前書きも短いものとなってしまいますがここは一つ、短くて読みやすいと考えていただければ!
――ごゆっくりお読みください。
「うし、今回のターゲットは工藤だぜ」
「え?」
勉強も終わり美鈴さん十六夜さん姉妹の拷問も受け、夕食も取ってお風呂の時間となったころ。昨日と同じように僕らの部屋にやってきていた魔理沙が早々にそんなことを宣言した。
「………(こくり)」
「うむ」
「ああ。昼間言っていた通りだな」
よく分かんなかったのは僕だけみたいで、他の三人は多く語らずうなずくだけ。なんだか最近僕は仲間外れが多いなぁ。
「工藤さんがターゲット?それって盗撮犯の?」
「おう。今日の昼間、吉井も見ただろ?あいつがやけに録音機とかに長(た)けてるところをよ」
「ああ、そう言えばそうだったね」
それが原因で起きた絞め技大会のせいですっかり忘れてたよ。確かにあれだけ機械に強いのなら、いくらでも盗撮も盗聴もできるだろう。つまり今回は不特定多数じゃなくて一人に標的を絞ったってことか。
「でもさ、それって結局お風呂を覗きに行くってことなんでしょ?別に1人に絞らなくてもいいんじゃないの?」
もしかしたら他の人が犯人なのかもしれないし、どうせやるならば徹底的にした方が良いと思うんだけどな。………やましい下心が少しあるのは、今回正直に告白しよう。
「いや、今回は覗かねぇ」
でも、魔理沙の口から出たのはそんな言葉だった。
「え?じゃあどうするの?」
「単純だ。―――工藤と一緒に風呂に入るヤツに確認してもらうんだぜ」
「えっ?」
ちょ、ちょっと待ってね?ええと、つまりそれは……
「だ、誰か女の子に協力をしてもらうってこと?魔理沙」
「おう、その通りだぜ」
分かってくれて良かったと満足そうにうなずく魔理沙。確かにそれはシンプルで確実な手段だと思うけど………
「でも魔理沙、そんな友達を裏切るようなことに協力してくれる女子っているの?」
そんなことを相談して断られることだけならまだいい方で、下手をすればそんな相談を受けたって言い触らすかもしれない。もしもそれが美鈴さんや美波あたりにばれたりしたら……うう、想像するだけで体全身が痛くなってくるよ!!
「そんなに心配そうな顔すんなって吉井。私はそれについて、大きすぎるアテがあるんだぜ」
「!ほ、本当っ!?」
「もちろんだぜ。嘘はつかねえさ」
ニッと笑顔を浮かべる魔理沙。なっ、なんて頼もしい女の子だ!この男気豊かなところをアリスさんに見せてあげたら絶対にときめくこと間違いなしだよ!僕が保証してあげよう!(※それが出来ないから彼女は苦労しているのです)
「魔理沙よ。わしらもそこまでは聞いたが、いったいそれは誰なのじゃ?」
その女の子が誰かなのは秀吉たちも聞いてなかったみたいで、皆揃って魔理沙を見つめる。僕達の命運を決めるかもしれないキーパーソン。その子とは、いったい……?
「ああ、それはだな―――」
がらりっ
『!!』
するとその時、ノックもなくふすまが開かれた。ま、まさか誰かに嗅ぎつけられたかっ!?
