あと、ちょっと業務的な連絡ですけど、次の作品を出すのがかなり遅くなるかもしれません。色々とばたつくことが出来まして・・・・・・待たせる人には申し訳ないのですが、気を長くしてお待ちくださいませ!
――では、ごゆっくりお読みください
「お~、見事な穴だぜ」
「・・・・・・い、いや~。教室に大きな穴が空いてるところなんか、私、初めて見ましたよ。」
というか、壁に穴が空いている事事態を始めてみました。召喚獣の力を改めて思い知らされますね!
「全くじゃな。明久、ずいぶんと思い切った行動に出たのう」
「うぅ……。痛いよう、痛いよう……」
その実行者、吉井君は手を赤くしながら同じ言葉を繰り返して痛がってます。
吉井君の召喚獣は、実際の物に触れることが出来る『監察処分者』使用。それを利用して、彼は先生をうまくごまかして隣のクラスで召喚獣を出現させ、そこからBクラス側の壁を殴って壊し始めた、のだそうです。もはや論理とか常識があったものじゃありませんね!?
召喚獣の感じた感覚が本人に帰ってくるのも『監察処分者』の特徴だそうですので、あんな壁を壊すぐらいなんですから、痛みは計り知れません。あ、想像しただけで手が痛くなってきました。
「なんとも……お主らしい作戦じゃったな」
「これで、らしいんですか?」
普段、吉井君は何かを壊しながら生活しているのでしょうか・・・?
「も、もっと褒めてもいいと思うよ?」
秀吉君の言葉を褒め言葉と受け取ったのか、吉井君はすがるように秀吉君の言葉を待ちます。
「後のことを何も考えず、自分の立場を追い詰める、男気溢(あふ)れる素晴らしい作戦じゃな」
「……遠回しにバカって言ってない?」
・・・じゃっかん棘(とげ)がある言い方ですけど、ま、まあ良いですよね!あながち秀吉君の言葉も間違っていませんし!
「ま、まあまあ吉井君。大変ご苦労様でした」
「ああ、その言葉だけで、この後の先生達の暖かいハートフルコミュニケーションを問題なく過ごせるよ!」
「そ、そうですかー。そんなご利益は私の言葉にないと思うんですけどねー」
教室の壁を壊したことに対して、先生方の厳しい指導が待っている吉井君。その言葉だけで耐え切れるなんて、私の言葉は仏の言葉か何かですか。
・・・あ、でも私も、咲夜さん達の労いの言葉を受けたら、神の宣告だって覆せそうですね。納得しました!
「よしー!あんたもやればできるのね!褒めてあげるわ!」
「君に褒められても嬉しくない!むしろ君が何をしたのかを聞きたいよ!」
「なにー!?」
「いや、チルノは私の命のピンチに手を差し出してくれたぜ。あ~、まだ汗が止まらないなー」
そう言って首をさする魔理沙。さっきあっちでばたついていましたけど、何があったのでしょう?
「吉井 明久君」
そんな私たちの下に、1人の美少女がやってきます。
「あ、ええっと・・・こんぱくさん、で良かったかな?」
「魂魄 妖夢です。お好きに呼んでもらって結構です」
咲夜さんと似た白銀のボブカット、そして黒いリボンを頭の横につけたその少女は、さきほどまで私と召喚バトルをしていたBクラスメンバー、魂魄 妖夢(こんぱく ようむ)さんでした。
「じゃあ、魂魄さん。その・・・ごめんね?」
「?どうして謝るんですか?」
「だって、おとといに助けてもらったでしょ?なのに…」
・・・あ、そう言えば言ってましたっけ?襲われそうになったところを、女の子に助けてもらったって。それって妖夢さんの事だったんですね!それに、筆記用具を壊そうとしたBクラスの男子も〝魂魄さん〟って言ってました!彼女が凄い真面目だっていうのがよくわかりましたよ!
さっきまではちょっと頭に血が上ってたんで、気が付けませんでしたけどね!
「いえ、私が勝手にしたことですから、気にされる必要はありませんよ」
「そ、そう?じゃあ言葉にお言葉に甘えさせてもらうよ」
「ええ。っと、ちょっと手を貸してもらっていいですか?」
妖夢さんがそう言って、吉井君の手を見ました。その手はけがをしていてすっごく痛そうです。でもまあ、咲夜さんの冷たい目の方が心にずっと痛いですけどねー!
