バカと中華小娘とお姉さん   作:村雪

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 どうも、村雪でございます!長らく間を空けてしまい申し訳ありませんでしたぁ!

 知っている方も知らない方もいるでしょうが、実はもう一つ作品を投稿させてもらまいまして、そちらに時間を割いたり現実の多忙もあってこっちを放置していた次第でございます!

 それでは、およそ五ヵ月ぶりの投稿で皆様が楽しめるかどうか不安でございますが!



――ごゆっくりお読みください。


入宅―遊び事、に真剣になってもいいじゃない!

「じゃあこっちが私の部屋ですので、ついてきてくださいお兄さん達!」

 

「は~い。おお、本当に純和風な家ですね!」

 

「お邪魔しま~す。わ~。なんだか昔の日本の家に入った気分ねー」

 

 

 橙ちゃんが僕たちの前に現れてから数分。ようやく家に入ることを許された僕たち(というか許されてなかったのは僕〝だけ〟だけど)は、弾み足の橙ちゃんのあとをついていく。外見と同じく中もふんだんに香り豊かな木材が使われており、美鈴さんや美波が興味深そうにあちこちを見ている。

 

 

 だけど僕にはそれ以上に気になることが。

 

 

「……………(ジロジロ)」

 

「あ、あの先生……そんな間近から睨まれるとすごく居心地が悪いんですけど」

 

「うるさい黙れ」

 

 

 そう言ってバッサリ切り捨てる橙ちゃんの母、八雲藍先生がものすごく厳しく僕を睨んでいることだ。橙ちゃんに手を出させまいと観察してるんだろうけど、そのおかげで僕だけ深い緊張感に包まれている。ただ遊びに来ただけなのになぁ…

 

 

 

「美鈴。これって確か〝じょうじ〟って言うんだっけ?」

 

「正しくは障子(しょうじ)ですね。ちなみにあんまりその言葉は外で言ったらだめですよ美波さん」

 

「え?どうして?」

 

「ん~。なんと言いますか、あまり公の場で言うような言葉ではないものも含まれるというか…」

 

「??どういう意味があるのよ、その〝じょうじ〟って」

 

「で、ですからあんまり大きい声では…!」

 

 

 

「先生。美波が美鈴さんにセクハラしてるのを止めなくていいんですか」

 

「……彼女は帰国子女だと聞いている。純粋に気になっているだけで他意はないはずだ」

 

 

 ある意味美波の方が僕より危ない気がするんだけどな。ほら、さっそく橙ちゃんが美波達をチラチラ見て知りたそうな顔をしてるよ?

 

 

「あ、つきました!ここが私の部屋ですっ!(カラリッ)」

 

 

 それを口にする前に到着したみたいで、橙ちゃんが立ち止まって目の前のふすまを開いた。

 

 

「おお。シンプルできれいな部屋ですね橙ちゃん」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

 

 美鈴さんの感想通り、部屋の中は思っていたよりも家具が少なく、勉強机。タンス。小型テーブルと座布団しかなくて、小学生の女の子のというより大人の部屋みたいだった。ひょっとしたら散らかった僕の部屋よりキレイかもしれないぞ。

 

 

「ホント。ウチにも妹がいるんだけどあの子の部屋よりキレイだわ。えらいわね~」

 

「ニャ~。そ、そうですかね?」

 

「うん、そうだよ橙ちゃん。きっといいお嫁さんにな(ガバァッ!)べぶっ!?」

 

 

 

 な、なになに!?どうして言葉の途中で僕は口を抑えられたのっ!?

 

 

「ア、 アホですか吉井君…!君は自らボコボコにされたいんですか!?(ボソボソ)」

 

「え?え?どういうこと!?(ボソボソ)」

 

 

 犯人はどうやら美鈴さんのようだ。僕に負けないぐらい慌ててるけど、いったい………?

