツと並んで需要が高い。だが圧倒的に値段が張るのだ。パーツ会社からの部品供給は決して悪くないのだが…

「戦力増強とかもしたい身としては、ガガーッとお金を稼ぎたいよねぇ…」

「その気持ち、判りますわ! 我が校でも新規戦力の導入の為にどれだけ苦労したやら…ワインやブドウジュースを作ったり、美味しいお菓子を作っては販売してみたり。ああ…他には映画撮影のお手伝いなんてのもしましたわね!」

 

 

 やれやれとばかりにエリザベド・ガリマールが身の上話を語った。他校の少女達も思う所があるのか、ウンウンと同調するように頷いてみせる。どれだけバックアップがあろうとも、どれだけスポンサーが付こうとも、そして部品供給が安定化し、コストが下がろうとも戦車道をするのは大変なのだ。その時ふと、エリザベド・ガリマールの言葉を聞いてアレクサンドラ・楠が何かを思い出したかの様な表情を浮かべた。

「映画撮影と言えば…! 先日、こんなお話が舞い込んできたのだけども」

 

 

 折り畳まれた紙切れを懐から取り出し、少女はテーブルの上にソレを広げた。はてさて何事だろうかと少女達は紙切れを覗き込むと、ソレは広告チラシの一つであった。

「ヒストリカルゲーム…?」

 聞きなれない言葉に、双葉葵は首を傾げた。チラシその物は、戦車や歩兵の格好をした人々が凛々しく描かれていた。恐らくは、戦車絡みの事である事は理解出来たが…

「早い話が戦争ごっこ。と言う事ね。ペイント弾や模擬弾を使った物よ。類似のイベントにリエナクメントと呼ばれる物があるけど、其方は史実の戦争をなぞったりする事が目的の物なのよ」

 

 

 ヴィレル・ボカージュの戦いの再現なんて…心苦しいばかりなのよね…等とローズマリー・レンフィールドは苦笑交じりに呟いた。

 エリザベド・ガリマールやアレクサンドラ・楠も同じく、フランス、ソビエト共にドイツ第三帝国陸軍の戦車機甲師団に踏み潰された苦々しい歴史がある故に、その様なイベントに参加した事があるのだろう。僅かばかりだが、お茶会に重々しい空気が流れた。

「ああでも、このヒストリカルゲームはリエナクメントの様に緻密な規定を定めた物ではなくって、所謂戦争ごっこを気軽に楽しみましょうと言うイベントね。参加者は随時募集。戦車の持ち込みは大歓迎ですって。ゲームの様子をビデオ撮影して販売したりするらしいのだけども…売り上げに貢献してくれた場合は決して少なくない報酬も出してくれるのよ。それに、戦車が派手に壊れたりもしないし」

 

 

「それは…メロヴィング女学校としても興味深い話だわ。フランス戦車は人気が他と比べて控えめだから、どうしてもコストが掛かるんだもの」

 アレクサンドラ・楠の言葉に、エリザベド・ガリマールが楽しげに食いついた。ローズマリー・レンフィールドも史実に拘らずに楽しく遊べるイベントであると分かっている為か、嬉しそうに微笑みを浮かべていた。

「余り大きく目立つ事の無い大英帝国が堂々と勝利の旗を掲げる事があっても良いのよね…ユニオンジャックが靡くのを想像するだけで…嗚呼! 何だか興奮してしまうわ」

「二人とも乗り気みたいね! じゃぁアオイ? 貴女はどうするのかしら」

 

 

 楽しげに笑うアレクサンドラ・楠の顔に、双葉葵もゆっくりと頷き返した。何処か得意げに。

「遊んでお金貰えるって言うなら、やらない手はないよねぇ? その話、乗った!」

 斯くして、学園艦四校からの戦車供与と言う大規模なヒストリカルゲームの火蓋が気って落とされようとしていた。…そして同時に双葉葵は暗躍する。播磨女学園の戦車道チームのスポンサー企業に声をかけて回ったのだ。このイベントに一枚噛まないかと。麗しい少女達が戦う写真は、戦車道人気も相成って良い値で売れる事を双葉葵は知っていた。

 

 

 そして映像を撮るならばより大々的にしてしまえと、播磨女学園の戦車道の試合を撮影しフィルムを販売してくれているブリッツワークス社に声をかけたのだ。その他にも「イベントの為に戦車の外見装備を改めたり整えれば、模型好きの人々からも収入が得られるだろう」と言う助言を述べながら、模型会社の大帝国技研も賛同してくれたと言う。

 後日…生徒会会計の青島寧々は語る。珍しく双葉葵が楽しげに算盤を弾いていた、と。

 

 

 

 

 

 

 

 程なくして、少女達に告知が為された。ヒストリカルゲームに参加する事を。一部の少女達は首を傾げ、一部の少女達は喜びに声を上げた。言わばお遊びだ。それも大々的な。それを知る者に取って喜ばない理由が一つもない。だがしかし、同時に懸念の声も上がった。

「銃の扱いなんて、した事ないよぉ」

 装填手の大島明海は愚痴を零した。尤もである。いや、銃以上の巨大な銃火器をチームとしては扱ってはいるが、彼女は正真正銘「小銃火器」を扱った事は無い。砲手並びに機関銃手ではない少女達は不安げな声を零した。ヒストリカルゲームともなれば、装填手や無線手とて銃を握るのは当然の事だからである。そして車長も。

 

 

 この悩みに対し、北村カレラ率いる、ミリタリー知識に聡いサバイバルゲーム部の少女達の徹底的なレクチュアが始まった。当然の事である。例えゲームと言えど、使うのは銃器だ。一歩間違えれば模擬弾、ペイント弾と言えど大怪我は必須。厳しくも慈愛に満ちた事前講義に少女達は確りと耳を傾ける事となった。

 その渦中の最中…恐らくは双葉葵が一番気にしているであろう少女、神無月しおりは何時もの様に平然としていた。北村カレラ率いる播磨女学園サバイバルゲーム部の用意した安全講習も難なく突破し、射撃部が利用しているシューティングレンジに彼女は愛銃を持って立っていた。

 

 

 無骨で、しかし頼もしい大型拳銃。黒くブルーイングの為されたモーゼルM712を慣れた手つきで扱い、淡々と射撃訓練に勤しんでいた。

「しおり君は本当に意外性の塊だ。よもやそんな物を持ってるだなんて、思いもしなかった」

 北村カレラは普段から愛用していると言う、ゲヴェーア43を肩に抱えながら彼女に言った。

「…お母様から持たされたの。小さい頃から。…護身用にって。普段は重いし嵩張るから、使っていないのだけども…」

「ふぅん…? 心配して貰えてるんだね。お母さんからは」

 その言葉に、しおりは小さく頭を振った。

 

 

「…戦車乗りは…いいえ、戦車道ではつまらない諍いが耐えない事が多いから…多分それが理由。戦車乗りは自分で自分の身を守りなさいと…渡された時に言われたもの。…この前だって、諍いがあった訳だし…」

 そう呟く神無月しおりの脳裏に思い浮かぶのは、前回の試合の終わり。自分の頬を張っ倒した少女へと護身用ゴム弾を容赦なく撃ち込む双葉葵のその姿であった。あの時、このモーゼルを腰にぶら下げていれば、彼女にあんな役目をさせずに済んだだろうか。それとも自分は咄嗟にモーゼルを抜く事が出来ただろうか。…分からない。分からない事だらけだ。分からない事だらけの中で分かるのは、モーゼルのずっしりとした重みとグリップが、生体義手の利き手に妙に馴染むと言う事だけだった…。

 

 

 

 

 

 あくる日の事である。ゆっくりと学業をこなしていた神無月しおりの元に呼び出しが掛かった。

『神無月しおりさん。神無月しおりさん。保護者の方がお見えになっています。至急面会室へどうぞ』

 しかし、少女の顔は晴れやかでは無かった。重く苦しげな表情を…表情の希薄で淡い彼女にしては珍しく浮かべていた。

「しおりん、大丈夫? 付き添おうか?」

 大島明海の提案を聞き、僅かに悩んだ彼女は首肯した後に、そっと手を繋いだ。

「…明海さん、お願い。付いてきて…」

「うん!」

 

 

 トボトボと歩いていく神無月しおりの横を大島明海が着いていく。目的の場所、面会室は生徒会室のすぐ近くであった。其処には見慣れた人物が、一人の女性の相手をしていた。

「ああ、しおりちゃん。待ってたよー。ココに来るまでちょっと立ち話させて貰ってただけだから」

「…葵さん」

「何はともあれ、ごゆっくりねぇ。ほんじゃま。ウチらは外で待ってるから」

 そう言うと双葉葵は立ち話をしていた女性の邪魔に成らない位置へと移動した。和服の似合う、美人であった。柔らかい微笑みを絶やさず、その瞳は神無月しおりに対する慈愛に満ちていた。

 …静かな面会室にお茶が運ばれて、茶葉の香りが鼻先を擽った。

 

 

