振り仮名をつけようとしたけどなぜか苦戦して後ろに続ける形になっちゃいましたので、若干違和感を感じてしまうかもしれません。そこら辺を大目に見ていただけると感謝です。
―では、ごゆっくりお読みください。
始まり―試験、しかし無意味でした!?
バカと中華小娘とお姉さん
カリカリ…カリ…カカッ
「ふ~・・・」
ある一室の教室。わたしを含めたたくさんの高校生男女が、目の前に置かれた問題用紙に必死に取り組んでいる。その眼は他のことを完全に取り入れずに、ただ紙に書かれた文字を繰り返し読んでいます。
ここ文月学園では、実力を優先するという画期的な方法を導入しており、現在はその学力を測る試験を受けているところなのです。誰もが上位に入れるように全身全霊をかけて問題に取り組んでいるのを、わたしはチラチラと見ています。
…え?わたしは問題を解かなくていいのか?ですか?
ふふん!わたしはなんとすでに全部解き終わったのです!しかも驚くぐらいに回答の手ごたえが『―――ン。』あったんですよ!問題がとっても簡単ですぐに終わって『――リン。』リラックスして周りに目をやれるほどですよ!
いや〰これならBクラス、もしかするとAクラスの目だって『―イリン!』あるんじゃないでしょうか?なんて良い幸先でしょう!あんまり信じてなかったけど神様っているんですね~!思わず夢じゃないかって思
『起きろ!紅 美鈴(ホン メイリン)!』
「ウヒイッ!?」
びび、びっくりした〰!!突然の怒声、こんな試験時間と言うのに誰の仕業!?
ちょっぴり涙を浮かべながら犯人へ顔を向け―
「……はれ?西村先生?」
「そうだ。・・・お前は何をしとるんだ…」
落ち着きました。頭に氷水をかけられたように冷静になりました。
西村先生。男らしい声に似あって少し肌黒く、スポーツマンと言われれば誰もが信用するであろう筋骨隆々な身体の持ち主で、生徒指導の先生です。とてつもない体力を持ってらっしゃるようで趣味はトライアスロン、そこからちなんでつけられたあだ名が《鉄人》です。
本人は嫌っているようでしたが、わたしはちょっと愛嬌があるなあと思ったのは内緒です。
しかし…テスト中に私の下に来て、さらに大声で呼ぶとは何かあったのですかね?
「どうしたんですか?今ってテスト中ですよね?」
一応小声で西村先生に尋ねた。周りはテストに取り組んでるので邪魔はしたくないですからね。
でも、そんな私を見て西村先生は、呆れ、達観、怒りが重なった複雑な顔で私を見つめて言いました。はて?
「・・・紅。周りを見てみろ」
「へ?」
試験中に良いのかとも思うが、言われたとおりにぐるりと見渡す。当然、試験に取り組んでいる高校生男女が・・・・・・・・・・・・・高校生男女が?
「・・・・・・ああ、これは夢ですね」
「現実を見ろ」
「………私たち二人以外、誰もいませんね」
「うむ」
「…………神隠しが起きたんですかね?」
「だから現実を見んか!」
でも、神隠しって実際会ったって聞いたことがあるけどなあ…ってそれはともかく!神隠しじゃないのなら、どうして他の男女は誰もいなくなるのですか!説明を欲します!
「俺も教師をやって何年も経つが、試験後に生徒を起こすのは初めてだぞ」
「・・・・・・・」
はい、ご説明ありがとうございます。神隠しが起こったんじゃなくて、私が眠りから起きただけの話ですか。さっきまでの景色は全部夢。どうりで試験がスラスラと解けたんですね~。私、凄く納得してしまいました。
………………………大疑問。私が寝たのは避けられない事実として、問題はきちんと解いているのでしょうか?
