今回はいつも通り、美鈴さん視点での文となっております!しばらく魔理沙視点はお休みになるかもしれませんが、その時を待っていただければありがたく存じますっ!
それでは。
―――ごゆっくりお読みください。
「あの、吉井君と魔理沙は何かあったんですか?」
「あ~。明久は分からぬが、魔理沙については……まあ、うむ」
「な、何かがあったわけですか。まあ、じゃないとあんな風にはなりませんよね」
「………ものすごく辛気臭いな…」
「ですね妹紅(もこう)さん。いつもの2人の顔とはかけ離れてますよ」
いつもと変わることなく迎える朝。
居候兼妹の一人である、雪のように白い髪の毛が素晴らしい藤原妹紅さんと一緒にFクラスに入った私、紅美鈴の目に留まったのは、沈んだオーラを出す吉井明久君と、これまた深いため息を連発している霧雨魔理沙の2人。
いつも元気な2人だけに違和感が強く、周囲の皆さんも気にした様子で二人をチラチラ見ているでありますよ。
「……でも、あの方が静かで助かるかも……」
「藤原(ふじわらの)。それじゃと明久と魔理沙の人格が否定されとるのじゃが…」
「…………い、今のは秘密で…」
「こやつ本気で否定しておったのじゃ!?」
「ち、違いますよ秀吉君!ただ妹紅さんはもう少し静かにしてほしいな~って思ってるだけですよ!ねぇ!?」
「そ、そうっ。………別に、体に思い切りくっつきながらからかってくるのをやめてほしいとか、変なことをやって先生に拳骨されて授業が進まなくするのはやめてほしいなんて思ってない」
「…いや、それは思って正解だと思います」
「…すまん。あやつらの友人として心から謝罪させてもらうのじゃ」
後者に関しては、このクラスの大半のメンバーも原因ですね。ほとんどが先生の拳骨を一度は受けたことがあるのではないでしょうか。
まあそれはともかく、今の吉井君達の沈み込みようには興味をひくものがあります。さっそく本人に聞いてみましょう。
「吉井君。いったいどうしたんですか?」
「まったくじゃ。何があったのじゃ?」
「べ、別になんでもないよ。あははっ」
「は、はあ……」
「……あんた、ウソ下手だな…」
妹紅さんの言う通りです。ごまかしてるつもりなんでしょうけど、むしろ『僕は今隠し事をしてるよ~』って伝えてるようにしか思えません。
小学生でももっと上手くウソを隠せるような気も・・・・あ、しませんね。だってレミィとフランはあわあわしたり視線をおろおろさせますもの。うん、可愛い!
「ウソでしょアキ。さっき窓からアキの叫び声が聞こえたし、何を隠してるのよ?」
「お、美波さん」
「あ、おはよう美波」
新たに話に入って来たのは、ポニーテールと活発的な顔がグッドな島田美波さん。どうやら吉井君に何かあったときには学校にいたみたいですが、窓からって。いったい君はどこで叫びをあげたのですか。
「おはようアキ、美鈴、妹紅、木下。で、アキは何を隠してるの?」
「や、やだなあ美波。僕は別に何も隠してないよ?ほら、僕のこのウソ一つ見当たらないキレイな眼差しを見て?」
「・・・うん。瞳がウソ一色で塗りつぶされてますね」
「ウソばっかりじゃないそれ」
「表情だけでなく瞳にもウソが出ておるのじゃな……」
「……すごい分かりやすいな」
「ウソォッ!?」
それは本当ですよ吉井君。私たちはそんな彼を見て呆れて笑うことしかできませんでした。
「で、アキ。何をそんなに必死で隠そうとしてんの?そろそろ言ってくれてもいいじゃない」
「み、美波本当だって!僕はウソなんか付いてないよっ!?」
「まだウソを諦めんのじゃな」
「吉井君も意地っぱりですね」
「もう、なんでそんなに言いたがらないのよ?・・・そんなに大事なものなの?」
「そ、そうなんだよっ!だからあんまり見せたくないというか…!」
「やっぱり何かあるんじゃない」
「思い切り自爆しましたね」
「そこは持ってないの一点張りで良かったじゃろうに・・・」
「はっ!?ずっ、ずるいぞ美波!!」
「今のはあんたが悪いだろ……」
「アキ。いったい何を隠してるの?あんまり言わなかったらどうなっても知らないわよ?」
うまく言質を取った美波さんはさらに吉井君へと詰問します。ここまで秘密にされたら気になってしまうのが人の性。私も秀吉君も、そして妹紅さんまでもが気になって吉井君に先を言ってと目で訴えます。さあ、いつまでも黙って苦しまずに言って楽になりましょうよ!魔理沙みたいに悪いようにはしませんから!!
