今回は〝奴ら〟と、もう一人、新たに東方キャラクターに登場してもらいます!とはいえ、正確にはこの人は前からところどころ出てきてもらっていたので、新しい登場ではありませんけどね!
で、扱われ方が先日出てもらった先生に似ているんですけど、どうか許してください!村雪の勝手が働いたのです!
では、そんなところを踏まえて、今回は召喚大会ナシの文化祭方面のみとなっていますが、
――ごゆっくりお読みください。
「じゃあ咲夜さん、また後で合流しましょう」
「ええ、次も勝ちましょう」
「勿論です!」
召喚大会一回戦を終えた私と咲夜さんは、廊下で別れて自分のクラスへと向かいます。召喚大会出場の為に出し物の仕事を抜けてしまい非常に申し訳ないので、出来るだけ早く戻りませんとね!
私は駆け足で廊下を通りぬ
「美鈴ーっ!」
「けぴゃんっ!?」
あ、前にもありましたねこんなこと。
「ぎゃふっ!?」
突然の横っ腹への衝撃に私の体は横にふっとび、したたかに壁にぶつかりました。あ、あばら骨がぁぁああ!!
「うにゅ!久しぶりだね美鈴!」
「・・・!!ぞ、ぞうでずね。でも、接触の仕方は変わらないみだいで、私は喜びと悲しみが半々でずよ、お空~・・・!」
「えへへ!」
満面の笑顔の少女は、霊烏路 空(れいうじ うつほ)、あだ名がお空という私の友達でございます。
今日も相変わらず元気ですね~。おおお、こ、腰から鈍い痛みがぁぁ・・・!
「あいたた・・・で、何か用でしたか?」
「ん~ん!美鈴がいたから突撃しただけだよ!」
「よ、喜べばいいのか残念に思えばいいのやらな言葉ですね」
慕われてるのは嬉しいですけど、そのたびに私の骨が悲鳴をあげるのを考えると少し考え物です!私も少し反射神経を鍛えといた方が良いですね!
「あ、そういえばお燐(りん)さんもいるんですか?お空いるところにお燐あり、って言いますしね」
「にゃはは!そんなことわざ、あたいは初めて聞いたねえ~?」
「あ、ど、どうもお燐さん」
「や。美鈴さん。手貸そうかい?」
いつの間にか、お空のお姉さん的存在、火焔猫(かえんびょう) 燐さんが近くに立っていて、笑いながら私に手を差し出してくれていました。腰の痛みに震える私には、仏様に見えます・・・!
「すみませんけど、お願いします!」
「あいよ。ほらお空、のいたのいた」
「うにゅ」
お空にのいてもらってから、私はお燐さんの手を握ります。やっぱり2人は一緒にいるのがしっくりきますね~!いよいしょっと!
「お2人は出店回りの最中ですか?」
「まあね。で、次はFクラスに行こうとしてたところなんだよ」
「あらそうでしたか。どうぞどうぞ、大歓迎ですよ~!」
売り上げも上がりますし、何より友達に自分のお店に来てもらうのは嬉しいですからね!
そんなわけでほこりをはたいてから、私はお空とお燐さんと一緒にお話をしながらFクラスへと戻ります。
「へ~、美鈴さんのとこは中華風の喫茶かい。なかなか良さそうだねえ」
「ええ。『ヨーロピアン』って名前でしてね。きっと満足してもらえると思いますよ?」
「ん?ヨ、ヨーロピアン?」
「へ~!どんな料理が出るんだろうな~!」
「いやお空。あたいらは料理の前に、店名に疑問を抱くべきだと思うんだよ」
「その言葉、吉井君にしっかり聞いてもらいたかったですよ」
さすがお燐さん。常識人ならではのご感想ありがとうございます!始まった今となっては、ですけどね!これを見てFクラスの奴らはバカ!って思われなければいいのですが・・・
「あ!見えて来たね!」
「ええ、ぜひ満喫していってください!」
お空の言う通り、だんだんとFクラスが近づいてきました。果たして2人は気に入ってくれるのでしょうか!私は緊張しながら教室にまた一歩近づき――
『おいおい!なんだよこのきったねえぼろ机は!』
「―――ん?」
「うにゅ?」
気のせいか、野太い罵声の声が聞こえてきたような?