先生から机の答案用紙へと目をやります。
「・・・・・・・・・・・・・先生」
「・・・・・・・・・・・・・何だ、紅(ホン)」
たっぷり数秒。私は答案を破り捨てそうになるのを抑えながらぺらぺらとめくり、一言。
「答案用紙をすり替えるなんて酷いです!」
「お前の責任転嫁の方が酷いだろうが!」
ごちん!
「あいやっ!?」
―――――私、紅美鈴。二年生のクラス分け試験で、試験を見るまでもなくクラスが決まりました。それはもう見事な白紙(ところどころ濡れていましたが、あれは涙です。涙です…)でした。白っていいイメージがあるんですけどねー……
「いや~いい天気ですね~!まさに新スタートにはぴったりじゃないですか?」
晴れ渡る空。心地よい日光。そして見事な桜並木の道!新しく始まる学校生活が希望にあふれているみたいで、とても興奮しちゃいますね!他の生徒もちらほら明るい顔で登校してきてるので同じ気持ちなのでしょう。少しだけ笑って皆と同じ方向、校門へと足を動かします。
「はあ・・・・どうしてそんな元気なのよ、美鈴。私の方が気が滅入るって絶対おかしいわよね…」
そんな私の横には一人の女の子。溜息をついてこちらを見つめています。
「あ、こんな素敵な天気を前に暗い雰囲気は似合いませんよ?咲夜さん」
「あなたの今の状況にその明るさが合わないのよ!」
ありゃ、今はどうやらお冠のようです。
十六夜咲夜(いざよい さくや)。一切の穢れを許さない銀色の髪と、見る人に安らぎを与える翡翠(ひすい)色の瞳。そして、十人が十人とも見とれるであろうその容姿が、さらに彼女の存在をひときわ目立たせていて、後光さえ見えてきますね!。
私と同じく文月学園の二年生で、血は繋がっていないが私の誇りの妹です。
そんな咲夜さんが不機嫌な理由は私も分かっています。・・・あんまり偉そうに言えませんね。完全に私のせいですもの。
「許してくださいよー咲夜さん!せっかく教えてもらった勉強を無駄にしたのは本当に反省してます!」
クラス分け試験の時に寝て過ごすという大失態をした私は、家に帰ってそのことを咲夜さんに話しました。わざわざ言わなくてもいいかなとも思いましたが、勉強を教えてもらった恩もありましたので正直にあったことを話したんです。
・・・もうね、一方的な言葉のマシンガンが火を噴きました。
それは反撃のすきすら与えないすんごい火力でしたよ?多分一時間ぐらい続いたと思うんですけど、最後の『メーリンのバカッ!』を聞いたとき、一瞬視界が真っ暗になりましたねー。あれは百の説教より効きました・・・
とにかく、今の咲夜さんの不機嫌は私のせいです。なんとか許してもらおうと話しかけるも、咲夜さんはツーンと前を向いたまま。あ、ちょっと涙が・・・
「・・・一緒のクラスになりたかったのに」
「へ?咲夜さん何か言いましたか?」
「何も言ってないわよ。バカ」
決壊。涙が水道水のようにあふれてもう目の前がふにゃふにゃになり始めました。うう・・・!私のせいとは言えど、これはひどすぎますよ~!あのときの私が憎いっ!
自らの失敗を猛省しながら、私たちは校門前にたどり着きます。そこには、鉄人こと西村先生が腕を組んで堂々と立ちすくんでいました。
「おはよう。紅(ホン)、十六夜」
「おはようございます。西村先生」
「おはよーございます!鉄拳先生!」
「紅。なぜ俺をゲームの名前で呼ぶんだ」
「あ、すいません。ついこの前の制裁パンチを思い出しまして」
「む、それについてはすまない。だがあれは虚偽の罪を俺になすりつけようとしたお前の責任でもあると思うぞ・・・」
「や~、あれこそ寝起きの頭って奴ですね」
「・・・美鈴(メイリン)、何やらかしてるのよ・・・」
隣の咲夜さんがまたも溜息をつき、呆れた目を私に・・・だ、だって仕方ないじゃないですか!答案用紙にヨダレの跡がついただけで後は何も書いてなかったんですよ!?それも名前すら!誰かが入れ替えたって思いたくなるじゃないですか~!