「お久しぶりです。お嬢様。お加減は如何でしょうか?」

「…問題、無いわ…友達も出来たし…仲良く、して貰ってる、から…」

 盗み聞きをする訳でも無いがしかし、大島明海のよく聞こえる耳には、彼女達の会話はとてもとても物静かな物だった。正直に言ってそれは俗に言う「保護者と保護される側」の会話とは思えない程に。何時も以上にぽつりぽつりとしか言葉を発しない神無月しおりの様子に、大島明海は何処と無く嫌な予感がした。

「お話をお伺いしましたの。此方の生徒会長さんからも…そして新聞や小さな雑誌でも…また、戦車道を始められたのですね。わたくし、内心ホッとしていました。またお嬢様が戦車道に戻られて…戦車を嫌いに成らなくて」

「……」

 

 

 神無月しおりは、応えなかった。温かいほうじ茶をゆっくりと啜り、彼女の言葉に耳を傾けていた。

「…あの。それでですね…奥様が、こう仰って居ました。もしも戦車道を続けるのであれば、また此方に戻っては…」

「…Nein!(嫌だ!)」

 不意に、神無月しおりが声を荒げた。普段の彼女とはとても思えない、大きくて、切羽詰った声であった。双葉葵と大島明海、そして彼女に相対していた女性はそれに驚いた。

「Milady!?(お嬢様…!?)」

「nicht! Ich will nicht gehen!(嫌だ! 私は帰りたくない!)」

「Bitte beruhige dich. Milady! (落ち着いてくださいませ、お嬢様!)」

「Zu mir ... Es gibt keinen Platz, zu mir zurückzukehren! Hier bin ich!(私には…帰る場所なんてない! ここが私の居場所だ!)」

「Bitte warte Milady! Warte! (お待ち下さいお嬢様! 待って…!)」

 

 

「しおりん…!?」

 女性が制止するのも振り切って、大島明海の呼び声さえも置き去りに、神無月しおりは面会室を飛び出して廊下を駆け出した。偶然にも廊下で出くわした見知らぬ少女達は、険しい表情でスカートが翻るのも厭わずに廊下を全力で走り抜ける神無月しおりに驚く有様だった。

「…あー…えーっと。話、聞かせて貰ってもえぇですか? 一応彼女の先輩なんで、ねぇ。八島七瀬さん」

「あの、私もっ! 友人として心配だから! …あんなしおりん、初めて見たもん…」

 和服の女性…八島七瀬は申し訳なさそうに先ずは一礼を二人にした。

「どうも、当家の神無月しおりお嬢様がご迷惑をお掛けしてしまってすみません。ご存知かと思いますが…当家は色々と複雑ですので…」

 

 

 三人は神無月しおりが飛び出していった談話室へと場所を改め、静かに話を伺った。

「先ず改めて…ご存知かとは思いますが、神無月家はかの有名な西住流や島田流程の知名度では無いにしろ、独自の流派を持つ家で御座いまして。

 それはもう、流派を守る為にと、女児は幼い頃から戦車漬けの毎日で御座います。寝ても覚めても戦車、戦車…全ては戦車道で食べていく為。

 戦車道で生きていく為。英才教育とは名ばかりの、スパルタな日々をお嬢様は送っていました。物心が付いた頃にはもう豆戦車を乗るように言い渡され、

 小学校の上級生になる頃には車長、砲手、操縦手、無線手と様々な役職をこなせる様に戦車の勉強に次ぐ勉強の毎日…

 わたくしはお嬢様の世話係を命じられて居ましたので、せめて少しでも…年頃の女の子らしい生活を送らせてあげたかったのですが…」

「それ、殆ど虐待に片足突っ込んでるじゃん…!」

 

 

 大島明海の歯に衣着せぬ言い方に、八島七瀬はゆっくりと頷いた。

「えぇ…だけども、そうでもしなくては当家の様な小さな家は生きていけないのです。先祖代々、その様にして

『己の身を一本の刀の様に研ぎ澄ませて、戦いの中に身を置く事しか出来ない』と…お嬢様のお母様、もとい現ご当主の神無月いおり様はそう仰って居ました。

 そして上手くいってしまっているのです。しおりお嬢様以外の姉妹に対して、その様な教育が。

 常在戦場。大胆不敵。見敵必殺。それが神無月流でございますので…」

「成る程…しおりちゃんの時々見せる妙な眼光の鋭さは『ソレ』か…」

 

 

「ご当主様は…もしもまた戦車道を続けるのであれば、自分の手の届く場所に居た方がしおりお嬢様にとっても悪い事ではないだろうとお考えで、

 以前まで在籍していた学園艦に戻って着てはどうかと言うお話をさせて貰ったのですが…幸か不幸か…お話を切り出したら飛び出されてしまいましたね…」

 八島七瀬の苦笑交じりのその言葉は、しかしその苦笑に反して何処か少しだけホッとしているかの様な、何か安心感を感じているかの様な雰囲気を纏っていた。

「ここが私の居場所だ、と…あんなお言葉を聞けるなんて…戦車漬けの毎日で、子供らしい心が余り育たなかったしおりお嬢様が…良いご友人に恵まれたみたいで…不肖、八島七瀬、ホッと致しました」

「ふと思ったんだけどさぁ…しおりちゃん、何人か姉妹が居るんでしょ? 他の子達はどーなのよ。そのスパルタ教育」

 

 

 不意に双葉葵が口にした質問に、そう言えば。と言葉を重ねる大島明海の二人に対して、八島七瀬は困ったような表情で目を細めるのであった。

「えぇ…それが問題の1つでもあります…先ほども言いましたが『酷く上手くいってしまった』のです。スパルタ教育が。

 神無月の血脈の為せる業なのか…それとも『宿業』とでも言うべきか…しおりお嬢様は…姉妹の中では唯一の落ち零れ、

 と言う扱いを受けていました。それが彼女をより一層除者にさせる要因となって、家族の間での確執を広げる事に一役買ってしまいました…」

「それで、姉妹に追い付く為に更に更にと勉強漬けの毎日、ねぇ…?」

 

 

 双葉葵は意味深そうに独り呟き、そして記憶を巡らせた。神無月しおりの行動を。

 具体的にはそう、戦車戦を行う時の彼女の戦略を思考する姿を。まるで頭の中に叩き込んだデータをブツブツと呟きながらアウトプットするコンピュータの様であったから。

 それは一見すれば、戦車道に対して真面目に取り組んでいる熟練者の様にも見る。

 だがしかし、恐らくはこうだ。彼女は『不出来な自分が取る事の出来る最良の作戦や行動を、今までの戦車漬けの人生で頭に叩き込んできた経験と言う名のデータベースから必死に弾き出そうとしていた』のだと。

 

 

誰にも迷惑をかけない為に。かつては、自分の『家』に。そして今は…『私達』の為に。

 溜息が出る。なんともいじらしい。そして同時に哀れだ。双葉葵はそう感じた。改めて彼女を己の思惑に巻き込んでしまった事を申し訳なく思う。

 だがしかし、走り出してしまった事柄はもう止め様がないのだ。行き着く所に辿り着くまで。泳ぐのをやめれば死んでしまう鮫の様な有様だ。

 彼女がそんな事をぼんやりと考えていた時、ポケットの中の携帯電話が小さく震えた。自分と同じく生徒会に所属する副会長の田宮恵理子からだった。

 

 

「ちょっと失礼…。はいもしもし、どったのえりりん」

『あ、会長! 今しがた神無月さんが泣き腫らした顔で廊下を走り抜けていって…先程の呼び出しもありましたし、一体何が起きたのかと』

 尤もな事だ。黒髪の似合う美少女が涙目で廊下を走れば嫌でも目に付く事だろう。ましてや彼女は、我が戦車道チームのリーダーだ。既に一般生徒からの知名度は高く、それ故に、下手にメンタルを崩されては堪った物ではない。

「あー…ちょっち訳ありでね。悪いけど暫く放っといてあげてくれないかなぁ。

 多分やけどもウチの考えだと…しおりちゃんは今、一人で居たいハズだろうから」

 

 

『分かりました。ではその様に』

「あーい、宜しくー…ふぅ」

「お嬢様のこと、よく見て下さっているのですね」

 八島七瀬はホッとするような、感心する様な風にそっと呟いた。そんな彼女の言葉に小さく苦笑しながら、双葉葵は言葉を紡いだ。

「いやいや、ウチがしおりちゃんを面倒ごとに巻き込んじゃった側やから。だから少しでもあの子の負担になる様な事しないようにーって気を使ってるだけなんでぇ」

「どの様な事があったかは存じませんが、この八島七瀬、お嬢様のお世話係として頼れるご友人が出来た事をとても嬉しく思います。

 本当に…有難うございます。お嬢様の事をこれからもどうぞ宜しく…」

 

 

「いやいや、お世話になってるのは寧ろこっちの方だから…」

 …等という、生徒会長とお世話係の間で交わされる感謝合戦のさなか、大島明海は一人心の中で考えていた。

(しおりん…何処に行っちゃったんだろう…)