『全くだ!もう少し綺麗にならないのかってんだよ!』
「・・・何やら、わめいてる人がいるみたいだね?」
「・・・みたい、ですね」
それも我がFクラスから。ひどい事を言ってる声がこちらまで聞こえてきます。
できれば気のせいであってほしかったんですけど~・・・これはお空さん達に入ってもらうのは、いったん待ってもらった方がいいかもしれません。
「すみません2人とも。ちょっと待っててもらえますか?様子を見てきますので」
「了解。んじゃここでアタイらは待っとくよ。いいお空?」
「ん、分かった!頑張ってね美鈴!」
「りょうかいです」
2人から了承を得て、私だけでFクラスへとさらに近づきます。さて、何が起こってるのやらや。純粋に私たちのミスならば謝罪をして、誠意を見せないといけません。でも、さっきの声の感じだと――
『しかも、なんだこのゴマ団子は!メチャクチャまずいじゃねえかよ!』
・・・あっさりと許してくれる雰囲気じゃなさそうです。う~ん、ゴマ団子は土屋君達が作ってるから味の方は分かんないですけど、結構自信があると言っていたんですがね。失敗作がまざってしまったんでしょうか?
その場合、どうやって謝ればいいのやらや・・・お代は結構とか言えばいいですかね?
う~~~ん、どう対応すれば正解なのか・・・
『だいたいこのバカ女は何なんだ!これがウエイトレスの態度かよ!』
『ア、アタイはバカじゃないもん!ちゃんとアタイは頑張ってるのよさ!』
『ただ元気が良ければいいってもんじゃねえぞ!一回接客の意味を調べてこいバカ!』
『・・・!う、うう~、ア、アタイはバカじゃないもん・・・!』
『『バカだろうがこのバカ!』』
「よし、方針決定」
そんなひどいことを何度も言う人たちが、普通の人なわけありません。全力で対応をすることにしましょう。
私はガラリと教室の扉を開け、チルノがいる場所へズンズンと歩み寄ります。
「バカじゃ話にならねえ!ここの責任者を「失礼します」ああっ?誰だおまえ?」
「このバカ女の仲間か!?」
ふむ。文月学園の制服を着てますから、どうやらウチの生徒みたいです。
坊主の頭とモヒカンみたいな頭の特徴的な男子達、。こう言ったら悪いですが、やはりガラが悪い人ですねー。
「!メーリ~ンッ!」
「ご苦労様ですチルノ。あとは私に任せてください」
ひどいことを何度も言われ、涙をためたチルノが抱き着いてきます。よしよし、何がどうあってこうなったのか知りませんけど、頑張りましたねー。後は私に任せてください!
「お待たせしました。私が代表補佐の紅美鈴と申します。何かご不満がおありでしょうか?」
とりあえず礼儀正しさが大事。私は出来るだけ丁寧に、そして柔和に2人にうかがいました。
「おう!不満に決まってるだろうが!なんだこの汚い箱は!」
「そうだ!よくこれで店なんかやってられるな!体を壊したらどうしてくれるんだ!」
チルノと同じように2人は声を荒げて文句を言ってきます。ふむ、その点については――
「ご安心くださいお客様。そちらのテーブルやクロスは消毒、殺菌をしておりますので、お客様の健康には影響を与えないと保証いたします」
ウソなどではなくこれは本当です。ミカン箱に関しては消毒用エタノールを付けた布でしっかり掃除しましたし、クロスの布も家に持ち帰って洗濯もしましたから衛生面についてはまず大丈夫です。
ですが2人に納得した様子はありません。変わることなく声を荒げてきました。
「そういう問題じゃねえよ!俺たちが言ってるのは――」
「どういう問題でしょうか?」
「…だから・・・・・・・・・こ、こんな汚い所で喫茶店なんかするなってことだ!気分が悪くなるじゃねえかよ!」
「・・・・・・」
そんな坊主頭さんの言い分。ふ~ん。汚いところだと気分が悪くなる、ですか。
「お客様は、潔癖症でしょうか?」
「あ?・・・・・だ、だとしたらなんだよ?俺が潔癖症だったらダメなのか!?」
「いえ。そういうわけではないのですが――」
今の間は考慮の間なのか、かなりウソな気もしますが・・・仮に本当だとして、どう考えても矛盾してますよね?
