片思い的な僕ら。   作:鋭利庵

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人と胃にはお優しく

 

 

 

 

 

 

「すいません、わざわざ……」

「うぅん、いいの。もうキャロも二十歳で、私がキャロにしてあげられることも少ないし……こんなことでも、私がまだキャロにしてあげられることがあるっていうのが嬉しいんだ」

 

 弾けるような金髪が照明の光を反射して目に眩しい。端正に整った顔が困ったように微笑み、キャロの桃色の頭をそっと撫でた。その姿は慈愛に溢れた母親のようであり、外見的には姉。年齢で言ったら……どうなのだろうか。まあ、姉だ姉。年齢差も十歳以内だし、うん。

 そういえば、彼女の母親も年齢に見合わない外見年齢の持ち主で、近代のアンチエイジングは魔法の域にまで達したかと驚いた記憶があった。だとすると、やはり遺伝なのかとハラオウン家のDNAに感嘆を覚えかけたが、よく考えたら彼女は養子であり、遺伝子の繋がりが皆無だったはずだ。じゃあこの異様な若々しさは一体……?

 

 僕が思考の湖に沈没しかけていると、キャロを迎えに来たフェイト・T・ハラオウンさん(29)がすんすんと可愛らしく鼻を鳴らし、顔を少ししかめる。

 

「この酸っぱい匂い……もしかして」

「まあ、荒れてましたしね」仕方ないですよ、と肩を竦める。

「うう……本当にごめんね?キャロもいっつもはああじゃないし……今回のエリオとルーテシアの結婚もむしろ祝福してたんだよ?ただ結婚って形で一区切りが付いて、今まで溜めてたものが出てきちゃったっていうか……」

 

 フェイトさんのフォローを、表面上はにこやかに笑って、ええ、と受け流す。

 キャロが無理してエリオやルーテシアの前では笑っていたのには、気付いていた。気付いた上で何も出来なかったし、何もしなかったのだ。そのくせに慰めるような形で家に連れ込み、あまつさえキスまでしてしまうとか、自分が救いがたい屑のように思えてくる。というか、実際その通りだ。

 罪悪感に胃壁を削りながら、砂漠化の進行著しい顔面から乾いた笑みを漏らした。自然保護隊の隊長という身分からすれば放ってはおけないものなのだろうが、今すぐにどうこうしようとは思えない、ぬるま湯にじわじわと浸食されているような虚無感が喉まで迫っている気がして、何もかもが億劫に思えてくる。

 

 正面に立つフェイトさんはそんな僕の様子を、微笑ましいものでも見るかのような目でにこやかに笑う。何かを勘違いしているのか僕の醜態を愉しんでいるのかは微妙なところだが、僕の知っている彼女の性格から前者に軍配が上がるだろう。

 だが、何を勘違いしているのかまでわかるほどエスパーに精通してはいなかったので、普通に尋ねる。

 

「何かおかしいところでも?」

「おかしい……うん、おかしいって言うか、ちょっと不思議だなって」

「不思議……ですか?」

「昔はどっちかって言うとキャロにお世話して貰ってたフィアが、今ではすっかりお世話する立場になってるのが、ちょっとね。十年、そうだよね。もうそんなに経ったんだよね……」

 

 寝ながらにして気分が悪いのか、顔を赤くしたり青くしたりと人間信号機に勤しんでいるキャロを抱えながらのフェイトさんの言葉に、僅かながら羞恥を感じて抗議をする。

 

「フィアは女っぽいからやめてくださいって言ってるじゃないですか……。もう十年経ったんですよ、僕ももう二十のいい大人なんですから、フィアはやめてくださいフィアは。呼ぶんなら、フィアッテかアリネールかのどっちかで」

「私から見たらフィアもキャロもエリオも、みんなまだまだ子供なんだから」

 

