さてさて、とうとう学園祭編を終了させていただきます!いやはや、何とか最後まで書き終えることが出来て一安心です~!
それで、今回なのですが・・・ものすっごく長い文章となっております!普段の一話の倍くらいの長さとなっていて、半分で割って投降した方が良いかな?とも思いましたが、あまり長引かせても良くないと思い、思い切ってつなげて投稿させていただきました!!
だから目が疲れるかもしれないので、皆さんそれぞれのペースで読んで行ってください!
それでは、盛り上がり、バカ騒ぎの嵐だった学園祭編の締めの一話!
――ごゆっくりお読みください。
「妹紅ちゃん、お疲れさんだ!打ち上げの記念として結婚してくれ!」
「諦めなさい」
学校ではなく、近所の公園を会場にして開かれた2-Fクラス打ち上げ会。夕焼けを背景に、私たちは今日の学園祭の話で盛り上がります。
「藤原さん。このお菓子と一緒に俺も一緒にどうだい?」
「お菓子だけ代わりに私がもらっておきますね」
シートを張って公園での打ち上げというのは少し見栄えは良くないかもしれませんが、安く楽しく過ごせるのならば、それに越したことはないでしょう。
「藤原さん、どうか俺と付き合ってくれ!」
「まずは私を倒してからそんな戯言は言いなさい」
それは皆さんも同じようで、ほとんどの人が笑いながら、各個人が持ってきたお菓子やジュースを食べたり飲んだりしてこの時間をにぎやかに過ごしています。
「藤原、後生だからその綺麗すぎる白い髪をサワサワさせてくれ」
「おいこら。地の果てまでぶっ飛ばしますよ?」
・・・とは言え、悲しきかな。どこにも例外というものはやはりございまして・・・・
「もこたんっ!どうかおれに伝説の『はいアーン♡』をやってみてく――」
「だああああもうっ!あんたら興奮しすぎですこの変態共っ!!頭冷やしてとっとと離れなさい!」
「・・・・う~~・・・だ、だから来たくなかったんだ・・・!!」
私にひっついた妹紅さんだけは、男子からの熱烈な言葉に涙目でしかめっ面になっていました。もおおおお!!私もおかげさまで思いっきりしかめ顔ですよこのおバカ男子達っ!妹紅さんに本当に手をしたら全力で叩きのめしますからねぇ!?
「ちょっと!妹紅が怖がってるでしょうが!あんた達の相手はウチがしてあげるからやめなさいっ!」
「げぶっ!?」
「き、北村ーっ!?」
「な、なんてことをするんだ島田!北村のやつが白目をむいて倒れたぞ!?俺たちはただ、妹紅さんと距離を近めてあわよくば恋愛へ発展させようとしただけで――!」
「そのやり方が問題あるって言ってるのよバカっ!!」
「ぐはあ!」
「の、野崎ーっ!」
「ああ、助かります島田さん!まったく!妹紅さんが来てくれたのに喜ぶのは分かりますが、もう少し落ち着いて接してあげてください!」
皆さんも妹紅さんの性格を知っていたので、この打ち上げに妹紅さんは来ないだろうと踏んでいたそうなのですが、箱を開けて見ればびっくり。来ないと思われてた妹紅さんが来ていたので、男子たちは輝かせんばかりにその顔を感激と喜びの表情に染めました。別に教室でも会えるでしょうに、何がそこまで彼らを喜ばせるのやら・・・
「藤原!その真っ白な髪を少し切って、お守りとしてどうか俺に恵んで――!」
「消えろ変態がぁ!」
「ぐぶぅっ!?」
とにかく。そんなわけで現在、テンションがダダ上がりのアホ男子たちが次から次へと妹紅さんに会話と言う名のセクハラもどき行為を連発し、私がそれを言葉と拳で諫めているのであります。
「う~・・・慣れないことなんて、やっぱりするんじゃなかった・・・」
「も、妹紅さんそう言わないで!無論嫌なこともありますでしょうけど、良いこともきっとありますからっ!」
「・・・さっきから変態共に変態な要求をされてるだけだろうが・・・!どこに良い要素があるんだよ・・・っ!」
「・・・え、え~~~と。お、お菓子どうですか妹紅さん?」
「ガ、ガキ扱いすんな・・・っ!」
そそ、そんなつもりはありませんっ!この場で良いところを作ろうとしただけですよ!
・・・そりゃまあ、ちょっとだけ妹紅さんをレミィみたいに思っちゃうことはありますけども!これバレたら絶対に妹紅さんに嫌われますねっ!
「・・・・藤原の泣き顔・・・金山になる気配がする」
「やめよムッツリーニ。藤原がかわいそうじゃし、何より紅が本気で怒るぞい」
「・・・・残念」
「なになにムッツリーニ?写真を撮るならアタイを撮りなさいよ!最強のアタイならいくらでもポーズをとってやるのよさ!」
「・・・っ!?どんな姿勢も・・・・っ!?(ドクドク)」
「ま、待つのじゃムッツリーニ!おそらくチルノはそういうつもりで言ったわけではないじゃろうし、何より犯罪臭がものすごいするからよすのじゃっ!」
「ふふん!鼻血なんか出しちゃって!さてはアタイの最強さにやられたのね!」
「わしにはもうお主の最強の言葉に含まれる意味がわからんっ!そんな魅力のような意味は最強にはないのじゃ!」
向こうの方でこちらと同様に盛り上がっているみたいなチルノ、秀吉君、土屋君の3人。声は聞こえなくとも、土屋君を見ればどんな内容か分かってしまうのが呆れたことです。こんな時でも土屋君の頭はピンク色のことしかないのですね!いつぞや言っていた紳士のしの字も見当たりませんよっ!
「も、妹紅ちゃんっ!皆さんは妹紅ちゃんと仲良くされたいだけで、そんなに悪い人じゃないですよ!・・・す、少し行動が過激ですけど・・・」
「・・・わ、私はそこが一番嫌なんだよ…っ!!なんでこのクラスの男子は、こんな変態で図々しいんだ・・・・!」
瑞希さんの慰めにも妹紅さんは変わらず、非常にごもっともな疑問を愚痴ります。普通だったらこんなにホイホイと変なことを聞くものではないのですが、学力はFでもその厚かましさは断トツでAクラス!その熱意を他のものに活かせってのですよぉぉ!!