「―-―ただ、汚いのが嫌と言われるお客様が、あなた自身が汚いとおっしゃる教室にいるのはなぜだろう、と不思議に思いましてね。失礼を承知で言わせてもらいますが、それならば最初に入らなければよろしかったのではないでしょうか?」
「っ!?あ、いや。そ、それは・・・・・・」
「お、おい、夏川・・・!」
虚を突かれからか、顔を引きつらせる夏川と呼ばれた坊主さんとモヒカンさん。
この2人は文月学園の制服を着ているから、Fクラスの教室の設備が良くないというもことを知らないはずがありません。設備が良くない事を知っておきながら、さらには潔癖症とウソをついてまでこのクラスの設備をけなすあたり・・・私たちFクラスの営業を妨害しようとしているのは間違いないでしょう。
一体どうしてそんなことをするのかは知りませんけど・・・・・・おかげで罪悪感を感じることなく行動が出来ますよ。
「ともかく、他のお客様の気分を害するような行動はおやめいただければ。ここはお客様にゆったりとくつろいでいただく喫茶店ですので、大声を上げるのはお控え下さいませ」
「!な、なにを言ってやがる!原因はお前らの準備の悪さだろうが!何を俺たちが悪いみたいに言ってんだよ!?」
「そうだ!責任をなすりつけてんじゃねえ!」
2人はそう言って抗議をしてきますが・・・・・・それを決めるのは、私でもなければあなた達でもありません。
『良かった。この机とかはきれいなんだって』
『うんうん。それなら気にしなくていいですね~』
『つうか、あの2人も言い過ぎなんだよ。別に布が綺麗で気にならなかったってのに』
『余計なことを言うなっての、あの坊主とモヒカン野郎。誰だよあれ』
『可愛い美鈴さんとチルノちゃんにあんな言い方するなんざ、ろくな奴じゃねえな』
『あれは、三年生でも評判が良くない夏川と常村よ。三年の私らが言うのもなんだけど、三年生の汚点よ』
『本当ですか先輩?こ、後輩としてそれは嫌ですね・・・』
『夏川、常村。反面教師として覚えておこうぜ』
『『夏川、常村。三年の汚点・・・・・・』』
「「う、うぐぐっ・・・!!」」
ありがたいことに、ひどい言い方に不快感を示してくれる方が大多数で不満の矛先は私たちFクラスではなくクレーマーの二人組。これは地味ながらも心に来るでしょう。
「も、もういいっ!出るぞ夏川!」
「お、おう!こんな店いてられるかってんだ!」
居心地が悪くなった2人は立ち上がって退散しようとし始めます。クレーマーが退散してこれで終了・・・と言っても良かったんですけど・・・・・・
今から私は、友達の仇のために悪になってみせましょう。
「そうですか・・・・・・では、お詫びとしてお2人に受け取って欲しいものがございます」
よいしょ、足首をほぐして~・・・
「あ?お詫び?」
「へっ!やっと自分たちの非を認めやがったか!」
やたら嬉しそうににやにやしながら坊主頭さんが私に叫びます。あ~。残念ですが、今の私は悪いことをする悪人。
「で、詫びに何をくれるってんだ?」
「はい、それはですねぇ」
――なので、提供するものも悪いものでございます。
「―――中華秘伝の足技でございますー♪」
「「は?」」
「せいっ!」
私は右足を軸に体を一回転させ、加速した左足を坊主頭さんの顔面に叩き込みました。
バギャアッ!
「げぶるぁっ!?」
「!?なな夏川ーっ!?」
おお。なかなかうまく入りましたね。坊主頭さんの体がクルクル宙で回り、そのまま重力の方式に従って顔から畳へと落下しました。これはなかなか効いたことでしょう。
さて、身だしなみを整えてと。
「お待たせしました。次はあなたにも味わってもらいますね。え~と・・・モヒカン様?」
「誰がモヒカンだ!俺は常村だっ!・・・というより、な、何をしやがる!?」
モヒカンさん改め、常村さんが驚きの声をあげます。
「何を、と言われますと・・・・・・お詫びでございますが?」
正しくはお礼、ですかね?