あの時、咄嗟に追いかけていけば良かっただろうか? それとも今、こうして放っといて良かったのだろうか。何方の判断が正しかったのかも分からず、大島明海はほうじ茶をぐいっと飲んだ。

 

 

 

 

 

 …――学園内の敷地。その中でも静かな一角にて――…

 

 東郷百合は昼食を終えて昼寝をするべく学園内の敷地を歩いていた。潮風を強く浴びたりせず、それなりに光が差し込み、穏やかな場所を求めて。それは概ね、学園内の裏庭にある茂みと芝生のエリアだった。

 するとどうだろうか。珍しく先客が居るではないか。黒く艶やかな髪を長く伸ばした少女が、膝を抱え込んで、茂みの合間に隠れるようにひっそりと蹲っている。

「もしかして…隊長のしおりちゃんじゃない? どうしたのこんな所で」

 東郷百合は珍しく、彼女にとっては声を控え目にしながら呼びかけた。その途端、びくりと神無月しおりは体を震わせた。

 伏せられていた顔は涙に濡れて、何処か困惑している有様だった。

 

 

 どうしたら良いのか分からないと言わんばかりに、彼女はオロオロするばかりだ。

「あ、やっぱりしおりちゃんだ。えーっと…あたし、お昼寝するつもりでココにブラブラ~っとやってきただけなんだけども、お邪魔してもいーい…?」

「……どうぞ」

 か細い声で返事を返す神無月しおりの隣に、東郷百合はそっと座り込んだ。

 芝生は青々としていて心地がいい。穏やかな風が頬を撫でていって、清々しい。だが、隣に蹲る少女は全く相反する有様だった。

「…んー。何かあったの? しおりちゃん」

 漠然と声を掛けてみた東郷百合はしかし、答えを期待して居なかった。彼女に無理に喋らせるつもりは毛頭無かったからだ。

 

 

「まぁ泣き顔晒してて『何でもありませーん』なんてこたぁ無いよねー…こっちおいで」

「きゃっ…」

 そう言うや否や、藤堂百合は神無月しおりの肩を抱き寄せ、そして自分の肩に寄りかからせた。

「何があったかなんて無理に聞かない。無理に聞く気も無い。辛くてしょうがないなら、それが収まるのを待つしかないよね。寝ちゃいなよ。ひと眠りでもしたら、嫌な事なんて少しは薄れるから」

 とんとん、と優しく背中を、肩を撫でながら彼女はゆっくりと神無月しおりに語り掛けた。それは普段の聊か軽薄な性格の彼女とは裏腹にとても優しく、そして温かい空気を伴っていた。

 

 

「…ダンケシェン…」

「うん? なんて?」

 聞きなれないドイツ語にはて? と小首を傾げる暇もなく、神無月しおりは東郷百合に体重を預けた。そしてまるで、緊張の糸がプツリと切れたかの様にすぅすぅと静かな寝息を立て始めた。

 まるで怯えた小動物が、漸く安らぎの場所を見つけたと言わんばかりのその行動に東郷百合はただただ呆気に取られるだけだった。

 特に理由もなく、彼女はそっと、烏の濡れ衣の様なしおりの黒髪を静かに撫でた。その時不意に、指先が何かに触れた。不思議に思った彼女は何度も優しく、頭を撫でる。

 

 

 そして分かった事は…指に触れたのは、古傷の痕の小さな膨らみだと言う事だった。それに気づいた彼女はギョッとした。首筋を見やると、制服の僅かな隙間から、打撲の傷跡がちらりと見えた。

 放り出されている左手を見やれば、少女らしかぬレバーを握りしめる事で出来るタコの痕が見えたし、スカートから転び出ている足にも、よくよく観察すると火傷や打撲の痣がチラホラと見えていた。

 東郷百合は察した。これは、戦車道で出来た傷跡だ、と。自身もまた、ミニバイクによるレース活動を行っていて多少の怪我を負った事はあった。

 故に戦車道もまた、多少の怪我は当然の物と理解していた。だが眼前の少女はどう言う事だろう。言い例えるならば、まるで傷塗れの古強者の武者だ。

 

 

 謎の不安感や、末恐ろしい何かを感じながらも、同時にあどけなく眠る神無月しおりのチグハグさに、東郷百合は庇護欲に近い何かを感じ、ただただ優しく彼女を見守ってやるのであった。

 

 

 ――さて、噂とは皮肉にも、いやらしくも伝播していく物である――

 

 

 神無月しおりが、失恋でもしたのか大粒の涙を涙を流していたとか、誰かに苛められて泣いていたのだ、

 いいやあれは生徒会長に何か無茶振りを押し付けられて泣きながら逃げ出した等などと、

 少女達の噂話とは本当に性質が悪い事この上ない。だが然し、全てにおいて共通していたのは「悲惨な顔で泣いていた」と言う事。それを耳にしたある少女は…

 

 

「何ッ、我が隊長が泣いていただと?」

「それも歯を食いしばっての大泣きっぽかったらしいよぉ?」

 アリカ・三日月は聞き込みした噂話の内容を纏め上げた手帳をやれやれとばかりに読み上げた。

「ぬん…こうしては居られんな。メルツェデスとアルピーナ、ジルヴィアに連絡は?」

 パンターの乗務員。それも気心の知れたドイツ系帰国子女達の仲間達の名前をバウムガルト・桜は読み上げた。

「えーっと…メルツェデスちゃんはパンターの整備に付きっ切りで、アルピーナちゃんは同軸機銃を使った射撃訓練の最中。ジルヴィアちゃんは無線機の練習会。時間が空いてるのは私達二人って所かなぁ…」

 

 

「ふむ…ちと戦力が物足りなく感じる所だが…致し方あるまい。あの手を使うか」

やれやれとばかりに携帯電話を取り出すバウムガルト・桜にアリカ・三日月はハテ? と首を傾げた。

「まぁ見ていろ。生徒会長殿か? 噂は聞いた。そこでだが、私とアリカに早退の許可を願いたい。別に悪い事をする訳じゃないんだ。彼女の心を少しでも癒してやりたいと思っての事だ。うん、うん…ダンケシェン。それじゃまた」

「えー…何する気なの? 桜ちゃん」

 意外とこう見えて、やる! と決めた事はやり遂げる強情な感情の持ち主のバウムガルト・桜にアリカ・三日月は心配そうな声を上げた。

 

 

「なぁに。ちょっと私のMietshaus に我らが隊長をお招きするだけだよ。さぁ手伝えアリカ。戦力は我々二人きり。猶予の時刻は夕餉の時間まで!」

「キューマル屋のクレープ食べに行きたかったのにぃ~…」

 愚痴を零す友人の背中をぽふぽふと押し出しながらバウムガルト・桜は急かした。

「今度奢ってやる!だからSchnel! Schnel!(早く早く)」

「やぼ~る…」

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方。潮風が冷え込んできた頃、何処へでもなくフラフラとしていた神無月しおりの携帯電話にメールが届いた。

『我が敬愛する隊長殿へ。本日の夕餉に貴女をお招きしたい。ご友人も誘って来られたし。場所は×××。あんまり遅いと美味しい料理が冷めてしまうぞ。Ich warte auf Sie,Shiori.(待ってるぞ。しおり)』

 予想だにしなかった連絡にキョトンとしつつ、神無月しおりはどうしようかと少し悩んだ。余り足を運ぶ元気が無いな…でも無下にするのも失礼になるし…と。

「あっ!しおりん漸く見つけたぁ!!」

 するとどうだろうか。聞きなれた、親しみのある暖かい声が背中から聞こえた。大島明海の声だった。

 

 

「もー、あっちへフラフラ、こっちへフラフラって学校の中を歩き回って探すの大変だったんだよ? 幽霊みたいにフラフラ歩き回ってる美少女が居るーって言う学校の掲示板見ながらどれだけ探し回ったか」

「明海、さん…」

「心配したんだからねー。嗚呼もう…泣き腫らしちゃって…どんだけ泣いてたの? ほら、冷やしたハンカチ。そんなんじゃバウムガルトさんにもっと心配されちゃうよぉ?」

「んぅ…」

 冷たい水で濡らされたハンカチをそっと目元に当てられる。ひんやりとして心地よかった。

 

 

「おぉ。居た居た。捕まえられなかったらどうした物かと思ったよ」

 北村カレラが、霧島蓉子と中嶋奏を引き連れて現れた。

「流石に歩き疲れた…ふぅ」

「霧島さんは車に乗ってる方が多いぐらいですもんねー」

「悪かったな。アクセルとブレーキとクラッチ踏むのに神経使うからあたしの両足は繊細なんだよ」

 何時ものメンバーが、クスクスと談笑を繰り広げる。その様子に神無月しおりは何か暖かい物を感じた。

「それで、どうするかい? ご飯、お呼ばれに行くかい?」

「…行く」

 

 