「え?でも、今から戦後対談があるから、後じゃダメかな?いくらでも手を貸すよ」
あれ、そっちの〝手〟ですか?
「あ、協力とかじゃなくて、吉井君のその両手を見せてくれませんかという意味です」
「え。こ、こう?」
慌てて吉井君は手を妖夢さんに見せました。うわあ、さっきはああ思ったものの、やっぱり痛そうですね―・・・
「ちょっと待ってください・・・はい、染みるかもしれませんけど、我慢してくださいね?」
そう言って妖夢さんが手に取ったのは、消毒液とガーゼ。どうやら吉井君の手の殺菌をするようです。
「あっ…!も、もうアキったらぁー・・・」
「まあまあ美波(みなみ)。たぶんアイツにその気は無いから、そうしょげるなって」
それに島田さんは思う事があったみたいで、がくりと肩を落として深いため息をつき、魔理沙(まりさ)がその肩を軽く叩きます。
島田さんもなんと言いますか・・・女の子ですねぇ?
「あ・・・いたたっ。やっぱり染みるね」
「それで菌を消してるんですから仕方ありませんよ・・・―――はい。まあこれで少しは腫れも収まるんじゃないですかね。保健室には行ってくださいよ?あくまで私のは応急程度なんですから」
消毒液を垂らしたところを軽めに拭いて、妖夢さんはポケットから出したばんそうこうをペタリと手の甲にはりつけました。非常に手慣れた処置でございます。
「次は左手を―」
右の次は左手と、敵である吉井君の手当てをする妖夢さんの優しさに、私は心を打たれます!この子は将来、絶対良いお嫁さんになれますね!
ほどなくして左手の手当ても終わり、妖夢さんはポケットに道具をしまって・・・てぇ?
「一応簡単な手当てはしておきましたね………あの、どうして私に土下座してるんですか吉井君」
「どうか!この恩知らずの僕の大罪を、魂魄さんのパシリにならせて償わせてくださいー!!」
「いりません。君は私に何を課せる気ですか」
バッサリと切り捨てる妖夢さん。い、いきなり土下座する吉井君もすごいですけど、全く動じない妖夢さんもなかなか強者ですね!?
「すまないな魂魄。ウチの明久はマゾのド変態野郎なんだ」
「…そうでしたか・・・それなら私は余計なことをしてしまいました―」
「信じないで!?拳が傷ついて涙を流す僕を、マゾだなんて思わないで魂魄さんっ!」
坂本君のあられもない……あれ、そうでもないですかね?・・・ま、まあ100パーセント真実ではない言葉を信じるところも、妖夢さんの優しさゆえです!天然さんとは関係ありませんよね!
「さて。では戦後対談を始めますか?」
「ああ、それもそうだな。・・・そっちの取り決め役はそこの代表さんじゃなくていいのか?」
「いえ、彼にやらせますよ。根本君、そろそろしっかりして下さい。あなたがこのクラスの代表でしょう」
「……わかったよ」
自分たちの処遇をめぐることなのに、非常に落ち着いている妖夢さんとは違って、根本君は床に沈痛な表情で座り込んでいました。最下位クラスに負けたのが悔しいと、ひしひし伝わってきます。
根本君が話を聞くつもりになったのを確認し、坂本君は言いました。
「本来なら設備を明け渡してもらって、お前達にFクラスのちゃぶ台と座布団を提供するところだが、特別に免除してやらんでもない」
Bクラスへの宣戦前に話していた通りに、和解条件をBクラスにちらつかせます。その言葉にBクラス、特にFクラスからざわめきが生じますが、坂本君がなだめます。
「落ち着け、皆。前にも言ったが、俺たちの目標はAクラスだ。ここがゴールじゃない」
「そうだぜ。皆も少しは可能性があると思えてきただろ?いっちょ行けるとこまで行ってみようぜ!」
「霧雨の言う通りだ。ここはあくまで通過点だ。だから、Bクラスが条件を呑めば解放してやろうかと思う」
「当然ね!一度決めたもくひょーを達成しないとサイキョーじゃなくなるわ!」
坂本君、魔理沙、チルノの言葉に加えて坂本君の功績もあったため、Fクラス一同はすぐに落ち着いてくれました。
「……条件はなんだ」
「条件?それはお前だよ、負け犬さん」
根本君の弱い問いかけに、坂本君ははっきりそう言います。
「俺、だと?」
「ああ、お前には散々好き勝手やってもらったから、そのツケを払ってもらう形だ」
悪いことをしたらその罰はうける!それ鉄則ですよね!