「どこに詫びの要素がある!?ただ単に回し蹴りをしただけじゃねえかっ!」
「ええ。ですからお詫びとしての足技を披露しているのでございます」
「わ、詫びと全然噛みあってねえよ!詫びじゃなくてむしろ罰ゲームだそれはっ!」
「いえいえそんなことはありません。これはれっきとしためっさつ…じゃなくてお詫びです」
「今滅殺って言ったよな!?罰ゲームも可愛い間違いだったのか!?」
おおっと。つい本音が出てしまいましたよ。
「ふむ。常村様はこのやり方はお気に召さないようですね」
「ったり前だ!俺は蹴られて喜ぶマゾじゃねえ!」
「では、常村様には安らかに眠りを味わってもらう『安眠法』を提供させてい頂きましょう」
「絶対に気絶させる気だろそれ!?」
む、なかなか鋭いですね。他人への中傷はしても全く気にしてなかったのに、自分のピンチには敏感です。
「まあまあ。百聞は一見にしかずです。ぜひ味わってください!・・・・・・消えゆく意識の感覚を」
申し訳ないですが、店の売り上げはクラスの設備向上、ひいては瑞希さんの引っ越しにも関わる重要要素。ここは二度と妨害なんかをしてもらわないよう、心に刻んでもらいます……!
「い、今恐ろしいことをつぶやいたか!?そんなもん味わいたくね、あ、ちょ、やめろぎゃああああああ!!」
願わくば彼らの心が入れ替わらんことを。そんな善人ぶった事を考えながら、悪人の私はクレーマー2人を撃退しました。
「まったく、雄二が悪いっていうのに殴り返してきて、酷い奴だよ」
「お前が言うか明久。俺は召喚獣を操作したことがないっつってんのに働かせようとしやがって」
そりゃそうでしょ。点数が高い人が高い人とやり合うものじゃないか。
召喚獣大会一回戦の後に、相棒と熱く殴り合っていた僕達。しだいに不毛だということで、互いに一発特大の物をさく裂してから切り上げて教室へと戻っていた。う~ん。まだほっぺたが腫れてるよ。まあ雄二もだからおあいこだね。
「ん?」
「?どうしたの雄二」
「あそこで立っているのは、Dクラスの女子じゃないか?」
「あ。ほんとだ」
雄二に言われて前を見れば、Fクラス教室の近くでDクラスの見知った女子2人がおしゃべりをして立っていた。
「火焔猫さん、霊烏路さん。そんなところで立ってどうしたの?」
「え?・・・あ!久しぶり!よしひさ!あと・・・・・え~~と、バ、バカモトだっけ!?」
「吉井明久だよ!?」
「坂本だっ!ひどい間違えだなおい!?」
う~ん、相変わらずだなあ。でも雄二のは本質をとらえてるからある意味正解だね。
「あ、そっか~!ごめんごめん!」
あちゃあと笑う少し天然な彼女は、化学の点数と女性の象徴がずば抜けてすごい少女、霊烏路空(れいうじ うつほ)さん。
「おや、吉井君に坂本君じゃないかい。久しぶりだね」
そして至って普通の対応を笑顔でする彼女は、とっても気前の良い少女、火焔猫 燐さん。以前Dクラスと戦ったときに色々な意味でお世話になった二人組だ。
「うん。久しぶりだね2人とも。ひょっとして僕たちのクラスに来ようとしてくれてたりするのかな?」
一人一人の売り上げが重要な僕らにとっては神様に与えられた加護。そうでなくても店に来てほしいところだ。自分達の店で喜んでもらえたらずっごく嬉しいもの。
「うん。そのつもりだよ。でも、今はちょっと美鈴さんの首尾を待っていてね」
「へ?」
「ん?」
でも、火焔猫さんはよく分からない事を言って親指でFクラスを指さした。はて?美鈴さんがどうしたんだろ?
「紅がどうした?」
「ああ、それがね――」
「あ、お空、お燐さん。もうオッケーですよ。来てもらって大丈夫――って、あら吉井君、坂本君。どこに行ってたんです?」
「あ、美鈴さ・・・・・・ん」
噂をすればなんとか、美鈴さんがFクラスから出てきて歩み寄ってきた。
・・・・・・文月学園の制服を着た男子二人を脇に抱えながら。
え、何があったの!?もしかして姫路さんか藤原さんのお手製リョウリを食べたとか!?