 

 

 

 

「落ち着いて藍先生っ!アキは橙ちゃんをほめようとしただけだから!別に2人がそうってわけじゃないわ!」

 

「嫁……っ!誰の許可を得て可愛い娘を嫁と呼んでいるんだ……っ!」

 

 

 

「…………(ウルウルウル)」

 

「先生への恐怖か何かは知りませんけど、そんな風に涙を決壊させることがないよう気をつけていきましょう」

 

 

 そういって美鈴さんは手を離す。ちなみに涙の成分は肩を抑えられる藍先生への恐怖が五割、美鈴さんと美波への感謝が五割だ。

 

 

「??どうかしましたか皆さん?」

 

「!ああいや、ちょっとね。で、ではまず飲み物を持ってこよう。ここに来るまで暑かっただろう」

 

「あっ。お手伝いしますよ先生」

 

 

 橙ちゃんの言葉で正気に戻った先生が部屋を出ていこうとして、美鈴さんが手伝いを名乗り出た。だけど八雲先生はやんわりと断る。

 

 

「なに。それぐらいなんてことはないからその男を見張っていてくれ。何をしでかすか分からんからな」

 

「それもそうですね。分かりました」

 

「だから僕は何もしないよ2人とも!」

 

 

 さっきのは違うんだ!ただこんな小さい子が高校生の僕より立派だから、こんなお嫁さんがいたらいいなーって思っただけなんだって!

 

 

「も~。あんたどんだけ藍先生に信用されてないのよ」

 

「う~ん。八雲先生は少し人を見る目がないなぁ。健全な青少年の歩く見本である僕を疑うだなんて」

 

「吉井君の自分を評価する目も相当ポンコツな気もしますが……よいしょ」

 

 

 八雲先生がいなくなって気が緩んだ僕たちは腰を下ろす。美鈴さんの対面には美波が、僕の正面は橙ちゃんだ。

 

 

「それじゃあ改めまして、今日は私の家に来てくださってありがとうございます!無理を言ってしまってすみませんでした!」

 

「いやいや、全然気にしないでよ橙ちゃん。僕も橙ちゃんと遊べて良かったもの」

 

 

 もしも出会えてなかったら藍先生との約束を破ったことになって怖い未来が待っていただろうし。でも、それ抜きでもこんなに嬉しそうにしてもらえたら来たかいがあったというものだ。

 

 

「そうですよー橙ちゃん。それに、せっかくこのお兄さんと2人で遊べたのにお邪魔しちゃって私たちこそ謝らないといけません」

 

「そんな!お姉さんたち二人も来てくれて嬉しいですよ!・・・・ほ、ほんのちょっぴり残念な気持ちもありますけど(ボソボソ)」

 

「うふふ。正直で偉いですね~」

 

「にゃっ!?ごご、ごごめんなさいごめんなさぁい!」

 

「いーのいーの。その気持ちはウチもよく分かるからね~。・・・にしてもこんな小さい子までなんて、もうアウトじゃないかしら美鈴?」

 

「まぁ本人じゃなく好意を向けられてるって形ですから、ここはセーフと見て問題ないでしょう。八雲先生だったら一発アウトでしょうが・・・」

 

「そう。は~・・・良い子なのはわかるんだけど、小学生に負けたらウチ、女の子の自信が無くなるわ」

 

「大丈夫!美波さんには美波さんだけの魅力がありますから!」

 

「よ、よくわかりませんけど、大丈夫です美波のお姉さん!美波のお姉さんも美鈴のお姉さんも羨ましいぐらいキレイですよ!」

 

「なんだか、励ましが逆にウチの心にチクチク来るわね・・・」

 

 

 

・・・いちおう、今日の主役は僕だよね?よく分からない話を繰り広げて僕が入り込めない空気にするのはよくないと思うよ3人とも?

 

 

「さ、3人とも。何の話をしてるか僕にも分かるようにしてほしいかなぁ」

 

「にゃう!?え、ええっと・・・」

 

「ダメよアキ。もしも入ってきたら全力で締め出すわ」

 

「すみません吉井君。これはあなたに分かられたらダメですからね~」

 

「そ、そう?ごめんね3人とも」

 

 

 

 大事なことをもう一回聞こう・・・・・・今日の主役は僕だよね?一応だけど僕だよね!?