「ま、まあまあまあ妹紅さん。ではここはひとつ、女の子だけで過ごしましょう!それならきっと楽ですよ!」
「そ、そうですね美鈴さん!妹紅ちゃん、良かったらこのジュースをどうぞ!」
瑞希さんはそう言って、二つ持ったジュース缶を妹紅さんに差し出しました。どうやらオレンジとブドウ味みたいですが、私だったらオレンジですね!
「せっかくですから、私たちだけでも乾杯しましょう!妹紅ちゃんはオレンジかブドウのどちらが良いですかですか?」
「・・・・・・オ・・・・オレンジ」
「分かりました!はいどうぞっ!」
「・・・・・・ありがと」
お菓子ではのってくれなかった妹紅さんですが、どうやら飲み物は別のようで、瑞希さんからすんなりと缶を受け取ってプシュリと気持ちいい音を立てて開けました。今の音、結構炭酸が強い飲み物みたいですね。私も後で飲んでみたいです。
「じゃ、乾杯です!お疲れさまでした2人とも!」
私は持っている日本茶の缶を掲げ音頭を取ります。ん?お茶が好きなのかですって?それはもう!家族と友達と昼寝の次に大好きですよっ!
「あっ、か、乾杯です!お疲れ様でした!美鈴さん、妹紅ちゃん!」
「・・・お、お、お疲れ・・・・」
2人も私に続いて飲み物を掲げます。瑞希さんの屈託のない笑い顔と妹紅さんのふてくされた涙目。ここは天国か何かでしょうか!ああ、心が癒される~~!!
「ごくごく・・・ふー!おいしい~!」
一気にお茶を飲みほし、私は喜びの感情と共に感想をこぼします!この日本茶独特の苦みと風味!母さんがお酒を飲み終えた後とかによく飲んでいたので、それを真似てなのですが、すっかり好物になりましたよ~!
「・・・あふぅ~(ごくごく)」
「・・・・・・(こくこくこく)」
おっ、2人も見ていて気持ちいい飲み方ですねー!でも大丈夫!飲み物はまだまだたっくさんありますから、いくら飲んでも大丈夫です!
「なんらか、変わった味のするジュースですね~」
「ほほう。では良いか悪いかで言うとどうです?」
「んー・・・とっても美味しいれすよ~」
「・・・お、おお!それは良かったですね!」
・・・・・・さ、さっきから、瑞希さんのろれつが回っていないような?気のせい・・・・じゃないですよね?
「あ、あの。瑞希さん、そのジュースを見せてもらっていいですか?」
「?いいれすよ~。はいどうろ!」
そう言って缶を差し出す瑞希さんの顔は、赤く上気していて、目もいつもよりとろんとしています。
・・・これってもしかしなくても・・・そうですよね?
私はほぼ確信しながら、受け取ったジュースのラベルを見ます。
「・・・・・は~。誰ですか、お酒を買ってきたのは」
見れば『オトナのブドウジュース』と書かれているこの飲み物は、間違いなくお酒に違いありません。ちょっとちょっと!買って来た人!確かにパッケージはジュースに見えますけど、しっかり見れば分かるでしょー!
「瑞希さん、調子は大丈夫ですか?」
「ふえ?はい、大丈夫れすよ~」
「今だけは瑞希さんの言葉がまったくあてになりませんね!」
度数は5パーセントって書いてあるのですが、それを一杯飲んで出来上がるとは、瑞希さんはめちゃくちゃお酒に弱いんですね~。母さんみたいに強くなくてホッとします!
「・・・すー・・・すー・・・」
「で、妹紅さんはお眠りと。おお、なんと可愛い寝顔か~!!」
缶を地面において、私に寄りかかりながらすやすや眠る妹紅さん。どうやら妹紅さんのオレンジジュースもお酒だったようですが、て、天使(※咲夜さん達)の寝顔に引けを取らないこの安らかな顔!土屋君っ!今だけは妹紅さんの写真を撮ることを許可します!だから私にその写真を無料で寄越すのですよっ!
「あれ~?美鈴さんと妹紅ちゃんが二人に見えます~」
「あ、いえいえ瑞希さん、私たちは別に分身の術を使ってるわけじゃありませんよ?」
強いて言うなら瑞希さんが酔っぱらいの術を使っているのです。や~、瑞希さん結構酔ってますねー。あ、ほらそんなにゆらゆら揺れたら危ないですよ!
「瑞希さん、お茶でも飲みますか?ちょっとは酔いがさめますよ?」
「ふえ?でも、私全然酔ってなんかいませんよー?ちょっと頭がフワフワしてますけれど・・・ひっく」
「世間ではそれを酔っていると言うのですよー。今後覚えておきましょうね~?はいどうぞ」
「ありがとうございます~。んっ・・・」
飲みかけのお茶を渡すと、瑞希さんはお礼を言ってすぐにそれを口にしました。あ、間接キスというものになるかもしれませんけど、同性ですし、状況が状況なのでノーカウントです。
「・・・はう~・・・でも、良かったです~」
「ん?何がです?」
お酒を飲めたことなんて言わないですよね?私はそんなことを冗談交じりに予想しながら、瑞希さんの答えを聞きます。
「お父さんが、転校をしなくてもいいって言ってくれらことれすー」
「そんな大事なことは素面(しらふ)の時に言ってーっ!?」
え~!?そういう結果はもっと真剣な雰囲気の中、緊張しながら聞くべきです!なのに、陽気に酔っぱらいながら前置きなく聞かされるって!何かがっ!私の予想していたものと何かが違うっ!
「あ~・・・ま、まあ良かったですよ!これで瑞希さんとまた過ごせていけますね!」
「はい~!これからもよろしくれすー!」
とは言え、瑞希さんが転校しなくて済んだのは本当に良かったです!私たちも学園祭で頑張ったかいがありましたね~!