「ん?その2人なのかい、美鈴さん?」
「ええ。なんでも三年生の方だそうですよ」
「ふ~ん。そりゃひどいことをするねえ。優しくしろとは言わないけど、もう少し穏便にしてあげてほしいものだよ」
「うん!すっごい大声だったもんね!」
「すまん三人とも。俺たちにも何があったのか分かるように説明してくれ」
雄二が説明を求めて3人の会話をストップさせた。でもさっきまでの話だと僕らじゃなくて美鈴さんの脇の2人が何かをしたみたいだから、そこんところは一安心だね。
「ああ。実はこの三年のお二人さんが、営業妨害みたいなことをしてくれましてね」
「なに?」
でも、内容自体はあまり良くない事態だった。
「ええ!?ホントなの美鈴さん!?」
「はい。ゴマ団子がまずい!とか机が汚い!なんかを大声で言われまして」
なんって先輩たちだ!この学校では一番大人なのに、僕たちが一生懸命になって作ったお店を陥れるなんて!売り上げが下がって設備を向上できなくなったらどうしてくれるんだ!
「・・・んで、その2人が気絶してんのは紅の手捌きか?」
「まあそうなりますね。・・・少し、やりすぎたかもしれませんけど」
「いや、それぐらいがクレーマーにはベストだ。良くやってくれた」
不測の事態なのに、雄二は全然慌てず美鈴さんを労った。まるでこうなることを予想してたって感じだけれど、まさかそんなの分からないよね。
「そう言っていただければ安心ですよ。では、坂本君と吉井君はお空とお燐さんの案内をお願いできますか?」
「ん?よし分かった」
「美鈴さんはどうするの?」
「この二人を保健室に連れて行ってきます。私がやったことですからね」
相変らず優しいなあ。僕だったらきっとゴミ箱に頭から突っ込んであげてたところだ。
「わかったよ。任せて美鈴さん!」
「よせ明久。お前が言うと紅が不安になっちまうぞ」
「僕の自信は不安材料なの!?」
全く失礼な!僕だってやる時はやるんだからね!
「それでは頼みますねー。よいしょっと・・・」
僕たちに火焔猫さん達の案内を頼んだ美鈴さんは、その先輩2人を抱えながら保健室の方に歩いて行った。・・・・・・良く考えると、男子を2人抱える女子って凄いね。
「さて。じゃあレディーの案内を頼もうかい、おふたりさん?」
「うつほ、美味しいものは大好きだから、しっかり食べさせてね!」
女の子2人がそう言って僕たちを期待のこもった目で見てくる。美鈴さんからも言われてるし、これは頑張らざるを得ない!
「了解!じゃあついてきて2人とも。僕達がしっかりエスケープしてみせるよ!」
「それは出来れば、緊急事態が起きた時に頼みたいね」
「それを言うならエスコートだバカやろう」
あれ?じゃあエスケープってなに? (A. 『避難する、させる』という動詞です)
「??えすけえぷって何?」
霊烏路さんも僕と同じだったみたいで首を傾げてる。どうやら難しい単語だったみたいだから僕が間違えるのも仕方ないことだったんだね。 ( そこまで難しくありません)
「まあせっかく来たんだ。堪能していってくれ」
「もともとそのつもりだよ。いや~楽しみだね!」
雄二がガラリと扉を開けて2人を招き入れる。よし、僕も頑張ってホールの仕事をしないとね!
3人に続いて僕もFクラスへと入った。
「いらっしゃいませ。ようこそ中華喫茶『ヨーロピアン』へ、と。明久と雄二もおるのか」
そんな僕らを出迎えたのは、美少女にしか思えない男子の秀吉。う~ん。ウエイトレスレスの格好が眩しいなあ。
「おお。こりゃまた可愛らしい子が出迎えてくれるね~」
「わ~、可愛いなあ!」
「む、むう。あまり嬉しくないお言葉じゃ・・・」
可愛いと言われて秀吉が顔をしかめる。きっとそんな仕草なんかが原因だと僕は思う。
「秀吉。さっきクレーマーがここで文句を吐き捨てていたそうだが、店はどうだ?」
「うむ。そのことは後で話させてもらうのじゃ。まずはこの2人を案内せねばな」
「そう?じゃあ、2人で頼むよ」
「かしこまりました。ではこちらにどうぞ」
そう言って2人を案内する秀吉。お客さんを優先して仕事をしっかりするのはさすがだ。
「・・・あれ?なんだかテーブルが変わってない?」
クレーマーのせいでお店の雰囲気が悪くなっていないかを確認してたら、僕達が召喚大会に行く前とテーブルがいくつか変わっていることに気付いた。ミカン箱にクロスをかけた簡単な机が、かなり立派なテーブルになっている。入れ替えたのかな?