 飾り気の無い、黒一色の携帯電話を取り出して神無月しおりは返事を返した。

「Darf ich Sie kurz stoeren.(お邪魔しても良いですか?)」

 メールを送信するや否や、瞬く間に返信が帰ってきた。神無月しおりは少しだけ吃驚してワタワタと携帯電話を落しそうになった。

「Natürlich will ich! (勿論だとも!)」

 その返事を見ながら、霧島蓉子は己の腕時計を見た。時刻はそれなりに遅い。水平線の向こうにあった夕日も沈みかけていた

「時間も遅いな…私のタトラでも出すか」

「えぇっ!? 自動車通学してるんですか!?」

 突然の霧島蓉子の言葉に中嶋奏は心底驚いた様な声を漏らした

 

 

「夜中、甲板下の船舶科の所に夜食弁当を運んでてな。明朝はそのまま学校に駐車して、仮眠室を借りてる」

「はえ~…それでよく睡眠時間足りてますねぇ」

 中嶋奏は感心するような、何処かちょっと心配する様な声を漏らした。

「何。眠い時は昼寝してるし…生徒会長の許可も貰ってる」

「人生色々。学生生活も色々、だな」

 北村カレラの言葉でこの話題はストンと閉じられた。

 

 

 

 

 走る事暫し。霧島蓉子のタトラはフカフカのシートで乗り心地が良かった。指定されたアパートまでの道程はとても緩やかで、彼女のドライビングテクニックの高さを感じさせた。曰く「荒っぽい運転だと弁当が崩れる」だそうだ。

 さて、タトラがバウムガルト・桜の住むアパートに到着するや否や、アパートの一室が勢い良く開けられた。

「お待ちしていたぞ!我らがKommandant ! さぁさぁ、ご友人らも我がMietshausに入った、入った!」

 

 

 余りの威勢の良さにポカーンとしながら、一言も言葉を発する暇も無く、5人はポイポイとアパートメントの中に放り込まれた。其処にはとても良い香りが漂っていた。神無月しおりにとっては、酷く懐かしい香りであった。

「いらっしゃ~い。準備出来てるわよぉ」

 アリカ・三日月はエプロンを付けながら、カチカチとトングを鳴らしてキャラメルブラウンの髪を揺らしていた。

「アリカちゃん! もしかして…手伝わされた?」

「そうなのよぉ。キューマル屋のクレープ食べに行きたかったのに、戦時召集だーって言わんばかりに」

 

 

「失礼な! ちゃんとこれが終ったら奢ると対価を提示したではないか! それはさておき…さぁ。Kommandant. こちらに」

 己の酷い言われ様にぷんすかと怒りながらも、バウムガルト・桜は紳士的に神無月しおりを上座へと招いた。

「えっと…バウムガルトさん…もしかして」

「うむ! 泣いていた理由が何なのか全く分からんが、少しでも我らがKommandantを慰めようと思って、これでもかとばかりに我が故郷のドイツ料理を作ってみた!」

 

 

 どうだとばかりにフンスと鼻息を鳴らすバウムガルト・桜の言うとおり、テーブルのそこ彼処に並ぶのは様々な料理だった。王道のアイスバイン。付け合せのザワークラウト。マウルタッシェにケーゼシュペッツレ。アウフラウフや各種のヴルストにチーズや温かいライ麦パン。正にドイツ料理のフルコースと言わんばかりであった。

「にしても凄い料理の量。って言うかオーブンとか無いと無理だよね、此れ!?」

 大島明海の素直な指摘にバウムガルト・桜はうんうんと頷いた。

 

 

「うむ。ドイツ料理を自炊すると入学届けを出した際に会長殿から快く貸して頂いた。少し割高の家賃は他のドイツ系の友人に料理を配って小銭を稼いでいるんだ。…まぁ内緒だがな。さぁ、冷えない内に頂こう。Mahlzeit!(頂きます!)」

「…Mahlzeit.(頂きます)」

 頂きますの合唱。少女達の食事は賑やかであった。ただ一人を除いて。それは黙々と静かに食べる神無月しおりだった。

「…Kommandant.口に合わなかっただろうか」

 

 

 恐る恐るとばかりにバウムガルト・桜は神無月しおりに問いかけた。彼女は小さくふるふると横に首を振った。

「違う…美味しくて…懐かしくて…だけども、寂しくて…」

ほろり、と涙が溢れ出す。もう今日の涙は枯れた物だと神無月しおりは思っていた。

「Ist es ein altes Ereignis? (昔の事かい?)」

「ja(えぇ…)」

神無月しおりは、そっとハンカチで涙を拭った。

「…私…前の学校で…こんな風に誰かに招いて貰って…食事をしてなんて…全く無かった。毎日が戦車漬けで…

 練習が終ったらシャワーを浴びて…晩御飯を胃の中に詰め込んで…そんな生活ばかり…それが悲しくて…でも、今が嬉しくて…私、分からない…今が、嬉しいはずなのに…涙が止まらない…」

 

 

そっと、横の席に座っていたバウムガルト・桜が神無月しおりの頬を流れる涙を拭った。

「Kommandant.それは貴女が『ただの少女』としての日常を強く理解したからだ。何もおかしい事は無い。人は、心が暖かいと感じた時にも涙を流す。貴女は今、暖かさに触れているんだ。優しい暖かさに」

 そしてバウムガルト・桜は優しく神無月しおりをハグした。

「恐れることは無い。今を楽しもう。過ぎた昨日を笑って、明日へと夢を見よう」

「…っ…うん…」

 

 

 二人の少女のやり取りを見て、大島明海はそっと微笑んだ。しおりん、良い友達が増えていって良かったね。と…然し反面、小さな悔しさを感じていた。ズルい!泣いてるしおりんをハグして慰めてるバウムガルトさんが羨ましい!と。

 そんな少女達の小さな宴は、夜遅くまでゆっくりと続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――時は流れて―――

 

 

 

 やがて梅雨前線が日本列島を覆い始める頃。少女達は普段と違う雰囲気にウキウキともドキドキともつかない心持で特別列車に揺られていた。普段の煌びやかなパンツァージャケットとは違う、使い古されたやぼったい戦闘服に身を包んで…そして、既に撮影カメラのフィルムは回っていた。

 少女たちはヒストリカルゲームの為に用意されたチョコレートバーやクッキーを齧り、風味と言うよりは癖の強いフレーバーの利いた紅茶や苦みの強い珈琲に粉末乳を混ぜて飲んで、目的地へと到着するのを待った。

 

 

 雨の降りしきる中、蒸気機関車が目的地の駅に到着する。少女達はそれぞれの作業を分担して、貨車の荷物や、積載された戦車を下ろしていった。コートを叩く雨粒は大きく、肌寒い。やもすれば吐息がやんわりと白く煙る様に感じられた。

 地面は雨で濡れてグズつき、歩くのも一苦労だ。人間がそうであるならば、例え不整地に強い戦車と言えども同じであろう。履帯は大地に深々と沈み込み、泥を掻いては中々真っすぐと前には進まない。

 

 湿度のお蔭でキャブレターも咳き込む様に不調を露にする。ターレットリングやクラッペの隙間から車内に零れ漏れる雨水が戦車の床に落ちる度に聞こえるピタ…ピタ…と言う音が妙に耳に付いた。

 やがて、泥に塗れた少女達の歩兵戦闘隊と戦車隊は、設営地に到着した。其処には既にメロヴィング大学付属高校の少女達と戦車が待っていた。神無月しおりが己の部隊に号令を出す。

 

 

「一時休息を取ります。それと装備と戦車の状況確認を。この泥と雨です。抜かりないように。歩兵隊の隊長は私と共に指令所のテントへ」

 播磨女学園サバイバルゲーム部の部長と共に、神無月しおりはテントへ向けて歩きづらい泥の中を物ともしない様に歩いて行った。彼女のその姿は酷く様になっていた。カメラを回していた撮影班が痛く興奮したと、後に供述する程に。曰く、戦場に現れた麗しい戦乙女その物だ、と。

「状況は?」

 

 

 テントを掻い潜った中では、見知った顔ぶれがテーブルを前にして眉を潜めていた。エリザベド・ガリマールと彼女の副官、クロエ・アンペールだ。エリザベドは不機嫌そうに、パイプの吸い口を小さく齧っていた。

「状況? 見ての通り膠着状態だ。我々はこの丘の上のかつての工場町を占領せよ。との命令を受けたが。既に相手側は防衛の陣地を張り終え、我々はこの泥と泥濘の中を泳ぐようにノタノタと姿を晒しながら前に進むしかないんだ。オクトーバー(神無月)、質問は?」

「敵の規模と布陣は…?」

 

 

「正面の丘に戦車を利用したトーチカと機関銃陣地。裏手側はやや急斜面で手透きらしいけれども、機関銃陣地が敷かれていて歩兵は前に出せない。戦車はマチルダ2とヴァリアント。T-34の75ミリがトーチカをやってる。歩兵の話ではエクセルシオールも見たとか…」