「あれ・・・?なんだかホッとしらら、眠くなってきました~」
「おっとと。大丈夫、ではないですね。少し眠ってはどうですか?」
またふらついて倒れそうだった瑞希さんをなだめ、一度休んではどうかと提案します。酔っぱらった瑞希さんを見るのも楽しそうな気がするのですが、転んだりしてけがをしては大変です。乙女にケガなんていけませんからね!
「じゃあ・・・お言葉に甘えます~・・・」
「ん?って、お、おおっ?」
瑞希さん?私の肩には何も安眠することが出来るなんて特典は備わっていませんよ?
「少しだけ、すいません~・・・・すうー・・・すう・・・」
「ん・・・すー・・・」
「・・・だ、大人気ですね、私の肩。何かありがたみでもありましたっけ?」
両手に華、ならぬ両肩に華ですねこりゃ。妹紅さんに瑞希さん、こんな良い子たちに肩を枕にされるなんて、むしろ私がありがたみを感じます!ここで贅沢を言えば、膝に咲夜さん、あるいはレミィかフランが頭を置いてくれたらもう完璧ですね!
・・・しかしよくよく考えると、今私たちってすごい大それたことをしてません?高校生が公園でお酒を飲むって、どんだけアウトローなんですか。見つかったら大目玉に間違いありませんね。
「何やらすごいことになっておるのう、紅」
「あ、秀吉君」
両肩に頭を置かれていて動くこともできず、二人の残したジュースもどきのお酒を飲んでいると(※思い切りアウトです。意外とあなたもやんちゃだったのですね……)、向こうでしゃべっていた秀吉君が1人でやってきました。
「私は全然いいんですけどね~。秀吉君は楽しんでますか?」
「うむ。男子たちが何やらすさまじく興奮してはしゃいでおるが、楽しんでおるのじゃ」
「・・・た、楽しければ何よりです!」
それって、お酒を飲んでるからではないでしょうね?先ほど妹紅さんにやたらと熱いセクハラもしていましたが、それもお酒の影響な気がしてきましたよ?まったく!未成年だからお酒は買っちゃだめです!ルールは守って楽しみましょう!(※お酒を飲むのもダメです。)
「ところで、吉井君達はまだ来てないのですか?」
学校の机を勝手に持ち出したということで、魔理沙、吉井君、坂本君の三人は学校に残って説教を受けているのですが、時間的にはもう終わってもいいころかと思うのですがね~?
「うむ。もうしばらくしたら来るじゃろ。それまでは飲み物でも飲んで雑談に華を咲かせようではないか」
「良いですね!っと、すいません秀吉君。お茶がからですので,代わりの飲み物を取ってもらえますか?」
両肩に妹紅さんと瑞希さんがもたれかかっていますので、今の私は立ち上がることもできません。使ってしまって申し訳ないのですが、ここは一つ頼みます!
「分かったのじゃ。―――これでいいかのう?」
「すいません。ありがとうございます!」
秀吉君から渡された飲み物。さあ、味はどんな味なのか―――
『大人のグレープフルーツジュース』
「ってまた酒ですかっ!」
「え?さ、酒じゃと?」
「ええ!ほら、お酒って書いてる!」
「!ほ、本当じゃ!?」
なんだかさっきから酒の割合が多くないですか!?ひょっとして全部お酒なんてこと、ってさっきお茶を飲んでたからそれはありませんか!ともかく普通の飲み物をプリーズです!
「す、すまん!他の飲み物は……………オレンジ酎ハイ、リンゴ酎ハイ、ブドウ酎ハイ、白ブドウ酎ハイ、ハイボール、焼酎、ビール……」
「全部アルコールじゃないですか!っていうか後半はジュースと間違えられる要素がない!本当に誰ですか飲み物を買ってきた方は!」
絶対に確信犯ですよね!?これほどたくさんのお酒を持ってくるとは、かなりやんちゃな方がFクラスにいたものですね~!!
「ど、どうする?何も飲まないでおくかのう?」
「あ~……いえ。せっかくですから飲みましょう」
「!?の、飲むのか?じゃが、いいのかのう?」
非常に心配そうな顔をする秀吉君。ええ、その気持ちはよく分かりますよ?誰の目がどこにあるか分かりませんからね~。
でも、です。
「――周りもだいぶ出来上がっていますし、ここで私たちが飲まなくても、事態は変わりないんじゃないでしょうか」
「・・・・・あ~。もはや一蓮托生、というわけじゃな」
「はい。おそらく」
皆さんを止めることなどもはや不可能な雰囲気。ならば毒を食らわば皿まで!自分も精一杯堪能しといたほうがいいじゃないですか!
「というわけで、秀吉君!終わりまでの短い時間をじっくり楽しみましょう!」
秀吉君に渡された酒を開け、秀吉君に掲げます!
―――ここだけの話、私、最近たま~~に、少しだけ!ごくまれに!家で母さんとお酒を飲むことがあります!晩酌の相手と言う奴ですが、内緒ですよ!?シーですよ!?
ともかくそういう機会があって、私は結構酒に強い方らしいです!ですので、理性を失う前まで飲みますよ~!
「その終わりが、時間での終わりであることを心から願うのじゃ………よし!わしも男じゃからの!こうなったら腹を括ってやるのじゃ!」
おっ!良い覚悟ですね秀吉君!私そういう方は好きですよ!秀吉君も手にリンゴの酎ハイを取り、私と同様に掲げます!
よし!それじゃあっ!
「秀吉君!」
「うむ。紅よっ」
そして満面の笑顔を浮かべながら私たちは、カシャンと缶をぶつけました。
「二日間お疲れ様でしたっ!」
「二日間お疲れ様なのじゃ!」
さ~、こうなったらいろんな味を堪能しましょ~!!秀吉君、そのたびに悪いですが飲み物を取ってくるのを頼みましたよ~!
「あ~疲れたー。鉄人ったらあんな長く怒んなくてもいいじゃないか」
「全くだ。いてて、慧音先生も頭突きをすることなかったと思うぜ…」
「お前ら、反省の色が全くないな・・・まあ、俺も似たようなもんだが」
「そもそも坂本が誘ったのが原因じゃないか。私はむしろ被害者だ」
「そうだよ雄二。原因は雄二にあるじゃないか」
「そこまで図々しいとかえって清々しいな」
図々しいだなんて。僕は本当のことを言っただけなのに。
ようやく鉄人たちから開放された僕と雄二と魔理沙。まだ痛む頭突きや拳を受けた部分を抑えながら、皆が打ち上げを行っている公園へと移動する。結構時間が経ったけれど、まだ続いているかなあ?
