司波達也の日常   作:ネコ

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第14話

 小学校の卒業も近付いた休日。

 いつもであれば、深雪と共に達也は呼び出されるが、今回は達也のみが呼び出しを受けていた。

 呼び出した相手は四葉深夜。達也の実母であり、四葉の当主でもある。

 

「失礼します」

「来ましたね。中に入りなさい」

 

 呼ばれて訪れた深夜の部屋には、深夜の他に二人の女性がおり、一人の顔には見覚えがなかった。

 達也は部屋の中に入りながら、目線は動かすことなく、部屋にいる者へと意識を向ける。

 部屋の中央の執務机には深夜が座っている。そして、その両脇を固めるように二人の女性が立っていた。

 一人は深夜と瓜二つな女性。これは言わずと知れた真夜であり、その口許をいつもの扇子で隠している。

 もう一人は完全に初めて見る女性で、なぜこの場にいるのか達也には検討もつかなかった。

 部屋の中央に着いたところで達也は立ち止まり、休めの姿勢で何を言うでもなく、この部屋の主である深夜を見つめる。

 暫く無言の時間が過ぎ、見知らぬ女性が深夜と真夜へ目配せをした瞬間。真夜を中心として、部屋が黒に塗りつぶされていった。

 事前に魔法の兆候を感じ取っていた達也は、部屋を黒へと塗りつぶしていく魔法を、完成する前に消し飛ばすと、何食わぬ顔で言葉を紡ぐ。

 

「御用件はどのようなことでしょうか?」

「…………」

 

 深夜は僅かに驚いた表情をし、見知らぬ女性も同様に目を見開き驚いた表情で達也を見つめる。

 真夜は、最初こそ驚いたような表情をしたが、扇子の下がった瞬間、僅かに唇の端がつり上がるのを達也は見逃さなかった。

 

「どうやったのかしら?」

「魔法のことを言っておられるのであれば、分解いたしました」

「もうそこまでの力を……」

 

 信じきれないといった表情を晒し、深夜の言葉へ覆い被せるように見知らぬ女性は、達也に問い質す。

 

「私が聞きたいことはそちらではない! 深雪様との繋がりをどうやって消したのかと言うことだ! あの魔法は解くことなどできないはず! 一体どうやって解いたと言うのだ!?」

 

 女性は語気を強めて達也を睨み付ける。あり得ない事への畏怖を忘れ去るように、怒りに任せて達也に問いただす。

 

「何の事を言っておられるのか分かりませんが、深雪とは戸籍上及び血縁関係のみの繋がりしかないと思います」

「そんな言い逃れで───」

「冬歌、控えなさい」

「……失礼しました」

 

 深夜の言葉に、自身の興奮状態が覚めたのか、冬歌は大人しく口を閉ざす。余計なことを幾つか口走っていたことに、苦々しく表情を歪める。

 静かになった部屋で、深夜は溜め息に似た息を吐きながら椅子の背もたれにゆっくりと体を預け、リラックスするように手足を伸ばした。

 その様は、これからのことを憂いているように見える。

 

「一応補足しますが、この部屋に設置されている重火器では、傷ひとつ負うことはありません」

 

 深夜の手がピクリと動き、止まった。

 達也からは視覚的に見えない位置で、深夜の指先にはいくつかのスイッチがあり、今まさに押されようとしていたのだ。

 達也はその行動を察して事前に釘を指したのである。

 しかし、その忠告は無駄に終わった。

 深夜が躊躇ったのは一瞬にすぎない。

 その一瞬後には、幾つもの銃弾が達也に向けて放たれたのである。発射された弾は非殺傷弾ではあったが、当たり所次第では命に関わることも有り得る。

 迫り来る銃弾は色々な角度から発射されており、常人には到底捌ききれるものではない。ましてや、何の備えもしていなければ尚更だ。

 しかし、達也に迫った銃弾は途中でその姿を消した。

 達也はその場から1歩たりとも動いていない。むしろ指一本すら動かしていなかった。

 