僕達はいつでも動けるよう、臨戦態勢をとって突然の来訪者をにらんだ。
「邪魔するわよ、あんたら」
「えっ?は、博麗さん?」
一体だれが予想できただろう。
〝あんたのご飯は私のもの〟〝喧嘩上等 邪魔をする者容赦なし〟という、〝女番長〟の言葉がものすごくシックリくる少女、博麗霊夢さんがずかずかと遠慮なく入って来たではないか。何度か彼女の猛威を目撃した僕は思わず一歩後ずさる。
「ど、どうしたんだ博麗?何か用か?」
前にプールで全力の蹴りを受け取った雄二も、二歩下がって博麗さんを警戒しまくっている。この野蛮な男までも震え上がらせるとはなんと末恐ろしい女の子だろう。
「はぁ?」
そんな僕たちの反応が気にくわなかったのか、博麗さんが思い切りまゆをしかめた。いかん、また何かまずいことを言っちゃたんだろうか?殴るのなら雄二だけでお願いします。
「むしろこっちが聞きたいわよ。私は魔理沙に呼ばれてここに来ただけだっての」
「え?」
・・・・・・魔理沙に呼ばれた?じゃあ、それって・・・
「魔理沙!ひょっとして協力を頼む女の子って博麗さんなの!?」
「ああ、そうだぜ?」
魔理沙はなんのことなく頷く。えええ?は、博麗さんがかぁ~・・・・
「だ、大丈夫なの?こう言ったらなんだけど、僕にはどうしても彼女が僕たちの言うことを聞いてくれるとは思えないよ?(こそこそ)」
普通のお願いでも嫌そうな顔をする博麗さんが、どうして犯罪に近いお願いを聞いてくれるだろうか。そのシーンが全く浮かび上がらなかったので、僕はまた魔理沙に耳打ちをした。
「ま、見てなって。―――や~悪いな霊夢。お前に頼みがあってここに来てもらったんだぜ」
「なによ?早く風呂に行きたいんだから手短かにね」
博麗さんの言うとおり、手には着替えが入っている袋とバスタオルが準備してある。お風呂の時間はクラスの人と一緒だから、同じクラスの工藤さんも今入っているに違いない。
タイミングはばっちりけど、どうやって頼むつもりだろう?
「おう。ちょっと風呂場で工藤のお尻に火傷の痕があるか確認してきてくれないか?」
それはもう〝ちょっと〟では収まらないお願いじゃないかな魔理沙。
「お尻ぃ?なんでよ?」
やっぱり疑わないはずもなく、博麗さんがジトリとした目で魔理沙をにらんだ。そりゃクラスメイトのお尻を見ろなんて言われて、素直にうなずくわけないよね。
「ちょいと私らの事情でな。火傷の痕があるかどうか見るだけでいい。一つ頼まれてくれねえか?」
「いやよ。面倒くさいもの」
理由はともかく迷うことなく断る博麗さん。魔理沙は自信があったみたいだけど、やっぱり友達を売るようなことは―――
「まあそう言うなよ。後で、焼肉【天カルビ】の食べ放題チケットを贈呈するぜ」
「(ガシッ)全身全霊で引き受けたわ。任せなさい」
博麗さんなら間違いなく乗ると思ったよ。ちなみに僕も全力で乗っかってたね。
「んじゃ行ってくるわ。愛子の尻を確認すればいいのね(スタスタ)」
「おう。あ、もし余裕があったら、他の奴にも火傷があるかどうか確認できたらありがたいぜ」
「一応覚えておくわ(がらりっ)」
そこまで言って、博麗さんは任務を果たしに行った。
・・・この後工藤さんに降りかかることを考えると、容疑者だけど同情せざるを得ないね。うん。
「霧雨・・・お前、鬼だな。〝欲〟であいつを動かすとシャレにならんぞ」
「私にも関わる事だからな。ま、何も撮るとかじゃなくてお尻に火傷あとがあるかどうかを確認してもらうだけだから、そうひどいことにはならんだろ」
「い、いや。わしには博麗が穏便に事を済ますとはとても思えんのじゃが・・・」
「・・・十中八九、荒事になる」
「僕も2人に同意だよ」
僕達が頼んでおいてなんだけど、どうか平和的にお尻を確認してね博麗さん。いや、フリとかじゃないからね?心の底からお風呂にいる女の子たちのことを心配し………て…………
「………あれ?ねえ魔理沙」
「ん?なんだぜ?」
「さっき、他の子のお尻も確認してって言ってなかった?」
「ああ。そうすりゃ工藤が犯人じゃなくても見つかるかもしれないし、仮に見つからなくても容疑者が減るわけだから損はないと思ってな」
「ああ。確かにそうだね」