「でも、売り上げは結局どうなったの?結構儲かったんじゃないかな?」
「ああ。そのノートは島田が持っているから、この後見せてもらおう」
「そっか、美波が持ってるのかー」
美波が喫茶店のお金の管理をしていたから、雄二が持ってないのも当然だった。美波は意外と数学が得意だから、そういうのは全部美波が管理をしている。美波って意外と几帳面なんだよねー。びっくりしたよ。
「お、まだやってるみたいだぜ」
「ん?」
「あ、みたいだね」
魔理沙の見る先を見ると、公園の中でFクラスらしき高校生集団がわいわいと盛り上がってるのが見える。どうやら僕の心配は無用だったみたいだ。良かった良かった。
「・・・3人共、遅かった」
「ごめんごめん、鉄人の話がちょっと長くてね」
「私は慧音先生の説教が長かったんぜ。しわが出来るだろうからやめといた方が良いだろうによ~」
魔理沙には全く悪びれた様子はない。魔理沙の言うことが本当だとしたら、身を折ってまで説教をした慧音先生は報われないなあ。でも上白沢先生なら、しわが出来ても美人な気がするけどどうなんだろう?
「先に始めてくれててよかった。待たせてたらすまない気持ちになっていたところだからな」
雄二の言う通り、こういう時は僕たちを待たないでいてくれた方がありがたい。色々とあつかましい人が多いFクラスだけど、そこに感謝をしたのは今が初めてかもしれない。
「・・・そのことで、少々問題が」
「ん?」
「え?問題?」
でも、そうは見えない気がするよ?ほら皆も楽しそうにしゃべって――
「分かってる!ウチの胸が人より小さいってことぐらい言われなくても分かってるわよっ!でも、それでも夢を見るのが人間じゃない!でしょうチルノ!?」
「確かにそうね。・・・でも、夢を見るのとそれが叶うかどうかは別のなのよさ、美波。きちんと現実を見なさい」
「うう~・・・っ!いったいウチが何をしたってのよ!こんなぺったんこにされるなんてむごい仕打ちをされるほど、悪いことなんかしてないのにいっ!」
「美波、胸なんかで女の価値は決まんないわ。大事なのはどれだけそいつが最強かってことなのよさ!美波も結構最強なんだから、胸を張りなさい!」
「う~~!張る胸なんかないけれど、ありがとうチルノ~!」
「いいってことよ!最強だから当たり前なのよさ!」
「異常事態が起こってるね」
「チルノが聞いたら怒るぞ明久」
「あいつ、たまに私らの予想を超えた存在になるよな・・・」
あのバカチルノが人の愚痴を聞いて慰めるなんてことがあるはずないし、美波が自分の胸を自虐した言葉を言うはずがない。予想以上にひどい事態が起こっているみたいだ。
「・・・これ」
「ん?ジュース?」
状況が分からない僕たちにムッツリーニが見せてきたのは、どこにでもあるアルミ缶。これがどうしたんだろう?
「って、それ酒じゃないか土屋」
「・・・そう」
「え?お酒?なんでここにお酒があるの?」
「・・・誰かが、ジュースと間違えたのかと・・・」
言われて見れば、確かに果物の絵がかいてあるからジュースにも見えなくない。僕も言われなかったらジュースだと思ってたよ。
「・・・それが大量に用意されていて・・・全員が飲んだ」
「おいおい、どんだけやんちゃなんだぜあいつら!」
「教師から説教を受けた僕らが言うのも変だけど、確かにそうだね」
未成年だけど気にすることなくお酒を飲もうとは、ある意味さすがFクラスだ。
「・・・だから、少し収拾がつかない状態――」
「おっ!来たのねあんた達っ!」
そんな元気な声が、ムッツリーニの声を遮って聞こえてきた。
「おお、チルノ。大丈夫か?俺の目には、お前の顔がだいぶ赤く見えるんだが」
「ん?顔が赤い?人間誰でも赤くなる時ぐらいあるのよさ。そんな分かり切ったことを聞くなんて、賢い坂本らしくないわねー?」
「チルノオオオっ!!意識をしっかり持つんだぁぁああああ!!」
「ゆゆ、雄二を賢いだなんてっ!?ちょっと酔っぱらいすぎだよチルノーーっ!!」
「お前ら表に出やがれおらあっ!」
さっきの相談といい雄二を賢いだなんて言い、今のチルノはお酒に呑まれ過ぎているっ!!お酒は怖いって聞くことがあるけど・・・!これほどだなんて、僕には想像さえできなかったっ!
「にしても遅かったのよさ。あんた達ずっと怒られてたの?」
「あ、う、うんまあね。僕と雄二は鉄人に魔理沙は上白沢先生にだよ」
「ふーん。それは災難だったわね。ほら、アタイからの餞別よ」
「あ。ありがとう」
僕たちに背を向けたチルノはごそごそと何かを手にして、僕たちに向き直って差し出してきた。まさかチルノに餞別を送られる日が来ようとは。
『極きれ スーパービール』
「って完全にビールじゃんかっ!」
誰がどう見てもお酒にしか見えない!これを買った奴は確信犯だ!