 言ってからフェイトさんは、今のすっごくおばさんっぽかった、と戦慄して頭を抱えた。やはり気にしているらしい。外見は二十前後で通じるし、スタイルは良くて性格も申し分なし。収入だって並の男を凌駕しているのに、何故世の男性は彼女を放っておくのか。やっぱりレズビアン疑惑のコブ付きってのが痛かったのだろうか。酒の余韻とフェイトさんの明るくない未来に脳味噌を揺さぶられる。局地的に重力が強いよ、ここ。

 

「……行き遅れぇ……」

「キャロ────────!?」

 

 そしてとどめを刺したのはキャロだった。フェイトさんの肩に被さって眠りこけているキャロは、何やらさっきとは打って変わって幸せそうな顔をしている。フェイトさんを虐めるのがそんなに楽しいかねこのピンクの悪魔が。

 

「うん、うん……。わかってたんだよ、もうすぐ三十だけど特別親しいと言える異性はエリオとフィアとお兄ちゃん……。ちゃんと自覚してた。でも、誰かから言われると特別ダメージ大きいなあ……」

「えーと、ほら。フェイトさん美人ですし、きっとすぐに彼氏できますって」

「本当に?」

 

 目を潤ませながら子供っぽい仕草でこちらを見つめてくるフェイトさん。基本的に運動かキャロ関係でしか鼓動を鼓膜に伝えない心臓が、不覚にも大音量を鳴らす。こういうのを見せたら大抵の男はコロっといってしまうと思うのだが、それを本人が自覚していないから結婚には中々遠いかもしれないと思う。

 

「本当ですってば」

「じゃあ私と付き合える?」

「そりゃあもう………………はいぃ?」

 

 おかしい。どうして僕は同じような内容の言葉を一日に二度も聞かされているのだろうか。モテ期と厄日の融合事故が起きたような現状に、丸くなった目が独立して転がり落ちそうだ。頭痛と胃痛は滞りなく、順調に神経を苛んで脳味噌に混濁を混入させた。

 フェイトさんは何も言わずにじっと、ただこちらを見ている。まさかここで「あなたが肩に乗せているその女の子が好きなので無理です」などと言えるわけがなく、緊張とストレスと酒で麻痺しかけている舌を懸命に動かして、冗談で流せるくらいの曖昧な返事をしようと努める。

 

「あー……いえ、それは何と言うか……」当然の如く、僕にそんなアドリブ能力は存在していない。

「……冗談なんだけど、そんなにリアルな反応されるとさすがに傷付く……。いや、うん、私ももうオバサンだし。でも、そこまで焦ってるように見られてるのかな……」

「…………………………………………………………いやアレですよ驚いただけですってむしろ結婚してほしいくらいですよ」

「ええっ!?そ、そんな急に……でも、え、ちょ、ちょっと待って!」

「冗談ですよぉ!?」

 

 自分から冗談言っておいて何で本気にしてるんだこの人は。

 紅潮を張り巡らせた顔に驚愕を貼り付けていたフェイトさんが、うーと唸ってキャロに押し潰されるようにへたり込む。金髪の間から覗ける汗はきらりと光っているようで、そのまま清涼剤としての役目も果たせるかもしれない。実際、彼女の汗を局で販売したら清涼剤の役割はなくとも一財産築けるかもしれないのが中々怖いところだ。

 

「……紛らわしいの、禁止」

 

 子供のようにふてくされて頬を膨らますフェイトさんに、先ほどのキャロと似たようなものを感じて、聞いてみる。

 

「もしかして、酔ってます?」

「酔ってないよ。ただちょっと数杯ひっかけてきただけ」

「酔ってるじゃないですか……」

 

 のー、とわざとらしい舌っ足らずな口調で否定を主張しながらも、その視線はあちらこちらに飛散して、その泳ぎようといったら、彼女の眼球を水につけたら物理学や生物学の壁を超越して魚に進化しそうなほどである。しかも、顔の紅潮は未だ引かず、むしろさっきよりも悪化してるように思えるから不思議だ。酔いが後から回ってくる質なのだろうか。