あわよくば僕達が動かなくても犯人が見つかる可能性もあるわけだから、僕や雄二にとってはこの上なくありがたい作戦だ。
「――でも、魔理沙は良かったの?」
「??何がだ?」
いや、何がも何も………
「だって、工藤さんってAクラスでしょ?だったら同じクラスのアリスさんもターゲットになっちゃうような………」
「「「あ」」」
「………………………あ」
『ああ……いい湯だわ……』
『そうだねー……アリスの言う通りだよ~~』
『・・・・疲れが取れる・・・』
『そうね代表。昼間の疲れがすっと抜けていくわ・・・』
『昼間のって・・・・咲夜、何度も言うけれどあれはやりすぎだと思うわ。美鈴と二人がかりで攻撃するのもそうだし、聞けばその吉井君の言葉は愛子が作ったものらしいじゃない』
『……2人を止めるのは大変だった…』
『う。そ、それについては…さすがに申し訳ないと思ってるわ・・・・・・一応』
『ボ、ボクもそのことはすごく反省してるよ・・・吉井君、大丈夫かなぁ・・・?』
『そう思っているのなら、きちんと謝ることよ。吉井君は優しいからきっと許してくれるわ』
『う、うんっ!また吉井君にきちんと謝りに行くよ!ねっ咲夜!?』
『……くっ………頭では分かってるけど………あの変態に謝るのだけはどうしても抵抗があるわ……っ!!』
『さ、咲夜咲夜?ボクが全面的に悪くて吉井君は悪くないんだから、そんな渋面にならなくても・・・』
『……十六夜。唇から血が……』
『ま…前々から思ってたけど、なぜ咲夜はそんなに吉井君のことが嫌いなの?面白くて優しい男の子じゃない』
『…………面白い?優しい??ならどうして私にはちっとも笑えないことを言うの?どうして無慈悲に事実を伝えてくるの!?ウソでもいいから私が笑えて喜べることを言いなさいよっ!誰がまな板っ!誰が平原……っ!』
『……十六夜、落ち着いて。お風呂で暴れたらいけない』
『……ごめんなさい咲夜。吉井君を苦手としているのはよく分かったわ・・・』
『み、見た感じだとボクよりもありそうだけどなー……って、あ。遅かったね霊夢。どこに行ってたの?』
『あー、ちょっとね。それより咲夜はどうしたのよ。えらい荒れてるじゃない』
『あー、うん。こっちも色々あってね~。咲夜もそういうこと考えるんだなー』
『ふーん。……あ、そうだ愛子』
『ん?なぁに?』
『ちょっと尻見せてくれないかしら』
『それはちょっとじゃすまないよ霊夢っ!?……え?きゅ、急にどうしたの?』
『愛子の尻が見たいからよ。だから見せて頂戴』
『え、え~~と……と、突然言われてもやっぱり困るかな~…?』
『何言ってるのよ。アンタ普段からスカートめくってパンツ見せたりしようとしてんじゃない。だから尻の1つぐらいなんてことないでしょ?』
『パンツ見せるのとお尻を見せるのはぜんっぜん違うからね!?たった布一枚の違いとは言えそこには大きすぎる差があるよ!?』
『いいから見せなさいよ。減るもんじゃないでしょうに・・・』
『確かに減りはしないよ!その代わりボクの精神負担が激増するけどね!だ、代表、アリス助けてっ!霊夢が変だよ!』
『……霊夢、どうしたの?』
『霊夢。女の子同士とは言え、嫌がってる子にそういうことをしてはダメよ。いったん落ち着きましょう』
『私は至って冷静よ。あ、そうだ。あんた達の尻も見せてくれるかしら?』
『私達にも飛び火がっ!?』
『(ザパッ)………これでいい?』
『ん、ありがと霧島』
『ってだ、代表!?』
『ボ、ボクはためらったのに躊躇なくお尻を見せるだって!?代表、やっぱりすごいなぁ・・・』
『……ないわね。じゃあアリス、愛子。次はあなた達も見せてくれるかしら』
『え、えええ………?でも霊夢、私もやっぱり愛子と同じで自分から…お、お尻を見せるのは……』
『そ、そうだよ霊夢っ。やっぱり抵抗があるというか、なんというか……』
『……そう、分かったわ』
『!ありがとう、分かってくれたのね霊夢』
『え…?れ、霊夢がこんなにあっさり…?』
『だったら私が無理やり見るしかないわね』
『ほらやっぱりねっ!』
『ぜんっぜん分かってないじゃないバカ!どうしてそこで諦めるという選択肢が浮かばないの!?』