「ん?確かに入れ替わってるな」
「それなんじゃが、先ほど紅に頼まれてのう」
あ、秀吉だ。どうやら案内は終わったみたいだ。
「何を頼まれたんだ?」
「『綺麗な机を調達できませんか?』と聞かれてな。演劇部の小道具で使っていた机を準備したのじゃ。いくら穏便にまとまりがついたとはいえ、原因となったものは改善した方がよいのは確かじゃしな」
「それもそうだね。さすが美鈴さんだ」
それならお客さんも安心していられるし、万一って事態も回避できる。お客さんの足が遠のくって事態も避けられたみたいだ。
「じゃが、いかんせん数が少なかったので、全部の机を入れ替えることはできんかったのじゃ・・・」
「ああ、だからミカン箱の机も残ってるんだね」
そりゃあテーブルなんて大道具、二、三個あれば十分だ。それを全部持ってきてくれた秀吉は十分協力してくれたから、申し訳なさそうにする必要はどこにもない。
「済まないな秀吉。なら後の事は俺たちに任せろ」
雄二も同じ気持ちだったみたいで、秀吉の肩を叩いて労った。
「あと?雄二、後の事って?」
「それだが明久。ちょっと手伝え」
「あ、了解」
僕は悩むことなく即答する。秀吉も頑張ってくれたんだから、僕も頑張らないとね!
それに頷いた雄二は、再び店内を見渡した。
「あとは・・・・・・お~い霧雨!」
「では、ごゆっくりご堪能を~!―――ん?なんだ坂本?」
ウエイトレスの仕事をしていた魔理沙が、呼ばれて近づいてくる。ひょっとして、魔理沙にも手伝ってもらうつもりかな?
「ちと人手がいるから手伝ってほしいんだが、いいか?」
「おお、別に構わないぜ」
魔理沙も特に迷うことなくオーケーを出した。う~ん、仕事をほったらかしちゃうことになるけどいいのかな?ま、代表の雄二が言うんだからいいか!
「助かる。んじゃまあ2人とも、行くとしようか」
「おう」
「わかったけど、どこに行くのさ?」
前を歩く雄二は僕の疑問に、口の端を吊り上げて悪そうに笑って答えた。
「テーブル調達だ」
「吉井君に坂本君に霧雨さん!!そ、そのテーブルを返しなさいっ!」
「そ、そんなにテーブルをもってどうするつもりなの!?」
「2人とも走れ!捕まったら生活指導室行きだぞ!」
「鉄人の根城!?そんなの冗談じゃないよ!」
「言われなくても、十分走ってるわぁっ!」
そして現在。学園の応接室のテーブルをゲットした僕らは、追手の先生から逃亡中でございます。
「とにかく一旦喫茶店に使っちまえばこっちのモンだ!一般客が使用中のテーブルを回収なんてマネは、いくら教師でも出来ないだろうからな!」
なんて悪い奴だ。確かにテーブルは手に入るけど、代わりに僕や魔理沙の積み上げてきた信頼がパァになっちゃうじゃないか!(※悲しきかな。あなたへの教師からの信頼はわずかです)
「ふ、ふう、ふう・・・!な、なんで三人とも、テーブルを背負ってるのにっ、そんなに走れるのぉ・・げっほげほ!」
「や、八雲先生しっかりしてください!まだまだ先生はお若いじゃないですか!」
「そ、その言葉はっ、今の私には刃にしかならない、わよぉお・・・!」
追手は遠藤先生と八雲紫先生の女教師の2人。八雲先生が息切れしているけど、若い遠藤先生は全然息を切らしていない。遠藤先生は二十代、八雲先生は三十代だそうけど、年齢って残酷だなぁ・・・
「ちくしょう!?こ、こんなことをするとは全く思ってなかったぜ!自分でオーケーって言っといてなんだけど、納得がいかないっ!」
僕と同じように、背中にテーブルを背負った魔理沙がダッシュしながら愚痴る。確かに、魔理沙と一緒に悪い事をするなんて初めてだ。ちょっと新鮮味があって良いんだけど、いったいどういう理由があって雄二は魔理沙を誘ったんだろう?