「う………………じ、実はね?僕宛てに手紙が来たんだよ」
『手紙?』
私たちの雰囲気にとうとう観念したらしく、吉井君は静かに、だけど私たちには良く聞こえる声で何があったのかをつぶやきはじめました。
「手紙……って。まさか、またラブレターをもらったのアキ!?」
ドスドスドスッ!
「ひぃ…っ!?」
「美波、もう少し声を小さくしよう。周りの皆がラブレターと聞いてカッターやコンパスの針を畳に突き刺し始めたよ?」
「こら皆さん!!妹紅さんが怯えてるからさっさと凶器をしまいなさい!!」
このクラスの男子はクラスメイトの幸せを心から憎むのが常識なのだとか。だからと言ってこうも犯罪行為をいとわないとは・・・相も変わらぬクラスメイトの行動に私は深くため息です。はあ~・・・
「どうなのアキ、やっぱりラブレターなの?」
「ち、違う違う!僕も最初はそう思ったけど違ったんだ!だからそれ以上ラブレターって言わないで美波!そろそろ僕の命が危うい!」
「じゃあなんのお手紙だったんですか?」
背後で物騒な道具をこれでもかと準備し始めたおバカ達に警戒しつつも、私は質問します。
このままだと、前に吉井君がラブレターをもらった時と同じ事態になりそうですからねー。私はもうクラスメイト担ぎも保健室運搬も鼻血浴びるのもこりごりなんですよ!だから早く何の手紙かはっきり言ってやってくださいな!
「え~と、実は、僕がもらったのはきょ……」
「・・・『きょ?』」
「『きょ』、何よ?」
なぜか二言で固まる吉井君。『きょ』、『きょ』…………まさか、『脅迫文』とか言いませんよね?私の頭は『きょ』で始まる手紙はそれしか思い浮かばなかったのですけども……。
非常に不安に思いつつも、吉井君からの答えを待つこと数秒。
「きょ………競泳用水着愛好会の勧誘文だったんだよ!」
「相変わらず私の常識をぶっ壊しますね君は!?」
いったい何があればそのようなところから手紙をもらうことになるのか。多分ウソでしょうけれど、ウソをつくにももっと別のものがあるでしょうが!逆に正直に言うより事態が悪化しませんか!?主に吉井君の人格についての方面で!
「ほ、本当なのアキ?」
「も、もちろん本当さっ!」
「そ、そうなんだ…」
ほら、さっそく美波さんの顔がひきつってますよ。ああ、彼女の中で吉井君の評価が……
「ア、アキは入会するつもりなの?」
「ま、まあねっ!前から気になってたんだ!」
「へ、へ~………。ちなみに、競泳水着のどのへんに興味を持ったの?ふ、普通の水着じゃなくて競泳水着だなんて…」
「そ、それは……………密着具合かな」
「君は変態ですか」
「うわ、きも……」
とうとうおとなしい妹紅さんからもダメ出しが入りました。虫けらを見るような彼女の目の中では、季節外れのブリザードが発生している模様です。
「まあ待つのじゃ美鈴、島田、藤原。こやつの言っとることは十中八九ウソじゃぞい。明久にそんな趣味はない……と思うのじゃ」
「ええっ!?すごいリアルなウソだったから危うく騙されるところだったじゃない!」
「傷ついたっ!美波と秀吉に少しでも僕が競泳用水着に興味を抱いてるって思われた事実に、涙がこぼれるぐらいに深く傷ついたっ!」
「ま、まあまあ吉井君。個人の趣味は個人の自由です。ですからたとえエッチな趣味でもダメということは―」
「そのフォローは僕をよりはずかしめてるよ美鈴さん!ぼ、僕は人に言えないようなスケベな趣味は断じて持ち合わせてないからねっ!?」
「ウソですね」
「ウソじゃな」
「ウソね」
「…………」
「皆なんて大嫌いだっ!あと藤原さん!せめて何か言葉をっ!黙ってごみを見るような目は精神的にきついから、出来たら温かい言葉でのコミュニケーションを僕は所望するよっ!」
いや、この状況で温かい言葉は無理でしょう。良くてぬるめ、悪ければ氷点下の言葉に間違いないです。どうやらそのどっちも妹紅さんはしないみたいですけれども。
「で、結局その手紙はなんだったんですか?」
「そうよアキ。そろそろ言ってくれないと本当に怒るわよ?」