「ここでBクラスに特別チャンスだ。条件は二つ」
坂本君が指をピッと立てて、条件を差し出します。よし、私もそろそろ準備をしておきますか。
「一つ目。Aクラスに行って、試召戦争の準備が出来ていると宣言してこい。ただし、宣戦布告はするな。あくまでも戦争の意思と準備があるとだけ伝えるんだ」
「…それが一つ目か?」
根本君はたいしたことのない条件を疑っているみたいです。ええ、あなたが何もしなかったらそうなっていたでしょう。
・・・でも、あなたは色々とやらかしたんですよ?そんな甘いわけないじゃないですか。
「ああ。ただしこれを着てもらうのが必須条件だがな」
そう言って提供するのは、先ほど秀吉君が着ていた女子の制服。一気にハードルがあがります。
「ば、馬鹿なことを言うな!この俺がそんなふざけたことを―」
「黙りなさい」
「ぐふぅ!?み、水橋、キサマ…!」
お、おお?Bクラスの女子が根本君の腹に一発。かがみこんでいるから、だいぶ遠慮なくいったみたいです。
「乗った。Bクラス生徒全員で必ず着させるわ。坂本君」
「おい!?」
「そ、そうか。分かった」
迷いない攻撃、本人の意思に関係ない合意に坂本君も思わず面を食らってました。が、すぐに気を取り直し、次の指令を出します。
「…で、二つ目なんだが・・・」
「……な、何だ?なぜそんなに憐れんだ目で俺を見るんだ」
ん~・・・きっと、同じことをされた身として感慨がわいたんでしょうね!
「その、だ……。お前には、紅(ホン)の体術の練習に付き合ってもらう」
「………………え?」
さあ・・・・・・私の友達の一途な思いを踏みにじったけじめ、きっちりつけてもらいましょうか。
「じゃあ、ここからは本人に任せるが……根本恭二(きょうじ)、死ぬなよ?」
「ちょ、ま、待ってくれ―!」
「さーって、色々とやってくれましたねえ?根本恭二君?」
「………(ガタガタガタガタ)」
震えながらこちらをゆうっくりと振り向く根本君。おやおや、さきほどされたパンチが効いて動きづらいみたいですね?
だいじょーぶです!これからもっと痛い目にあわせてやりますから!
「いや~、女の子を悲しませたり、人の物を壊そうとしたり、手段を選ばないそのやり方はめったにお目にかかれませんので、私は立ち合えてラッキーでしたよ」
おかげで、見過ごすことなくきっちりと仕置きが出来ますからねえ…?
「あ、あ……」
「私としましては、そんなものを見せてくれた根本君にたあっぷりとお礼をしたいんですよ~・・・!」
ここでにっこりスマイル。たぶん悪魔みたいなもの凄く恐ろしい顔じゃないですかね?
「では、きっちり受け取ってくださいね?」
「ひっ・・・!す、すいませ―!」
「――許すはずねえでしょ、阿呆が」
ぬるいことを言う彼に、鉄槌を下し始めました。
「ギャアァアァアアアアァァァァァ――――……………………!」
一分後
「―――――ふう。ま、これで反省してくれましたかね」
「………あ、あ……」
ぼろ布の様になってピクピクと痙攣(けいれん)する根本君を見て、私は怒りを消去しました。確かにけじめはつけさせてもらいましたよ!
「…少しながら同情を禁じ得ないな。俺の時よりひどくなかったか?」
「確かに。でもあんなに怒った美鈴(メイリン)も珍しいから、そんだけのことを根本がしたんじゃないか?自業自得だぜ」
「僕、これからは美鈴さんを怒らせないように生きるよ」
「そりゃ無理だ明久。お前がいる限りな」
「待った!僕の性格がむかつく奴だって言いたいの!?」
「いや、きっと存在がじゃないか?」
「その通りだ霧雨(きりさめ)」
「雄二と魔理沙は僕に恨みがあるのかなあ!?」
「「ない(ぜ)。ただ面白いから言っただけだ」」
「面白半分で尊い僕の存在をけなすんじゃないよっ!」
何やら吉井君達がもめています。土屋君と気が合ったりと、魔理沙は本当に溶け込むのが上手ですねー。そのおかげで吉井君の精神も溶け出してますけども。やりすぎはダメですよ?