「…………」

 

 普通であれば、部屋の家具は四散するような火力であったが、何一つ、ボタンを押す前と変わることなく、時間だけがイタズラに過ぎていく。

 そんな沈黙が降りた部屋の中で、始めに声を上げたのは真夜だった。

 

「それにしても、先程の私の魔法を消し飛ばした事といい、この部屋の事といい、よく分かったわね」

「───カマを掛けただけです。目の前には防弾性能を重視している透明な壁があり、魔法が有効でないのならば近代兵器を使うと予想できます。それでもダメならば古典的な罠を───」

「隠さなくてもいいわ。あなたには物理的な攻撃など意味を成さないことを知っているから。先程のは軽い挨拶みたいなものよ。弾も非殺傷の物だったでしょう?」

「あれだけの数を打ち込めば非殺傷とは言えないと思われますが?」

「それはもちろん。あなたの事を信用しているからよ」

 

 その言葉の真偽を疑うように、達也は真夜を見つめるが、その笑顔が変わることはない。寧ろ、最初の表情とは違い、心底喜んでいるようでもあった。

 

「まだ用件を伺っていませんでしたが、そちらをお聞きしてもよろしいですか?」

 

 これ以上の事は、言い合っても仕方ないとばかりに、達也は本題を切り出す。

 真夜たちの真意がどちらだとしても、それを知ったところで達也の行動がそれほど変わるものでもないからだ。

 

「その前に確認なのだけど、あなたは深雪さんの事をどう感じるかしら? 余計な脚色など必要なく簡潔にお願いね。本音で構わないから」

 

 真夜の気楽な物言いに、この部屋を訪れて初めて達也が困惑した表情を見せる。

 真夜は達也の困ったような表情を見て楽しんでいるようでもあった。

 

「そうですね……」

 

 達也が考え込むのも仕方がない。この発言内容が今後の事に大きく左右することが、達也には分かったからだ。

 達也は真夜に顔を向けて答える。

 

「先程も言いましたが、俺にとって深雪はただの妹にすぎません。特に深い愛情を持っているわけでもなく、少し我が儘で癇癪持ちといった認識です」

「まさか、感情も……」

「勿論ありますよ。人が持っていて然るべきでしょう? まあ、一定以上になると、抑制されてしまうようですが……。自動的に冷静になれると思えば、苦ではありませんね」

 

 達也の言葉に、冬歌は顔を真っ青にして震えだし、深夜は何事もないように振る舞う。そんな二人とは対照的に、真夜は満足気に微笑んだ。

 

「では、こうしましょう。達也には───」

 

 真夜からの提案は、達也にとって都合がよく、それに添う形で達也は了承した。

 

 

 

 達也は中学へ上がる前に、今まで過ごしていた長野県と山梨県の境にある屋敷から引っ越し、父親が住んでいる東京の地へとその住まいを変えていた。

 父親は四葉から達也を紹介された当初、信じられないような表情をしていたが、これは仕方ないと言えるだろう。何故ならば、達也が生まれてから一回たりとも会ったことなど無く、十数年振りに会って、実の息子ですと言われたところで簡単に信じられるものではないからだ。

 しかし、それは達也だけが会いに来たらと言う前置きがつく。

 達也たちと共に父親である龍郎の元を訪れたのは、叔母である真夜と葉山だった。

 真夜は龍郎の弁明など聞かず、一方的に話をすると、龍郎に達也たちを預けたのである。

 龍郎は難色を示したものの、真夜に対して面と向かって言えるだけの力や気概もなく、流されるままに頷くしかなかった。

 

「これからはここに住め。鍵はこれだ」

 

 龍郎は、不機嫌そうに懐からカードキーを取り出すと、達也に向けて放り投げる。

 達也は危うげなくそれを掴み取ると、手元で一回転させて一目確認し、ポケットに仕舞う。

 

「金が必要になったら、そのカードから落とせばいい。後は自由にしろ」

「フォアリーブスに入る方法は?」

「……お前、本当に来る気か?」

 