 

 

 

 スゥ

 

 

「失礼するよ」

 

「あ。せ、先生」

 

 

 蚊帳の外になって悲しくなりそうになっていたら、ふすまを開いて藍先生が現れた。自然と僕たちは先生の方に向く。

 

 

「は~い橙!橙が好きな牛乳よ~♡」

 

「わー!ありがとうおかーしゃま!」

 

 

 八雲先生の手には盆が握られていて、橙ちゃんに渡したカップ以外に3つ乗っかっている。さすがにちゃんと僕たちのも用意してくれたみたいだ。

 

 

「それで、こっちは緑茶になっている。舌にあってくれるといいのだが」

 

「おぉ、ありがとうございます先生」

 

「わ~いい香り!ありがとう藍先生!」

 

 

 

 確かに湯飲みから抹茶の濃厚な匂いが漂ってくる。ぜひ味わってみたいところだけど・・・・僕の前に湯飲みはない。

 

 

 

 

「(ドンッ!)ほら、水だ。しっかり味わって飲むように」

 

「先生!ただの水に味付けは一切されていません!」

 

 

 代わりに提供されたのはプラスチックのコップに並々と注がれたお水。出てくるだけマシと思うけど、やはりモノ申さずにいられるかっ!

 

 

「そんなことはない。水道水とあ〇みのの天然水ではやはり成分が違う。しっかり確認すれば差を感じられるはずだ」

 

「僕はミネラルと水道水の違いが分かるような舌を持ってないから!正直僕は水道水しか飲みませんよ!」

 

 

 お金がないときの唯一の味方だけれど今は違う。その天然水代をジュースか何か別の飲み物に回してほしかった!

 

 

「ふん。ならば次からはそちら(水道水)にしてやる。喉が渇いたならばまた呼べ」

 

「そんな!せめてあ〇のの水のままにして先生ーっ!」

 

 

 僕の訴えは聞こえたのか果たしてわからず、先生はさっさと部屋を出て行った。

 

・・・いいもん。僕だけ何も出されないとかそんな可能性があったことを考えれば水でも十分な栄養だよバーカ!

 

 

「ご、ごめんなさいお兄さん。なんだかおかーしゃまお兄さんのことをよく思ってないみたいで・・・」

 

「だ、大丈夫大丈夫!このぐらい普段クラスで起こることに比べたらどうってことないよ!」

 

 

 例えばチルノにバカ呼ばわりされたり雄二に殴られたり、魔理沙にからかわれたりムッツリーニに文房具を投げつけられたり・・・・・・改めて振り返ると荒れた日常を送ってるなぼくは。

 

 

「・・・!ありがとうございますっ!やっぱりおにーさんは優しいですね!」

 

 

 ぼくを見上げながらそんなことを言ってくれる橙ちゃん。間違いなく今あげたバカたちよりずっと優しさにあふれた小学生だ。

 

 

 

「吉井君・・・・仲良くすることを責めるつもりはないのですが、あまり行き過ぎると先生との約束上動かざるをえなくないのですけど・・・」

 

「アキ・・・小学生はアウトよ?ウチ本気で引くわよ?」

 

 

 そしてこの2人もバカ仲間にもれず冷たい。な、なんかものすごい誤解をされそうだから別の話題を・・・!

 

 

「チェ、橙ちゃんは牛乳が好きなの?先生のことだからものすごい高級なお茶を出すかと思ったけど」

 

「あ、はい!お茶よりも牛乳の方が飲みやすくて!良かったら飲みますか?」

 

「うん。命が惜しいから気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう」

 

 

 間接キスをしたらいよいよデッドラインは免れない。無自覚なんだろうけど橙ちゃんは実に大胆だ。

 

 

 

「ふ~(コトン)。ところで、2人はいつからお知り合いで?私ずっと気になっていたのですが」

 

 

 それぞれ出された飲み物を飲んでいると(やっぱり水の違いは分からなかった・・・実は天然水じゃなくて水道水だったりしないよね?)、美鈴さんが僕たちを見ながらそんなことを聞いてきた。そういえばあのときいたのは僕と橙ちゃんと藍先生だけだったっけ。

 

 

「あ、そういえばそうよね美鈴。アキに誘われるまで2人が友達だったなんて全然知らなかったわ」

 

「えーっと、この前の学園祭の時に知り合ったんだよ、ね?」

 

「はいっ。私がおかーしゃまを探してたときにおにいさんとぶつかっちゃって!」

 

「まぁ、だめじゃないですか吉井君。廊下は走っちゃいけないんですよ?」

 

「迷うことなく僕が走ってたことにされたけど、あの時僕はのんびり歩いてたから!これは冤罪だっ!」

 

「そ、そうですよお姉さん!私が走ってたからおにいさんは何も悪くありません!」

 

 

 すかさず橙ちゃんが援護に回ってくれ、美鈴さんもすぐに間違いだと分かってくれた。

 

 

「あれ?それは失礼しました」

 