そして話はふりだしに。美波さんもウソをつかれたとあって少し不機嫌そうです。まあここまで引っ張られたらどうしても聞きたくなりますよね~。私も最悪実力行使をしてでも知る気満々であります。
そんな私たちに、とうとう吉井君は観念しました。
「う…う、うん……実は今朝、僕あてに脅迫文が届いたんだ」
『脅迫文?』
「は、はあ・・・そうなんですか……」
まさかの予想大当たりでしたよ。ドラマとかでしか見ないであろうものをこの目で拝む日が来るとは、ついているのやら不運なのやら・・・。
「アキ、それって誰から?なんて書いてあったのよ?」
「えっと、誰からなのかは分からないけど、これには『あなたのそばにいる異性にこれ以上近づかないこと』って書いてあるね」
「異性に近づくな・・・ですか」
「……なんだ、その脅し…」
心配6割、犯人への怒り四割な表情の美波さんの確認に、ポケットから紙を出して吉井君は答えました。ええと、妹紅さんは要求の意図が掴めなかったようですけれども、要するに女の子と関わっちゃダメってこと、ですよね?
・・・私、妹紅さん、美波さんの三人とこうやって会話している時点でその要求は蹴ったことになる気がしますけど、相談ということでセーフと願いましょう。
「ふむ、その文面から察するに、手紙の主は明久の近くにおる異性に対してなんらかの強い意志を抱いておるな。つまり――」
「うん。手紙の主はこのクラスにいる女子、つまり姫路さん、美波、秀吉、美鈴さん、藤原さんと魔理沙の誰かに好意を寄せているヤツだってことが分かる」
「なぜそこでわしが出て来るのじゃ」
「チルノの名前がなかったわよ」
「性別の扱いが見事に逆ですね」
「……もう、わざとじゃないのかそれ…?」
いや、このおバカはたぶん本気ですよ妹紅さん。それだからなおさら困ったものなのですよ~。
「で、吉井君。脅迫されてるという話ですけど、どんなネタで脅されてるのですか?」
「あ、そういえばまだ知らないや。なになに、『この忠告を聞き入れない場合、同封されている写真を公表します』か。写真って、こっちの封筒に入ってるやつかな?」
ワンサイズ小さい封筒を中から取り出し、吉井君は中身を取り出しました。
すると、中から出てきたのは三枚の写真。吉井君はさっそく一枚目を確認します。
「こ、この格好は・・・っ!?」
「あらまあ。いつの間にこんな格好を?」
写っていたのは、白い前かけが映えているメイド服姿の吉井君。・・・い、意外と似合ってますね・・・もしかして私よりも可愛いんじゃ!?おのれ!私の敵は秀吉君の他にもいたのですかっ!!
「前の学園祭のとき、Aクラスに行った時のものじゃな。こうして見るとやはり似合っているのう」
「そうね。アキ、なかなか似合ってるじゃない」
「ほ、褒められたって全然嬉しくないよ2人ともっ!褒めるならもっと他のところを褒めてよ!?」
「……でも……似合ってる気がする……」
「藤原さんもっ!?」
「ですよね~。これなら女子制服を着ても違和感はなさそ・・・はいウソです!今のはジョークですからそんな信用していた人に裏切られたみたいな泣き顔はやめてください!?」
「うう…ひどいよ美鈴さんまでっ!男である僕を女の子みたいに扱うだなんて!君のことを信じてたのに!」
「普段秀吉君のことをどう扱ってるのか思い出しましょうか!?」
「まったくもってその通りじゃ!!」
美波さんと妹紅さんもコクコク。まったく、さんざん秀吉君を女の子扱いしている君がいったいどの口でそれを言えるのでしょうか!?
「う……じゃ、じゃあ次の写真に行こうか!さあめくるよ!?」
「……逃げた……」
妹紅さんの言う通り、吉井君はごまかすように2枚目の写真をめくります。
「……って、うわぉ」
「……うわ………(スッ)」
「ア、アキの………っ!(カアァァ)」
「パ、パンツが見えておるのう」
2枚目の写真には、メイド姿の吉井君のスカートがめくれて青いトランクスが見えている瞬間が写されていて、思わず妹紅さんは目を逸らし、美波さんは顔が赤くなっちゃいます。それほどあらわになっているわけではないのですが、青色というのが目立ってしまい、非常に目が行きやすく……ん?