 達也がここへ来るに当たって要望を出したのは一点。フォアリーブスの開発に携わることだった。しかも、要望した先は、社内において周囲から浮いた存在───はみ出し者ばかりが集うような場所であるCAD開発第三課。

 言い方を変えれば個性的な面々が集う場所だ。

 これと言った実績はあまりなく、出来た品は広く販売できないような一点物ばかり。

 しかし、解析の腕や技術力は確かなため、他社の製品の解析などを行うなどの作業ばかりしている部署になっている。

 何故そのような場所を達也が望むのか誰にもわからない。

 むしろどうやって、CAD開発第三課の事を調べたのかさえ分からないのだ。

 それを聞いたときの深夜たちの反応は、達也にとってなかなかに面白いものだった。

 

「そのつもりで親父のところへ厄介になりに来たんだ。会社に近い方が色々と都合がいい」

「達也については分かったが……。もしかして、あんたもついて来る気か?」

 

 そう言って達也のことは諦め、龍郎が目線を向けた先には、達也の後ろに従うようにして大きなトランクケースを横に携えた穂波が立っていた。

 

「私は達也さんの世話係ですので、当然ついて行きます」

 

 穂波がここにいる理由は、達也のガーディアンとして活動する為ではない。

 達也の立場は一応、後継者候補の序列に入ってはいるが、その魔法特性から序列は最下位に近い扱いとなっている。

 四葉では、魔法力を以て序列を決めているところもあり、魔法力が低ければ当然肩身は狭くなり、蔑みの対象となる。

 そのため、達也のような血筋のみで候補に入っているような者は、四葉内ではその辺の石ころと変わりない。

 今回の呼び出しにより、達也の実力を知らされた深夜たちは、今後の対応に苦心したのはいうまでもない。

 本来であれば、従順なロボットの筈が、自由気ままに動くことのできる爆弾になったのだ。しかも、個人で取り扱うことが出来ないレベルに達している。

 だからと言って、達也をそのまま野放しにするわけにはいかない。そこで、苦肉の策ではあるが、現当主である深夜のガーディアンである穂波を、達也のメイドとしてあてがうことにしたのだった。

 これにより、これまでの方向性を逆転させ、達也の重要性を親族に認識してもらおうという考えと同時に、達也への誠意を見せる。

 それだけ、深夜たちは達也の力を恐れていたのであった。

 穂波の言葉に、龍郎は諦めたようにガックリと肩を落とす。

 

「もう好きにしてくれ。警備の者には明日にでも俺から連絡しておく。───他に何かあるか?」

「特にない。穂波さんは何かありますか?」

「私の分のカードキーは無いのでしょうか?」

「……明日にでも手配しておくよ」

 

 龍郎の投げやりな物言いに対して、誰も文句を言うことはなかった。

 

 

 

 春休みを利用しての引っ越しと、それに関わる諸々の手続きは穂波の手回しによりつつがなく終了し、達也たちは翌日、フォア・リーブス・テクノロジー───FLTへと足を運んでいた。

 

「司波達也ですが、上から話は通っていますか?」

「しば……? ああ。昨日に連絡のあった方ですね。少々お待ちください。……何か身分を保証できるものはお持ちでしょうか?」

「これでよければ」

 

 手元にある顔写真と達也たちを見比べている警備員に、達也は昨日発行されたばかりの身分証を提示する。

 その後、提示された身分証を基に身分確認などの照会が始まった。

 照会には十分ほどを要したが、事前に話をしていたため、特に揉めること無く作業は済んだ。この中には次回から自由に行き来できる通行許可証の発行も含んでおり、その事を踏まえれば迅速な対応だと言えるだろう。

 警備員による案内に従い、達也たちは第三課に通される。

 指紋認証を抜けた扉の先には、警備員から連絡を受けたのだろう、気難しい顔をした白衣を着込んでいる男が腕を組んで待っていた。

 

「それでは、私たちはこれで」

 