「でも、どっちかって言うとアキの方が橙ちゃんより悪いことをしそうなのよねぇ」

 

「うっ、悔しいけどそこは否定できない・・・」

 

 

 今度からもっと普段の過ごし方を変えないといけないなぁ。まさか小学生から反省を促されることになるとは・・・

 

 

「それで、おにいさんがおかーしゃまを探すのを手伝ってくれようとしたんです!」

 

「へ~、優しいじゃないアキ」

 

「そのことは良かったんだけれど、まさか藍先生の娘さんだとは思わなかったよ」

 

 

 声をかけた子供のお母さんが美人っていうのは男の夢だけれど、そのあとの悲劇が今なおたまに悪夢に出てくるから困ったものだ。

 

 

「その時に約束したんです。また一緒に遊びましょうって!だからおかーしゃまがおにいさんを呼んでくれた時は、本当に嬉しかったです!」

 

「なるほど納得できましたよ。やはり吉井君は吉井君ですね~」

 

「美鈴さん。それは褒めてるの?それともバカにしちゃってるのかな?」

 

 

 ケラケラ笑う彼女の顔からはどっちなのか判断がつかない。でも美鈴さんを信じよう、だって美鈴さんだもの!

 

 

「それじゃあ、皆さんがよかったら遊びませんか!?私すっごく楽しみにしてたんです!」

 

「おっ、それもそうですね!早速遊びましょう!」

 

「そうだね。今日はそのためにここへ来たんだもんね!」

 

 

 当然橙ちゃんの提案に僕らは反対せず喜んで聞き入れた。さてさて、いったい何して遊ぶのかな。小学生だからかくれんぼみたいな身体を動かす遊びか、あるいはテレビゲームみたいな今の子供らしい遊びかな?

 

 

 

「橙ちゃん、何してウチらが遊ぶか決めてるの?」

 

「はいっ!『世界の偉人さん言い当てクイズ』なんてどうでしょう!」

 

「僕の完敗だよ橙ちゃん・・・!」

 

「ええっ!?ま、まだクイズを出してませんしこの遊びに決定したわけでもないですよおにいさん!?」

 

 

 もうおうち帰りたい・・・頭を使う遊びだなんてずるいよ勝てるわけないじゃないかぁ!

 

 

「こら吉井君。せっかくの提案をむげにしちゃ大人げないですよ!」

 

「それは違うね美鈴さん!僕より賢い橙ちゃんが残酷なゲームを提案したんだから橙ちゃんの方が大人げないよ!」

 

「ええええ!?ご、ごめんなさいお兄さんっ!」

 

「あんた小学生相手になに言ってるかわかってんのアキ!?」

 

「小学生相手に頭脳で負けを認めるて・・・高校生もなにもねー断言ですね」

 

 

 2人がすごい目で見てくるけど、僕の圧倒的不満は変わらない!何か別のゲームを所望する!

 

 

「う~ん、橙ちゃん。このおバカさんがダメとおっしゃってますので、何か他の遊びはどうでしょう?」

 

「は、はい。じゃあ『英単語意味当てゲーム』とか――」

 

「申し訳ありません。間違いなく彼が1問目でギブアップするので勘弁してあげてください」

 

「失礼な!僕だって英語くらいなら少しは出来るよ!」

 

「・・・〝Lion〟?」

 

「ライオン!」

 

「〝Koala〟?」

 

「コアラ!」

 

「〝Korea〟?」

 

「ゴリラだよ!」

 

「うん、絶対そう言うと思いました」

 

「音はあってるけど全然違うじゃない・・・」

 

「た、たしか〝韓国〟でしたね!」

 

「うそ!?」

 

 

バ、バカな!動物の流れだったから動物が来ると思うじゃないか!卑怯だよ美鈴さん!