『すべては肉のためよ…。見せる時はすぐにすぐに言いなさい。私もさすがに、友達の嫌がることは出来れば避けたいわ』
『いっ、今まさにやってるよぉ!』
『れっ、霊夢!いったん落ち着きましょう!あなたは本当は優しい子!だからそんなことをする子じゃ――――!』
『優しいとか言うなっ!……とにかく、肉の食べ放題のためなら私は外道にでもなるわ。アリス、愛子……あとそっちでぶつぶつ言ってる咲夜……私に尻を見せろぉおおおお!!』
『『キャアアアアア~~っ!!?』』
『……謝りたくない……でも、謝らざるを得ない……でも、悔しいから謝りたくないぃ………!!』
『………私、見せない方がよかった……?』
「―――ってわけで、あいつら4人と何人かの尻には火傷の痕が無かったわ」
「おっ、落ち着くのじゃ魔理沙!もとはと言えばお主が発案したんじゃぞい!」
「し、知るかあっ!よくもっ、よくも無理やりアリスのお、おおおおお尻を~~っ!!」
「暴れるのか泣くのか鼻血を流すのかどれかにしろ霧雨!宥めればいいのか励ませばいいのか分からんっ!」
「わ、わわ、私も見たかった、じゃなくて!わ、私の友達にひどいことしやがってぇ!これが怒らずにいられるか、じゃなくてうらやましがらずにいられるか~~っ!!」
「本音と建前がもはやゴチャゴチャになっとるぞ!?」
「アリス・マーガトロイドに関わると本っ当にアホになるな、お前!」
ああ、やっぱりこうなっちゃったか。
見事任務を果たした博麗さんの報告に、魔理沙が大変お冠になって飛びかかろうとするから雄二たちが必死になって抑え込んでいる。でも最初に言い出したのは魔理沙だもんなー。可愛そうだけど、これは自業自得ってやつだね・・・被害を受けたのはアリスさんだけれども。
「さて、魔理沙。ちゃんと約束は果たしたわ。今度はあんたが守る番よ」
そんな暴走魔理沙を見ても博麗さんは揺るがない。すっと手を差し出して報酬を受け取ろうとする彼女に、魔理沙は涙目で叫ぶ。
「こっ、これで私が約束を守ろうと思うかバカ!ゼッタイやるもんかバカァ!」
「ああん?」
「ちょ、博麗さん落ち着いてっ!そんな底冷えするようなどす黒い声を出すにはまだはやいと思うんだ!?」
なっ、なんて命知らずのことを言うんだ魔理沙っ!また僕に三途の川のほとりに行かせたいのっ!?
「きっ、霧雨!ちゃんと約束を守ってやれ!このままじゃ俺たちにまで被害が及ぶだろうがっ!!」
「す、すまん魔理沙よ!わしもまだ命が惜しいのじゃっ!(パッ)」
「あっ!か、返せ秀吉!霊夢のスケベなんかに渡す理由がないんだぜ!!」
散りたくないのは誰でも同じ。雄二がガッチリ魔理沙を抑え、一番良識あるはずの秀吉が、魔理沙の手からお食事券を奪取してまで博麗さんの約束を守ろうとしているほどだ。
秀吉があんな泥棒みたいなことをしてしまうとは、大きな力の前では道徳も何もあったもんじゃない。
「ほ、ほれ博霊よっ!これが約束の報酬じゃ!しかと受け取るがよい!」
「お前が望んだものだ!これで何も文句はないだろう!?」
「………あんたら、男2がかりで女にカツアゲするなんてなかなかに外道ね」
「誰のせいだと思ってるんだボケッ!」
「誰のせいじゃと思うとるんじゃ阿呆がっ!」
「誰がボケで阿呆っておい?」
「「すみませんでしたぁ!!」」
女の子1人で男子2人に頭を下げさせている君は、修羅道の鬼に思えてならないよ博麗さん。
「まあいいわ(パシッ)。うふふ~、焼肉食べ放題♪胃袋が躍るわ~♪」
でも焼肉券を受け取った途端、春が来た桜の如き満面の笑みを浮かべる博霊さん。そこだけを見ていたらすごい可愛いんだけどなぁ…。
「じゃ、私は行くわ。こういう話があったらまた誘ってね♪」
「にっ、二度と誘うかバカーッ!」
「やっきにっくやっきにっく~♪」
そんな魔理沙の罵倒にも笑顔なまま、博麗さんは軽やかな足取りで部屋から出て行った。・・・残った僕たちの間に、魔理沙の息切れ声だけが漂う。
「ま、魔理沙………その、災難だったね?」
「わっ、私はいいんだよっ!アリスが一番災難なんだようわぁ~~!!」
頭を抱えてアリスさんのことに心を痛める魔理沙。おおっと、まさか人をからかってそれを楽しむのが日常の魔理沙がこれほど反省するとは。アリスさんも罪な女の子だなぁ。(※そう思えるのなら、自分自身を見つめ直してはいかがでしょう)