「あら、ビールは嫌だった?ならチューハイにしとく?いろんな味があるわよ?」
「チルノ。僕が言いたいのはお酒の種類じゃなくてね!」
「こ、小柄なチルノが酒を薦めるって、考えると相当やばい気がするぜ…」
チルノの背丈は、下手をすれば小学生ぐらい。確かにはたから見ればかなり危ない状況に見えそうだ。というか見た目関係なしに、高校生でもアウトなんだけども。
「何よ!アタイの贈り物なんかいらないっていうの!?」
「い、いや落ち着いてくれチルノ。そんなつもりはないんだが、やはり未成年の飲酒はどうかと――」
「この薄情者がーっ!そんな奴にはアタイが天罰を下してやるのよさーっ!」
「い、いっででででででぇえっ!?かっ、髪の毛を掴むなチルノオォォオオッ!」
そんな見た目小学生のチルノが、雄二の髪の毛をわしづかんで猛抗議を始めた。そんなことをされても雄二は言葉だけの静止を試みていて実力行使に移らない。なんだかんだでやっぱり雄二は、女子にはめっぽう弱いのかもしれないね。
「じゃあ雄二、ムッツリーニ。チルノは任せたよ」
「坂本、土屋。お前らの働きは忘れないぜ」
「な!?お、おいお前ら!?」
「・・・なぜ、おれまで・・・!?」
雄二たちにチルノを受け持ってもらえれば、僕たちへの飛び火は避けられる。ここは面倒見の良さそうな雄二とあんまり酔っていなさそうなムッツリーニに託すとしよう。骨なら後で拾っておくよ!
「チルノの奴、結構出来上がってんなあ。そんなに酒があんのか?」
「さあ?見た感じだとFクラス全員が出来上がってそうだけど・・・」
「もう飲み物全部が酒なんじゃないか、それ?」
よくもそれだけお酒を買えたもんだ。買った人の気前が良いのは嬉しいけれど、気前を良くする場所を間違えている気がしてならない。お菓子とかに使ってくれるのなら何も問題はないのになあ・・・
「おっ!吉井君達じゃないですかーっ!」
それでも。こういう風に陽気な声の主にとっては、とっても嬉しい贈り物となったというわけだね。
「お、美鈴。って・・・・・・お前、大丈夫かおい」
「ん~??あー、結構酔っ払ってると思いますよ今の私はー!あっはっはっは!!」
「だろうな。今の美鈴が酔っ払ってるというのはなんとなくわかるぜ」
魔理沙の言う通り、快活な笑いを上げる美鈴さんはいつもよりもかなり明るい気がする。これもお酒の効果というやつなんだろうなあ。
「それにしてもえらい遅かったですねー!そんなにお話は長引いてたんですか?」
「うん。話というより鉄人の場合は拳だったけれどね」
「あははははっ!西村先生らしいですね~!それはご苦労様でした!」
おかげさまで僕の顔はすごくはれてるよ。それを酔っぱらいながらも労ってくれる美鈴さん、僕は感激の言葉しか浮かばない。
「おかげさまで、私はその間にだいぶ出来あがっちゃいましたよ!飲み過ぎには注意しなくてはねっ!(プシュッ)」
「おい美鈴。そう言いながら酒を開けられても説得力が無さすぎるぞ?」
「おおっと、これは失敬!(ゴクゴクゴクッ)」
「お前やっぱりけっこう酔っ払ってるだろっ!」
ぐびぐびとお酒を飲む美鈴さん。ちょっとちょっと!?そんな飲んで大丈夫!?
「――――ふは~~~っ!あっ、私だけ飲んでたらダメですよね!2人も一緒じゃなくては!」
「いや美鈴さん!僕たちが気にしてるのは飲む人じゃなくて、君の飲む量だよ!?大丈夫なの!?」
「ちょっとちょっと失礼ですね吉井君!私だっておバカな吉井君に心配されないように飲むペースは考えていますよう!」
「そうは見えないし、今僕が失礼なことを言われた気がしてならないっ!」
ダメだ!今の美鈴さんに僕の言葉は届かない!なのに僕のハートにはぐっさりと届くなんて理不尽すぎるよっ!
「あ、そうそう!妹紅さんも瑞希さんと秀吉君と飲んでたんですけれど、三人共あんまりお酒に強くなかったみたいでして、あちらで休憩をされてるのですよ!2人も行きましょう!(ぐわしっ!)」
「いだだだっ!?ま、待て美鈴!そんな力を籠めなくても私は逃げない!むしろその力から抜けたくなって逃げたくなるぜ!?」
「ま、待っだ待っだ美鈴ざん!首元掴まれで引っ張られだら、僕はそこに行くんじゃなくてあの世に逝っちゃうっ!?」
掴まれなくても自分で移動できるから!って、ぜっ、全然掴んだ手をひっぺがせないだと!?美鈴さんって本当に力が強くない!?僕の男子としての立場が完全に消滅したよ!
「あ、ほらあそこです!美波さんも加わってますよ!」
「へ?み、美波さん??」
確か美鈴さんって、美波のことを島田さんって呼んでなかったっけ?僕達のいない間に呼び方が変わったのかな?