 

 

「橙ちゃん。ここはひとつお勉強抜きで出来る遊びはどうでしょう?」

 

「え、え~~と、それでしたら・・・(ごそごそ)」

 

 

 そう言って橙ちゃんがクローゼットに近づき中を探り始めた。・・・・・・おや?あれってもしかして・・・

 

 

「よいしょ。前におかーしゃまに買ってもらったんですけど、このボードゲームはどうでしょう!」

 

「あ~、〇生ゲームかー」

 

 

 懐かしいな~。小学生の時なんかよく遊んだけど、テレビゲームを買ってからはしてないや。

 

 

「いいですね!あ、ちなみに美波さんはご存知でしたか?」

 

「うん、知ってるわよ。前に葉月とその友達と一緒にやったことがあるわ」

 

「そうでしたか。では吉井君、このゲームのやり方はですねー・・・」

 

「知ってるよ!?帰国子女の美波が知ってるんだから生粋の日本人の僕だって知ってるからね!?問答無用で知らない扱いしないで美鈴さんっ!」

 

 

 出身地的に考えれば僕が一番触れ合う機会が多いってことを忘れないでほしい。まったく、いったい僕はどこから来たと思われてるのやら。

 

 

「じゃ、じゃあ大丈夫ですねっ!さっそく準備します!」

 

「手伝いますよ橙ちゃん。いやはや久しぶりだから燃えますね~!」

 

「僕も手伝うよ!よし、やるからには大金持ちになってみせるぞ~!」

 

「あはは。アキがお金持ちって想像できないわねー」

 

 

 言ったな美波!?その言葉、これから始まる僕のサクセスストーリーを見ても同じことを言えるか楽しみにしてるよ!後悔したって遅いからね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ええ、と・・・吉井君。借金の返済ということで$300を・・・」

 

「・・・これ以上逆さになっても鼻血さえ出ません」

 

「アキ・・・始める前の言葉覚えてる・・・?」

 

「やめて美波、これ以上僕を辱めないで・・・!」

 

「だ、だ、大丈夫ですお兄さん!次はきっといいことが起きますよ!」

 

「何回目かになると慰めの言葉も痛くなるものだよ橙ちゃん・・・!」

 

 

 思い切り後悔したのは僕だった。ゲームなんだからもっと夢があってもいいのに・・・どうしてこうも、借金だとか倒産だとか残酷な展開を考えるんだこのゲームは!作成した人はどんなつもりでこんなひどいゲームを作ったんだぁ!

 

 

 

「(カラカラ)えーと、いちにぃ・・・おっ!女の子が生れましたね~!」

 

 

 それでもめげずに続けていると(他の3人は結構いいマスばかり踏んでてウハウハになってる。なんだろうこのもの凄い敗北感は・・・)、美鈴さんが子供誕生のイベントを起こして女の子を示すピンク色の棒を車に差し込んだ。

 

 う~ん、ゲームとはいえ友達のそういう話を聞くのは変な気分だなー。

 

 

「美鈴に子供ねー。強くてたくましい女の子になると思うわ」

 

「い、いいことじゃありませんか!というか私はそんな男気溢れたイキのいい女じゃありません!何を根拠にそんなことを言うのです美波さんっ!」

 

「根拠も何も、今までのアンタの行動がぜーんぶ根拠だわ」

 

「うおぉおーん!私の乙女心がひどく傷つきました~!」

 

 

 そう言って目に腕を当て泣く姿が誰が見ても男泣き。ちなみに僕も美鈴さんの子供は絶対パワフルになると思う。やったね美鈴さん、親子そっくりじゃない!

 

 

「メ、美鈴のお姉さん泣かないでください!お姉さんが優しい人だって私は知ってますから!」

 

「橙ちゃ~ん!!(ガバッ!)」

 

「ひゃあ!?」

 

 

 感激したのか、フォローしてあげた橙ちゃんを美鈴さんが猛烈に抱きしめた。おお、橙ちゃんの顔が埋もれる埋もれる。ここにきてやっと目に幸運が訪れたみたいだ。

 

 

「橙ちゃんはいい子ですね~!将来もしも娘が出来たとしたらこんな優しい子が欲しいものです!」

 

「いや、橙ちゃんみたいな子は絶対ないと思うわよ美鈴」

 

「うん。美鈴さんの遺伝がそれを許さないんじゃないかなー」

 

 

 優しいところは似てるけれど美鈴さんとは真逆で大人しい女の子だもの。まあ、それを言ったら橙ちゃんのお母さんもだいぶ似ては・・・・・・あ。

 

 

 

 

「誰が、誰の娘を欲しいって?(コトリ)」

 

「・・・ほゎっ」

 

 

 いつの間にかお菓子を持ってきていた藍先生が、穏やかに盆を置いて美鈴さんとその胸に埋もれている橙ちゃんを見比べる。ふう、今回僕は無事で済むみたいで良かった良かった。

 

 

「いったい誰の許可を得て私から親権をはく奪し、終いには橙を抱き締めているのかな?紅」

 