「ま、まあまあ。もう済んでしまったことじゃ魔理沙よ。ここはきちんとアリスに謝ってじゃな・・・」
「ど、どう謝れってんだよ!?『霊夢にアリスのお尻をのぞかせてごめんなさい』とでも言えっていうのか!?そんなこと言ったら絶対…き、き、きらわれ……アリスに嫌われうわぁあぁあああーんっ!」
「ご、号泣!?そこまで泣くほどわしはひどい提案をしたかっ!?」
数分前までの凛々しい魔理沙はどこへ、ブワリと涙を流す魔理沙はもはや秀吉よりもずっと乙女に見えて仕方ないよ。
「まあ、なんだ。おかげでおれ達も次からのことを考えられるから、感謝してるぞ霧雨(ポン)」
「……疑わしい容疑者が消えたのは大きい(ポン)」
「うう……アリスに知られたら絶対嫌われるよぅ……」
そんな魔理沙の肩を、雄二は珍しく憐憫と感謝の表情で、ムッツリーニはいつもどおり鼻血を流しながら叩いた。きっと〝湯けむり霊夢さんご乱心の変〟で起こったであろうピンク色の光景を思い浮かべたに違いない。このムッツリめ!っておっと、この血はいったいどこから流れたのかな。
「しかし今更なんだが、よく〝天カルビ〟の食べ放題券なんか持ってたな?あれは大人気で、なかなか手に入らないと聞いてたが」
「……ママにもらってたんだよ。『良かったら友達と行ってきな』って。ママ、よくそういうのもらってくるからさ」
「ほう、そうなのか。まあ結果は友達〝だけで〟行くことになって残念だったな」
「僕の母親と君のお母さまを入れ替えてもらえないかな魔理沙」
「明久。そこまで目を血走らせても無理なものは無理だぞ」
「こやつ、本気の本気で提案しておるのう……」
魔理沙のお母さんが今後僕のお腹を満たしてくれるかもしれないという事実に胃袋が騒ぎ始める。ダメだったら養子として引き取ってくれても大丈夫。どうかこの空腹高校生活から僕を救ってやってくれないだろうか。
「なんにしても、これで工藤が白になったわけじゃ。これからどうするかのう?」
「ああ。これで黒だったら一件落着だったんだが、違うのならまた動く必要があるな」
「………かなり対象が増えるけど……どうする?」
叶わないことを願っている間に雄二たちは話を進めだす。今回は機械を使うのが慣れていたから工藤さんを容疑者にしたわけだけど、それが違うとなるとまた大人数の女子の中から犯人を捜さなくちゃならないわけだ。
そうなると………
「決まってる。昨日と同じように女子風呂に行って確認するまでだ」
やっぱりそうなるよね。どんなことも自分達で実行して確かめる、実に僕達らしい考え方だ。
「それはいいけど、雄二。ただ行っても昨日の二の舞になるよ?」
「そうだな。また見張りをしてる先生達のえじきになるのは見え見えだぜ」
中でも鉄人は生身で僕の召喚獣を撃退するぐらいだ。あれほどのゴリラ相手だと僕達だけでは手に負えないだろう。
「なに、もちろんここの五人だけでリベンジする気はないさ」
「ふむ。ではどうするのじゃ?」
「ああ、まずはFクラスのアホどもを――」
「もこーっ!今日こそあの灼熱地獄でケリをつけるのよさ!覚悟しておきなさい!」
「……昨日ついてたのに………。いつもいつもどっからその元気が沸くのやら……」
「ほらほら、あんまり強く妹紅さんの手を引っ張ったらダメですよチルノ。焦らなくてもサウナは逃げませんって」
「バカねメーリン!何事も早いに越したことはないわ!早く行けばそれだけアタイに勝利の女神があざわらってくれるもんよ!」
「チ、チルノちゃん。それだと良くない結果が出る気がしてなりませんよ?」
「そこは確か〝微笑む〟よね?ウチも前に聞いたことがあるわ」
「おお、さすがです美波さん。チルノも次からはしっかり覚えましょうね?」
「別にどっちだっていいわよ!アタイがさいきょーなのは変わりないのよさ!」
「チルノが最強なのかはともかく、意味が真逆になるんですがね~…」
いつもどおり元気なチルノの相手をしながら、私達Fクラス女子は風呂場へと向かいます。いや~昼間はすこし汗をかいちゃいましたから待ち遠しかったですよ~!ここはしっかり温まってリフレッシュしませんとねー!