「・・・授業中に眠る奴はいたが、試験中に眠った奴はお前が始めてだ。全く・・・とにかく、二人とも。受け取れ」
「あ、はい」
「はい」
そう言って西村先生は箱から2つの封筒を取り出して、私と咲夜さんに差し出してきました。これには所属クラスが書かれた紙が入っていて、今後の1年間をどこで過ごすのかが判明するとても大事な封筒なのです。
全部で6クラスあり、最も上のクラスがAクラス。そこからアルファベット順に下がっていき、一番下のクラスがFクラス。その結果を知るのにワクワクしたり、はらはらしたりしながら開けるのがある種のイベントとなっているのですが・・・全然わくわくしません。私限定でしょうけど。
宛名の部分に《紅 美鈴》と《十六夜 咲夜》と書かれていたので、自分の名前が書かれたものを受け取りました。
そして、ためらうことなく私は開封。
『紅 美鈴……Fクラス』
「ですよね~」
「お前は決して頭が悪くないというのに……良い悪いの次元を超えるとはな」
「いやいや、そんなすごくないですよ~」
「ああ、すごくないな。俺は決してほめてはいないぞ紅」
そりゃそうですよね、私何も書いていませんでしたし。これでF以外のクラスに行けてたらどんだけ同点タイがいたんだという話ですよ。
さあ、既に分かっていたわたしのことはもう十分。私の誇りの妹の結果を知るとしましょう。
咲夜さんが持つ紙をひょいと横から見ると―
『十六夜 咲夜……Aクラス』
文句なしの最上位クラスに入ることが出来ていました。
「おお!?さすが咲夜さん!」
「ええ。しっかり復習した甲斐があったわ」
少しだけにやついてるあたり、咲夜さんは本当に嬉しかったんでしょう!私も自分のように嬉しくなり、咲夜さんをハグ――
「いだっ!?」
「急に襲ってきてどういうつもり?美鈴(メイリン)がFなのは自業自得なんだから、逆恨みはやめてちょうだい」
「嫉妬じゃなくて、愛情ゆえの行動ですよおっ!?」
・・・は叶わず、額に無慈悲な人差し指の一突き。まだ私は許されていないのですかあ……そろそろ許してくださいよお〰!!
「…お前たちを見ているとどちらが姉か分からなくなるな」
「当然、美鈴が私の姉ですよ。バカで寝坊助の、頼もしい姉です」
しくしく泣く私を横に、咲夜さんと西村先生が何かを言っています。少しだけでもいいから心配してくださいいいいっ!!
「そうか…そろそろ時間も近づいてきた。早く教室に行くといい」
「分かりました。美鈴、そろそろ行きましょう」
「はい~…」
私って存在感が薄いのかあ……。自分の価値に不安を覚えながら、私たちは西村先生と別れました。
どうかいい学校生活を送れますよーに!!
「……凄い設備ですね。あれってリクライニングシートですか?」
「た、多分そうね……でも、ここまでとは・・・」
「どこかの一流ホテルのロビーみたいですよ。良かったですね、咲夜さん」
「これはちょっとやりすぎな気もするけど…ま、まあ良かったわ」
咲夜さんが所属するAクラス。それは私たちの予想を大きく上回っていました。
まず、教室の広さが凄い。平均的な教室と比べると、だいたい5倍くらいはあるんじゃないでしょうか?壁にはとても高そうな絵がかけられたり、天井は一面がガラス張りで空が丸見えです。あ、スズメの群れが通りました。
そして、極め付きには個人の設備。イスを始め、パソコン、冷蔵庫、小型エアコンと、それは別にクラスに一つで良いのではと思うものが1人1人専用に支給されていたのです。
……正直に言いましょう。やりすぎです!これ絶対にもやしになりますよ!いたせりつくせりすぎて勉強の目的が変わりますよ!?咲夜さんがダメな方向に変わったら私暴れてやりますよ!?