「・・・えーとですね。前半は聞き間違いで、後半につきましては女の子同士ですからセーフではないか、と・・・」

 

「あいにく、私は男女平等を心掛けているのでな・・・橙~、少しそちらのお姉さんと話があるから退いてくれるかしら~?」

 

「ぷはっ!は、はいお母しゃま!」

 

「あっ!チェ、橙ちゃん行かないで!?あなたがいないと私―!?」

 

「(グワシッ)さて、では菓子は置いたのでお盆は引かせてもらおう。丁度いい道具が出来た」

 

「お、殴打ですかっ!?そんな硬そうなお盆で人を殴ったりしたらダメで――!」

 

 

 ピシャン!

 

 

「・・・行っちゃったわね」

 

「お盆で殴ったらだめって言うけど、前に不良を泣きわめくまでボコボコにしてそこからガラスの灰皿をぶちかまそうとしてたのは美鈴さんなんだけどね」

 

 

 これが国語で習った因果応報ってやつか。また一つ勉強になったよ美鈴さん。

 

 

「あ、あれ?なんだか障子の奥からガンガンって音とお姉さんの悲鳴が聞こえるような・・・」

 

「幻聴だよ橙ちゃん。さて、次は僕の番だね(カラカラ)」

 

 

 世の中に知らない方がいいこともいっぱいある。橙ちゃんの注意をそらせるため僕はゲームに戻ってルーレットを回した。

 

 

「・・・あ。僕も女の子が出来た」

 

「けふっ!?」

 

「?急にむせてどうしたの美波」

 

 

 コマを動かしてそこにある文字を読むと、突然無い胸を押さえて美波が震えだした。僕と美鈴さんのピンクの棒を見比べてるけど、違いなんてないよね?全く一緒なはずだよ?

 

 

「な・・・なんでもないわ。ゲームとは言えつい、ね」

 

「ん?そう?」

 

 

・・・ああ、ひょっとして格闘ゲームをやってるときキャラクターに感情移入しちゃうアレかな?だったら僕もよくダメージを受けると痛いって叫んじゃうからわかるなー。

 

 

「ウ、ウチも女の子を・・・(カラカラ)!!美鈴に負けたく、ああああっ!美鈴に

取られちゃった~~っ!!」

 

 

 でもここまで感情が籠ることはめったにない。べ、別に悪いマスに止まったわけじゃないのに、そんなに子供が欲しかったのか・・・女の子ってやっぱり子供が好きなんだなー。

 

 

「え、ええと。大丈夫ですか美波のお姉さん?」

 

「・・・大丈夫・・・ウチはあなたを信用してるわ。ウチが不安になってるようなことにはならないって信じてるわよ橙ちゃん・・・!」

 

「は、はひっ!じゃあ私の番でしゅ・・・!」

 

 

 美波の暗い目に怯えながら、次の番の橙ちゃんがルーレットを回した。

 

 

・・・あ、そこから4って。

 

 

「あ・・・わ、私も女の子が―」

 

「いやああああああっ!小学生にもウチ負けたぁあああっ!!」

 

「にゃううっ!?」

 

「落ち着いて美波!小学生相手に大人げないよ!」

 

 

 すっかり美波はご乱心。こんなにゲームで熱くなるとはこれから良いゲーム友達になれそうだ!

 

 

「アキィイ!ウチがダメでなんで小学生はいいのよ~~!」

 

「よ、よくわかんないけどきっとサイコロの数字がよくなかったんだろうね!また次があるから落ち着いて!」

 

「次ってねぇ!あんたはウチに愛人か浮気相手にでもなれっての!?この女の敵いいっ!」

 

「さらにワケが分かんないけど美波が何かを誤解してるのだけは分かった!僕が言ってるのはゲームだから!そんなことこれっぽっちも考えてないからこれ以上小学生によろしくない言葉を叫ぶのはやめようか美波!」

 

 

 橙ちゃんも状況が読めずおろおろしてるから!・・・っていうか美波が言ったのって全部既婚者に関係することじゃん!そもそもの1人目が僕にはいないってのに嫌味なのかなこらこら!?