「――瑞希~、ちょっとでいいからあんたの胸をウチに寄越しなさいよ~。ウチも一度でいいから、走ったら胸が痛くなるってのを体験したのいよ~・・・!」
「無理ですよ~。それだと私の胸を移植しないといけないから、ちょっと怖いですもの~。でも、私も木下君の演技力、というか魅力がほしいですね~。木下君、出来ることならしますから譲ってください~」
「ん~。すまぬが、これはわしにとっては一つの財産じゃから、譲るわけにはいかんのじゃー」
「む~、残念です~。私もせくしぃな女の子になってみたかったな~・・・」
「わしは島田のそのたくましい性格が欲しいのじゃ。島田よ、どうかその秘訣を教えてくれんかの―・・・」
「ちょっと~、ウチが男の子みたいな性格だって言わないでよ~。まあ、ウチが美春とか知らない女の子に愛の方向で好かれるのも、それのせいなんだろうけどね~」
「うふふ、美波ちゃんらしいです~」
「はっはっは、じゃのう。実に島田らしいのじゃー」
「あはははっ。ちょっと笑わないでよ~」
「・・・すー・・・すー・・・」
美波の呼ばれ方を気にしてた僕だったけど、新しく気になることが出来たのですぐさま頭のわきにのいてもらった。ごめんね美波。
「・・・うわ~。こりゃ、妹紅以外は完全に出来上がってるな」
「今なら、姫路さんと変な形で親近感がわきそうだなあ・・・」
皆から少し離れた場所で、秀吉と美波、そしてすやすや眠っている藤原さんに膝枕をしてあげている姫路さんの美少女4人(少女は3人です)が見えたのだけど、お酒を片手に酔っぱらった風に話して笑う姿は、なんだかおじさん臭く見えた。
「3人共―っ!吉井君達が来ましたよ~!」
「ふぇ?美鈴さんに・・・あ~!【明久君】と魔理沙ちゃん!私だってもっとセクシィになれますからねっ、明久君!」
「おお、魔理沙たちではないか。お主のたくましさと清々しさも分けてほしいのう」
「アキ~。女の子ってのは胸だけじゃないんだからね~」
「あ、う、うん?遅くなったりよく分かんなかったりするけど、とりあえずごめんね?」
「なぜ私は合流してすぐに、漢気溢れる女みたいに言われなきゃならんのだぜ」
僕も姫路さんに明久君って魅力的すぎる呼ばれ方をされたり、美波にさらりと重みのある言葉を言われたりと、一度目の会話なのにもう意思疎通が出来ないような気がしてきた。新鮮な光景だけれど、淀んだ酒気が充満しているのは間違いないね。
「明久君達も飲みませんか~?この桃味のジュース、とっても美味しかったです~」
「姫路さん。僕にはそれがジュースには見えないよ?僕にはどうしてもお酒にしか見えないよ?」
「こっちの梅酒もよかったのじゃ。お主らも飲んでみるかの?」
「おい秀吉。お前は酒と認識しながら、何をおいしそうに堪能して未成年な私らに勧めてるんだ。よもやこの魔理沙ちゃんがこんな当たり前のことを、常識ある秀吉に言うことになるとは思わなかったぜ」
「ハイボールってのもいけたわよ~、ウチ的にはこの酸っぱいのが好きだったわー。あ、でもビールとかも苦さがあったけど悪くなかったかな?」
「お前はおっさんか美波っ!」
「っていうかどれだけ飲んだの美波!?だいぶ顔が赤くなってるけど大丈夫!?」
・・・って、3人の近くに何か結構な数が転がってるけど、ひょっとして飲み終えた空き缶とは言わないよね!?色んな種類の缶がべコリと折られて集められて、全部集めたらちょっとした缶の丘が出来そうだよ!?不安だ!この美少女たち(※一人は男子です)の将来が少し心配になってきたよ!
「あら~?アキったらウチの心配してくれてるの~?」
「ちょ、み、みみ美波っ!?なんだかとっても顔が近いよ!?」
横から美波が急接近してきた!?だ、だから女の子からのあつい吐息が…!って酒くさっ!?酒くさい吐息って!せっかくの機会だけどなんだか複雑だよ美波っ!?
「むー!?美波ちゃんっ!明久君が嫌がってますから駄目ですよ!!」
「ひ、姫路さん!」
僕の心配をして美波に注意してくれてありがとう!その気遣いは本当にありがたい!
「ん?あ~、ごめんねアキ。近づかれるのは嫌だった?」
「むしろもっとしてほしいと僕は思うっ!!」
でも嫌がっているというのは勘違い!僕としては思い切りご褒美ですっ!
「ん?そお?だってさ瑞希~」
「む、む~!じゃあ、私もですっ~!」
「え、えええええっ!?」
み、美波と反対側から姫路さんも大接近だって!?どど、どうしよう!?これって夢!?僕は今人生で一番最高な夢を見てるんだけど、僕は明日死んじゃうの!?これが僕の死ぬ前の冥土の土産!?
(※現実ですし、冥土の土産に『夢』というのは果たして良いのか悪いのか…)
「おお!モテモテですね吉井君~!さてまあ新しく2人も来たことですし、また乾杯をしましょう!」
「そうですねー!明久君、やりましょう!」
「アキ、飲み物を持ってるんだからちゃんとするのよ!」
「うむ。ぜひしようではないか」
「ま、そうだな~。せっかくだし乾杯するのが筋ってものだぜ」
魔理沙の言う筋ってものがどうなのかは分かんないけれど、女の子に勧められて断るなんて、男として失格!男吉井明久、喜んで皆の要望に応えようじゃないかっ!というか答えさせて!
「も、もちろんっ!じゃあ乾杯し――!」
「よしー!あんたなにアタイと乾杯せずに勝手に乾杯するつもりよさーっ!」
「よっぷらぁ!?」
「はわわ?」
「わっとと?」
やっぱり世の中は上手くいかないようにできていたんだね。この空気を読まない言葉と攻撃とバカな声!バカチルノに違いないなっ!
「チルノォ!なんてことをしてくれるんだよーっ!?せっかく僕がいまだかつてない幸せな時間を過ごしていたっていうのに、それを壊すとは君の血は何色だあああ!!」
「バカねっ!人の血は赤色に決まってるのよさ~!そんなことも分かんないなんて、よしーはやっぱりよしーね!」
「おのれ!僕の名前を『バカ』って意味で使うんじゃないよ!それは全国にいる吉井家の人々に対する挑戦だっ!」
「だったらこうね!『よしーはやっぱりよしいなんとかね』、よ!」
「それさっきまでと全然変わってないから!っていうか僕の名前を覚えてないの!?僕の名前は吉井明久だって!しっかり覚えておいて!」
僕だって仕方なく君の名前を憶えてるってのに!チルノ・メディックだっけ?君だって医療班みたいな名前じゃないか!
(正. 『チルノ・メディスン』です。 何が『だって』なのか分かりませんし、そもそも名前を間違えています。なまじそちらの方が知らないよりひどい気がしますが・・・)
「あきひさ~?何よつまんない名前ね。もっと面白い名前かと思ってたのよさ」
「何を!?僕の名前のどこがバカなんだっ!」
「いや、バカとまでは言ってないだろ」
「素敵な名前だと思います~」
「悪い瑞希。私は正直普通だと思うぜ」
「こらこら魔理沙。どんな名前でも大事な名前なんですから、そんなことを言ったらダメですよー、ごくごく」
普通って言われるのも何か悔しい!1人はお酒を飲みながらだけれど、姫路さんと美鈴さんの言葉だけはすごく心を癒してくれるねっ!