 ちょっと待っててください、と言い放ち、テーブルに置いてあったコップを持ち、水を注ぎに行く。僕自身も酔っているので、一杯飲んでしまったのだが、酒を飲んだ後の倦怠感は体中に蔓延しており、億劫になって同じコップでいいやとだるさに白旗を揚げた。まぁお互い間接キスだの、そんなことを気にする間柄でもないのでさして問題はないだろう。

 

「ありがとー」

 

 先ほどから幼児化の進行が著しい気がするフェイトさんにコップを手渡した。フェイトさんはまるで酒でも飲んでいるかのように一気にぐびぐびと水を呷り、ぷはーと一息。仕事帰りに酒を一杯みたいにしか見えないリアクションに、今し方フェイトさんに飲ませた液体がアルコール飲料じゃないことに少し自信がなくなってきた。

 水を飲んで少し素面に戻ったのか、視線と顔面の色を少し正常化させたフェイトさんが髪をかき上げる。それから、ふぅと小さな溜息を吐いて僕に移した視線を遠くに固定した。

 

「それにしても、そっか……エリオももう結婚か……。なんだか、感慨深いな……」

「結婚式で号泣してましたもんね、フェイトさん」

「ちょ、やだ!それは言わないでよ……」

 

 キャロは自分より先に結婚したエリオに深い悲しみを覚えているだの何だの、フェイトさんのことを割と好き勝手言っていたが、実際、フェイトさんがエリオの結婚を祝福してないわけがない。弟同然であり、息子同然にも育ててきた家族の幸せを、嬉しく思わないわけがないのだ。

 では、僕はどうだっただろうか。

 彼がキャロではなくルーテシアを選んだことに憤りを覚えていなかったか。キャロにあんな無理した笑顔をさせたことに理不尽な怒りを持っていなかったか。彼がキャロを選ばなかったことに安心してはいなかったか。式場で僕が彼に送った笑顔は偽物ではなかったか。

 探せば穴なんて、シロアリが囓った築百年の木造柱の方がまだ構造としてしっかりしてるくらいには見つかる。それと同時に、思ったよりずっと友人の幸せを祝福できていなかった自分に失望した。

 ……これでも結構、エリオのこと友達だと思ってたんだけどなあ。何とも恥ずかしい話だ。

 

「……それに引き替え私は何でいい雰囲気の人すらいないんだろう。ヴィヴィオも好きな人できたっていうのに……。さすがに(ヴィヴィオ)に先を越されるのは嫌だなあ……」

 

 僕のマイナス思考が伝染するように、フェイトさんの口調も暗くネガティブに落ち込む。これ以上重苦しい雰囲気の空間を作りたくはないと、わざと惚けた声で質問をした。

 

「あれ、ヴィヴィオちゃん、好きな人できたんですか?」

「あ、うん。私には恥ずかしがって教えてくれなかったけどね。ヴィヴィオの成長が嬉しかったりもするけど、やっぱり少し寂しい気もするかな……。何だか、ヴィヴィオが遠くに行っちゃうみたいで」

「子供の成長なんて案外そんなもんですよ。成長するにつれ、自立もする。自立ってことはつまり、誰かを頼らなくなるってことですからね。僕だって、最近はフェイトさんのお世話になることも少ないですし」

 

 知った風な口を利きつつも、ヴィヴィオちゃんに好きな人ができたという事実に内心驚く。

 僕にとってヴィヴィオちゃんは……妹分というか、何というか。正直、フェイトさんにあんなことを言っておいて何だが、僕もヴィヴィオちゃんのことをいつまでも子供だと思っていたのだ。

 そうだよな、ヴィヴィオちゃんももう十六なんだから、恋の一つや二つ、していてもおかしくはない。

 しかし、ううむ。

 知り合い、それも妹分に好きな人がいるなどというのは、中々に不思議な気分だ。どうも現実感がないというか、ヴィヴィオちゃんの人となりを知っているだけに彼女が誰かを好きになる様子を想像できないというか……。別にヴィヴィオちゃん自身が誰かを好きにならない性格をしているというわけではないのだけれど、身近な分想像力が働かないとでも言えばいいのか。なんだろうね、この複雑な気持ち。親心ってやつなのだろうか。