 警備員は案内を終えると、すぐに戻っていく。

 達也は、待っていた男に軽く会釈し挨拶を行った。

 

「司波達也です。これからお世話になります」

「桜井穂波です。私は達也さんの付き添いですので気にしないでください」

 

 達也たちの挨拶を受けた男は、自分の想像していた高慢ちきな態度と違っていたからだろう。首を傾げて達也たちを見詰め、組んでいた手をほどく。

 

「あー。一応ここを任されてる責任者の牛山だ。坊っちゃんたちには難しいことを色々やってるから、邪魔だけはしないようにしてくれ。後は好きにしてくれたらいい」

 

 頭を掻きながら面倒そうに告げると、終わりとばかりに踵を返してその場から立ち去ろうとする。

 達也は牛山が完全に立ち去る前に声を掛けた。

 

「自由にしても構わない情報機器は何かありますか?」

「それなら、そっちの奥にあるのを使ったらいい。まあ、どうしても分からないことがあったら聞いてくれ」

 

 牛山が指差した先には、昔使われていたであろう情報体───デスクトップ型のパソコンが置かれていた。

 達也は、見向きもせずに立ち去る牛山へ軽く頭を下げると、早速とばかりにパソコンを起動させ必要な事を調べ始める。

 

「達也様。お聞きしてもよろしいですか?」

「何ですか?」

 

 達也は穂波の問いかけに手を止めること無く、次々と色々な情報に目を通していく。

 

「達也さまはこの機体に触るのは初めてですよね?」

「そうなりますね」

「どうして、操作方法がわかったのでしょうか?」

 

 今まで穂波が観察してきた中で、達也は明らかに知らない筈の事象を、当然のように行っていることがあった。

 その様子はまるで始めから知っていたかのように……。

 それは、周囲からは見れば未来予知そのものだ。寧ろそれ以上と言っても差し支えない。

 達也は穂波の様子に気づいた風もなく、淡々と言ってのける。

 

「そうですね……。まあ、この程度であれば、見るだけで大体予測できるからです。ほとんどの機械には起動するためのスイッチくらいあるでしょうし、手に握っているこれにしても、画面を操作するための物と言うのは分かります。後は……推測です」

 

 始めはぎこちなかったキーボードの操作は、ものの数分で見もせずに素早く打ち込まれるほどになっていく。

 穂波は違和感を感じながらも、それ以上は何も聞かず、達也の作業を後ろで黙って見ているのだった。

 

 

 

 春休みが終わり、新しい学校での達也の授業風景は、以前の学校と変わるものではなかった。

 最初こそ、変わった転校生だと色々声を掛けられたが、それも最初の数週間だけ。

 達也自身の愛想の無さも合わさって、次第に達也へ興味を抱く者は減っていった。

 この時の達也の興味は、自分用のCAD開発にあり、その事に集中していたのも大きな要因だろう。

 平日は、授業が終われば、自宅に閉じ籠り理論の組み立てを行い、土日などの学校が休みの時は、FLTに住み着いていた。

 そのせいもあったのだろう。

 達也の存在は第三課にも受け入れられており、CAD開発に関する質問に対しては色々と教えてもらえていた。

 

「こんなピーキーなCADは坊っちゃんじゃないと使えませんね」

「俺用だからこれでいいんですよ」

「まあ、そうでしょうが……。それにしても、たった数ヵ月で自分用にセッティング出来るようになるとは大したもんだ。来た当初は、金持ちの道楽だとばかり思ってましたよ」

 

 数ヵ月前に来たときの事を思い出し、牛山は懐かしそうに、顎に手をやって思いを馳せる。

 

「道楽という言い方は合ってるかもしれません。趣味でやっている部分もありますから」

「ハッハッハ。坊っちゃんも冗談を言うんですな。ここまでの事ができれば、今の年齢を考慮すると趣味のレベルを逸脱してるでしょ」

 