「まーつまり、『よしーはやっぱりよしいあきひさね』って言えばいいのね。まったく面倒な言い方なのよさ」
「そう言えばそういう話の流れだったね!もう好きに言っていいよもう!」
代わりに今度からチルノのことをバカチルノって言ってやるからな!せいぜい覚悟しておくんだよっ!(※すでに幾度と使ってます。)
「よし!じゃあめでたくよしーの呼び方も決まったことだし、乾杯するわよあんた達!」
「もともとそのつもりだったのに、邪魔をしたのはチルノでしょっ!」
そして乾杯する理由がひどすぎる!チルノなんか向こうでアホ男子たちとわいわいお酒を飲んでればいいんだっ!
「オッケーですチルノ!では皆さん、不肖私めが音頭をとらせて頂きますよーっ!」
「・・・・ぁむ・・・うるさいなぁ・・・」
あ、美鈴さんの声で藤原さんが目を覚ました。くしくしと寝ぼけ眼をこすって体を起こす藤原さん。それを見れただけでチルノへの不満が全部消し去った。
「お!起きましたか妹紅さん!ささっ、妹紅さんもせっかくですから何か飲み物を!」
「・・・水がいい・・・」
「水ですね!えっと、美波さん!」
「はいは~い。妹紅、これでいい?」
「・・・・・・ん」
美波がそう言って差し出したのは・・・色は透明だけれどアルコールは濃いであろうお酒。ちょちょ!?美波、酒か水かの判断ぐらいは出来ないとまずいって!ほら、藤原さんがもっと不機嫌な顔に!
「・・・ありがと」
「へ?」
「ううん、どういたしまして!」
「え?」
え?水じゃないでしょそれって・・・あ、あー。なるほど。よく見ると藤原さんの顔も、周りの皆と同じで少し赤い。これだけで理由は十分だね。
「では妹紅さんにも行き渡ったことですし!改めましてっ!」
美鈴さんは特に気づいた様子もなく、手に持った缶を掲げて、笑顔で皆の顔を見渡した。どうやらようやく挨拶のようだ。チルノのせいで回り道をした気分だねまったく。
「え~と、では!昨日今日と続いた学園祭!色々とありましたが上手くいけたことにっ!そして何より!瑞希さんが転校せずに文月学園に残ってくれるということに!」
「えっ!?ほ、ほんとそれ!?」
「まじかよ!?やったな瑞希!」
「やかましいわよあんた達っ!今メイリンが乾杯しようとしてんだから黙りなさい!」
「いだっ!?」
ゆ、優先順位!チルノ、君は先にすませなければいけないことの順位を間違えているぞっ!君は姫路さんが引っ越さずに済んで嬉しくないのかーっ!
「この学園祭への取り組みに関する取り組み!皆さんお疲れ様で~~~す!!」
「お疲れさまで~す!!」
「お疲れさま~!」
「お疲れ様なのじゃ!」
「お疲れなのよさ~!」
「……お疲れさま」
美鈴さん、姫路さん、美波、秀吉、バカチルノ、藤原さんが声を上げてねぎらいの言葉を掛け合った。
・・・そうだね。姫路さんの話は後にして、今はこっちの方が大事かな。まったく、チルノめ。君の言葉に従ったわけじゃないからね?僕の意志に従っただけなんだから!
「じゃあ、魔理沙」
「おう、吉井」
この場で唯一酔っぱらっていない魔理沙に声をかけて、僕らは同じ言葉を叫んだ。
「「お疲れさま(だぜ)っ!!」」
さてっ!じゃあ僕もいっちょ男を見せて、皆よりもお酒を挑んでみようかな!っとまずは姫路さんと話だね!
僕はお酒を少しだけ口にしてから、姫路さんと話すために彼女の近くへと移動した。
「それでですね~。吉井君のことを下の名前で呼ぶ人がいっぱいいますから、私も呼んでみたいと思ったんです~。・・・ダメ、でしたでしょうか・・・?」
「へ~、そうだったのかー。僕は全然嬉しいから大歓迎だよ~!」
「そうですか~?良かったです~!」
「うん。どんどんそう呼んでくれていいよ!ごくごく」
「わっ。明久君ってば一杯飲むんですね~」
「またまた姫路さんったら~。まだこれで一杯目だよ~!」
「あははっ、そうでしたね~!足元にいっぱいありますけど、明久君が言うんでしたらそうですよね!」
「んでよ~・・・アリスの奴ったら、私が召喚大会に出た理由が金のためだとか言うんだぜ?ひどいだろ~?金より大事なものはちゃんとあるってのにさー・・・」
「へ~。魔理沙って美春と似た感じなのねー。あの子よりは行動が激しくないから、ウチとしてはほっとするわ~」
「魔理沙も色々と苦労してんのねえ。ほら、今日はアタイと飲むのよさ。きっとそのうちいいことあるわよ」
「う~ん。不覚にもなんかチルノが頼もしく見えるぜ~」
「バカね~。アタイはいつだって最強よ~」
「ふぃ~。皆さんもだいぶ出来上がっていますねー。よっこいしょ」
おっとと、全く人のことを言えませんね。意識ははっきりしてますが、身体を動かすのが億劫です。お水を買って戻ってくるのも一苦労です。お酒とはなかなか曲者ですね~。
「うー・・・メ、美鈴・・・、水、ちょうだい・・・」
「ああ、はいはいどうぞ妹紅さん」
ベンチに寝転がっている妹紅さんの頭を失礼して、私の膝を下に挟んでからペットボトルの水を開けます。どうも気分が悪いみたいなので、飲み口を口元に近づけて飲ませてあげましょうか。
「んくんくんく・・・っ」
おお、結構飲みますねー妹紅さん。あっという間に半分ですよ。
「ぷはっ。・・・ありがと。すごい助かった」
「それはよかった。では私も失礼」
残った水を残すことなく飲み干します。くぁ~!お酒を飲んだ後の水ってこんなおいしいと思うものなんですねー!
「ふ~・・・どうです妹紅さん?この打ち上げ、妹紅さんは満喫してますか?」
始まって時間がだいぶ経ったので、思い切って聞いてみます。妹紅さんはこの時間中に結構寝ていたのですが、起きている時間の間だけでも満喫されたのか、はたまた不快となったか。いったいどうなのでしょうか・・・?