咲夜さんも似た感想を抱いたようで、にやつくどころか無理やり笑いを浮かべてます。咲夜さん、立派な証拠です!
「咲夜さん。しっかり頑張ってくださいね。楽しく、良い思い出を作るようにしましょう!」
「もう、子ども扱いして……もちろんそのつもりよ」
それでも、咲夜さんが努力して生み出された結果。咲夜さんが楽しければそれで構いません。少し照れてうなずく咲夜さんに私は微笑んで、Fクラスへと向かい始めます。
「じゃあ咲夜さん!また放課後に会いましょう!」
「ええ、また放課後!」
さあ、私の通うFクラス。どんなところかは分かりませんが、咲夜さんに言ったように私も良い思い出を作るとしましょう!
「え、ええ~~~・・・・・・・?」
さっそく頓挫しました。Fクラス、一番下のクラスとは分かっていたので多少の心構えはしてたんですけど・・・・み、見込みが甘かった!
窓ガラスは割れていて、木を用いられた部分は腐りかけていてちょっと異臭を放っていて、私はこう思わずにはいれません。
「ここは廃屋か何かですか・・・」
場所を間違えたと思いたかったのですが、残念ながら腐ってボロボロの看板には〈2―F〉と。嫌な思い出がさっそくできてしまい、わたしは少し外に目をやる。・・・ああ、青い空。白い雲。私に勇気を持って踏み出す力をください。
「・・・よしっ!もう大丈夫!」
勇気をもらった私は扉を見据える。大丈夫!こういうみずぼらしいところには良い人が集まるってのが相場ですよねっ!だから教室の中はきっと明るく楽しいに違いありません!そうと決まれば開けるとしましょう!
私は笑顔を浮かべ、良い思いでとなる教室への扉を開きました。
ガラッ!
「早く座れ、このウジ虫野郎」
「」
多分、16年の人生でも指折りの泣き顔になったと思います。私の希望を返してくださいコラ。
・・・誰でしょうか、この長身の男子は?私と同じくらいですから・・・だいたい180センチぐらいですかね。私も男子を含めてだいぶ背が高い方なんですけど、ひさしぶりな感覚ですね。教卓の前にたっているのは何かの意味があるんですか?
「いや~、初対面の人をウジ虫とは斬新な挨拶ですねえ?」
「ん?…って!?お、お前は紅 美鈴!?」
「ええ、希望をあっさりブレイクされた紅 美鈴です」
どうやらでくの坊さんは私の方を見ずに言い放ったようで、顔を驚愕させて私を指さしてきました。私は珍獣か何かですか。
「どうして私はウジむ「おっ!美鈴じゃないか!」え?」
突然声を被せられて名前を呼ばれましたので、そちらを見ると・・・
「いや~!クラスに来て早々ウジ虫呼ばわれとはやっぱりお前は面白いんだぜ!」
「ああ、あなたもFクラスだったんですか?魔理沙(まりさ)」
「おうよ!見事にFクラスだぜ!」
「威張っていう事ではありませんからね!?」
ふわふわとした金髪を肩甲骨辺りまで伸ばした女友達、霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)が面白そうに笑いながらこちらへと接近していました。う~ん、男らしい口調は相変わらずですね~。そこは全然良いんですけど、友達のウジ虫呼ばわりについては笑わないで怒ってください。友達ですよねちょっと?
