Girls und Kosmosflotte   作:Brahma

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時は少しさかのぼる。
「そういえば、オーベルシュタイン。やつらには、ヤンのように才能のある第14艦隊を率いる小娘がいたんだったな。」
金髪の若き帝国元帥は髪をかきあげてつぶやいた。
「御意。」
「ケンプから送られてきたこの艦隊配置は戦理にかなっている。アムリッツアでもキルヒアイスを妨害したくらいだからな。ケンプとミュラーだけでは重荷だろう。救援を出したいが、だれがよいか。」
オーベルシュタインがある人物を画面に映し出す。
映し出されたうち、一人は階級は少将で、Erika Itsumiの名前が記載され、銀髪で目じりのきつい印象の少女のように見えた。もう一人は濃い栗色、もしくは暗褐色の髪を持つ凛々しく大人びた少女だった。
「はい、彼女らがよいでしょう。その栗色の髪の小娘と因縁があるようですから徹底的に叩き潰してくれるでしょう。ガイエスブルグ派遣部隊の作戦も伝えてあります。」
画面に映し出しされた人物をみて、金髪の若き帝国元帥は、ほくそえんで命じた。
「ふむ。よかろう。出撃を命じよ。」

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「トータス艦隊司令「アプリコット」嬢かな?」
「クブルスリーのおっちゃんだね。今度はなーにー?」
小柄でツインテールの少女が干しいもをかじりながらとぼけたように答える。
「イゼルローン要塞が敵の攻撃を受けている。君たちが一番近い場所にいる。救援に赴いてもらえないか。」
「そーだね。ここの海賊討伐任務は大体終わったから行けるよ。」
「これは、君たちと同じ世界から来たと思われる西住中将からの依頼でもあるんだ。ここに作戦計画書がある。」
敵要塞をミサイル攻撃、ただし横撃のおそれがあるので、直前にスパルタニアンを発進させてから攻撃する、など手順も書いてあった。みほがキャゼルヌに説明した別動隊の任務である。
「なるほど。面白そうだね~。行ってくるよ。」
「うむ。よろしく頼む。」
細面のクブルスリーの顔がスクリーンから消えると、緑色の亀のマークを付けた艦隊は、イゼルローン方面にワープして消えた。



第101話 要塞対要塞です(その2)。

「第105ブロック破損!」

「ガイエスハーケン発射!」

「敵は同士討ちする気か。トゥールハンマー発射!」

それから2回ほどがイエスハーケンとトゥールハンマーの撃ちあいが繰り返された。

キャゼルヌがトゥールハンマーを撃とうとすると

スクリーンにみほの顔が映る。

「キャゼルヌさん。」

「どうした?ミス...じゃない西住中将?」

その返事にオペレーターの悲鳴が重なる。

「流体金属層が厚すぎてトゥールハンマーが...。」

「沈んで撃てないというのか...。」

「敵はガイエスブルグを接近させて、流体金属層を満潮にさせてトゥールハンマーを撃てなくさせています。」

「!!」

「敵艦隊、要塞の前面に展開。数1万」

「トゥールハンマーが撃てないのをいいことに流体金属層から内部に侵入するつもり?」

みほは、エリコに頷きながら、麻子に敵艦隊を挑発させるがなかなかのってこない。

みほにはいやな予感がした。かってヤンに提案した「おまんじゅう作戦」にそっくりだ。同盟側の流体金属層が薄くなっている部分が心配だが目の前の艦隊を放置するわけにはいかない。

「隊長、またこっちの誘いにのってこないぞ。」

麻子がぼやくように言う。

「わかりました。麻子さん、陣形を三日月形に。」

「わかった。」

みほは、帝国艦隊を要塞に近づけずにじわじわ削っていくしかないと判断し、麻子の名人芸に頼ることにした。

「どうした?敵の陣形をつきやぶれないのか。」

「敵、右翼部分に砲撃を集中」

「艦列を移動。右翼に攻撃を集中せよ。」

オペレーターが適切な艦列構成プログラムを送るが、それを察したみほは、麻子に頷いて、麻子はその鋭鋒を巧みに避けて意図を悟った華が左翼方向に攻撃を集中させる。

「敵、今度は左翼に攻撃を集中してきます。」

「なんてことだ。敵に振り回されているではないか。」

「残念ながらあのヤン艦隊のように艦隊運動には敵に一日の長があるようです。」

「ふむ。まあいい。ガイエスハーケンも撃てないが、敵艦隊を誘いだせたのだからな。」

「そうですね...そろそろといったところでしょうか。」

 