「・・・・・・まあ・・・本当に、濃いクラスだとは思った」
「くはっ!な、なるほどそれは否定できませんね~」
思わず吹き出しちゃいますけど、実に的を射た言葉でございます。Fクラスとはまさに混沌の魔窟でございますからね~。
「・・・でも・・・・・・嫌な気持ちはない・・・・かも・・・」
「ん、それは良かったです」
「・・・・前の学校じゃ・・・もっとひどかったし・・・」
「え・・・・・・・・そうですか・・・ご苦労様です、妹紅さん」
・・・・・酔った影響か、さらりと、あっさり聞き済ますべきではないであろう一言をつぶやく妹紅さん。
非常に気になりましたが、本人の状態だと、自分の意志で言ったかがかなりあいまいです。ここは、聞き逃した方がいいでしょう。そこにどんな思いがあるのかなんて、私は全く知らないのですからね。
代わりとは言えないでしょうが、その言葉を聞いて思わず私は、触るもの全てを透き通すかのように柔らかい妹紅さんの白髪を撫でました。
「・・・ん」
おお。怒られるかと思いましたが、そんなこともありませんでした。お酒のせいか、はたまた昔の話をして母さんの手だと勘違いしたか?おそらく前者でしょうが、感謝をしなくてはね。
「紅よ」
「!はい、何ですか秀吉君?」
おや?近づいてくる秀吉君の顔は何かを伺うような顔です。
「ぇ・・・え、と・・・お主もわしのことを秀吉と呼んでおるから・・・美鈴と呼んでいいかのう?」
「ん?え、ええそれはどうぞどうぞ!全然大歓迎ですよ~!」
え、えらい突然ですけど何も構いませんとも!私は下の名前で呼ばれる方が好きですからね~!
「そうか。で、では、改めてよろしくなのじゃ・・・、メ、美鈴よ」
「はい、こちらこそよろしくです秀吉君!」
そんなこともありながら、私はバカ騒ぎをする皆を眺めたり、たまに飲み物を口にしながら時間を費やしました。
そして、楽しい時間はいつかは終わるものでして・・・
「おい、美鈴」
恐ろしい時間と言うものがやってくる・・・というか、待っていたわけです。
「は・・・・はひ。な、なななに?かかっ・・・・か、母さん?」
「スー・・・ス―・・・」
近くから聞こえる妹紅さんの寝息。そんな可愛らしい仕草も、目の前に仁王立ちする彼女には全く効き目がありませんでした。
「――――っこんのバカ娘がぁああああ!何を無理やり妹紅に酒を飲ませて酔い潰させてんだぁああああ!!」
「ひいいいいいっ!?ごご、ごめええええんっっ!ででもわざとじゃないわ母さん!!わっ、私も最初は酒だって気づかなかったのおおおお!」
鬼神と化した母さんに、全身全霊で謝罪と言い訳を始める私!じゃじゃ、じゃないと私はあの拳骨の餌食に・・・!それだけはいやあああああ~~!
「そこはすぐに気づけっ!ったく、昔の私みたいなことしやがって・・・!そんなところを真似するんじゃないよバカッ!」
「ちょ!?で、でも母さんもやってたんなら同じじゃない!?だったら母さんに怒る権利なんてないでしょ!?」
「!だ、黙りなドアホッ!とにかく、いくら故意じゃなかろうが妹に酒を飲ますバカな姉にゃあけじめってもんをつけさせるっ!覚悟しな美鈴んっ!!」
「ええええ!?そ、それを言うなら娘(わたし)と一緒にお酒を飲む母さんもでしょ!?私だけ怒られるなんてずるいずる、っていたたたたいたいたいたい~~!!いや~~~~っ!ごめんなさい母さんんんんんんんんっっ!!」
「あわわあぁ・・・!わ、私、お母さんが怒ったところ初めて見た・・・!怖い!お母さん、す、すっごく怖いよ!」
「しゃ、しゃくや~!お母さん怖い~~!!」
「だ、大丈夫よ2人とも。お母さんは美鈴を怒ってるんであって、2人を怒ってるんじゃないわ!ちょ、ちょっと今回は美鈴が悪いから仕方ないけど・・・2人はお母さんを怒らせたらダメよ?」
「あうう・・・う、うん。・・・美鈴、大丈夫なのかなあ・・・?」
「!も、もうっ、美鈴に会えないのっ!?ふ、ふぇえっ・・・!!」
「そ、それは大丈夫よ!お母さんもそんなにひどいことはしないだろうし・・・美鈴もあれで、タフな性格だからね」
「・・・う~~ん…美鈴~・・・水~・・・」
――そんなこんなで。学園祭最後の日、私は、久しぶりに母さんから熱~いゲンコツとその他もろもろを頂戴して、涙ながらに過ごすことになりました。
しくしくしくしく・・・別に母さんとお酒を飲むのは楽しいからいいけど、やっぱり私だけ怒られるのは納得いかない!母さんだって同じことやってたみたいなのにずるいわよ~~~~~~っ!!!
お読みいただきありがとうございます!これにて見事、学園祭編はフィニッシュでございます!
ヒロインたち皆さんの普段とは違う一面や、秀吉や妹紅さんのと美鈴さんのやりとり、そして美鈴さんと勇儀さんの母子のやりとり場面!他にも色々と書いてみたりして、充実した内容ではないかと思っていたのですが、いかがでしたでしょうか?
さて、1つの章が終わってしまうとまた次の章に行くことになるのですが、実は最近、やることが出来たり新しく買ってしまったゲームにはまっているなどで、文章作成がものすご~く遅くなってしまっているのです。前者についてはともかく後者については我慢しろよ!と自分でも思うのですが、非常にお恥ずかしい!
そういうわけでして、次の投稿はある程度話が固まってから投稿をさせていただくことにします!楽しみにしてくださっている方、読んでくださっている方々、本当に申し訳ありません!これもまだいつだとは言えませんが、気長に待ってくださることを願いまして、この報告をさせていただきます!
それではまた次回までっ!感想や思ったこと、雑談などがございましたら遠慮なく送ってください!投稿はしなくてもハーメルンの方は見ておりますので、遅くなっても必ず返信させてもらいますから~!