「え~と・・・岡本だっけ?いい仕事しやがったぜ!」
「どこがですか!?」
「坂本(さかもと)だ!あとこれは狙ってやったわけじゃねえ!そこはすまん紅(ホン)!」
サムズアップサインをする魔理沙に、友達ではなかったかなと思う私はおかしくないですよね?あと、坂本君?私は結構第一印象を大事にしますのであなたへの好感度は地べたをはいましたからね。
「はあ・・・で、どうして私はウジ虫呼ばわりされたんですか?坂本君」
「すまん、人違いだったんだ」
「とりあえず言うのは避けられなかったんですね・・・」
「さすがFクラスメンバー!人をののしるのもお手の物だな!」
「魔理沙もそのクラスの一人でしょうが!・・・は~、どんどん負の思い出が積みあがっていきます・・・」
廊下での勇気と希望は割れた窓ガラスをくぐって空へと帰還したんですかね?もう私のメンタルはギリギリですよ!?
「ところで、なぜ紅(ホン)のような奴がこのクラスにいるんだ?」
・・・それを聞いてきますか坂本君。
「え~~~……あ~、ちょ、ちょっと問題が難しくてですね!」
嘘は言ってません。試験問題なんだから内容はとても難しかった・・・はずです!多分!
「そうなのか?美鈴(メイリン)ってバカだったんだな~」
「少し辛辣すぎじゃないですか魔理沙ぁっ!?」
「うおっ!?お、落ち着け紅(ホン)!」
わ、私だって解いてたらもっと上のクラスにいってたんですからね!?別に強がりじゃないですからね!?
坂本君に羽交い絞めされてもたもたする私を見て、魔理沙はさらにおかしそうに笑い出す。ちょっとそこになおりなさい!
「離してください坂本君!」
「ク、クラスの代表として暴力沙汰を黙認できるかバカヤロウ!!」
「あああああっ!?ま、またバカって言いましたね!?私の頭はお猿さん以下だってまた言いましたねええええええっ!!」
「そこまで言ってねえ!って矛先が俺に変わってるだと!?やべえ!絶対に手を離せねえ!!」
「離しなさいいいいいいいいいっ!!」
「お、お猿さんって・・・・ぶふっ!美鈴(メイリン)はおこちゃまなんだぜ~!」
「むきいいいいいいいいいいいっ!!」
「火に油を注ぐな霧雨ぇぇええ!!」
「しくしくしくしくしく・・・・・・」
「い、痛え……な、なぜ俺がこんな目に…」
「…ざ、坂本(ざかもど)がウジ虫呼ばわりしだがらだ、ぜ…」
「ま、間違いなくお前の口のせいだ霧雨ぇ・・・!」
2つの屍と泣き崩れる私。…復讐を果たしてもむなしいものですね。涙が止まりませんよ。
もう、今日だけでいくつの思い出が出来ましたかねえ。まだ朝なのに、良いこと1つ。悪いのが4つぐらい私の脳に刻み込まれましたよ・・・幸先悪いっ!
へこんでても仕方ないので、私は鼻をぐずぐずさせながら立ち上がる。遺体は勝手に地面に還ってください。さて、私の座席はどこですかね・・・・・・・あれ?座席表はどこですか?
うろうろと黒板付近を探してみましたが、どこにも表はありません。誰かが持ってるんですかね?
「いいかのう?」
「?何で・・・・しょう・・・?」
途方に暮れている私の背中に古風な話し方の声が1つ。振り返り…………固まりました。
そこにいたのは、とても可愛らしい顔をした男子制服の生徒さん。
……………え?男子ですか?それとも男装女子ですか?