「敵の詳しい布陣は分かる?」

 オクトーバー…神無月しおりの質問にエリザベドは首を横に振った。残念ながら、と言う顔で。

「この雨だ。視界が酷く悪い。オマケに奴ら、夜になる度に陣地転換をする始末だ。マッピングしたいがどうしようもない。お手上げだよ」

 

 

 エリザベドの言葉を聞いて、神無月しおりは地図を見た。正面の丘はエリザベド・ガリマールの言う通り傾斜が緩やかだ。所々地面の段差があって、アンブッシュに適しているのも良く分かる。丘の裏側は割と急斜面だが、登れる事は無い筈だ。ぬかるみに気をつけさえすれば、だが…

「先ず私が威力偵察の為の攻撃隊を正面の丘へ出します。少しでも情報が得られれば撤退します。宜しいですか?」

 エリザベドは暫し考え込む様な素振りを見せて…そして頷いた。

 

 

「我が隊の戦車は整備中だ。君達をあてにさせて貰おう。健闘を。オクトーバー」

 互いに敬礼を交し合い、神無月しおりと播磨女学園サバイバルゲーム部の部長はテントを出て、雨の降りしきる外界へと戻っていった。

 「クノッヘン中隊。集合!」普段の神無月しおりとは思えない程、よく通る声で播磨女学園の少女達を呼び出した。泥に塗れながら少女達は整列する。

「我々はこれより敵陣への威力偵察を行う。戦車隊、並びに歩兵部隊との連携は密に取るように。履帯で仲間を踏み潰すなんて言う詰まらない事故は絶対に許さない。分かったか?」

「Jawohl! Kommandant!」

 

 

「gut.(宜しい)戦車クルーは戦車に搭乗!歩兵隊は歩兵中隊長の指示で持って動け! 作戦開始!」

 三/四号戦車に乗り込んだ神無月しおりは一息をついた。車内カメラを一旦切り、大きく溜息を付く。

「…慣れないな…ヒストリカルゲーム…」

「凄かったよしおりん!まるで本当の軍人さんみたいだった!」

  大島明海は凄い凄いと彼女を褒め称えたが、対して北村カレラは神無月しおりに対して同情的だった。

「役を演じなければいけないんだ。しおり君のメンタルを考えれば苦痛な事この上ないだろう」

「…しんどかった」

 ぽつりと呟く神無月しおりに、大島明海は「ぁっ」と小さく声を零した。

 

 

「ごめんねしおりん、あんまりにもしおりんが凄かったから、私ついつい魅入っちゃって…」

「…無理も無い。あれ程ハキハキと指示を出されたら誰だって美少女のしおりに魅了される…」

 宛ら戦車隊を率いる魔女かワルキューレだからな…と霧島蓉子はクックッと笑った。

「でもでも、どうするんです? こんなにぬかるんでるのに威力偵察だなんて」

 中嶋奏が心配そうに問いかけた。確かにこのぬかるみは脅威である。だが不可能では無い。心の落ち着いた神無月しおりは車内のカメラのスイッチを入れた。

 

 

「無線手。各戦車に連絡を。履帯幅の広いB1 TerとT-34を先頭に轍を作らせて途中まで進軍。丘の麓にまで到着したら分散して敵に対して『昼時の角度』で砲撃を行います。Panzer vor! (戦車前進!)」

『Jawohl! Panzer vor!』

 各車両からの返答を得て、戦車隊はバチャバチャとぬかるんだ地面を進んでいく。神無月しおりは車内でもう一つの無線を取った。

「歩兵中隊長殿へ。敵陣には戦車からの機関銃による攻撃が予想されます。気をつけて行動して下さい」

『了解した。戦車を盾にしたい所だが…』

 

 

「残念ながらひき殺しかねません。これが真っ直ぐ進撃する様な状況ならば、それも可能でしょうが…」

『無いもの強請りをしても意味が無い。我々は戦車隊とは間合いをとって地面に這い蹲る。良いか?』

「Gut,それで問題ないと思います。無線終了。…中嶋さん。各車に通達。歩兵が戦車を盾にしようとしたら気をつけるようにと連絡して下さい。隊内でのつまらない事故は御免です」

 

 

「Jawohl!今回は無線手も色々と忙しくなりそうです」分厚い紙で出来た地図を片手に、中嶋奏は少し楽しげに現在の状況を書き込んでいた。

普段の戦車競技で使っている便利なタッチパッド端末なんて物は使えないのだから。

「しかし、こうもぬかるんでいると…まるで犬かきだな」

 右へ左へと履帯が滑る地面を必死になって操縦する霧島蓉子は小さくボヤいた。

「オマケに視界も悪い。全く…雨は嫌いだ…モノを運転する時の雨はな…」

 やがて戦車隊は丘の麓へと到達した。そして直ぐ様に砲撃の雨が飛んでくる。幸いなのは、この雨風のお陰でろくな照準が出来ていないと言う事だろうか。

 

 

「全車、『昼時の角度』!そのままゆっくりと進みます!」

 神無月しおりの指示の元、斜めに構えた戦車たちはずりずりと滑りながらもゆっくりと丘を登っていった。視界に写ったのは…ハルダウンを行っているバリアントとT-34の75ミリ。そしてマチルダ2だった。

 エクセルシオールの姿は…見えない。頂上に陣取っているのかも知れない。戦車意外にも据え付けられたのであろう機関銃陣地から、パタタタタとこちらの歩兵部隊目掛けて攻撃を行っていた。その時、不意に無線が走った。

『こちらパンター!履帯をやられた!後退の補助を求む! オーバー』

「会ちょ…んんっ。葵さん、四葉アカリさんと共同してパンターを回収してください。

 四葉ヒカリさんはパンターの回収の援護をお願いします。オーバー」

 

 

『こちらアカリ、了解』

『ヒカリも了解しました』

『ベルゲパンターが欲しいねぇ。こちら葵、りょーかい。中隊長』

 やれやれとばかりにしおいは小さく溜息をついた。小口径、低威力の主砲を持った戦車でも、狙い澄まして砲弾を放てば履帯の一つや二つ、吹き飛ばす事が出来るのだから。…尤も、このヒストリカルゲームで使われる砲弾は安全に配慮したペイント弾である。恐らくパンターの履帯には、びっちゃりと塗料がこびり付いているのだろう。損傷判定装置が恐らく履帯の破損を伝えたハズだ。戦車道での白旗判定装置の様に。

 

 

「戦力が低下しました。後退します。このまま攻撃を続けても無駄な損害を増やすだけです。全車撤退。中嶋さん、歩兵部隊にも撤退命令を出してください」

「Jawohl! にしても敵は嫌らしい配置で戦車を配置してますねぇ…」

 車長殿。これをどうぞ。と手渡された地図には丘の傾斜に合わせて満遍なく敵の車両が配置されていた。

「側面は装甲の硬いマチルダ2とバリアント。概ね正面には傾斜装甲を持ったT-34が布陣してます。

 それと一発だけですが大きな砲声が雨の中で聞こえました。見事に外れましたけど、エクセルシオールの可能性があります」

 

 

 鉛筆で大雑把に書き込まれた陣地図を見て、神無月しおりは思考した。正面突破は無謀が過ぎると。

「何はともあれ、我々は一時撤退します。パンターの修理、燃料弾薬の補充、兵士の休養を取らなくてはなりません。無謀にも戦い続ける事は敗北を意味します。戦士には…休息が必要なのだから」

 そう言い終えた神無月しおりは車内カメラのスイッチを切った。大島明海はそっと背中を撫でてやり、霧島蓉子はややぶっきらぼうに「お疲れさん」と労った。

 

 

「まるで本物の女優だな。しおり君は。願わくば変ってあげたいよ。とても疲れるだろう?」

「…うん…凄い疲れる…何度か隊長役をやったけど…本当に慣れない…」

 彼女が抜擢されたのも無理は無かった。見栄えする容姿。そして播磨女学園の戦車隊の隊長。この二つが組み合わさった存在を、フィルム会社が逃す訳が無い。

そして副官役にはもう一人の絵に描いたような美少女、金髪碧眼で高身長のバウムガルド・桜女史が割り当てられた。

 

 

ぬかるみの中を、歩兵と戦車がノタノタと進んで行く。設営地へと向かって進んでいく。簡易テントが張られ、歩兵部隊はそこで食事を取った。配給されたスープとパン、そして携行食糧のクラッカーやチョコレートバーを齧って。

「皆っ、ご飯貰ってきたよ」

「わぁ、助かります!