 

 仄かにフェイトさんの気持ちが欠片ほど理解できて、それとなく気恥ずかしくなった。照れ隠しの代わりに、熟睡しているキャロの頭をそっと撫でる。普段なら羞恥でできないことだが、酒の酔いと誤魔化しの精神に後押しされ自然に手が伸びた。

 ふわりとした柔らかい感触と、微かな甘い香り。そして、それを掻き消すほどの酒臭さが鼻腔に侵入してきて、頭が痛くなってきた。ぐごぉというイビキを漏らす口からは涎が垂れて少量フェイトさんの肩に流れ出ていたのを見ないようにして、手の動きを継続させる。キャロの寝顔を見る。幸せそう────かはともかく、ぐっすり。時折、にゅへへと笑ってみたりうぐごごごと苦しんでみたり、百面相に忙しそうだ。

 溜息を吐く。彼女の夢の中にきっと、エリオがいる気がして。手の動きに合わせるように、胃痛はちくりとしたものから鈍痛へと代わり、ストレスは緩やかに僕の寿命の縮小を進行させる。

 ……いやまあ、諦めてるわけじゃないんだけどなあ。

 無理って思ってるだけで。

 

「………………」

「………………」

 

 僕はやるせなさと諦観から、多分フェイトさんは感慨あたりから、無言になる。だが、そこに居心地の悪さはない。幼い頃から付き合いがあったおかげか、フェイトさんの前では『何かを話さなくてはならない』みたいな強迫観念は限りなく薄まる。もしくは、人を安心させる才能のようなものが彼女にはあるのだろう。もしそうだとしたら、本人の世話焼きな性格も一緒になって駄目人間の製造を始めそうだと、未だ見知らぬ彼女の未来の恋人に同情の念を送っておいた。

 ……できるのかな、未来の恋人。段々不安になってきたんだけど、できるよね?フェイトさん、器量良し性格良しの当たり物件だし、大丈夫。多分大丈夫。

 

「ヴィヴィオにここで何か上手いこと言ってあげれるのが母親なのかもしれないけど……私もそういう経験ないから、何も言えなくてね……」

 

 ははは、と面白みを感じさせない笑いを披露して、そしてしたり顔で一言。

 

「伊達に私の人生ヴァージンロードって呼ばれてないからね!」

「誰ですかそう呼んでるの」

「はやて」

「………………」

 

 彼女の人生も十分ヴァージンロードだろうに。というか、肩書きが重すぎる分フェイトさんよりも結婚の可能性が低いことをはやてさんは理解しているのだろうか。何だろうね、あの人は結婚について『したくなったらいつでもできるし』みたいに考えてそうなんだよなあ。だから他の二人より余裕があるけど、いざとなったら一番焦りそうで不安ではある。

 僕の人生が悪路走行なことを考えると若干は似てて共感が浮かぶかなと思ったが、いや、どうなんだろうね。うん。

 何食わぬ顔で目を据わらせて微笑む。言いたい放題な思考が顔面に影響しないように気を遣って、流言飛語の流出を防いだ。まあ、他人の人生を僕が勝手に予想してああだこうだ言うのはどう考えても間違っているだろうし、たんに戯言ってことでいいのかもしれないけど。

 

「いや、うん。私はいいけど、フィアは誰か気になる人とかいたりしないの?」

「あー……初恋もまだですからねえ。どうにも恋愛事には向いてないみたいで」

 

 緊張を感じることなどもなく、嘘八百を口から並べ立てる。慣れたものというか、幾度となくエリオやキャロに訊かれたことと同じなだけに、思考を脳内に介在させる余地なく脊髄反射的に嘘が漏れ出た。自分の歯や歯茎を使って舌が二枚に分裂していないか確かめる。

 