……今の私が言うんじゃねえって言葉でしたかね!
「じゃあこれで私のせいさ、頼みごとは済みましたんで!」
「そこまで言ったんなら、制裁と言ってもいいと思いますが……」
あとは根本君が可愛らしくなったら交渉成立ですね!
妖夢さんが坂本君の下に歩いて、制服を求めました。
「坂本君。その制服を貸してもらえますか?根本君に着せますので」
『断じて却下!!』
「みょんっ!?」
突然のBクラス一同の喊声(かんせい)に、妖夢さんは可愛らしいユニークな悲鳴をあげました。そこからは各自が口々に言い出します。
『妖夢さんがそんな汚らしいものに触れたらダメだ!』
『こんなバカのために妖夢ちゃんが汚れる必要なんかないわ!』
『そうだ!全く、魂魄さんは優しすぎる!・・・だがそこがいい!』
『そうよ!だからパルスィ!みょんちゃんの代わりにあの汚れ仕事をしてあげて!』
『……私は構わなくて妖夢は擁護。そんな配慮が妬ましいわっ!!』
き、汚いって・・・それはさすがに言い過ぎでは?心はともかく体は毎日お風呂に入ってるでしょうし清潔ですよきっと!入ってなかったら知りません!
「……まあ、そういうことよ妖夢。私がこいつに着付けをしてやるわ」
「は、はあ…すいません。パルスィさん」
よく分からないみたいでしたが、妖夢さんも自分がやらない方がいいのかと感じ、パルスィと呼ばれた先ほど根本君にジャブを入れた女子と入れ替わりました。
「坂本君。制服を渡してちょうだい」
「わかった。よろしく頼んだ」
「男子の制服を脱がすなんて想像すらしてなかったわ・・・よいしょっと」
何かぼやきながらも手際よくパルスィさんは根本君の制服を脱がせていきました。・・・な、なんだか直視できない構図になってますね!
ちょっとだけ顔が熱く感じている間に、パルスィさんが根本君の制服の脱がしを終えます。
「あ、その制服なんだけど、僕がもらっていいかな?」
吉井君が声をかけたのはそのわずか後でした。
「?構わないわよ。はい」
特に反対することなくパルスィさんが吉井君に制服を譲渡しました。あくまで持ち主は気絶しています。
「ありがとう。折角(せっかく)だし、可愛く着せてあげてね?」
「無理ね。腐ったものをどれだけ飾ろうが腐ったままよ」
「…そ、そう。じゃあ後はよろしく」
「はいはい。全く、ほんとにこの男には妬ましさのかけらも抱かないわ・・・」
あくまで根本君は彼女の代表……ですよね!?もう言われ放題じゃないですか!代表の威厳のいの字もありません!クラスメイトにどう思われていたのか丸わかりですね・・・
「……(ごそごそ)」
「…あ、そういうことですか」
制服を受け取った吉井君は、少し離れたところに移動してそのポケットをあさり始めました。何を探しているのか、あの存在を知ってる私にはすぐに分かりました。
そのために根本君に女子の制服を着させたって事ですかね。
「……あ、あったあった」
そして、瑞希(みずき)さんの手紙の入った封筒を取り出し、吉井君はそのまま自分のポケットに入れました。
・・・確信は持てませんけど、まだ中身のことは読んでないですよね?一応行ってみましょうか。
「吉井君。その封筒のことなんですけど」
「!?ふ、ふふ、封筒?なんのことか分からないな~?」
「・・・は?いや、なんのことって・・・」
・・・もしかして、私が手紙のことを知らないと思ってるのでしょうか?