 ブーツの泥を落としながら、飯ごうの様な入れ物とパンの入った紙袋を片手に大島明海は外から戻ってきた。そんな彼女の献身的な活動に、三/四号のキャブレターの調整をしていた中嶋奏は酷く喜んだ。

 

 

「狭いが、ぬかるみの中で食事するよりはマシだからね」

 ふぅ…と撮影用の煙草を燻らせながら北村カレラはそうボヤいた。煙が出るだけで全く美味しくないなぁ…と心中で思いながら。

 戦車の操縦と言う一仕事を終えた霧島蓉子は椅子に寄りかかって転寝をしていたが、スープの香りを感じ取ると、目を擦りながら睡眠から覚醒した。そして神無月しおりはと言うと…

「……」

 じっと、地図を見ていた。中嶋奏が雨が滴るクラッペから必死に得た情報を、

 

 

自分がキューポラから見た情報と統合し、修正する。頑強な防衛陣地だ。とてもじゃないが、現状戦力では突破は難しいだろう。否、仮に突破出来たとしても、生き残る戦車は僅かに数両のハズ。

 それでは丘の上で待ち伏せている戦車と太刀打ちが出来ない。やはりこの場合、取るべき戦法は…

「しおりん、ご飯!」

 ぽん、と地図の上に野菜のスープとパンが置かれた。顔を上げると大島明海が少しむくれた様な表情で神無月しおりを見つめていた。はて、なんだろう…? と神無月しおりはキョトンと小首を傾げる。

 

 

「今はもう、ご飯の時間! 作戦考えるのは後、後! 食べなきゃ頭、回んないよ? ただでさえしおりんは今日、役者さんをやって疲れてるんだから! ほら、あーん」

「…あーん」

 携行食糧の中にあったクラッカーとジャムを取り出して、大島明海は神無月しおりに食べさせてあげた。

 

 

 その様子はさながら親鳥が雛鳥に対して食事を与える様でもあったし、人が動物に対して餌付けを行っている様にも北村カレラは見えた。

「よしよし。いい子いい子。しおりんは、自分で食べられるよね?」

「…ん」

 もぐもぐとクラッカーを咀嚼しながら神無月しおりは頷いた。…やっぱり、大島明海さんは優しい人だなと。そう思いながら同時に思う。…――自分には、勿体無いぐらいの人だ――…と。『獣』の様な自分には…

 

 

 

 

 

 

 

 作戦、二日目。相変わらずの雨。履帯をやられたパンターは損傷箇所…ペイント弾の付着した部位…を交換して復帰し、エリザベドの戦車隊も整備から復帰した。

「エリザベド隊長。提案があります」

「なんだ? オクトーバー」

テントの中でパンツァージャケットに着替えようとしていたエリザベドはその手を休めた。体躯は小さいが、意外と胸元には膨らみがあった。着痩せする人なのだな。と神無月しおりは思った。

 

 

「先日の威力偵察で概ねの敵の布陣が分かりました。丘の正面の両側面は装甲の硬い戦車が。中央部には避弾経始に優れるT-34…

 そして恐らくですが、丘の傾斜の頂上部に、エクセルシオール。彼らは毎日、微妙にアンブッシュの場所を変えて、エリザベド隊長の戦車隊を苦しめたのでしょう。その布陣は正に頑強です。そこで…」

 神無月しおりは地図を広げた。正面の丘には、昨日調べた内容が既に書き込んである。

 

 

「エリザベド隊長率いる戦車隊には極力安全な距離からB1Terによる間接射撃を実施して貰い、我々は敵の背後を突きます」

「それは構わんが…敵もその作戦の事を考えている筈だ」

 パイプを咥え、吸い口を小さくかじりながらエリザベド・ガリマールは堪えた。

「承知の上です。このままでは消耗戦で此方が削り負けます。削り負ける前にやるしかないんです」

「覚悟の上で…か。分かった。君のプランを採用しよう。オクトーバー。健闘を」

 

 

「エリザベド隊長も」

 二度目の敬礼を交し合い、二人はその場を後にした。

「聞け、諸君! 我々フィギエ中隊は敵陣に対して間接射撃攻撃を行う!

 砲弾を使いすぎるな! 補給があると言っても限度がある! 全車、前へ! Panzer vor!」

 ずるずると、ぬかるみの中を這い回るように、犬かきをするかの様に、B1Terの部隊が進撃していく。

「こちらも作戦行動を開始します。Panzer vor!」

 

 

 そして神無月しおりの部隊も動き出した。彼女らは道中で別れ、主力たる神無月しおりの部隊は大きく迂回しながら小高い丘の裏手に出た。

 その間にも、正面側ではドン…ドン…と砲声が轟いている。恐らくは今、砲撃の応酬を繰り広げている筈だ。

「全車、エンジン停止」

 藪に隠した戦車のキューポラから、神無月しおりは状況を確認する。成る程確かに敵は此方側にも戦力を割いている様だが、

 それでも正面に比べれば圧倒的に少ない。彼女は行けると踏んだ。

「各車、攻勢に出ます。敵の戦力を出来るだけ削ぎます。Panzer vor!」

 

 

 ぬかるんだ地面を、無限軌道がかき進む。エンジン音に気付いたのか、相手も動き出した。

「パンター並びにクロムウェルとT69E3、そしてT-34の長砲身車両は敵車両との間合いを取って砲撃を。短砲身の各車は履帯や砲身を狙って行動不能へと追いやって下さい。留めは威力の在る我々がやります」

『Jawohl! Kommandant!』

 無線機からの威勢の良い返事に小さくため息を零しながら喉頭マイクを僅かに緩める。これはゲームだと分かっていたとしても、神無月しおりにとっては戦車道の実戦宛らの緊張感があった。

 

 

「敵戦車、来ます! T-34短砲身とヴァリアント!それから…KV-1初期型!」

「また硬いのばっかりゾロゾロと…!」

「葵さん、T-34を任せます。バウムガルトさんと五十鈴佳奈さんはヴァリアントを。セリカさんと私は足の遅いKV-1を挟撃します」

『Jawohl!仰せのままに!』

「地面がかなりぬかるんでいます。ブレーキもアクセルも気をつけて」

 神無月しおりの言うとおり、地面はとてもぬかるんでいた。

 下手をすればスタックしかねない程に。それは敵にも言えた事で、ずるずると丘を降りてくる様は「降りてきた」と言うよりも「滑り落ちてきた」と言うのが正しい様に思えた。

 

 

ソミュアとB1Terによる支援砲撃で足を止めさせられた敵戦車を、長砲身の各車両が撃破していく。鈍重だが、装甲の分厚いKV-1に対しては、三/四号戦車が正面より敵の注意をひき付け、

 ぬかるんだ地面を逆手に取り泥沼の中でドリフトをしてみせた軽量なクロムウェルが背後を取ってこれを撃破。然し、それでも敵は進撃をやめない。

「戦力の逐次投入だと? なんて愚作な!」

 バウムガルト・桜は憤慨した。しかし無線が入ってくる。

『違うと思うわ。きっとコレ、一気に攻勢に出たくてもぬかるんでて禄に丘を下れないのよ』

 

 

見れば車体を斜めにしながらズルズルと降りてくる車両ばかりだ。平地に降りてから漸く立て直して索敵を行い、こちらへと砲撃を行ってきている。成る程確かに、五十鈴佳奈の言う通りであった。

『鴨撃ちよ! 出来るだけ倒しちゃいましょ!』

『違いないわね!』

  そう言うや否やT-34の57mm長砲身砲が吼え、続いてクロムウェルの75mm砲が吼えた。チラチラと見える機関銃陣地のマズルフラッシュに対しては、何発かの榴弾を撃ち込んで沈黙させた。

 雨が降りしきる中、砲撃の音が木霊し、マズルフラッシュが僅かにきらめく。どれ程の時間が経っただろうか。

 

 

神無月しおりは僅かにキューポラから顔を出し、空を見上げた。空は既に暗く、そして突如として雨が強まった。視界は殆ど無いに等しい。このままでは危険だ。

「各車両、聞いて下さい。夜も近く、雨が強まってきました。この状況下で砲撃するのは危険ですし、有効打を与えるのが難しいと思われます。直ぐに撤退を。敵の戦力は十二分に削ぐ事が出来ました」

 神無月しおりの指揮する戦車隊は、大きな損傷も無く撤退していった。丘の下に多くの屍と化した戦車を残して。

 

 

 野営地にで、エリザベド・ガリマールの指揮する戦車隊は数両の車両が撃破されていた。

「丘の上のエクセルシオールだ」

 苦々しく彼女は神無月しおりにそう答えた。

「殆どトップアタックだよ。まぐれ当りかも知れないが砲塔を撃たれた奴も居た。どうしようもない…」

 みれば、べったりと撃破判定の塗料がB1Terの砲塔や上面にこびり付いていた。

「こちらは生きているのは7両。そちらは?」

「幸いにも損害は無いわ。9両全て可動状態」

「残念な知らせだが、燃料も弾薬も、補給がもう心許無い。全力出撃が出来るのは明日で最後だ」

 

 

「明日で、最後…」

「これで決められなければ我々の敗北と言う事だよ、オクトーバー」

 果たして司令部になんて言われるやら。等と演技ぶってエリザベド・ガリマールは答えた。

「でしたら、全力攻勢を仕掛けましょう」

「…オクトーバー…?」

 神無月しおりの言葉に、エリザベド・ガリマールはキョトンとした。

「幸い、裏手の戦力は削ぎました。何時、如何なる時、如何なる戦でも二正面作戦で勝てた例はほんの僅かです。

 