「む?わしの顔に何かついておるか?」
顔をじっと見てしまっていたので、生徒さんは首をかしげて聞いてきました。その仕草も様になっていますね…
「あ、ああすいません。失礼なんですけど…………男子か女子、どちらですか?」
「むう、何度目かのうその質問は……わしは男じゃ。木下(きのした) 秀吉(ひでよし)という名前じゃ」
どうやら私からだけでなく、他の人からも言われたことがあったみたいです。これは失礼なことを……しかし、顔に加えて肩で揃えられたくせのない髪の毛。私や魔理沙より可愛い気がします。女としてちょっぴり悔しいですね。
「すいません秀吉君。でも立派な名前ですね!」
「おお、嬉しいことを言ってくれるのじゃ」
「いや~だって有名ですもの!」
「ありがとうなのじゃ」
嬉しそうに頬を染める秀吉君。動作はものすごく乙女です。
秀吉。後世に名前を残す有名人として授かったお名前ですが、なるほど確かに名を残しそうですね・・・・・・彼の場合は容姿の方で。
「秀吉君は何か用で?」
秀吉って思わず下の名前で呼んじゃってますけど、大丈夫ですよね?
「おおそうじゃ。ここは席が決まっておらんから、好きな場所に座っていいと思うぞい?お主は座席表を探していたのじゃろ?」
「あら、そうでしたか!わざわざありがとうございます!」
どうやら、呼び方は大丈夫みたいですね。そういうことなら好きな場所に座るとしましょう!
「じゃあここに、っと」
一番前の席が空いていたのでそこに正座で腰を降ろしました。・・・はい。イスの上ではありません。綿が飛び出て意味があるのか分からない座布団の上にです。それにふさわしく、机は脚が1つ取れかけているちゃぶ台。落ち着くと言えば落ち着くのですが……惨めに思えてくるのがつらいです。格差社会を改めて痛感しました。
教科書をしまえないなあと思っていると、隣の座布団に秀吉君が腰を降ろします。
「あ、秀吉君はそこの席でしたか?」
「そうじゃ。1年間よろしく頼むのじゃ」
「これはご丁寧にありがとうございます!紅(ホン) 美鈴(メイリン)です!こちらこそよろしくお願いします。」
ああ!なんて礼儀正しい男子でしょう!木下君の爪の垢をあの2人に飲ませてやりたいです!
そのまま私たちが話をしていると、再びドアが開かれました。
ガラッ!
「すいません、ちょっと遅れええっ!?な、何やってるの雄二(ゆうじ)…ともう一人!?大丈夫ですかっ!?」
「は、早く座りやがれ。このウジ虫・・ぐふっ」
「サ…サンキューだぜ、うおお、効くぜ…」
「雄二の状態の方がよっぽどウジ虫じゃないか!ほんとになにがあったの!?」
「そ、そこの坂本のせいだぜ――」
「死ね雄二ィィィィィッ!!」
「ぐはあ!?て、てめえ重症の人間の腹を蹴飛ばすとは血も涙もないのか!!」
「黙れ!貴様こんないたいけな女子に手をあげるなど・・・・・万死に値するっ!!」
「待て!その霧雨って奴はいたいけどころか魔女のような狡猾さを持ってやがる!鵜呑みにするなあきひ―」
「あー、坂本に(美鈴が)ウジ虫よばわりされて、つらいんだぜ…」
「このウジ虫野郎があああああっ!」
「やめろばかやろぐわああああああっ!!!」
「・・・・・・」
誰でしょう、あの天然そうな男子は?会話を聞いていると坂本君の知り合いみたいですが・・・友達なら普通あんな迷うことなく蹴りを入れませんよね?
「全く、明久たちは2年生になったというのに変わらんのう・・・」
「あれ、秀吉君の知り合いですか?」
「うむ。吉井(よしい) 明久(あきひさ)という奴じゃ。バカじゃが根は優しい友達じゃ」
「友達の前にバカをつけるのは友達と言えるのでしょうか…?」
非常に申し訳ないのですが、それを喜ぶのはマゾだけです。本人には言わないことを願います。
「え~と、ちょっと通してもらえますか?」
「あ、担任が来ましたね」
「あれは福原先生じゃな」
眼鏡の細い中年の教師、福原先生は吉井君が坂本君にマウントポジションを決めているのを見てそう言ったのですが、絶対に他に言うことがありますよ!?教育者の役割を忘れないで!?
