Girls und Kosmosflotte 作:Brahma
さてガイエスブルグの上空では、杏率いるトータス・ミサイル艦分艦隊が直掩機と第14艦隊所属のスパルタニアン隊に守られながらがガイエススブルグを攻撃している。ワルキューレとスパルタニアンの空「宙」戦も行われていた。
ミュラー率いるガイエスブルグ駐留艦隊はみほの艦隊の攻撃を受けつつも、先ほどのガイエスハーケンの発射によって、一時的に退避したことによる同盟艦隊が艦列の乱れによって順調な後退を行っていた。
「ミュラー、敵戦闘艇を艦隊の射線に誘い込め。」
「了解。」
二つの艦隊の間では単座式戦闘艇によるドッグファイトが続いている。
ワルキューレ5機が、シェイクリのスパルタニアンに迫った。シェイクリ機が、前方上空から迫ってくると、ただちに天底方向に急降下した。
急上昇して、シェイクリの後ろ上方からねらおうというのである。
「そうはさせるか。」
シェイクリは敵機が急降下に入ると、シェイクリは急反転させて敵の背中につく。
「よーし、いい子だ。」
シェイクリは、照準器をにらんで、敵機の機首前方から操縦席へ狙いをつけて撃つ。
ワルキューレに弾痕が付いたと思ったら爆発し、宇宙服の敵兵が脱出する。
「おお、後ろからきたか。」
シェイクリは先ほど撃墜した機のパイロットを横目で見ながら、別のワルキューレに追
尾さえていることに気が付いていた。
シェイクリは自分のスパルタニアンをゆるやかに横転させる。ワルキューレのパイロットも自機をゆるやかに横転させて追尾してくる。
「よーし、上をとったぞ。」
シェイクリ機は、敵の上をとり、件のワルキューレは、シェイクリが上にいるのに気が付かない。
シェイクリはゆっくり反転して敵の後尾にまわりこむ。シェイクリが撃つと敵は急上昇する。
敵は宙返りして機を反転させて背面から水平飛行に移って攻撃しようとする。しかしこの飛行法をとると一時的に機が止まるという弱点があった。
「もらった!」
シェイクリは敵機が止まった瞬間を狙い撃つ。敵は撃墜されて火を噴いている。
「さて、残弾はどうかな...。」
「!!」
そのとき、シェイクリは、右側をワルキューレの白い機体が通過したのを見た。
「うわあああああ...。」
シェイクリ機は、ワルキューレの火線に貫かれて、火と煙を噴く。
「シェイクリ!!」
ヒューズが叫ぶ。
次の瞬間シェイクリ機は爆発した。
「くそ。」
ヒューズは、逃げようとするワルキューレを追って、逃げ遅れた敵の右上から撃ちこんだ。敵は機首を下向きして、炎上して爆発する。
後ろを振り向くと、アイ・ヒカワ(容姿はアイマスDS日高愛酷似のボブヘアの女の子)がついてきていた。アイの後ろには敵機が二機アイの後ろについてきている。
「やらせるか。」
ヒューズは、反転して急降下した。
(アイ、ついてこいよ。)
ヒューズは祈りつつ後ろを見ると、アイがとまどいながらもついてきていた。
敵機は、つんのめったような感じで迷走している。幸いにもついてこれないようだ。
ヒューズは二機のワルキューレを追い、急降下から操縦桿を前にひき勢いをつけて上昇した。二機のワルキューレは水平飛行から左旋回しようとしていた。ヒューズは敵の死角に入った。
(アイ、早く来いよ)と考えつつも、こんな絶好なチャンスを逃すわけにはいかない。左側を飛んでいるワルキューレの腹部に撃ちこむ。ワルキューレは炎上し、裏返しになって四散した。右上前方を飛んでいたワルキューレが火を噴き、やがて爆発四散した。
(おお、アイ、ますます腕を上げたな。)
右側を見ると、アイ機がヒューズ機に近づき、コックピットのアイが笑顔で指を立てているのが見える。