 

 敵の相手側の残存兵力がどれだけ残っているかは分かりませんが、攻め込めば必ず慌てる筈です」

「然しどうする? 裏手の斜面は急だぞ?」

 喫煙パイプの吸い口を僅かに噛みながら、エリザベド・ガリマールは問いかけた。

「心配ありません。既に策は練ってあります」

 

 

 

 

 ―――戦車内にて―――

 

「はーもう疲れたぁ…装填に次ぐ装填だったから、腕がぱんぱん、押し込む拳がギッシギシ」

 腕を揉み、装填用グローブに包まれていた手を優しくマッサージしながら大島明海はボヤいた。明日は拳にバンテージでもしていようかな、等と考えながら。

「でも、明海さんの装填のお陰で沢山攻撃出来ましたよ! リローダーのエースです!」

「そうかな…? そう言われると嬉しいな。えへへへ…所でさ、しおりん?」

 

 

 ぱり、ぱり、とやや硬いクラッカーを食べていた神無月しおりは「うん…?」と反応した。

「北村さん居ないけど、何処行っちゃったの?」

「彼女なら今、作戦行動中…」

 その時の神無月しおりの表情は、微かではあったが、珍しく、してやったり…と言う様な、表情であった。

 同時刻…丘の裏手…北村カレラは歩兵部隊と行動を共にしていた。愛銃のゲヴェーア43を抱いて。

「隊長様のご命令だ。歩兵隊諸君、しっかりやってくれ。」

「Ja、カレラ殿」

「歩哨はあたしと他の連中に任せろ。しっかり狙い打ってやる」

 

 

 そう言うや否や、北村カレラ以下数名の狙撃班はスコープを覗き込んだ。夜間でもよく見える明るいスコープに、サプレッサーを銃口に取り付けて。

「先ず私がやる。次に順番通りに撃て。頭は狙うな。立ち止まった所を足か腹を撃て」

 北村カレラの指示に、少女達は小さく頷いた。一人の歩哨が、丘の上の城壁の裂け目にやってきた。ありがたい事によく目立つ煙草まで吸ってくれている。北村カレラは呼吸を整え、そして静かにトリガーを引いた。

 

 

 パシュンッ! と銃声の和らいだ音が聞こえたが、其れさえも雨音にかき消されそうだった。ゲーム用の模擬弾はコリオリの法則に従いながら、少女の腹に着弾した。ビチャッと言う音と共に、着弾の衝撃で体を折り曲げる。衛生兵ー…! と叫ぶ声が聞こえた。衛生兵が現れ、負傷した少女を引きずっていく。北村カレラはアレは撃つなよ。絶対撃つなよ。と声をかけた。

歩哨が居なくなったその瞬間を狙って、歩兵部隊が丘を登っていく。そして同時に、ぬかるみをスコップでかき出していった。二人目の歩哨が現れた。今度はランタンを片手に持って。

 

 

「2番手、歩哨を狙え、3番手、ランタンの火を消せ。燃えたら危ない」

北村カレラの指示を受けた少女達は、言われるが儘にオーダーをクリアした。二人目の歩哨は足を撃たれ、落としたランタンは模擬弾で打ち壊され、雨に濡れて火が消えた。衛生兵ー! と二度目の声が響く。

「さて、早々何度も許してはくれない頃だろうが…」

 その時、突如としてドカァン!と言う音がした。それは正面の丘の方から聞こえてきた。

「上手く行ってるみたいだな。よしよし…」

 バタバタと、銃撃戦の繰り広げられる音が響く。その間に、裏手の歩兵達は作業を続けた。丘の上に何かを設置し、ぬかるみをかき捨て続ける。全ては明日のために。そして…朝が近付いてきた。

 

 

 夜も明けるかと言う薄暗い時間の事。動けるだけの戦車全てがエンジンを目覚めさせた。朝食も手短に、神無月しおりは三/四号戦車より指示を出した。

「戦車隊各員に通達。我々はこれより最後の攻勢に打って出る。我々には次の補給が来るまで戦車に与えるべきオットーもハーマンももう無い。そしてオットーもハーマンも切らした我々は死んだも同然だ。各員に幸運を。出撃!」

 

 

 

 

 

―――その頃、城壁内部では…―――

 

「ローズマリー様、敵が動き出したそうです。恐らく、最後の攻勢かと」

 ローズマリーの腹心、カトリーナ・スチュアートが窓から外を見ながら呟いた。

「威力偵察、こちらの戦力の消耗、最後に一大攻勢。まるで教本の様ね」

「どうするおつもり?」

 アレクサンドラ・楠は紅茶を啜りながら問いかけた。

「勿論、決まっているわ」

 バサリとパンツァージャケットを翻しながら、袖に腕を通す。

「あの子と楽しく遊ぶだけよ。迎え入れなさい」

 

 

 丘の裏側を手に入れた神無月しおりは、小さく満足そうに息を吐いた。地面の泥はかき出され、頂上のすぐ傍には2本のウィンチが並べられている。そして地面には所々に滑り止めの木の杭が撃ちこまれていた。

「各車、聞いて下さい、装甲の厚いパンターを先頭に丘を登ります。その間、我々はパンターの援護をします。間違ってもウィンチに誤射はしない様に。行動開始!」

 歩兵による作業で戦車にウィンチがつながれ、そしてぐいぐいと丘を登っていく。先ずはパンター、続いて三/四号戦車。と言った順番で丘の上を上り詰めていった。

 軽量なソミュアに至ってはウィンチを必要とせずともスイスイと登っていった。

 

 

「フィギエ中隊、聞こえますか! 我らクノッヘン中隊は無事に丘の裏を突破!旧市街地に侵入した! どうぞ」

『こちらフィギエ中隊、無事に聞こえる。お前さん達が突っ込んだお陰で正面側も大騒ぎだ。どうぞ』

「これより歩兵と共に市街地での戦闘へ突入! 占領作戦に入ります! オーバー!」

『こんな狭い市街地で戦車戦をしろって言うの? アンブッシュが怖いじゃないの』

 五十鈴佳奈の愚痴に「問題ありません」と神無月しおりは答えた。

 

 

「既に昨夜、作戦は練ってあります。五十鈴さん、柿原さん、久留間さん。快速を誇る三両はこの路地を走り抜けて下さい。我々はその少し後ろをついて走ります。釣り上げた戦車は我々が撃破。残りの戦車は歩兵の援護をしながら市街地中央部へと進撃してください。それでこの戦いも終ります」

『了解、隊長!』

雨に濡れた石畳は、恐ろしいぐらいによく滑る。曲がり角を曲がるだけで自然とドリフトしてしまう程だ。

それで居て視界が悪い。走る側も、そして狩る側も一苦労だ。

 

 

一瞬で目の前を走り抜けていく戦車の影を見るのだから。とてもじゃないが即応出来ない。ホイルスピンならぬクローラースピンを起こしながら戦車を発進させ、曲がり角を曲がろうとした途端に、砲撃を受ける。

 はたまた、曲がり角を曲がった途端にエンジンルームを打ち抜かれる。撃破された戦車から脱出しようとする少女達を、歩兵がサブマシンガンで止めをさしたり、スティックグレネード…勿論模擬弾だ…を線車内に投げ込んで戦車の乗務員を黙らせた。

 

 

…何度見ても、まるで大昔の戦争。そう、これはショーとしての戦争。では其処に、戦車道とヒストリカルゲームの違いはどれ程あるのだろうか…? 模擬弾と実弾の違い…特殊なカーボン装甲と、ペイント弾…安全に極力配慮されたルール…神無月しおりはそんな事を考えていた。その時だった。

『こちら歩兵部隊! 市街地中央部に到着! だけどなんだ、あのデカブツは!?』

『此方ソミュアの久留間どす! エクセルシオールと…きゃあ!』

 

 

 無線機に飛び込んできた二つの情報に神無月しおりは現実に引き戻された。

「久留間さん? 久留間さん! 応答して!」

「駄目です! 久留間車のソミュア、応答ありません! 完全に撃破されたものかと!」

 中嶋奏が困った様に報告する。これは早々に対処しなくてはならない。それに気に成る単語もあった。デカブツと言うキーワードだった。何が其処に居る…?聖・バーラム学院のTOGMk-2か…?ともあれ、急がなくては成らない。

 

 

「葵さん、アカリさん、アカネさん、聞こえますか。命令を変更。市街地の残存する戦車が居ないか捜索と撃破を。残りの部隊は市街地中央部へ急行。謎の敵勢力を撃破します」

「飛ばすから捕まってて。売れない芸人並みにかなり滑るぞ」

 言うや否や霧島蓉子はクラッチを蹴飛ばしギアチェンジを行い、フルスロットルを叩き込んだ。中嶋奏が調整してくれたキャブレターのお陰でエンジンはゲホゲホと咳き込む事も無く、市街地を滑りぬけていった。