 牛山は笑いながら、達也の手にあるCADを見詰める。

 全くのゼロから知識を吸収し、たった数ヵ月で自分用にCADをチューニングする。

 最初を知らなければ、本当に素人だったのかと疑いを持ってもおかしくはない。

 

「それは否定しません。必要に迫られている……と言うこともありますから」

「必要……ですか?」

 

 それまで沈黙を保っていた穂波が達也に訊ねる。

 

「それはもうすぐ分かりますよ。牛山さん。ありがとうございました」

「いいってことですよ。また何かあったら気軽に聞いてください」

 

 達也は穂波の問いをはぐらかし、牛山に礼を言うと、再びデバイスに向き直って作業を開始した。

 夏休みの前日。

 司波宅の1階にある居間から、呼び出しのための通知音がなる。

 通知先を確認し、穂波はすぐに身嗜みを確認すると姿勢を正して、すぐに受話設定に切り替えた。

 

「お久しぶりです。真夜様」

「お久しぶりね。穂波さん。そちらの様子はいかがかしら?」

「日常生活では、特筆すべきことはありません」

「───では特筆すべきところを教えてちょうだい」

「はい。まず、この数ヵ月で自らのCADの調整が出来るようになり、魔法の精度が上がっています。また、新しい技術の開発を手掛けているようです」

「新しい技術というのは?」

「私はそこまで詳しいわけではありませんが、魔法の連続使用を可能にするもののようです」

 

 既に今の技術においても、CADの操作次第ではあるが、連続にて魔法を使用することはできる。

 この連続と言うのは、あくまで「短時間に」という意味であり、それ以上ではなかった。

 

「何故今頃そのような事をしているのかしら?」

「認識のズレがあるようですので補足しますが、私の言う連続と言うのは瞬時に、という意味です」

「もしかして……」

 

 真夜は言葉の続きを発せずに、穂波を見る。

 穂波は、真夜の勘違いが正されたことにひとまず安堵し、続きの核心部分に触れる。

 

「恐らくフラッシュキャストを技術的に使えるようにする事が目的だと思われます」

「───達也は秘匿すべき事を知っていてやっているのかしら?」

「その事についてお聞きしたところ、あくまでもCADに登録された魔法の連続使用を目的としており、脳内の魔法領域に関したものではないとの事です」

「……達也には困ったものね」

 

 全く困ったようには聞き取れない調子で真夜は答えると、僅かに溜め息を吐いた。

 

「そう言えば、当の本人は何処かしら? 少しお話したいのだけど」

 

 真夜は居間に達也が居ないことを指摘する。

 時間的には夕食時間に近い時間帯であるため、居間にいてもおかしくはない。

 穂波は苦笑いを浮かべながら、達也の居場所と、この場にいない理由を話した。

 

「達也様は、自分用のデバイスを設定するのに夢中のため、暫くは地下にある部屋から出てこないと思われます」

 

 達也は、会社に設置してある機械の操作になれたからだろう。カードを使用し、持ち運び可能なデバイスを購入していた。

 購入にあたっては、龍郎に一言告げたが、値段が数万で済んだことにより了承を得ている。

 

「あの子は一体何がしたいのかしら?」

「私には分かりかねます」

 

 真夜は、指を顔に当てて傾け、悩むように溜め息を吐く。

 小学校卒業前に聞いたあの返答に、真夜は嬉しさで笑い出しそうなほどだったが、今の大人しい状況からは、あの時の事が本当だったのかと疑わしくなってくる。

 

「まあいいわ。その事は後日、本人から直接聞きましょう。穂波さん。1週間後の予定は空いているかしら? もちろん達也もよ」

「確認してみないと申せませんが、夏休みにつきましては、恐らくFLTに行く以外の予定はないと思われます」

「そう。それなら、一週間後の予定を開けておくように伝えてちょうだい」

「分かりました」

 

 通話はそこで終わり、真夜の姿が写し出されていたスクリーンは元の壁へと戻る。

 静かになった居間を後にして、1週間後の予定を達也へ伝えるために穂波は地下へと向かった。

 

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