「――だからセーフ、トランクスだからセーフ、トランクスだからセーフ、トランクスだからセーフ……!」
「ア、アキ!?ちょっと!大丈夫なの!?」
「お、落ち着くのじゃ明久!大丈夫ならば自我をしっかり保つのじゃ!!」
「だ、大丈夫です吉井君!見えてると言ってもほんのちょっと見えてるだけで、それほど致命傷ではありませんっ!」
「少しでもパンツが見えてるのが問題なんだよっ!たくましい美鈴さんには分からないだろうけど、僕にとってはこれでも生き恥になるんだ!!」
「フォ、フォローしてあげてるのに誰が恥じらいなしだコラァッ!?」
「ま、待つのじゃ美鈴!そこまで明久は言っておらん!ただし、し、下着を見られても気にしないと――」
「気にしますよ!?パンツやブラジャーを見られたら当たり前に気にしますからねっ!?」
私って変態か何かと思われてるの!?ちゃんと吉井君以上に女の子としての恥じらいを持っとるわ!
「……この前、風呂上がりで暑いからってずっと下着でいたのに……」
「え、そうなの妹紅?」
「……(コク)。あいつの言ってること……あながち間違ってもない」
「へー。ま、ウチも少しの間そんな恰好で家の中にいた時もあったわね~」
「……ふーん……」
「妹紅さんっ!プライベートな話を勝手に暴露しないで!?」
あ、あれは仕方なかったんです!!母さんは熱~い風呂が好きで、私はそのあとに入ったからすごく火照ってたんです!け、決して涼しいからとか良いわ~とか、家の中だしまあいいや~なんてことは思っていません!
「あ、ああもう!その話はもうやめて最後の一枚を確認しましょう!これ以上騒ぐと怒りますよ!?」
「「……逃げた(わね)」」
「そういうところがたくましいと言われるのではなかろうか……」
逃げてません!一枚目二枚目と過激な写真の最後がどんなものかが気になっただけです!あと秀吉君!そういうところってどこですか!私は言いたいことを言ってるだけです!(※ですから、『そういうところ』です)
「う、うん。じゃあ最後の一枚を……(ピラッ)」
吉井君は私の急かしに応え、最後の一枚をめくりました。
「………あ~」
「こ、これはちょっとウチも………」
「なんと……」
「………うわぁ……」
―――そこに映っていたのは、着替え中なのか着崩れた状態のメイド服姿で、ブラジャーを持って立ち尽くしている吉井君。
も、もはや変態以外の何者でもねぇ・・・!
「もうイヤァァアアアァアアアア!!」
「お、落ち着くのじゃ明久!着替えは誰でもするし、メイド服ぐらい誰でも一度は着るものじゃ!!」
「いや私は一度も着たことがありませんよ!?そして今気にするところはそこでありませんよね!?」
「ちょ、ちょっとアキ!周りの皆が見てるから、いったん落ち着きなさい!!」
「見ないで!こんなに汚れた僕の写真を見ないでぇー!!」
「……こ、こっちだって見たくない……!」
決定的瞬間を撮られた吉井君の胸はいかほどか。私たちは取り乱す吉井君を必死になだめました。
「はぁ、はぁ、はぁ……。なんて恐ろしい威力だ。これは僕を死に追い詰めるための卑劣な計略と言っても過言じゃない……」
「だ、大丈夫よアキ。アキが変なことをやるのなんて皆知ってることなんだから、メイド服ぐらい誰も気にしないわ」
「待った美波!僕がいつも変なことをやるというのは認めないでもないけど、そこにメイド服を着るなんて変態な行為を加えないで!!僕だってこれを着たのは炭酸をなめる気持ちだったんだっ!!」
「……炭酸?」
「おそらく、〝辛酸(しんさん)をなめる〟のことですね」
「味わったものがじゃっかん薄くなっておるのう」
「……つらさが減ったな」
まあ言いたいことは伝わるんですけどね~。吉井君、今度から熟語の勉強も頑張りましょう!