「ああ、中身の事は知っています。瑞希さんのお手紙でしょう?」
「あ…め、美鈴さんも知ってたんだね」
「はい。吉井君の方こそ知っていたんですね」
「あ、うん。この前偶然になんだけどね」
……ん~、反応はあんまり嬉しそうなものじゃありませんね。でも、吉井君が瑞希さんのことを良く思っているのは間違ってないと思いますし……
「吉井君。そのお手紙はどうするつもりで?」
「姫路さんの鞄(かばん)に返しておくよ。やっぱり人に持たれたら嫌だろうしね。」
「そうですか。なら、私も同行していいですか?少々聞きたいこともありますので」
中身のことはまだ知っていないはず。そこら辺の話を聞かせてもらいたいですね。かといってここだと人の目もありますし、移動中に聞くのが良案です。
「分かった。じゃ、行こっか?」
「了解!」
私たちはBクラスから出ました。あとのことは坂本君達に任せましょう。
「あ、この制服はもういらないね。根本君には女子制服で家に帰ってもらおうか?」
「アウト!人の制服をゴミ箱に捨てるなんてアウトです吉井君!そして根本君を社会的に殺す気ですか!?」
・・・案外、吉井君は外道なのかもしれないと私はこの瞬間思いました。
Bクラスから出た私と吉井君。目指すは瑞希さんの鞄(かばん)でございます。
「は~、なんとかBクラスに勝てたね~。もうへとへとだよ」
「坂本君も色々考えますねー。よもや窓を開けさせるために、Dクラスに室外機を壊させるとは・・・知られたら大目玉でしたよ?」
根本君が瑞希さんの手紙を持っているのを確認したあの後、吉井君は坂本君の下に向かったそうですが、その時に坂本君がDクラスに、前に取りつけた約束であるBクラス冷房の室外機を停止させるように頼みました。そうすることでBクラスの室温を上昇させ、窓を開けさせることに成功したのです。
そして、そこからが土屋君の役目。彼の得意科目である保健体育の教師は、体育を教えるだけあって非常に運動神経が良く、他の先生には出来ない行動をするのが最大の特徴です。その特徴を最大に活かし、2人は屋上からロープを垂らして開け放たれた窓から侵入、そして不意をついて根本君を倒すというのが今回の作戦なのでした。
Dクラス勝利までにはこの流れが考えられていたに違いないので、彼の発想力には脱帽せざるを得ませんね!
「雄二は後の事を考えずに動くからね。そこについてだけは僕の方が大人だよ!」
「…吉井君の中では色々と妥協しての言葉みたいですけど、それでもたぶん妥協し足りませんよ?」
「うそ!?」
おそらく、オールラウンドで坂本君の方が上手ではないでしょうか。
・・・とは言え、まだまだ達観していないところに、吉井君の良さがあると思いますけどね!今回の手紙の件でもそうですし!
「あ、そう言えば吉井君。あなたはその手紙の内容を知っているんですか?」
付き添っている理由をすっかり忘れるところでした。吉井君はさっき手紙の中身を知っていると答えていましたけど・・・その割にはテンションと言うか、喜びを感じないんですよね。
吉井君の性格だから、もしもラブレターを盛らったら狂喜のあまり叫びまくりそうなんですけど・・・。吉井君は本当にラブレターだと分かっているのでしょうか?実は姫路さんの手紙ってだけで詳しく中身を知らないんじゃ―
「え、うん。確かラブレターだったよね?」
「……え、ええ。そうです。」
・・・・・あ、あっれえー?知っててそのリアクションなんですか?
なんか、こう!思いっきり鼻を高くするのが吉井君じゃないですか!?こんな冷静な吉井君は吉井君じゃありませんよー!?
「…吉井君はあまり嬉しくないんですか?」
まさか吉井君、瑞希さんのことが眼中に無しなのですか?
いや、そりゃ好意を嫌でも押し付けろだなんて言いませんけど、だったら今までの思わせぶりな言葉や行動はだめですよう!私が瑞希さんに無責任な事を言ったことになるじゃないですか!
「う~ん・・・」
私の質問に一間空けて、吉井君の感想。
「どっちかというと不幸になれって思うね。」
「この人最悪だーっ!」
ええーーっ!?まさかの好きどころか、憎悪の対象!?あまりのどす黒い発言に私はあ然を通り過ぎて気絶しかねないほど!あ、視界がふらふらします…!