 

 

「だいたいよく考えれば美波の方が女の敵じゃないか!ほとんどない胸とさっぱりした性格と美鈴さんに負けない腕っぷしですごい女の子から受けがいいし!僕よりもよっぽどモテてるよ!」

 

「う、う、うっさいわね!あとどさくさに紛れて胸がないって言ったでしょ!?ウチだってさすがにこの子よりは胸があるわよ!」

 

「い~や、それは分からないよ美波!お母さんがあの胸だったら橙ちゃんも未来は・・・ひょっとしたら今でも美波に勝ってるかも・・・!」

 

「んな・・・っ!?」

 

 

 美波がグラリとふらついた。高校生の美波にももちろん可能性はあるんだろうけど、小学生である橙ちゃんにはそれ以上の成長が考えられる。人一倍胸のことに関心を持ってる美波だからこそ、その理論を簡単には否定できまい・・・って、あれ?どうしてこんな話になったんだっけ。なんか思い切り脱線しちゃってるような気がするぞ。

 

 

「・・・いーわよ」

 

「え?」

 

 

 だから元の話題に戻そう、そう思ったところでわなわな震えていた美波が口を開いた。

 

 

 

 

「そこまで言うんなら確認してやるわよ!(ずんずん)」

 

「はい?」

 

 

 突然何を言い出すんだろう美波は。橙ちゃんに近づいて何を・・・

 

 

 

「橙ちゃん」

 

「ふぇ!?は、は、はい!?」

 

 

 

 

「胸見せてちょうだい」

 

 

 

「・・・・・・むにゃああ!?」

 

 

 本当に何言ってるんだこのぺったんこは!?

 

 

「ちょ!?なな何言ってるのさ美波!それは完全に逃れようがないアウトだって!」

 

「アキが悪いんでしょうが!ウチにだって高校生としてのプライドがあんのよ!小学生に後れを取ってたまるものですか!」

 

「年の差が大きくあるのに同じ土俵で勝負する時点でプライドも何もないって美波!」

 

「うるさい!あんたは向こう向いてなさい!(ゴキッ!)」

 

「むーりぃっ!?」

 

 

 く、首が・・・!危うく壊れた人形みたいにすっ取れるところだった・・・!

 

 

「さぁ橙ちゃん・・・!大丈夫、痛いことはしないわ。ちょっとだけ胸を確認させてもらうだけだから・・・!」

 

「ひ、ひぃいいい~!?」

 

 

 おびえる橙ちゃんに美波はにじり寄ってるみたいだけど、ふすまを向いてダウンした僕にその光景は見えない。

 

 まずい、このままじゃ橙ちゃんは成長を確認され、美波が年下の女の子の服を脱がせた変態っていう人としてマズイ称号を・・・!くそぉ!!せめて、せめてこの首が動いてくれれば2人を視界に入れることが出来るのにぃ!(※そこは最後まで欲望に駈られないで欲しかったです…)

 

 

 

ガラリッ

 

 

「いいか。次からはあんなことをしないよう注意するよ、う・・・・・・に」

 

「あいたたたた。分かりましたけど、あれはあくまでスキンシップ・・・・・・でぇ?」

 

 

 そこへ裁いていた1人と裁かれていた1人が戻ってきた。おぉ、ここまで2人が硬直するなんて、僕の後ろの光景はそれだけ衝撃的なんだろうか。

 

 

「おっ、おおおおおおおのれ橙に何をする気だ島田ぁ!」

 

「いやいやいやいやいやいやっ!?なっ、何やってんのよ美波ぃ!?」

 

「へ?・・・あ、ち、違う違うのよ2人とも!これは違うのっ!ウ、ウチはただこの子の胸(のサイズに勝ってるかどうか)が見たかっただけで、美春みたいな変な気はないの!」

 

 

「「変態と断じて余りあるわぁあああああ!」」

 

 

「いたっ!いたたたたたたたたたたあぁああああ~~!?」

 

 

 

 

 

「・・・・・・僕より2人の方がよっぽど危険じゃないかな。これ」

 

 

 思わず僕はつぶやいた。どうやら人選を間違えちゃったみたいだよ姫路さん、秀吉。

 

 

 あと後ろの諸君。僕は今動けないんだからそんな物が飛び交うようなドッタンバッタンしちゃダゴフッ。

 

 

 

 

 

 

 

『へぇ。じゃあ今ごろ美鈴と島田さんと吉井君は八雲藍先生の家に行ってるの?』

 

『ええ。今朝美鈴が出かける前にそう言ってたわ』

 

『私は学校で美波ちゃんに教えられました。や、やっぱりちょっと悔しいですねっ』

 