「では、HRを始めますので皆さん席についてください」
駄目だった!PTAの保護者様~!ここに教師の暴行黙認が起こってますよ~~!?
「は~い、分かりました。これぐらいで勘弁してあげるよ雄二」
「うっす。痛て…後で覚悟しやがれ明久」
「了解だぜ」
魔理沙、坂本君、吉井君も指示に従って自らの席へと戻ります。後半に二人が何か言ってましたが、小声だったので聞こえません。でも何となく、友達に言う事ではないと思いました。
「えー、おはようございます。・・・・・・・・・二年F組担任の福原(ふくはら) 慎(しん)です。よろしくお願いします」
先生。黒板の方を少し向いてからこちらを向いたのには別に深い意味は無いですよね?チョークが一本も無くて名前を書けなかったなんて言わないですよね・・・?一体授業はどうするんですか。
「皆さん全員にちゃぶ台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出てください」
ほっ。どうやら少しぐらいは改善もしてくれるみたいです。とは言え、どこから要求をすればいいのやら・・・
「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないです」
あ、悩んでいる内に誰かが不備を申し出ましたね。確かに綿が無いとお尻が痛くなりますから当然の要求です。生徒の学習意欲を削がないためにもここはきちんと―
「あー、はい。我慢してください」
待って、待ってください。不備があったら言えと言ったのは先生ですよね!?
「先生、俺のちゃぶ台の足が折れています」
ちゃ、ちゃぶ台は勉強するためのキースペース!これは座布団よりも大事ですよね!?
「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」
そこはボンドじゃなくてちゃぶ台を購入してください学園の経営陣の皆さま!!教室がボンドの臭いで満たされますよ!?生徒の調子が悪くなりますよ!?私たちの健康はちゃぶ台以下ですか!!
「せんせー!アタイったら最強よね!?」
「はい、最強ですね」
関係ないこと言ってる場合ですかこの⑨がああああああああっっっ!!というかそんなことを素直に聞き入れないで先生!!もっと大切なことに耳を傾けてくださいいい!!
「せんせ。窓が割れていて風が寒いんですが」
そうです!今は春だからいいですが、冬になったら風邪人(かぜにん)続出ですよ!?今のうちに手を打っておかないといけません!
「分かりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
・・・・そうか。私たちは、地獄にいるんですね。全く救いのないこの教室。良い思い出を作る?知りますかこのやろー!
「必要なものがあれば極力自分で調達するようにしてください」
あれですね。最初の先生の言葉は本当にそのままだったんですね?言ってもほぼ変わらないじゃないですか。期待させておくぶん、むしろ余計に落胆しましたよ私っ!
「ど、どうしたのじゃ紅?迷子になった子どものような顔になっておるぞ?」
「はい、私ちょっぴり泣きそうです」
ああ、私の理想の学校生活はどこに行ったのですか?早く出てきてくだしゃいい・・・
「では、自己紹介を始めましょうか。そうですね…廊下側の人からお願いします」
私の願望が先生に届くはずがなく、恒例行事である自己紹介が始まろうとしていました。
……なんかもう予測できます。絶対平凡には終わりませんね!
読んでいただきましてありがとうございます。最近東方にはまっております村雪です。
あらすじにも書きましたがこの作品の主人公は、作者の心に最もぐっと来た、紅魔館の赤き門番、紅 美鈴さんです!周りの拠り所となったり、あるいは噛ませ犬にもなったりしてふり幅が広い彼女ですが、この作品では前者の要素を取り入れていきたいと思っています!
後書きを長々と書いても読み手の皆様に負担をかけてしまうので、また次回以降に書かせて頂こうと思います。
それでは!これからも読んでいただけることを願いながら、後書きを締めさせていただきます!
投稿速度はまだ不明ですが、それほど間は開けないと思います!