「よ、吉井君・・・ブラックジョークでもちょっと厳しいですよ?」
「?一応本心だよ?」
「……」
すがるような冗談もばっさり一言。
ああ…瑞希さんごめんなさい。私はとんでもない嘘をついてしまいました。私の思っていた吉井君はどうやらまやかしだったみたいです……
「だってバカ雄二に姫路さんなんて、姫路さんが可哀そうでしょ?まさに美女と野獣だよ!」
「……………………………………ん?」
どうして坂本君の名前が?
その疑問が顔に出てたみたいで、吉井君も不思議そうな顔をして答えてくれました。
「…え?だってあのラブレターって雄二にあげるんでしょ?」
…………………………あ~、そういうこと。
「吉井君。やっぱり吉井君はどこまでも吉井君なんですね」
「へ?どゆこと?」
「そのままの吉井君でいてください」
「??」
やっぱり吉井君はこうでなくてはねっ!
「ままっ、その話は終わったということで!ほらFクラスが見えてきましたよ?」
「え、美鈴(メイリン)さん、さっきのどういうこと?僕メチャクチャ気になるんだけど」
「いえいえ、吉井君が知る必要なんかありませんよ!」
「笑顔で冷たいこと言うんだね!?」
すいません!でも、やっぱりそういうことは、本人の口から聞くのが一番なんですよ!戯言(ざれごと)だと思って忘れてください!
そうこうしている内に我がFクラスへの到着です!Bクラスにいたせいか、さらにボロく見えますね~。
「さっ、吉井君。任務を果たすとしましょう!」
「ま、まあそうだね」
ほっ、とりあえず回避出来ました。あとは吉井君の記憶力に頼るとしましょう!
「よいしょ・・・よし、これでオッケーだね。」
「はい、ご苦労様でした。」
吉井君が瑞希さんの鞄(かばん)に彼女の大切な手紙を入れました。これにて任務終了ですね!
「吉井君!」
「ふぇっ!?」
「あ。」
不意を突いた呼び声。後ろにはいつの間にか瑞希さんがいました。・・・吉井君、その声がとても可愛らしいと思った私は悪くないと思います!
「ひ、姫路さん・・・ど、どうかした?」
「吉井君……っ!」
感極まっているのか、瑞希さんは目に涙をにじませていました。
それは行動にも表れ――
「ほわぁぁっっと!?」
「!おお~!?」
吉井君に正面から抱き着いちゃいました。ヒャー大胆ですねー!最近咲夜さんに成功してませんから、ハグが新鮮に感じますよっ!
「あ、ありがとう、ございます……!わ、私、ずっと、どうしていいか、わかんなくて…!」
あらら…そんなにそんなに一人で抱え込まなくても、私達に相談してくれてもよかったのに。全く水くさいですねー!
「と、とにかく落ち着いて。泣かれると僕も困るよ」
「は、はい・・・」
気を遣(つか)った吉井君の言葉に従い、瑞希さんは吉井君から離れて涙をぬぐいます。
・・・吉井君。あからさまにしまったって顔をしないでください。多分瑞希さんと密着していたかったとかでしょ!?もう!紳士的なことを言ってるんですから考えも紳士的にしてください!
「………も、もう一度――」
え、まさか抱き着いてくれとアンコールするつもりですか?なんと、要求することが酷いですけど男らしいですね!わずかに株が上がりました!
「はい?」
姫路さんが首を傾げて聞こうとしています!吉井君、堂々と言うんですか!?スケベな注文ですけど漢を見せるんですね!?
私の吉井君への株がさらに―!
「――――もう一度壁を壊したいっ!」
下落しました・・・上り値を上回る赤字株です。このチキン野郎がっ!
「あの、更に壊したら留年させられちゃうと思いますよ……」
瑞希さんも気の毒そうな目で見てますし!感動を引っ込められてまでの憐れむ視線はいたたまれないでしょうねえ…
「…そ、そうだ姫路さん!せっかくだし美鈴(メイリン)さんにもお礼をしてあげたらどうかな!?」
「え?」
そこで私に振りますか?別に私はお礼が欲しくてしたわけじゃないですし、今はあなたと話している所でしょう!私なんて蚊帳(かや)の外の存在で良いんです!