「みっ、みっ……皆さん、おはようございま、すっ…」
「おっすあんた達!なんの話をしてんの?」
そんなことを思っていると、なぜか息の上がった声と、元気溢れる声が私たちにかけられました。
「あ、おはようございます瑞希さん、チルノ」
「お、おはよう姫路さん!って、なんだか辛そうだけど大丈夫?」
「あ…は、はいっ。ちょっとそこまで……」
「ちょっと!?アタイに挨拶をせずに無視するなんて、良い度胸ねバカよしーっ!」
「誰がバカよしーだよ!今は姫路さんの体調の方が心配なんだから仕方ないじゃないか!あとでチルノには挨拶をしようって思ってるんだからむしろ感謝してほしいねっ!」
「はっ!誰がバカよしーに感謝するのよさ!バカよしーに感謝するなんてアタイのブラインドが許さないわ!!」
「それを言うなら『ブラインド』じゃなくて『プライド』だよ!このバカチルノッ!」
「だっ、誰がバカよさぁあああ!?」
「君のことだこのバカチルノがあああ!!」
「はぁぁぁぁ……2人は相変わらずですね」
「明久もチルノもバカという言葉に過敏じゃからのう。やむを得んのじゃ」
吉井君とゴングを鳴らした少女の名前はチルノ・メディスン。すごく小柄で可愛らしい姿からはまったく想像ができないほど活動的な女の子で、一日一回は吉井君と火花を散らし、担任の西村先生からゲンコツをもらっているおバカ問題児の1人でございます。
「もー、またあの2人は…ま、とにかくおはよー瑞希。今日は遅かったわね?」
「は、はい。と、途中で忘れ物に気が付いて一度家に帰ったので、ギリギリになっちゃいました。そっ、そうしたら、途中でチルノちゃんと出会って…」
「なるほど、それで一緒に来たってわけか。そりゃ~災難だったんだぜ瑞希」
「い、いえっ!チルノちゃんと一緒に来たのはとっても楽しかったです!すっ、少し走るのがつらかっただけで、嫌だったなんてことはありませんよ!?」
「ああ、だからそんなに息が荒いんですか」
「律儀に一緒に走ってあげたのじゃな」
「……相変わらずだな……アンタ…」
そういう理由で息を切らす女の子は姫路瑞希(ひめじみずき)さん。体力にはあんまり自信がないと言っていたのに、律儀にもチルノの行動に付き合ってあげる彼女は〝優しい〟の一言に尽きます!このアグレッシブなメンバーが集うFクラスの中において、まさにオアシスのような存在ですね!
「あ、あはは……と、ところで皆さんは何の話をしてたんですか?なんだか集まってるみたいですが……」
「ああ、えーとですね……」
ふむ。ここは一つ、ただ説明するのではなくて瑞希さんの意見も聞いてみましょうか。ひょっとしたら吉井君も瑞希さんの言葉を聞くと落ち着くかもしれません。まあ、今は別の理由で暴れておりますが・・・
「瑞希さんは、もしも吉井君のメイド服姿の写真があったらどうしますか?」
「え?吉井君のメイド服姿の写真ですか?」
「ええ、はい」
「う~ん、そうですね・・・・」
私の質問に瑞希さんはしばし目を閉じて、少ししてからぱちりと開けます。
「もしそんな写真があったら――――とりあえず、スキャナーを買います」
そして出てきたのは、失礼ながらも全く理解できない妙ちきりんな答えでした。
「は?ス、スキャナーですか??」
「スキャナーって、パソコンに絵とか写真を入れたいときに使う機械…よね?木下」
「う、うむ。概(おおむ)ねそうだったはずじゃが……」
「……なんで、ここでスキャナー…?」
「ど、どういうこと姫路さん?」
私をはじめ、秀吉君達やチルノと取っ組み合いながらも聞いていた吉井君は真意が分からず、頭に疑問符を浮かべながら瑞希さんへと説明を求めます。
「だ、だって、その―――」
視線を集めた彼女は何かが恥ずかしいのか、顔をピーチに、体をもじもじさせながら
「そうしないと、明久君の魅力を全世界にWEBで発信できないじゃないですか……」
「瑞希さんお気を確かにいいいいぃぃっ!?」
「……い、一番むごい対応だぞ…っ!?」
「あんたいつからバカになったのよ瑞希ーっ!?」
正気を疑う悪魔の思案を暴露しました。いかん!吉井君を落ち着けるどころかとどめを刺しやがりましたよこの子!?