イゼルローンには緊張が走った。

同盟側の流体金属層の薄くなった部分の前面に空間歪曲場が次々に発生する。

「60万キロの宙域に空間歪曲場多数。」

「なんだ....。」

「ワープアウト多数...これは...。」

「正確に報告しろ。」

「て、敵艦隊です。数6500.」

黒々とした艦隊で、その旗艦には、テイーガーⅡを模した傾斜砲塔がつけられていた。

その艦橋では、銀髪の少女が獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「エリコさん。」

エリコと優花里がうなづく。

「おそらくイゼルローンの位置をずらして、小ワープできるようにした?」

さすがのみほの背中にも冷汗が走る。挟み撃ちになる。

 

「レーザー水爆投下!」

流体金属が薄くなり、むき出しにした外壁にレーザー水爆が落された。

イゼルローンは振動で震えた。

「なにが起こったんだ?」

「レーザー水爆が落とされました。UH15ブロック破損。」

 

「ワルキューレ及び強襲揚陸艦発進!」

エリカは滝のような攻撃をし、強襲揚陸艦を次々に降下させていった。

五万人の装甲擲弾兵が降下し、白兵戦で要塞内部から司令室や管制室を占拠するか、もしくは少なくとも通信施設や輸送システムを破壊する。そうすればイゼルローンはただの空中砲台になりさがり、生殺与奪は思いのままになる。

「残念だったわね。せっかく占領した要塞ももうすぐわたしたちのものになるわ。」

 

「ふむ、イゼルローンをわざわざ接近させるよう誘導したかいがあったな。」

「敵は移動させられていることに気が付いていないようです。」

「ふん。ヤン・ウェンリーもこの程度か。知略の泉も枯れたと見えるな。」

ケンプとミュラーはほくそえむ。

 

「し、司令官。」

「なんだ?」

「敵ミサイル艦隊が攻撃してきます。」

「艦隊で敵の横腹を狙え。敵ミサイル艦は防御が弱いはずだ。」

「はつ。」

 

「西住ちゃーん、来たよ~。」

「会長さん!」

スクリーンに赤みがかったツインテールの少女が映る。帝国軍の哨戒網を潜り抜け回廊の危険宙域すれすれを通ってきたため時間がかかったのだった、

「かーしま、撃てば当たるぞ。撃って撃って撃ちまくっちゃって。」

「はい。会長!」

ミサイル艦の砲撃はあたってはいるもののまばらである。

「ももちゃん。当たってない。もっと射角12°右側にお願い。」

のんびりした印象の声が響く。

「ええーい、ももちゃん言うな。」

帝国艦隊は次々と爆発光と煙を上げ四散していく。

ミサイル艦の攻撃で次々撃沈されていく。右往左往する帝国艦隊はスパルタニアンの絶好の餌食でもはや戦力として機能しない。

「かーしま、あのまるっこいやつ、ねらって~。」

「ももちゃん、当たってない。射角もっと左側12°。」

「ももちゃん言うなって言ってるだろう!」

まばらだったミサイルがようやく滝のようにガイエスブルグに降り注いだ。

「生徒会」チーム分艦隊は、射角のついた砲台が目印だった。それはあたかも38tヘッツアー仕様の砲台である。「生徒会」チーム分艦隊によって後方に予備隊として残した帝国艦隊は大損害を被ったが、ケンプが要塞内の駐留艦隊5000隻を急派し、ガイエスブルグ上空の艦隊戦は膠着状態となった。

 

「よう。ヒューズ。敵さんお出ましだぜ。」

「こんどこそ、いただきだぜ。シェイクリ。」

「なんの。こっちのセリフだ。」

「敵小型戦闘艇です。敵戦闘艇の大群が…。」

「こちらもワルキューレを出せ。」

スパルタニアンは、帝国艦の両舷に隊列を組んだ蜂のようにむらがり、ワルキューレの発進口を次々に攻撃し、炎上させる。

「ワルキューレの発進口が….」

「一機も飛び立たせるものか。」

ガイエスブルグ要塞の司令室ではワルキューレの発進口やエンジンがやられて右往左往する帝国艦隊の様子が映し出される。

衝突して炎上する艦もすくなくない。

「なにをやってるんだ...。」

「敵戦闘艇にエンジンが…。」

「司令官。エンジンとワルキューレの発射口をやられて身動きがとれません。」

 

しかし、状況は決して楽観視できるものではなかった。ミュラーの指揮する一万隻はみほを要塞前面に釘付けにして要塞の背面に救援に赴けないのだ。

みほは再び表情を引き締め、くちびるをかんだ。


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