『あら。気になるなら遠慮なく行ってもいいのよ?ここから瑞希の恋路が上手くいくことを応援するわ』

 

『そ、そんなっ!行きたくないって言ったらウソになりますけど、アリスさん達と遊ぶのも楽しみにしてたからゼッタイ行きません!』

 

『ふふふ、冗談よ。ごめんなさいね瑞希』

 

『う~。アリスさん、今日は少しイジワルですっ』

 

『それだけこの時間を楽しみにしてたってことよ。それにしても、吉井君は色々と巻き込まれるわね。良いことなのか悪いことなのか・・・』

 

『ふんっ。あんな男は疫病神にでも取りつかれてヒーヒー言ってしまえばいいのよ。そうすればきっと私の心はすごく晴れるわ』

 

『さ、咲夜さん。明久君の不幸を目の前で願われると複雑なのですが・・・』

 

『やめてあげなさい咲夜。あまり人を傷つけるようなことを言ってはダメよ』

 

『その言葉をあの変態に言ってやってほしいものね、まったく』

 

『・・・・なぁ』

 

『ん?どうかした藤原さん?』

 

『・・・・私、帰っていい?』

 

『ええっ!?ど、どうしてですか妹紅ちゃん!せっかく四人で遊んでるのに!』

 

『そうよ妹紅さん。終わりどころかまだ集まったばかりじゃない。なのにそれはいけないわ』

 

『・・・・そもそも私はいいって言っただろ。それをあんたがほぼ強引に連れ出して・・・』

 

『あれは妹紅さんが家でのんびりしてたからよ。たまには外に出てリフレッシュすることも大事だわ』

 

『・・・・休日にのんびりするのがいつから悪くなったんだよ。あとニートみたいな言い方すんな。外に出るときは出てる』

 

『でも藤原さん。私はあなたが来てくれて本当に嬉しいわ。あなたと遊ぶのは初めてだもの』

 

『・・・・あ、あっそう』

 

『私もです妹紅ちゃん!今日はいっぱい遊びましょうね!』

 

『瑞希の言う通り。せっかくなんだから楽しまないと損よ』

 

『・・・・・・甘ったるい恋話とお前(咲夜)の胸の話でどう楽しめってんだ』

 

『こここ、こいぃっ!?』

 

『むむむ、胸のことなんか気にしてないわよバカッ!』

 

『・・・・そんなに動揺せんでも。今更のことだろうに』

 

『あ、あぅぅぅ・・・』

 

『い、今さら・・・!確かに今さらだけども・・・っ!』

 

『藤原さんは思ったよりもスッパリ言う子なのね。なんだか霊夢に似ているわ』

 

『・・・・誰それ』

 

『私とクラスメイトの女の子よ。ちょっと・・・まぁ、多少ものぐさな子なんだけど本当は優しい子なの』

 

『・・・・わ、私優しくなんてないし』

 

『その言葉もそっくりだわ。きっと気が合うわよあなたたち』

 

『・・・・・・あっそう』

 

『さて、それじゃあ行きましょうか。3人はどこへ行きたいのか聞いてもいい?』

 

『わ、私は甘いものが食べたいですっ!』

 

『私は服よ・・・!きっと、きっと胸のサイズが・・・!』

 

『・・・・好きにして』

 

『なるほど。それじゃあまずは服屋に行きましょうか。甘味は最後にするとしましょう』

 

『わ、分かりました!』

 

『大丈夫・・・!きちんと牛乳も飲んだんだから・・・!』

 

『・・・・・・なぁ、聞いていい?』

 

『?何かしら藤原さん?』

 

『・・・・・あんたよく、若年寄って言われる?』

 

『どこで何を思われてその言葉がっ!?』

 

 

 




 お読みいただきありがとうございました!やっぱり主観で書くほうがイキイキして書けますね~!

 さて、今回は前回に続きまして八雲家における物語となりました!橙ちゃんのためなら鬼をも吹き飛ばす!そんな藍先生ですから不埒者には男女問わずで運転すると踏まえての展開をしてみましたが、いかがでしたでしょうか?


 そして改めて、投稿が遅くなって申し訳ありません!時間が空いてしまったために読者様の数が減ったでしょうが、また続けて書いていきたいので暇があった時にでも読んで明るい気分になっていただければ!


 それではまた次回っ!さすがに今回ほどは空かない・・はず!
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