「!?メ、美鈴さん!?いつからそこにいたんですか!?」
「……あ、あはは。一応最初っからですよ~・・・?」
・・・訂正。やっぱり、ほんのちょっとでもいいから存在は認識してほしいかな~?なんて。思ったより心にきましたよこれ。
「え、すすすいません!吉井君のことしか見えなくって・・・!失礼なことをしてしまいました!」
「い、いやいや大丈夫ですよ?」
これからきちんと認識してくれるのでしたらね!・・・ま、それはともかく!
「良かったですね瑞希さん。無事手紙が戻ってきて」
「はいっ。美鈴さんも本当にありがとうございます!」
「いえいえ、私も良かったですよ」
友達が嫌な思いをしなくて済みましたから!瑞希さんが元気になってくれて何よりです!
「……そんじゃ、私はお先に失礼しますか」
今頃Bクラスでは根本君が可憐な変身を終えてるところでしょうね。きっちりとこの目でおがんでやるとしましょうか!
「あ、じゃあ僕たちも―」
「おおっと待ちましょう吉井君」
「え?どうしたの?」
全く、私は言ってるじゃないですか。お先に失礼しますって!
「お二人はもう少しゆっくりしてからでいいじゃないですか。吉井君は手が痛いでしょうし、瑞希さんだってまだ心の疲れが取れていないでしょう?」
「あー、確かにね。まだ手が痛むよ・・・」
吉井君が手をさすりながら同意しました。
「吉井君は今回の立役者なんですからゆっくりしていてください。そんなに仕事も無いでしょうしね!」
事実、あとは根本君がAクラスに試召戦争を仕掛けると思わせたら終了のはずですから、全員が行く必要もありません。それなら2人でゆっくり時間を過ごす方が非常に有意義だと思います!
「ん~・・・じゃあお言葉に甘えよっかな?ね、姫路さん。」
「あ、は、はい!じゃあお願いします美鈴さん!」
「はいな、任されました!」
2人の意見も一致しました!では、邪魔者はすぐに出るとしましょう!
「それではお2人とも、ごゆっくりどうぞー」
私は手をひらひらと振ってFクラスを出ました。さって!根本君のおしゃれ姿を見に……の前に、ちょっと顔とか洗ってきますか。さっきすんごい動きまくってたせいで汗がひどいかもしれませんし、汗臭いって思われるのは断固避けたいですもの!
そういうわけで私は水洗い場を目指しました。面白そゴホン!根本君がしっかり仕事を果たすかどうかを確認しなければいけませんので、急ぎましょう!この目に焼き付けるため、目は入念に洗わなければ!
「あ…行っちゃったね。じゃあ僕たちは待っとこうか。」
「あ、そ、そうですね。美鈴さんには後でお礼を言わないといけませんねっ」
「だね。……え~と、姫路さんはもう大丈夫?」
「はいっ。改めてなんですけど、吉井君、本当にありがとうございます!」
「い、いや~。僕はただ壁をぶち壊しただけだって。お礼なら美鈴さんに言ってあげてよ!なんたって、根本君のバカを処刑してくれたんだからね!」
「え、笑顔で言うようなことじゃないですよ!?」
「でも、あれは凄かったな~。僕もちょっとだけ美鈴さんの技を受けてみたいって思ったぐらいだしねっ!」
「……吉井君は、美鈴さんみたいな女の子が好きなんですか?」
「え?ん~…きれいだし面倒見もいいから、まあ(友達として)好きかな?」
「………そ、そうですか…」
「うえっ!?ど、どうして急に涙を滝のように流しだしたの姫路さん!?」
「くすんっ……だ、だって・・・勝てる気がしないからですっ!!」
「えええ!?いや、さ、さすがにメチャクチャ強い美鈴さんに勝つのは無理じゃないかな!?僕も勝てる気がしないよ!?」
「そ、そういう意味じゃありません!女の子としての魅力―――」
ガラッ
「失礼しま……………ごめんなさい。失礼するわ(ガラガラッ)。」
「一瞬!?え、どうしたの十六夜(いざよい)さーん!?」
「ま、待ってください十六夜さんっ!!多分想像されていることはしてませーんっ!」
「…そう、お邪魔ではなかったのね。やらかしたと思ってたから安心したわ」
「だ、大丈夫です!十六夜さんは何もしていませんっ!」