「以前はお前に泡を吹かされたからな!俺からのささいなお礼だ!それに、霧雨はそういうことが得意そうだからだ!」
「前半に関しては納得がいかんし、後半に関してはなんだそういうことって!いつ私が盗みなんかやったぜ!?」
魔理沙、雄二は何も盗むのが得意とは言ってないよ?十六夜さんも前にそんなことを言ってたけど、魔理沙は意外と手癖が悪いんだね。今度から僕も気を付けとこう。
「し、仕方ないわ。ここは西村先生を――」
「まずい、鉄人を呼ぶつもりだよ!」
携帯を取り出した八雲先生。あのモンスターを呼ばれたら一気に僕たちが不利になる!
「明久!」
「あいよっ!」
雄二に呼ばれて僕は足で上靴を片方脱ぎ、雄二へと蹴り上げた。
「くらえっ!」
「あっ!わ、私のシンプルフォンーっ!」
雄二がそれをシュートし、上手く八雲先生の手元に命中。大きな文字が書かれていて、お年寄りがターゲットであるとってもわかりやすい携帯が廊下に転がり落ちた。
「やるじゃないか坂本!」
「まあな!それでは御機嫌よう、先生方!」
「ああっ。僕の上靴・・・」
仕方ない。後で捨てられてなかったら拾いに来よう。あとはこのテーブルを人の目が無いところに置いて、秀吉にその場所を伝えて回収してもらうだけだ。
「よし、じゃあ次は職員室そばの休憩室を攻め――」
「くぉおらああっ!お前たちは何をやっとるかぁぁ!!」
「「「いっ!!?」」」
突然の女性の大声に、僕らは揃って身を震え上がらせた。
テーブル越しに後ろを振り向くと、ちょこんと可愛らしい置物みたいな帽子をかぶった水髪の女性が、髪をふり乱し、怒りの顔で全力疾走してくるのが見えた。
「雄二!か、上白沢先生だっ!」
「み、見りゃあ分かるちくしょう!」
「ま、まじかよ!?」
彼女の名前は上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)先生。日本史の先生にして、鉄人を含めて三本の指に入る、体育会系の先生だ。もちろん、体力も鉄人に劣らない。
「も、もっと早く走れお前ら!捕まったら地獄の頭突きが待ってるぞ!」
雄二の言う通り、鉄人が拳で制裁を下すのに対して、上白沢先生は頭を使った頭突きで罰を与える。その威力は折り紙つきで、くらった人の全てが地獄を見るのだとかの噂が流れてる、怒ると恐ろしい先生だ。
「いやだあ!美人の先生と触れあうことは出来るけど、地獄を見るのはもういやだああ!」
ルーミアさんとのゾンビ勝負対決や、八雲藍先生との『橙ちゃんお嫁にください事件』なんかで僕の体は既にボロボロなのに(※とっくに完治してます)、これ以上僕には耐えられない!絶対捕まるもんか!
「んなもん俺だって同じだ!地獄を見るのは翔子だけで十分だ!」
今だけは雄二と凄い親近感を感じるよ!僕らはさらに全力で走りだす!
「こら!待つんだお前達!大人しく机を返せば何もしないっ!」
「勘弁してください上白沢先生!全部終わったらきちんと返しますから!」
「私が言ってるのは無断で机を取るなということだ!今すぐそれを返しなさい!」
「それはできません!」
理由もなくやってたならすぐに返したいけど、これは非常に重要なことに繋がっているから絶対に返すことは出来ない!、
「そうか・・・・!なら、吉井、坂本、霧雨!覚悟は出来てるんだろうなあ!」
やばい!上白沢先生が本気で怒った!足の速さもさらに上がって、どんどん僕らに追いついてくる!
「ゼエッ…ゼエッ・・・!」
「ま、魔理沙頑張って!」
魔理沙の息がだいぶあがってきている。前の鉄人に追われてた時とは違って、自分の大きさぐらいのテーブルを背負ってるから息切れが早くなるのも当然!このままだと、魔理沙が鬼頭突き餌食に・・・!
「・・・し、仕方ねえ・・・!こういうことだけ言いたくなかったが・・・・・・!!」
「え、魔理沙!?」
急にスピードを落とし、上白沢先生の方を見る魔理沙。ま、まさか投降する気!?そんなっ!君のことを信じてたのに――!
「慧音先生っ!」
「なんだ!?」
「――そんな怒ってばっかだから、しわができたり、髪の毛が抜けていくんだぜ!」
「「ぶっ!?」」
「―――――っ!!?」
え、ちょ、な、なんてこと言うんだよ魔理沙!?そんなこと言ったら、橙ちゃんが絡んだ時の藍先生みたいにパワーアップして追って来るんじゃない!?もっと状況が悪化するんじゃないの!?ほら、先生ももっと怒った顔・・・に・・・
・・・・・・ん?