アイ機が離れていき、後ろを見ると一機のワルキューレを追うスパルタニアンを別のワルキューレが追っているのが目にはいる。ヒューズは反転して後ろのワルキューレを撃った。撃墜したと思った瞬間、真っ白になり意識しないうちに身体が焼き尽くされた。
一瞬のことだった。巡航艦の砲撃がヒューズ機に命中し、ヒューズを機体ごと焼き尽くしたのだった。
「ヒューズさぁーん;;。」
アイの叫びが空しく機内に響いた。
一方、イゼルローン回廊に帝国本土から二万隻を超す艦隊が向かっていた。先鋒は、ウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将、後詰めは、オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将、いわゆる帝国軍の双璧と呼ばれる両名が指揮する艦隊である。
命令を受けたとき、ミッターマイヤーは、彼にしては珍しくとまどいをみせた。自分と僚友の気持ちを代弁したのはロイエンタールである。
「閣下、命令は謹んでお受けいたしますが、この時期に小官らが出撃いたしますと前線のケンプ提督が功を横奪りされると誤解しますまいか?」
ダンディで知られる金銀妖瞳の青年提督の上官である年下で金髪の若き元帥は、かわいた低い笑い声で答える。
「杞憂だ。第一ケンプが功績をたてているとは限らないではないか。」
「御意..。」
「卿らには心配していないが、念のためだ。戦線をむやみに拡大するな。あとは卿らの善処にゆだねる。」
帝国軍の双璧と称される二人は想定されるケースについて話し合った。
「ケンプが勝った場合ともうすでに負けている場合は行っても仕方がないことになる。問題は、戦線が膠着状態に陥っている場合と、敗北して敵の追撃を受けている場合だな。」
「前者は、改めて現地で話し合えばよかろう。そういう場合、戦況は簡単には変わらないものだ。」
「そうなると後者ということになるな。」
「その場合は思いのほか楽にすむ気がするな。」
「卿もそう思うか。ミッターマイヤー。」
「ああ、ヤン・ウェンリーは引くべきところを知っている男だ。俺たちが相手にするのはおそらく思慮の浅いはねあがりどもだ。」
「同感だ。敵を発見した時にどう対処するかおおよその艦隊配置を送っておく。」
「ああ、それで事足りるはずだ。」
双璧に出撃を命じた若き金髪の元帥は怪訝そうな顔でケンプからの報告書を読んでいた。
「ケンプ提督の報告書、何やらお気に召さない様子とおうかがいしますが...。」
「うむ。ケンプはもう少しやるとおもったが、敵を苦しめたというところが限界らしいな。この作戦の目的は、イゼルローン無力化にある。すなわち、極端な話、要塞に要塞をぶつけて破壊してしまってもいいのだ。」
「ケンプ提督はガイエスブルグ要塞を拠点に正面決戦を挑んだと聞き及んでいます。」
「だから限界と言っている。」
ラインハルトは報告書を少々乱暴に机の上に投げ出した。
「その点ケンプを選んだほうも責を免れますまい。彼を推挙した私自身誤った選択を反省しております。」
「ほう、なかなか殊勝ではないか。しかし、結局のところ最終的に彼を選んだのは私だ。それにもとをただせば、あのシャフトが無用の提案をしたことに原因がある。無益なだけならまだよいが、有害ときては遇する方法を知らんな。」
「ですがあのような男でも何かの役に立つかもしれません。武力だけで宇宙を平定するのは困難です。駒はより多くお揃えになったほうがよろしいかと。たとえ汚れた駒でも。」
金髪の青年元帥の蒼氷色の瞳は、ひときわ冷たく光った。
「誤解するな、オーベルシュタイン。わたしは宇宙を盗みたいのではない。奪いたいのだ。」
「御意...。」銀髪の参謀長は無表情に同意する旨を答えた。