「十六夜さんみたいな女の子が来るんなら、僕は他のどんなこともかなぐり捨てて時間を取るよ!」
「…上手でしょうけど、私に言うのは失敗したわね。姫路さん、私はこの変態をどうこう思っていないから安心して頂戴」
「あ、す、すいません!」
「ちょっと十六夜さん!僕が変態ってどこが変態なのさ!?ちょっと失礼だよっ!」
「ふうん・・・?吉井明久」
「なにさ!」
「私、実は着痩(や)せするのよ。」
「嘘だね。僕の目にはぺったんこにしか見えないだだだだああああっ!!?」
「確かに変態ではなかったわ。よかったわね、このド変態が・・・!」
「ぎ、ギブギブギブうううっ!!」
「い、十六夜さん!吉井君が泣きそうですから許してあげて下さいーっ!」
「…はあ。姫路さんに感謝するのね(すっ)」
「だ、大丈夫ですか吉井君・・・?」
「いったた…な、なんとかね。十六夜さんも美鈴さんみたいに絞め技が出来るんだね・・・?」
「たまに教えてもらってるのよ。美鈴に比べればこんなの素人レベルだけれどね」
「そ、それでこの威力なんだ…さっきあんなこと言ってたけど、もうくらいたくないや。根本君がほんの少し気の毒になったよ」
「根本・・・そう言えばあなた達、Bクラスに勝ったそうじゃない?正直、驚いたわ。瑞希さんのおかげかしら?」
「い、いえ違います!吉井君達が頑張ってくれたからです!」
「ぼ、僕は違うよ!根本を倒したのはムッツリーニさ!凄いでしょう十六夜さん!」
「いや、あなたが威張ることじゃないと思うし、女の敵の名前を出されても・・・。・・・で、Bクラスの次はAクラスってところかしら?」
「そうさ!覚悟しときなよ十六夜さん!」
「す、すいません!でも、私も頑張ってAクラスの方に勝ちますっ!」
「・・・そう、なら私達は、精一杯頑張らせて貰うわ。手加減はしない…けど、頑張ってね姫路さん。敵だけど、言葉だけの応援はさせてもらうわ」
「…はいっ!頑張ります!」
「あれ、僕は応援してくれないの?」
「あなたは無様に地に伏せればいいのよ、吉井明久」
「心に刺さる言葉に今すぐひざまつきそうだよっ!!」
「あ、あはは…ところで、十六夜さんはどうしてFクラスに来られたんですか?」
「ああ。……まああなた達でもいいか。ちょっと聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと?」
「なんでしょうか?」
「…今日、Cクラスの小山(こやま)さんが、私達Aクラスに宣戦布告をしてきたんだけど……その時に、木下さんがCクラスを侮辱したって話が出てきたのよ。本人は知らないって言ってるから、ひょっとして弟さんの木下君が言ったんじゃないかと思ったんだけれど……何か知ってるかしら?」
「……」
「そ、そんな!あの木下君がそんなことをするはずがありません!きっと何かの間違いです!」
「そそ、そそうだよ十六夜さん!秀吉が〝薄汚い豚ども〟とか〝豚小屋がお似合いだ〟とか、そんなことを女装しながら言うはずがないよっ!!」
「………あなたはド変態の上に大馬鹿なのね。しっかり裏が取れたわ。」
「し、しまったあああああっ!!」
「ええ!?ど、どういうことですか吉井君!!」
「………一応聞いておくわ。木下君がそんなことをしたのは、あなた達が差し向けたとかじゃないでしょうね?」
「………テヘッ♡」
「…歯ぁ食い縛りなさい。」
「ってじょうだんぎゃああああ!?腕が絶対向かない方向にいいいっっ!!!」
「や、やめてください十六夜さんー!!」
「クラスメイトを陥れた罰、きっちり受け取ってもらうわよ。」
「ご、ごめんなさいやああああぁああぁ・・・」
お読みいただきありがとうございます!
久しぶりに咲夜さんと明久たちをからませたかったので、最後にちょっと出演してもらいました!どうだったでしょうか!?
では、最初にも書きましたが、ちょっと次回から書くのが遅くなる可能性があります。楽しみにしてくださる人には申し訳ないですが、気長に、過度な期待はせずにお待ちください!
それではっ!その日まで!