「違う、これはしわじゃない・・・・・・!これは少し肌が乾燥してるだけ・・・別にしわなんかじゃないぃ・・・・・・!!髪の毛だって、人間だったら抜けるに決まってるじゃないかぁ・・・!!」
「か、上白沢先生!?急に崩れ落ちて大丈夫ですか!?」
「・・・分かります先生。あなたの苦しみが、私には痛いほど理解できるわぁぁぁあ・・・!!」
「や、八雲先生まで!?あ、あのいったいなにが――」
「若い先生には関係ないっ!(わよぉ!)」
「ひえぇっ!?な、なんだかすいませんでしたぁ!」
そんなことは無かったみたい。しかも、八雲先生も一緒に寄り添うおまけつきで、効果は抜群だ。なんだか哀愁が漂っていて、見る僕も哀しくなってくる光景だなあ・・・
「よっしゃ!不本意だが、これで足止め出来たぜ!」
「ははっ!よくやった霧雨!今のうちにさっさと行くぞ!」
「2人にはその内天罰が下ると思うよ!」
「私だって断腸の思いで言ったし、何よりもウソじゃないから神様もきっと許してくれるぜ!」
「時にはウソをつくのも大事な気もするけどね!」
そしてそれは間違いなく今だ!願わくば、魔理沙に罰が下らんことを・・・
そう思いつつも、若くいることに僕は初めてありがたみを感じながら、2人の老いを嘆く女性たちから離れていった。
『ん~!おいし~!すごいねみずき!』
『あ、ありがとうございますお空ちゃん!』
『んにゃ~、これは確かに上手いねえ。驚いたよ!』
『あはは。そう言ってもらえると、きっと厨房で頑張ってる皆さんも喜んでくれます!』
『それは良かったよ。・・・・・・う~ん、しっかし・・・おっきいねえ~』
『??えっと、はい?』
『え、そうお燐?おいしいけどおっきさは普通だと思うよ?』
『な、何か私の身体についてましたかお燐さん?』
『や、こっちのことだけど・・・・・・小さいのは小さいで、あたいは悪くは無いと思うんだけどな~』
『『??』』
『そう思うっ!ウチもそう思うわ!』
『わっ、み、美波ちゃん?』
『おおっと?・・・・・・どうやらあんたも、あたいと同じかい?』
『うん・・・!この悲しみを分かってくれるのは、同じ境遇な人だけよ!』
『いいや、悲しむことなんかないさ。小さくても魅力があるものだよ。恥じることなどきっとないさ』
『・・・・・・!!ウチ、そんな言葉初めて言われたっ!』
『おうっ。いい握手だね。名前を聞いていいかい?』
『島田美波!美波って呼んで!』
『あいよ美波。あたいはお燐でも燐とでも好きに呼んでよ、にゃはは!』
『うん、お燐っ!ウチの初めての理解者!』
『???小さいのより、おっきい方が良いよねみずき?一杯食べられるもんね?』
『は、はい。わ、私もその、食いしん坊ですから、やっぱりお団子は大きい方が嬉しいです、おくうちゃん!』
『『おだまり2人っ!』』
『きゃっ!?』
『うにゅっ!?』
お読みいただきありがとうございます!
さて、では恒例のご紹介を!
白沢(はくたく)と人間のハーフにして、歴史を食す人里の寺子屋の先生、上白沢慧音先生です!早くから出演されていたのですが、ようやく紹介が出来ました!
そんな回に、紫さんと似たような扱いをしてしまって申し訳ない・・・!ですが、あの流れで三人がに逃亡してもらう方法が思いつかなかったんです・・・!この発想力のない村雪を許してください~!
で、モヒカンさんと坊主頭の二人も出したのですが、彼らはやっぱり悪いことをする典型的な悪!というイメージがありましたので、少々痛い目にあってもらいました!彼らも根本君に続き不憫キャラクターになると思うので、ここで宣言しておきますね!
で、次回なのですが、新たな東方キャラクター二名、出てもらう予定です!あまり彼女らしさを出せるか自信がないのですが、少しでも楽しみにしてもらえれば!
それではまた次回っ!