「――あ、ご苦労様です西村先生」
「ああ、お前たちか。ちゃんと時間通りに来たな」
女子風呂の前まで行きますと、担任である西村先生が不埒な輩の侵入を許すまじと仁王立ちをして立ちふさがっているではないですか。う~ん、ただ立ってるだけなのにこの気迫!Fクラスという凄まじいクラスをまとめるだけありますね!(※他人事みたいに言ってますが、あなたもそのFクラスでございます)
「むっ!?な、なんでせんせーがいるのよさ!今からアタイ達が入るっていうのを邪魔するっていうの!?」
「いや、そんなつもりはないぞチルノ。ただ見張りをしているだけで……」
「あっ!?さてはアタイ達と一緒にお風呂に入りたいのね!もーせんせーったらHなのよさ(バゴンッ!)んぎゃぁあああああ!?」
「お前はおれを何だと思ってるんだアホ!そんな考えなど持ち合わせておらんわっ!」
「そっ、それはさすがです先生!ですが今の一発はまずいかと!ほら、チルノがすごい勢いで床を何往復もしていますよ!?」
「あっ、頭がぁ!アタイの頭にヤバい痛みがぁあああああ!(ごろごろごろ!)」
「チッ、チルノちゃん大丈夫ですか~っ!?」
転げまわるチルノに瑞希さん達が心配してかけよりますが、チルノは変わらず勢いよく転がるまま。あ、あんなすごいゲンコツをかますなんて!見てただけで私も頭が痛くなってきましたよ!?
「いぢぢぢ……っ!んがぁああああ!いったいわねこのチンパンジーゴリラせんせーのバカァァアアアア!」
「わっ!?ちょ、チルノ!?」
そんな強烈な一撃をやられても黙ったままではいないのがチルノ。大きなタンコブに涙を流しながら、西村先生へと報復に向かいます。
「こらチルノ!今のは西村先生に変なことを言ったあんたが悪いでしょ!」
「そ、そうですよチルノちゃん。今のはチルノちゃんがいけないと思いますっ。妹紅ちゃんもそう思いますよね?」
「………私に同意を求められても……」
が、両脇にいた瑞希さんと美波さんがそれを抑えました。当然チルノは収まらず、じたばたと二人の間でもがきます。
「うるさ~~い!この痛みを受けて黙ってちゃサイキョーじゃないのよさ~!」
「あっ!もう!瑞希、妹紅!このままお風呂に連れていきましょ!足持って!」
「は、はい!」
「……なんで、私が……」
「こ、こら~!3人共離すのよさあ!アタイはまだ負けて―――!」
ガラッ ピシャン!