「恋人、じゃなくても好きな人の一人や二人、フィアには作ってほしいと思ってるんだけどね」

「はあ、それはどうしてまた」

 

 絶対あなたの方が作った方がいいですって。とか言いたくなった舌を噛んで堪える。痛い頭と胃に、痛くなった舌が仲間入りして綺麗に三重奏。鼓膜を震わすのはフェイトさんの声とキャロの寝息だけだ。

 僕の大して疑問も持っていない、ただ社交辞令じみた質問に「だってさ」とフェイトさんは前置いて、

 

「フィア、自分でも気付いてないかもしれないけど、最近凄く辛そうだよ?」

 

 息が止まりそうだ。一度意識し始めた呼吸は、少し呼吸量を多くしても息苦しさは抜けず、フェイトさんに息の音がバレないようにゆっくりと深呼吸をする。

 意識するのは、笑顔でも迫真の演技でもなく、いつも通りの自然さ。

 

「そんなわけないじゃないですか。仕事は順調ですし、エリオとかキャロとか、支えてくれる友達だっています。公私ともに充実してますって。そもそも何も」

「フィア」

 

 声帯を反射に明け渡して吐き出した嘘はフェイトさんの一言に中断させられ、価値を持たないまま落下する。いたわるような、どこか怒っているかのようなフェイトさんの顔に、頬の筋肉が吊り上げられて中途半端な笑顔のまま固定された。

 

「私には何でフィアがそんなに辛そうなのかはわからないけど────」

 

 それはフェイトさんがヴィヴィオちゃんやエリオに気をやる時に見せた母親の顔で。

 

「エリオやキャロもそうだけど、私はフィアのことも家族って思ってるんだから。もっと頼ってくれても、もっと迷惑かけてくれてもいいんだよ。だって家族って、そういうものでしょ?」

「────────────────」

 

 ああ、本当に。この人には敵わない。

 十年前からずっと、お世話になりっぱなしだ。

 涙が流れそうに鼻の奥がツンとなり、じわりと視神経あたりに何かが流れ込んでくる感覚。フェイトさんから目を外して口を押さえ、ふぅと大きく息を吐いた。それと同時に、さっきとは違い自然に口角が持ち上がる。滲むような心は血液に混じって体中を循環するように染み渡り、体内の暖かさと外気の寒さを感じさせた。飲み過ぎかなと内心で恥ずかしさを吹き飛ばすように小さく笑い、アルコールのせいか熱くなった頬を押さえた。

 

「…………ありがとうございます。幾分か、楽になりました」

「うん、いい顔。さっきよりもずっと格好良いよ」

 

 フェイトさんの視線と笑顔が物理的な攻撃力を備えて僕に刺さってきたために、耐えられなくなって顔を逸らす。主に精神に突き刺さるその矢印は、痛み、それでいて不快でない傷を作って呼吸を安定化させる。

自分でもチョロいものだとは思うけど、たったのあの一言だけで随分と救われてしまっている僕がいた。始めから見返りを求めてキャロを好きになったわけではなかったのに、いつの間にか辛いアピールでもしてしまっていたのかもしれない。つらいわーマジつらいわー、僕あの娘好きだけど報われなくて超つらいわー。うわ、うぜえ。

 

 好きならば辛そうであるべきでなかったのだ。

 好きであるというその事実だけで完結しているべきだったのだ。

 うむ、と多分フェイトさんの意図してなかった結論に勝手に納得して、今までよりもずっと息のしやすい世界におはようとか言ってみたい気分になった。アルコールが頭に侵入しているせいか気分も良く、フェイトさんも、そんな僕の様子を見て金箔みたいに薄く繊細な微笑みを浮かべた。

 出来損ないの有機体を吸い込むみたいに、色と香りの付いている気がする空気が、今は心地良い。

 

「行き遅れぇ……」

 

 そしてそれをぶち壊すキャロの寝言。

 

「…………………………」

「…………………………」

 

 フェイトさんは泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.友人枠にトーマ君入ってないね
A.すまんな
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