「おおおお!?ちょ、ま、待つのよさよしー!3階の窓から飛び降りたら死ぬわよっ!?」
「はやまるでない明久!何も飛び降りをするほどでもあるまいっ!!」
「離してチルノ、秀吉!僕はもう生きていける気がしないんだ!」
ほらぁ!秀吉君とチルノが必死に窓から体を投げ出そうとしてるのを止めてるし!一度ジャンプをした私が言うのもおかしいですが、このままじゃシャレになりませんよぉおお!?
「ま、待ってください吉井君!ほら、土屋君!土屋君に相談してみましょう!土屋君ならこの手の話に詳しいですし、事情を説明すれば――」
「ムッツリーニに笑われる?」
「あ、あるかもしれませんけど違います!説明をして、その写真を盗撮した犯人を見つけてもらうのですよっ!!」
「おお!なるほどっ!」
土屋君は女子の写真を撮ることに恐るべき情熱を抱いており、そのためならば隠し撮りや盗聴もなんのその!音も気配も消し去ってシャッターチャンスを探すムッツリスケベな彼ならば、きっと吉井君の助けになるはずです!
……言っておいてなんですけど、あまりにもひどすぎるわ土屋君っ!よくこれまでお縄につかなかったものですね!?
「ナイスアドバイスだよ美鈴さん!さすがは僕のお嫁さんだ!」
「いつ私が君の花嫁になりましたかっ!?」
「メ、美鈴?そうじゃったのか?」
「そ、そ、そうなんですか、美鈴さん…?」
「ああっ、お、落ち着いてください2人とも!?別に瑞希さんの邪魔をする気なんかこれっぽっちもありませんから!今のは吉井君の戯言ですから!」
「それじゃ、僕はムッツリーニに相談してくるから!」
「ってちょ!?この状況で相談しに行く気ですか君「助けてムッツリーニ!僕の名誉の危機なんだーっ!」……は……」
走って輪から抜け出す吉井君。……せ、せめてこの2人の誤解を解いてから行きなさいよぉ!?私に後を任せて丸投げとは良い度胸してやがりますねおいっ!あとで絶対しばいてやりますっ!!
「メ、美鈴さん説明してください!」
「わ、わしは何を言える立場ではないのじゃが、や、やはり興味あるというかなんというか……と、とにかく説明してほしいのじゃ!」
「いやですから、私はまったくそんな約束はしてなくてですね……!」
薄情物の吉井君への恨みを胸に、私は動揺する二人を元凶の代わりになだめ始めました。
・・・しっかし、瑞希さんは慌てる理由が分かるのですが、どうして秀吉君までこんなに慌ててるのでしょう?やっぱり俗に言う〝コイバナ〟というやつに興味津々なんですかねー?
『ねえ、みなみ、もこー。よしーが窓からジャンプしようとしたり、メイリンがみずき達に話しかけられてタジタジしたりしてて、アタイには何が起こってるのかさっぱり分からないのよさ』
『チルノは分からなくていいのよ。チルノらしくいてくれてウチは嬉しいわ』
『ねえもこー。そこははかなく、みなみに子ども扱いされてる気がするのはアタイだけかしら?』
『…それを言うなら「そこはかとなく」だろ…………色々と、巻き込まれるな……あいつ……』
『妹紅の言う通りよ。まったく、アキったら次から次へと…でもま、ウチとしてはラブレターじゃなくてホッとできるんだけどねー』
『……そこは、脅迫状が届いたことを嘆いてあげろよ………気にしてる異性ならさ』
『げふんっ!?も、妹紅っ!なななんでそのことを知ってんの!?ウチ、妹紅に言ったことないわよね!?』
『………いや、丸わかりだったけど…………あれで、隠してるつもりだったの?』
『~~~~~っ!?』
『………意外とにぶいな……あんたも』
『い、言ったわね妹紅!?ウチも今のアンタの言葉にはとうとう怒ったわ!ちょっと覚悟しなさいっ!!』
お読みいただきありがとうございます。
今回はもあまり話が進む回とはなっておらず、皆が会話をしているだけという感じでございました!物足りなかった方には申し訳ありませんでしたぁ!!
さて、話の区切り方で予想がつく方もいらっしゃると思いますが、次回は明久視点で書かせていただくと思います!おそらくそちらもあまり展開が早くない気がするのですが、それでも楽しんで読んでいただければ作者万歳でございます!
それではまた次回っ!