そのまま、四人は女の仕切りの中へと消えていきました。
「………えーと、その。色々とすみませんでした」
「紅が謝ることではないが、一応受け取っておくとしよう。はぁ…」
「その苦労、身を持って分かりますよ。はぁ……」
揃ってため息をつく私達。担任と生徒が同じ理由で悩むことだってあるのです。
「う~ん。チルノももう少し落ち着いてくれればいいのですがねぇ……」
「それもそうだが、あいつはまず男顔負けの口の悪さを直すべきだな。あれほど堂々と俺に悪口を言うやつはそういないぞ?」
「先生のことを新種の生き物みたいな呼ぶ方をしてましたもんね。怖いもの知らずここに極まれり、ですね」
西村先生の鉄拳をあれほど受けて懲りないのはもはや感心してしまいます・・・まぁ、その口から出て来るやんちゃな言葉に確かに物申したいのですけども。矛先が私に向くことだってあるのですよ。グスン。
「ご苦労様です、西村先生」
「ああ、ご苦労様です上白沢先生」
そうやってチルノの事を話していると、西村先生と同じように見張りをしていた女教師、上白沢慧音(かみしらさわ けいね)先生が私達のもとにやってきました。
「すみません慧音先生。うち(Fクラス)のおバカ達がバカをなことをしてしまったばかりに・・・」
「おいおい、紅が頭を下げる必要はないだろうに。まるで吉井たちの保護者みたいじゃないか」
「そ、そんなつもりはないですけど、やはり同じクラスメイトとして謝るのが筋ではないかと思いまして」
「ふむ、紅は律儀なのだな。いいち……は、母親になるだろうな。将来が楽しみだ」
「褒めて頂いて嬉しいのですが、イマなんて言おうとしました?母親の前に何と?」
性別を間違えられるのは納得できません。秀吉くんならともかく私はどこから見ても女の子なのです。
「ゴホンッ!そ、それはそうと西村先生。話によると、昨日吉井たちを厳しく説教されたそうだが、私たちが見張りをする必要はないのではないか?せっかくだから休まれてはどうだ?」
西村先生を気遣ってそんなことをいう慧音先生。実際説教したのは私達なんですが・・・ともかく先生は、吉井君達がもう何もしないと考えているようです。
「「………(ふっ)」」
「む?ど、どうして目で閉じて鼻で笑うのです?しかも紅まで……」
どうやらまだまだあのおバカ達のことを甘く見ているようですね。西村先生、ここは担任としてしんよー溢れる言葉をお願いしますよ。
「お気持ちは嬉しいのですが上白沢先生……やつらは生粋のバカです。素直に懲りるのであれば今頃立派な模範生徒になっていますよ」
「その通りです慧音先生。それでしたら私達も日々、苦労せず平和に過ごせていたでしょうとも」
「……そ、そうか……」
大丈夫です先生、ひきつった顔を無理やり笑顔にしようとしなくてもいいですよ。そのぐらいで傷つく私達ではありません。
「ま、ま、まあしかしだ。いくら生粋の阿呆であろうと、さすがに連日で動くことは―――」
ドドドドド・・・!
「「「ん?」」」
はて?気のせいか、すごい地響きの音が聞こえたような気が・・・?
『うおぉおおおお~!楽園に進めえええ!!』
『道を阻むヤツは全て蹴散らせぇええ!』
『サーチ&デストロォーイッ!』
「な、なんだっ!?男子達が集団でやってきたぞ!?」
「………もぉぉぉ。言ってるそばから~…!」
怖い顔をしてこちらにやってくる人物は、全員クラスで見たことがある男子ばかり。
まぁたFクラスに『問題児の巣窟』のレッテルを貼りつける気ですかちょっとお!
「少数ではかなわないからと人数を増やしてくるとは、これだからアイツらは……!」
「とっ、とにかくここから先に進ませてはまずい!西村先生、ここの守備は頼んだっ!」
「了解!紅、聞いての通りここから先へは進ませんから、お前は気にせず風呂へ――」
「この状況でそんな気は起きませんよっ!あ、先生を信用してないとかではないですよ!?」
何をどう説明されて手ごまになったのかは知りませんが、吉井君達と同じことをするということはHな野望を胸に抱いている証!見過ごすわけにはいかないでしょうがっ!
「――全員んんっ!女湯じゃなくて地獄を見せてやるわこらぁああああ!!」
お読みいただきありがとうございました!アリスさん・・・・不憫な役ばかり与えてしまってすんませんっ!ゼッタイ良いことも書いていきますから許してやってー!
さて、一か月越えという久々な投稿となりますが、なにぶん忙しくなりまして執筆が続かずにいました。お待ちになってくださった皆様にはすみませんが、次回以降も気長にお待ちいただければありがたく存じます。
それではまた次回っ!再び女子風呂抗争が勃発しますよー!