 キューポラから見える世界はまるでジェットコースターの様であった。神無月しおりは一度たりともジェットコースターに乗った事は無かったが。

 尤も似ているモノと言えば、バイクでコーナーを駆け抜けているその瞬間とそっくりだと言う事か。

 

 

「道が開けた。止まるから掴まってて」

そう言うや否や、絶妙なブレーキコントロールで、履帯から火花を散らしながら三/四号戦車は建物の影に停車した。

「しおりの事だ。直接偵察に出たいんだろ…?」

 フッ、とニヒルな笑みを浮かべて霧島蓉子は神無月しおりに振り返った。まるで見事に見透かされた気分に浸りながら、彼女は戦車から滑る様に降車し、街角から様子を伺った。其処には歩兵部隊も居た。

「状況はどうなってますか」

「悪いとしか言いようが無いねぇ…コレを見てくんな」

 

 

 そう言うと歩兵部隊の一人が、小さな鏡を銃剣の先にチューイングガムで貼り付けた、即席のコーナーミラーを手渡してくれた。其処に写っていたのは…

「エクセルシオールが二台に、インデペンデント重戦車!? それにT-35重戦車まで!」

「やっこさんのお陰で歩兵部隊は頭を抑えられててどうしようもない、戦車部隊、どうにかならないか?」

「どうにかしてみせるのが、私達の仕事です…歩兵の皆さんは無理をしないように」

「了解。戦車隊の隊長殿」

 

 

 神無月しおりはカツカツと音を立てながら三/四号戦車を登り、砲塔に滑り込んだ。

「各車、聞いて下さい。敵の最終戦力はエクセルシオールが2両、そしてインデペンデント重戦車並びにT-35重戦車です。久留間さんのソミュアは恐らくですがエクセルシオールからの攻撃を受けて撃破された模様。歩兵部隊も多砲塔戦車からの弾幕を受けて頭が出せません」

『どうするんだ、この状況! 道は分断されてて、裏側に回りこむ事も出来ないぞ!』

 

 

クロムウェルの柿原セリカは憤慨する様に無線に叫んだ。確かに回り込めない。本物の榴弾が使えない以上、きっとわざと戦車を建物にぶつけて道をふさいだハズ。しかし、そんな事を何度も繰り返せば戦車が壊れてしまう。同じ手法で迂回路を作るのは困難だ。ではどうするか…?」

 

 

 

 

『流石のあの子も、困惑しているでしょうね』

「良いじゃない。学園祭や地元のパレードかこう言うゲームでも無いと引っ張り出せないんだから。お互い様でしょ?それに使ってあげないと戦車も可哀想だわ。戦う為に産れてきたのだから。仮にそれがショーとしての戦争だったとしても、ね」

 狭い車内の中で紅茶を楽しんでいたローズマリー・レンフィールドはアレクサンドラ・楠の無線にそう答えた。

『分かってるわよ。そんな事。この子の主砲や機銃を撃たせてあげられるのはこう言う時位な物だもの。所であの子、どう動いてくると思う? 意地悪な布陣を敷いちゃったけど』

 

 

 そう。路地の出口を見張るのは二両のエクセルシオール。至近距離ならば、神無月しおりの率いる戦車の殆どを撃破可能だ。この時のために残しておいたAPCR弾設定のペイント弾もまだ残っている。さぁ、どう来るか…?

 雨音の中、身構えていると不意にエンジン音が高らかに聞こえてきた。それも複数の箇所から。

 まるで獣の咆哮の様だと、アレクサンドラ・楠は思った。戦車のエンジンはこんなにも高鳴らせる事が出来るのか、と。次の瞬間だった。

 路地から何かが飛び出してくる。それも複数同時に。対応しきれない二両のエクセルシオールは遅れて砲撃するも、大量のペイント弾で真っ黒に成り果てた。

 

 

 それは撃破された戦車に大量にくくり付けたペイント弾と模擬爆薬を貼り付けた撃破済みの戦車であった。更にダメ押しと言わんばかりの砲撃を、神無月しおりの戦車隊はエクセルシオールに叩き込む。斯くして、残ったインデペンデント重戦車とT-35重戦車はゆっくりと白旗を掲げた。

 此処に三日間にわたる攻防が漸く終った。長い戦いだった。泥にぬかるみに雨に、そして最後は路地に悩まされた戦いだった。不意に、雨の降りしきる空からゴォォォ…と言う轟音が響いた。神無月しおりはまさか、と思った。

 

 

「御機嫌よう、隊長さん。お気付きに成られた様ね」

「総員退避! 早く此処から脱出して!」

「そう。初めから此処はね」

 ガコン、と扉が開かれる。塗料の詰まったペイント爆弾とでも言うべきモノが其処にはあった

「貴女達を誘い込む為の囮なのよ! ぉほほほほほ!!」

 矢鱈と堂に入った悪役らしい演技を見せながら、ローズマリー・レンフィールドは見事な高笑いをしてみせた。

 

 

 頭上のランカスターが、爆撃コースに入る。そしてたっぷりの塗料が詰まった爆弾を投下。少女達の頭上で大量の塗料がぶちまけられる。鐘楼の鐘に当たったのか、リンゴン…リンゴン…と鐘の音が聞こえる。それはまるで鎮魂の鐘の音の様でもあったし、神無月しおり達を嘲笑うかの様な音にも聞こえた。

 少女は、見上げる。一発のペイント爆弾が落ちてくる。そして、空中で炸裂。雨の中で、黒い雨が降り注いだ。

 

 

 

 

 斯くして少女達のショーとしての戦争は終わり、それぞれの日常へと帰ってゆくのである。

 ある者は楽しかったと言い、ある者はもうこりごりだと言い、ある者は珍しい体験が出来たと言う。

 そんな最中、戦闘服を脱いで制服に着替えた神無月しおりは思う。

 最後のアレは卑怯と取るべきか、それともショーとしてのクライマックスと取るべきか。

 

 

 戦車道ならば、ありえない。航空機を使う事は禁止されているから。

 だけどもアレは、ヒストリカルゲーム。戦車道とは違うのだ。危険な事意外なら、何をやってもいい。

 ……何をやっても……?

 蟠りが、心に残る。

 ……危険でなければ、何をしても良いのか……? 例え、戦車道でも。

 

 

 右腕の接合部が、痛む。それはきっと、雨が理由じゃない。

 震える右手を誰にも悟られない様にするだけで、やっとだ。

「どうしたの、しおりん。難しい顔して」

 銀色のカップを両手に、大島明海がやってきた。

「はい。ココア。暖まろう?」

「…ダンケ…」

「ねぇねぇ知ってる? 今回の撮影、凄いバッチリだったから、会長さんが皆に食堂の食券15食分のチケット、ただでくれるって!

 太っ腹だよねー! あ、でも物理的にはスレンダーだよね。なーんて」

 ケタケタと笑う友人に、神無月しおりは小さく笑った。そして、彼女の肩に寄りかかる。

 

 

「しおりん…?」

「…少し、こうさせて…明海さん…あったかい…」

「…! うん、いいよ!もっと寄りかかっても良いんだからね!」

 雨が降りしきる天気の下、走る列車の中で少女達はお互いの温もりを共有する。

 心の寒さを打ち消すかの様に。

 心の暖かさを与えるかの様に。

 今はただ…何も考えずに…。

 少女の腕の痛みは、ゆっくりと和らいでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 登場戦車一覧

 

・エクセルシオール重突撃戦車(又はエクセルシアー)

 Excelsiorとはラテン語で「気品がある」「優れている」と言う意味を持つ。

 クロムウェル巡航戦車の車体を元に作られた経緯を持つが

 その外見は何処と無くTOG MK-2を思わせる。

 なお、私心ではあるが何故足回りの熟成度が高いA型が現存せず

 足回りの未熟性なB型が現存しないのかが不思議である。劇中に登場したのもB型である。

 武装はオードナンス製QF 75mm砲を搭載。

 

 

・A1E1 インディペンデント重戦車

 ヴィッカース社によって1925年に製造された大型の多砲塔戦車。

 全長7.6m、重量33tの重戦車の名に違わぬ大きさと重さである。

 なお、当車両の設計はソビエトのT-35重戦車に多大な影響を及ぼした模様である。

 武装は主砲にオードナンスQF 3ポンド砲(砲弾直径47 mm)

 副武装に7.7 mm ヴィッカース機関銃4挺を備える。

 

 

・T-35重戦車

 ソビエト版インディペンデント重戦車と言った塩梅である。

 より大きく、より重たい。全長9.72m、重量45tの巨漢である。

 また、装甲や武装もインディペンデント重戦車よりも強化されているが

 その巨体を動かす為のエンジン出力が足りていないのも受け継いでしまっている。

 その他にも多砲等戦車の中では最大の生産数を誇ると言われている。

 主砲に16.5口径76.2 mm戦車砲1門

 副武装に42口径45 mm戦車砲2門並びに7.62 mm機関銃6門

 

 

 

 

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